まず結論から
- 「吃音に気がつかせない方がよい」という昔の対応は、今は否定されています。園や学校に伝えるかどうかを考える前提は、隠さないことです。
- 頼む中身の土台は「待ってほしい」こと——遮らない・代わりに言わない・「ゆっくり」「落ち着いて」と助言しない——で、当事者団体の案内と公的資料に共通しています。
- 学校では毎年クラス替えがあり、真似・笑い・質問を受けるリスクが毎年戻ってきます。担任が本人に「真似されていない?」とオープンに聞くことが勧められています。
- 渡す相手は担任だけではありません。ガイドラインは、小学校の特別支援教育コーディネーター(学校の中で支援の連携を担当する先生)が連携を担うことがあり、就学前相談を受けている地域もあると述べています。
ただし、これらは「こう書けば必ず配慮される」という保証ではありません。学校が子どもの吃音を把握していなかった例は研究でも報告されており、一度伝えて終わりにせず、年度ごとに伝え直す前提で考えるのが現実的です。
「配慮してください」の中身が、自分でも言葉にならない
担任に伝えたい。けれど「配慮してください」の後に何を続ければいいのか、自分でも分からない——園や学校に伝えるのが遅れる理由は、気持ちよりも先に、この言葉の不足にあることが多いようです。広島で吃音のある子どもと保護者が集まる会は、その言葉を、集まった親子で持ち寄ってリーフレットにしました。
地方紙の記事(中国新聞デジタル・2017年2月8日配信)。吃音のある子どもとその保護者の会「広島市言語・難聴児育成会 きつおん親子カフェ」の取り組みを報じたもの。本文の大部分は有料で、台帳に残るのは冒頭の一文
伝えたいことは頭に浮かんでいるのに、言葉がなかなか出てこない―。そんな吃音(きつおん)の症状に悩む子どもやその保護者たちでつくる「広島市言語・難聴児育成会 きつおん親子カフェ」が、学校に望む支援の具体例をリーフレットにまとめた。
記事はこの一文で始まります。作ったのは専門家ではなく、吃音の症状に悩む子どもとその保護者たち。「学校に望む支援の具体例」という言い方に、この配布物の性格が出ています——吃音の一般的な啓発ではなく、教室で実際に困る場面を親と子が持ち寄った要望集だということです。見出しは「吃音へ配慮を 学校に要望集」。本文の大部分は有料のため、リーフレットに何が書かれているかをここで写すことはできません。ただ、「何を頼めばいいか」が最初の壁だという点は、国の資料が挙げる学校の場面を見るとはっきりします。
出典: 吃音へ配慮を 学校に要望集 広島の「きつおん親子カフェ」がリーフレット作成(中国新聞デジタル)(台帳: V0402)
発達障害ナビポータルは、吃音のある子どもは発話の場面でしか症状が出ないため悩みが過小評価されやすいとし、他の子から話し方を真似されたり、笑われたり、「なんでそんな話し方なの?」と質問されることが多いと述べています。困りやすい場面としては、日直の号令、音読、発表、かけ算の九九、学習発表会、卒業式が具体的に挙げられています。頼む中身は、この「場面」から書き起こすと言葉になります。「配慮してください」ではなく、「音読で言葉が出ないことがあります」「日直の号令のときに時間がかかることがあります」と、場面ごとに書く形です。
もう一つ、出発点として押さえておきたい研究があります。英国で、吃音のある子が1人ずついる16学級・403人の子どもを調べた研究では、吃音のある子の全員が学校の特別な教育的支援の名簿に載っていたわけではなく、3人については、研究者が連絡するまで学校はその子が吃音の相談・治療を受けていることを知らなかったと報告されています。伝えなければ、学校は知らない——リーフレットや手紙が要る理由は、突き詰めればここにあります。
誰に、いつ渡すか——面談と検査の流れの中で
渡す相手は担任、と決めてかかりがちですが、「いつ」も同じくらい迷います。年度初めの面談か、気になったその日の連絡帳か。2歳4か月で吃音が始まった娘を、市の相談を経て3歳で発達検査(子どもの発達の様子を課題で調べる検査)につなげた母の記録には、検査の前後という流れの中で園の担任に渡した経緯が書かれています。
