吃音の相談先|どこに何を相談できるか・待ち時間・行く前の持ち物

吃音の相談先|どこに何を相談できるか・待ち時間・行く前の持ち物
目次

「吃音のことを、どこに相談すればいいのか分からない」——病院なのか、学校なのか、それとも当事者の集まりなのか。名前は聞いたことがあっても、そこへ行くと何をしてもらえて、何はしてもらえないのかが見えないと、最初の一本の電話がかけられません。かけてみたら「うちでは対象外です」と言われた、予約が半年先だった、やっと会えた日に限って子どもがすらすら話した——そんな経験をした方も少なくないはずです。

この記事は、国立障害者リハビリテーションセンター・日本言語聴覚士協会・発達障害教育推進センターの公開資料と、吃音の評価について専門家の合意で作られた指針をもとに、相談先を「入口の種類」ごとに整理します。そのうえで、実際に相談先を探した保護者と当事者5人の記録から、行ってみて初めて分かるつまずき——最初の電話で断られる、予約が取れない、相談の場では症状が出ない、何を持っていけばいいのか、オンラインで足りるのか——を一つずつ確かめていきます。

ソンタクマン(toVoice 運営)
吃音当事者。研究論文と当事者の声をもとに、吃音の情報を出典つきで発信しています。

この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の判断に代わるものではありません。窓口の名前が同じでも、できることは地域や施設ごとに違います。気になる症状があるときは、言語聴覚士やことばの教室、お住まいの地域の相談窓口にご相談ください。

まず結論から

  • 吃音の相談先は、大きく「医療機関」「言語聴覚士」「学校のことばの教室と教育委員会・教育センター」「発達障害者支援センター」「自助グループ」の5つの入口に分かれます。国の公的機関の案内も、学校・教育委員会・言語聴覚士会・発達障害者支援センター・自助グループという組み合わせで相談先を示しています。
  • 言語聴覚士は吃音を自分たちの守備範囲に含めている専門職ですが、扱う業務が幅広いため全員が吃音の指導や支援を行えるわけではなく、事前に病院や協会・都道府県の言語聴覚士会に問い合わせることが勧められています。
  • 専門外来は予約が取りにくい状態にあります。国の医療機関自身が「受診希望の方が多く予約が取りにくくなっている」と案内しています。
  • 相談の場では、家で見ているほど症状が出ないことが多く、「気にならないですね」で終わってしまうことがあります。持っていく記録が、その差を埋めます。
  • 自助グループは専門的な指導の場ではありませんが、当事者同士でしか得られないものがあるとされています。

ただし、同じ名前の窓口でも、できることは人口規模や地域の資源によって異なります。この記事は相談先の全体の見取り図で、お住まいの地域の具体的な窓口名や手続きは、地域ごとの記事と、各窓口への問い合わせで確かめてください。

5つの入口 — それぞれが「してくれること」と「してくれないこと」

吃音に関わる相談先は複数あり、「どこが正解」というより、困りごとと年齢によって入口が変わります。国立障害者リハビリテーションセンターの発達障害情報・支援センターは、どもっている高校生の保護者からの相談に答える中で、通っている学校か地域の教育委員会に相談すればことばの教室を紹介してもらえること、学校以外の専門機関は各都道府県の言語聴覚士会や発達障害者支援センターに問い合わせるとよいこと、本人が望むなら自助グループに参加する道もあることを、一つの回答の中で並べています。この並びを、入口ごとに分けて見ていきます。