3歳の娘の母(個人ブログ。娘は2歳4か月で吃音が始まり、市の育児相談から1年以上かけて発達検査を受けた)
「先生もご存じの内容かと思うので恐縮なのですが…」と。
「知らないこともあったので勉強になりました」と言っていただけました。
それ以来、面談のときにさらっと園での様子を聞くくらいで、口出しせず園でのことはお任せするようにしています。
娘はよく話すタイプなので、吃音がひどい時期だと全部話をきくのは根気がいると思います。
ほかの子どもたちもいるならなおさら大変だろうなと思います。
ただでさえ忙しい先生に時間をとらせてしまうのが申し訳ないと言う気持ちもあるのですが、それを気に病むことで娘に対しても申し訳ない気持ちもあります。
先生にたまに近況をお話ししつつ、先生への感謝をことばで伝えてうまくコミュニケーションをとっていこうと思っています。
順番があります。面談・検査の前に「園の先生に普段の様子をきいてきてください」と言われ、母は担任に園での様子——吃音は出ているが本人も友達も気にしていなさそう、など——を聞いてから検査を受け、その結果を担任に報告しました。渡したのはその流れの中で、しかも自分で書いた文ではなく、手元の本の巻末にある「吃音の子どもを受け持つ先生用の文章」のコピーです。引用の最初の一行は、それを渡すときの一言。「先生もご存じの内容かと思うので恐縮なのですが」という前置きに、「知らないこともあったので勉強になりました」という返事。渡すものは自分で書かなくてよい、というのがこの記録のいちばん実務的な部分です。渡した後は「口出しせず園でのことはお任せ」。相談先と園・学校がどうつながるかは、ガイドラインが連携の形として書いています。
出典: 吃音症の3歳の子どもが発達検査を受けました(ミセスチキンハートの子連れ旅行ブログ)(台帳: V0061)
幼児吃音臨床ガイドライン2021は、「吃音かな?」と思ったときの相談先として、幼児の吃音の治療経験がある言語聴覚士(ことばの専門職)のいる病院やクリニック、自治体の(小児)リハビリテーションセンター、大学教育学部に付属する発達や言語の相談室、地域の児童発達支援センターを挙げています。そのうえで、就学後は小学校の通級指導教室である「ことばの教室」(在籍する学級とは別に、決まった時間だけ通って指導を受ける教室)等が指導にあたるが就学前相談を受けている地域もあること、小学校の特別支援教育コーディネーターが連携を担っていることがあることを述べています。渡す相手は、園なら担任、小学校なら担任に加えて特別支援教育コーディネーター、ことばの教室を使うならその担当——ガイドラインが連携先として挙げている顔ぶれが、そのまま候補になります。
時期については、ガイドラインは積極的な介入を始めるまでの経過観察の期間に、保護者が過度に心配することがないよう資料を提供しながら適切な吃音の知識と家庭・集団での望ましい関わり方を伝え、家庭での日々の吃音症状を記録してもらい、面談ではその記録をもとに症状の変化を評価する、としています(ガイドラインが勧める強さの等級は推奨グレードB)。記録があると、園や学校に渡す文にも「いつ・どんな場面で出やすいか」を書けます。就学の前に伝えるなら、就学前相談を受けている地域があることも、ガイドラインの記述のとおりです。
手紙や連絡帳に、何を書けばいいのか
面談の機会を待たなくても、手紙や連絡帳という手があります。では、そこに何を書くのか。見本になったのは、本人の言葉でした。中学2年のときに担任と顧問の先生に手紙を書いて吃音を伝えた女子が、中学校の生徒意見発表会の原稿で、周りの人にしてほしいことを挙げています。
当時中学2年の女子(当事者団体「小中高校生の吃音のつどい」のサイトに掲載された、中学校の生徒意見発表会の原稿。担任と顧問の先生に手紙を書いて吃音を伝えた本人)
告白するにも、他人の反応が気になり、簡単にはできません。しかし、吃音の知識や、吃音者に対する理解が、社会全体に広がり深まってくれば、告白の必要も無くなります。私の場合は、担任の先生や顧問の先生に手紙を書き、理解を求めました。先生から、クラスの皆に伝えてもらい、私も気持ちが楽になりました。
皆さんの周りに、もし、私と同じような吃音者がいたら、最後まで話を聞いてあげてください。からかったり、途中で聞き飽きて結論をまとめてしまったりするのはやめてください。ほんの少しの間、待っていてくれるだけで良いのです。
原稿の前半には、友達からプレゼントをもらって「ありがとう!とっても嬉しい。」がすぐに声にならず黙ってしまう場面と、授業中の発表が半分ほどのところで先生に結論をまとめられてしまった場面が書かれています。担任と顧問の先生への手紙は、その後半に出てきます。手紙の文面そのものは原稿に写されていませんが、周りに求めることは4つに整理されています——最後まで聞く、からかわない、途中で結論をまとめない、ほんの少しの間待つ。先生からクラスに伝えてもらったあと、本人は「気持ちが楽になりました」と書いています。保護者が園や学校に書く文でも、この4つはそのまま使えます。本人が挙げた4つは、当事者団体が周囲に配慮を頼む4点とほとんど重なります。
出典: ともに―吃音と生きる―(体験談)(小中高校生の吃音のつどい)(台帳: V0069)
当事者が運営する「注文に時間がかかるカフェ」の公式ページは、吃音のある人への対応は人それぞれ違うとしたうえで、一般的な対応として4つを挙げています。遮ったり憶測して代わりに言ったりせずに言い終わるまで待つ、緊張して吃っているわけではないので「リラックスして」「ゆっくり話せばいいよ」と助言しない、からかったり真似したりしない、他の人と同じように接する、の4つです。吃音ポータルサイトの家庭向けの提案も、「ゆっくり」「落ち着いて」の声かけを極力控えること、きょうだいが先を争って話しかける状況では「順番に話す」ルールを設けて発話の最中に割り込まれないようにすることを挙げています。家で効くとされている環境は、園や学校でも同じ言葉で頼めます。
ここまでの資料を組み合わせると、園や学校に渡す文に書く3点は次のようにまとまります。
- 待ってほしいこと。言い終わるまで待つ、遮らない、代わりに言わない、「ゆっくり」「落ち着いて」と言わない。
- 周りの子の反応が出たときの対応。真似・笑い・「なんでそんな話し方なの?」という質問は起こりやすいことを先に伝え、出たときに早く気づいてもらう。
- 困りやすい場面。日直の号令、音読、発表、かけ算の九九、学習発表会、卒業式など、この子が困りそうな場面を具体的に挙げ、「真似されていない?」「笑われていない?」と本人に聞いてもらう。
「そんなことまで頼んでいいのか」という気後れ
書く中身が決まっても、「そこまで頼んでいいのか」という気後れは残ります。3歳の息子を連れて市の「ことばの教室」で言語聴覚士に相談した母の記録には、そのためらいと、それに返された言い方がそのまま残っています。
3歳の息子の母(個人ブログ。市の「ことばの教室」で言語聴覚士に相談した日の記録。引用中の「先生」は言語聴覚士)
「幼稚園の先生はそういった言語障害についてもたくさん勉強されてますから○○君のどもりに対しては注意したりされないと思うのですが、重要なのは周りのお友達が○○君がどもった時に悪気はなくてもどもりを指摘するような場面が出てくると思うんです。その時に○○君ではなく周りのお友達に注意してもらえるようにお願いした方がいいです」とアドバイスを受けました。
私「でもなんかそんなお友達を注意してください!なんてモンスターペアレントみたいで言うのがちょっと、、、」と私がためらうと、
先生は「お母さんの意見として言うとあれかもしれませんが、言語聴覚士の先生からそういうように言われたんです。とそのまま伝えたら大丈夫ですよ」とも言っていただきました。