  • 医療機関(吃音外来・言語聴覚士のいるリハビリテーション科や耳鼻咽喉科など) — 診察と検査を受け、言語訓練の方針を立てる場所です。たとえば国立障害者リハビリテーションセンター病院では、各診療科を受診して医師から指示が出た人に言語聴覚療法を行い、言語聴覚士が参加する専門外来として小児吃音外来と成人吃音相談外来を置いています。成人吃音相談外来は18歳以上が対象(高校生は小児吃音外来)で、初診日に問診票の記入・診察・吃音の検査を行い、後日その結果を見ながら言語訓練の方針を立てる流れです。⚠ 入口の手続き——本人が電話で予約できるのか、先に医師の診察と指示が要るのか——は同じ病院の中でも窓口ごとに違います。何科にかかるかの考え方は、「吃音は何科・どの病院?」にまとめています。
  • 言語聴覚士 — 聞こえ・ことば・飲み込みの障害のある人を、検査・訓練・指導・援助によって支援する専門職で、国家資格です。日本言語聴覚士協会は、スムーズに話すことが難しい吃音もことばの障害に含まれると明記しています。ただし、扱う業務が多岐にわたるため、全員が吃音の指導や支援を行えるわけではありません。病院のリハビリテーション科や耳鼻咽喉科に勤務していることが多く、吃音の支援を希望する場合はあらかじめ病院に直接問い合わせるか、日本言語聴覚士協会や各都道府県の言語聴覚士会に尋ねるよう案内されています。探し方の詳細は「吃音と言語聴覚士」へ。
  • 学校の「ことばの教室」と、教育委員会・教育センター — ことばの教室は、在籍する学級とは別に、ことばの指導を受けに通う教室(通級)です。通っている学校か地域の教育委員会に相談すると、その地域の設置状況を紹介してもらえます。教育委員会には都道府県のものと市区町村のものがあり、市区町村の教育委員会は教育相談・就学相談も担っています。教育センター・特別支援教育センターは各都道府県や政令指定都市に置かれ、多くの機関が電話相談と来所相談を受けています。中学校にもことばの教室は少しずつ設置されてきています。⚠ 一方で、幼児の吃音の相談が寄せられる保健センター・園・小児科・耳鼻咽喉科・ことばの教室の多くには言語聴覚士がいない、と国立障害者リハビリテーションセンターの特集は書いています。
  • 発達障害者支援センター — 各都道府県・政令指定都市に置かれた公的な施設で、発達障害のある幼児から成人までとその家族の、発達や就労などの相談を受けます。支援の内容はセンターごとに異なり、アセスメント・個別の支援計画の作成・医師の診断を行う機関もあります。人口規模や面積、地域の資源によって事業内容が違うため、初めて利用する人はまず住んでいる地域を担当するセンターに問い合わせるよう、一覧の冒頭に書かれています。
  • 自助グループ(言友会など) — 吃音のある当事者が日を決めて集まり、互いの問題について話し合う会で、日本各地にあります。言語聴覚士のような学術的な知識や専門的な指導は受けられませんが、当事者同士でしか得られないものがあるとされています。近くの会の情報は、ホームページか言語聴覚士会に問い合わせれば分かるとされています。東京の例は「吃音カフェ東京」にあります。
吃音の相談先を5つの入口に分け、それぞれが「してくれること」と「してくれないこと・限界」を並べたカード。①医療機関(吃音外来など)は、診察と検査を受けて言語訓練の方針を立てる場所で、小児吃音外来・成人吃音相談外来という専門外来を置いている病院もある。ただし各診療科を受診し医師の指示が出た人が対象で、成人吃音相談外来は初診専用・完全予約制、受診希望が多く予約が取りにくいと案内している。②言語聴覚士は、聞こえ・ことば・飲み込みの障害のある人を検査・訓練・指導・援助で支援する国家資格で、吃音もことばの障害に含まれる。ただし業務が多岐にわたるため全員が吃音の指導や支援を行えるわけではなく、あらかじめ病院に直接か、協会・都道府県の言語聴覚士会へ尋ねる。③ことばの教室・教育委員会は、在籍する学級とは別にことばの指導を受けに通う教室で、学校か地域の教育委員会に相談するとその地域の設置状況を紹介してもらえる。ただし幼児の相談が寄せられる保健センター・園・小児科・耳鼻咽喉科・ことばの教室などは、言語聴覚士がいない施設がほとんど。④発達障害者支援センターは、各都道府県・政令指定都市に置かれた公的施設で、発達障害のある幼児から成人までとその家族の発達や就労などの相談を受ける。ただし支援の詳細な内容はセンターごとに異なり、どのようなサービスが受けられるかは近くのセンターに直接問い合わせるよう案内されている。⑤自助グループ(言友会など)は、当事者が日を決めて集まり互いの吃音の問題について話し合う場で、多くは月1回程度の例会を開き、当事者同士でしか得られないものがある。ただし言語聴覚士のような学術的な知識や、吃音改善のための専門的な指導・支援が受けられるわけではない。注として、発達障害者支援センターの一覧は、人口規模・面積・交通アクセス・既存の地域資源の有無や体制の整備状況によってセンターの事業内容は異なるとし、まず住んでいる地域を担当するセンターへ問い合わせるよう求めている
図1: 5つの入口が、それぞれしてくれることと、してくれないこと。出典: 国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター「ライフステージ別Q&A Q5」/同センター病院「言語聴覚療法」/同「成人吃音相談外来」/日本言語聴覚士協会「言語聴覚士に相談する」/吃音ポータルサイト「成人の方 ─ 相談や支援」/発達障害教育推進センター「身近な相談機関」/発達障害者支援センター・一覧/リハニュース No.370