この直前に言語聴覚士は、「幼稚園にはどもりの事をぜひ報告して先生に注意してもらってほしいです」と勧めています。勧めたのは、園への報告そのもの以上に「誰に注意してもらうか」の設計でした。園の先生は本人を注意しないだろう、問題は悪気なく指摘する周りの子が出てくること、その時に本人ではなく周りの子に注意してもらえるよう頼む——。「モンスターペアレントみたい」とためらう母に返されたのは、自分の意見としてではなく「言語聴覚士の先生からそう言われた」とそのまま伝えればよい、という言い方の処方です。頼む中身と、頼み方の両方がここにあります。母は、次に幼稚園に行く1月にそのとおり相談するつもりだと書いています。気後れの背景には、園に手間をかけるという感覚だけでなく、吃音を話題にすること自体への抵抗もあります。その抵抗については、学会の指針がはっきり書いています。
出典: 息子3歳のどもり(吃音)(息子を連れてハワイに行くぞー)(台帳: V0058)
日本吃音・流暢性障害学会は、昔は「吃音に気がつかせない方がよい」という対応が主流だったが、今はそのような考え方は否定されていると明記し、親子で吃音について話ができる関係づくりを心がけるよう勧めています。吃音ポータルサイトも、子どもが吃音を打ち明けてきたときのために、「吃音の話し方」は「くせ」のようなもので悪いことやいけないことではないと伝えること、背が高い子と低い子がいるように話し方にもいろいろな話し方があると話すことを、あらかじめ準備しておくよう勧めています。園への文にも同じ言い方が使えます。「悪いことではない」と親が先に書いておくと、先生の側も扱い方を決めやすくなります。
気後れの反対側には数字があります。日本耳鼻咽喉科学会会報の総説は、学齢期に約半数がいじめやからかいを経験するので対策が重要であり、診断書等で対応すると述べています。頼むことは過剰ではなく、資料が「対策が重要」と書いている領域です。
「どう言えばいいか」については、吃音のある本人が「自分は吃音がある」と相手に自分から伝える「自己開示」を扱った研究の整理があります。18件の量的研究を系統的レビュー(条件を決めて集めた研究をまとめて評価する方法)で整理したところ、15件(83.3%)で全体として好意的な影響が見られ、伝え方を条件として比べた13件のうち12件(92.3%)では、謝る形や伝えない場合より、謝らない形の伝え方のほうが好意的に受け止められていました。原典は、この結果が謝らない形の自己開示を支持するとしたうえで、伝える場面・年齢・吃音の頻度や重さ・吃音のある人と知り合いかどうかの影響を調べた研究は少ないと断っています。保護者が園に書く文を調べたものではありませんが、「申し訳ありませんが」から始めずに事実として伝える、という向きは、言語聴覚士が母に勧めた「そのまま伝えたら大丈夫」と方向が同じです。
頼んだ対応が、忘れられることがある
渡して終わり、にならないことがあります。幼稚園の年少からことばの教室に通った娘を育てた母は、小学校に上がってから学校に吃音への対応を頼みました。そのあとに起きたことが、当事者団体のサイトに寄せた手記に書かれています。
16歳の娘の母(日本吃音協会のメディアに寄せた手記。娘は幼稚園の年少からことばの教室に通い、いじめを受けて不登校を経験し、いまは通信制高校に在籍)
娘が小学校に入ると、私は吃音について分かる人が居ない現実に愕然としました。
間違った対応を回避するために専門家の本を探したり、言語聴覚士へ相談したりしました。
娘の吃音対応を学校にお願いしたこともありました。しかし、これが私の気力や体力を消耗する過酷な生活の始まりでした。
そう感じたのは教師の対応でした。
教師に吃音を理解してもらうことは難しく、私が頼んだ娘の吃音対応は忘れられ、生徒達からも真似されからかわれてしまったのです。娘にとって音読は地獄そのものでした。
それでも、母である私は前を向きました。
母は早い段階で娘の吃音に気づき、幼稚園の年少からことばの教室に通わせていました。小学校に入ってからは専門家の本を探し、言語聴覚士にも相談したうえで、学校に対応を頼んでいます。それでも頼んだ対応は忘れられ、生徒たちからの真似とからかいが起き、音読の時間は母の言葉を借りれば「地獄そのもの」になりました。手記はこのあと、中学でのいじめと不登校、通信制高校への転学まで続きます。伝えたことが、そのまま学校に残り続けるとは限らない——この記録が教えるのはその一点で、学校が子どもの吃音を把握していない例は海外の研究でも報告されています。
出典: 辛い環境で我慢しなくていい。吃音でいじめられ不登校になった娘と歩んで気づいたこと。(HAPPY FOX・日本吃音協会)(台帳: V0081)
英国の研究は、学校ぐるみのいじめ対策で学校のいじめは全体としては減っていると考えられる一方で、吃音のある子が学校で抱える特有の問題が十分に認識されている証拠は乏しいと述べています。日本の資料も、学校では毎年クラス替えがあり、真似・笑い・質問を受けるリスクが毎年戻ってくるとして、これを「毎年のリスクマネジメントの積み重ね」と呼び、早期発見とその対応法をオープンに話すことが予防につながるとしています。頼んだことが続いているかを年度ごとに確かめ、同じ文を渡し直す。一度で終わらせない前提は、資料の側からも、この記録の側からも要ります。
渡せるものは、広島だけではない
広島の会のリーフレットが手元に無くても、同じ役割の配布物は他にもあります。幼児吃音臨床ガイドライン2021自身が、初回の説明には簡単なリーフレットを用いて吃音の基本と望ましい対応方法を説明すると書き、最初の相談窓口になる保育所・幼稚園・認定こども園の保育関係者などに正しい知識と初期の適切な対応の理解を促す必要があるとして、そのためにリーフレット等を作成したと述べています。
本の形のものもあります。日本吃音臨床研究会の書籍案内には、保護者・ことばの教室の先生・通常の学級の先生に向けて「どもる子どもが幸せに生きるための具体的な提案」を盛り込んだ55ページのパンフレットや、親や教師がどもる子どもに、どもる子どもがクラスの子どもに吃音を説明するときに役立つとする一問一答集が並んでいます。学齢期の子どもがいじめや仲間からの否定的な反応に直面したときの臨床の方略として、問題解決の活動と、教室で仲間に吃音を説明する取り組みを挙げた論文もあります。
海外でも同じ動きがあります。英国の研究は、英国の吃音協会が学校と教師向けの教材を作っていること、子どもはいじめが起きても大人を巻き込みたがらないため、子ども同士で支え合う仕組みが役に立ちうることを挙げています。渡す「もの」は、探せば手元に届く範囲にあります。広島の会の取り組みは、その中の一つです。
相談先を一つ持っておく——制度の話は別の記事で
園や学校に渡す文を書く前に、相談できる先を一つ持っておくと、「言語聴覚士からこう言われた」と書けます。幼児吃音臨床ガイドラインは、公立学校のことばの教室がどの小学校にあるか、幼児の吃音の相談に対応しているかは地元の小学校か各地域の教育委員会に問い合わせるとよいとし、保健センター等でも相談対応をしているところがあり、地域の言語聴覚士の相談窓口を把握している場合もあると述べています。ただし、相談対応機関の多くは治療には対応できないことも多い、という注意も添えられています。
見通しについては、吃音ポータルサイトが、幼児期の吃音の場合、少なくとも半数の子どもは特別な指導や支援をしなくても小学校に入学するぐらいまでに吃音の問題が見られなくなること、小学校に入って吃音が引き続き見られる子どもでも、ことばの教室や言語聴覚士の適切な指導・支援を受けることで、多くの場合、日常生活の中でそれほど大きな支障なく過ごせるようになるとしています。園や学校に伝えるかどうかは、この見通しとは別に決めてよいことです。
この記事で扱わなかったことは、次の記事に譲ります。通級(ことばの教室)の使い方と毎年の申し送りは吃音と学校の配慮、合理的配慮の法律上の根拠は吃音と合理的配慮、家庭での声かけは子どもの吃音への対応、相談先の全体像は吃音の相談先、広島の相談先と広島言友会は吃音・広島の相談先、親子サマーキャンプの中身は吃音親子サマーキャンプの記事です。
園や学校に伝えるときの3つの落とし穴
落とし穴1 − 一度伝えたら終わり、にする
学校では毎年クラス替えがあり、真似・笑い・質問を受けるリスクは毎年戻ってきます。発達障害ナビポータルはこれを「毎年のリスクマネジメントの積み重ね」と呼び、早期発見とその対応法をオープンに話すことが予防につながるとしています。年度初めに同じ文を渡し直す、と最初から決めておくほうが楽です。毎年の申し送りの実際は学校の配慮の記事にまとめています。
落とし穴2 − 「配慮してください」だけを書く
場面が無いと、受け取った側は動けません。日直の号令、音読、発表、かけ算の九九、学習発表会、卒業式——資料が挙げる場面と、待ってほしいこと(遮らない・代わりに言わない・助言しない)を、この子の言葉に置き換えて書くのが近道です。本文で紹介した母は本の巻末の文章のコピーで、中学生の本人は担任と顧問の先生への手紙で、それを済ませていました。
落とし穴3 − 本人抜きで進める
伝えるのは保護者でも、教室で困るのは本人です。学会の指針は、親子で吃音について話ができる関係づくりを勧め、国の資料は担任・養育者・支援者が本人に「真似されていない?」「笑われていない?」とオープンに聞くことが吃音の話をオープンにするきっかけになるとしています。学齢期には、本人が教室で仲間に吃音を説明する取り組みも臨床の方略として報告されています。本文で紹介した中学生は、担任と顧問の先生への手紙から始め、先生からクラスに伝えてもらっていました。園や学校に何を書くかを本人と話しながら決める段階は、いずれ来ます。
よくある質問
リーフレットや説明の文は、自分で作らないといけませんか?
作らなくても、既にある資料を使えます。幼児吃音臨床ガイドラインは、初回の説明に簡単なリーフレットを用いると書き、保育関係者などに向けたリーフレット等を作成したと述べています。日本吃音臨床研究会の案内には、保護者・ことばの教室の先生・通常の学級の先生に向けたパンフレットや、親や教師が子どもに、子どもがクラスの子に説明するときに役立つとする一問一答集が並んでいます。
園や学校の誰に渡せばいいですか?
園なら担任が入口ですが、小学校では担任だけではありません。幼児吃音臨床ガイドラインは、小学校の特別支援教育コーディネーターが連携を担っていることがあり、就学後は通級指導教室の「ことばの教室」等が指導にあたるが、就学前相談を受けている地域もあると述べています。ことばの教室がどの小学校にあるかは、地元の小学校か教育委員会に問い合わせるとよいとされています。
伝えると、かえって本人が吃音を気にするようになりませんか?
「吃音に気がつかせない方がよい」という昔の対応は、今は否定されているとされています。吃音ポータルサイトは、「吃音の話し方」は「くせ」のようなもので悪いことではないと伝える準備を勧めており、国の資料は担任や養育者が本人に「真似されていない?」とオープンに聞くことが吃音の話をオープンにするきっかけになるとしています。
いつ伝えるのがいいですか?
学校では毎年クラス替えがあり、真似・笑い・質問を受けるリスクが毎年あるとされているので、年度ごとに伝え直す前提が現実的です。就学前については、就学前相談を受けている地域があること、経過観察の間に家庭での症状を記録しておくことがガイドラインに書かれており、その記録が園や学校に渡す文の材料になります。
伝えても対応してもらえなかったら、どうすればいいですか?
日本耳鼻咽喉科学会会報の総説は、学齢期のいじめやからかいへの対策が重要であり、診断書等で対応すると述べています。相談先としては、幼児吃音臨床ガイドラインが言語聴覚士のいる病院やクリニック、自治体のリハビリテーションセンター、児童発達支援センターなどを挙げています。学校での合理的配慮の根拠は別の記事で整理しています。
まとめ
- 「気がつかせない方がよい」は否定済み。園や学校に伝えることは、隠さない対応の延長にある。
- 渡す相手は、園なら担任、小学校では担任に加えて特別支援教育コーディネーターやことばの教室の担当。就学前相談を受けている地域もある。
- 書く3点は、待ってほしいこと・周りの子の反応が出たときの対応・困りやすい場面。
- 頼む中身も頼み方も、自分の言葉でなくてよい。ガイドラインや親の会のリーフレット、支援者向けのパンフレット、「言語聴覚士からこう言われた」という伝え方が使える。
- 毎年クラス替えがある以上、一度で終わらせず年度ごとに伝え直す。伝えても動かないときは診断書等での対応があり、相談先を一つ持っておく。