お住まいの地域の具体的な窓口名は、地域ごとの記事(例: 広島九州大学の吃音外来)と、上の5つの入口への問い合わせで確かめてください。ここから先は、入口を知ったあとに実際に起きるつまずきを、記録を残した5人の言葉から見ていきます。

最初の電話で「うちでは対応できません」と言われる

相談先の名前を一つ知って電話をかけても、そこで受けてもらえるとは限りません。年齢や地域によって、最初の窓口が「対象外」を告げてくることがあります。

中学1年の息子をもつ母の手記(日本吃音臨床研究会「保護者の体験」)

毎日悩んでいても何も変わらないと思い、市の保健センターに電話をして相談したところ息子の年齢が大きいため、市の相談所では対応できないとの事でいくつかの吃音の相談に合う病院を勧められました。早速いくつかの病院に電話をしてみたところ、ある小児精神科の予約をとることができました。すぐにでも診てもらいたかったのですが、その診察の予約は1ヶ月半後位でした。そんなに先の診察になってしまうのか…と思いながらインターネットでも調べてみたところ、伊藤伸二さんのホームページと出会いました。

そこで伊藤さんのプロフィールなどすべて読み、ホットラインまであることを知り、早速電話をしました。本当にご本人と電話で話せるとは思わなかったのでびっくりしました。

中学1年の息子が学校を休みたいと言うようになり、「ことばが出るように練習や努力もしてみなよ」と言ってしまったことを後悔したあとで、母親は市の保健センターに電話をかけています。返ってきたのは、年齢が大きいので市の相談所では対応できない、という答えでした。勧められたいくつかの病院に電話をかけ、取れた小児精神科の予約は1か月半先。その間にインターネットで自助団体のホームページに行き着き、ホットラインに電話をかけています。最初の一本で断られてから次の入口に辿り着くまでの順路が、そのまま記録されています。公的な一覧も、同じ名前の窓口で事業内容が異なると断ったうえで、まず地域の担当窓口に問い合わせるよう求めています。

出典: 保護者の体験(吃音と上手につきあうための吃音相談室・日本吃音臨床研究会)(台帳: V0108)

「対応できない」と言われるのは、窓口の側に対象の区切りがあるからです。発達障害者支援センターは幼児から成人までを対象としますが、支援の詳しい内容はセンターごとに異なります。国立障害者リハビリテーションセンター病院の言語聴覚療法は、各診療科を受診して医師の指示が出た人が対象で、小児のことばの障害は耳鼻咽喉科を受診したうえで医師に相談する入口になっています。学校のことばの教室は、通っている学校か教育委員会に相談すれば地域の設置状況を紹介してもらえます。一つの窓口で断られたとき、それは「相談できない」という意味ではなく、その窓口の対象ではなかった、というだけのことがほとんどです。断られた窓口に「どこなら受けてもらえますか」と聞く——上の母親がしたように——ことが、次の一本への近道になります。

吃音の相談先を探すときの問い合わせ先と、そこから紹介してもらえるものの対応表。通っている学校・地域の教育委員会へ問い合わせると、その地域の学校に設置されている「ことばの教室」などを紹介してもらえ、中学校にも少しずつ設置されてきている。市区町村の教育委員会は教育相談・就学相談も行い、教育センター・特別支援教育センターは多くの機関が電話による相談と来所相談を行い、学校への巡回相談に応じている機関もある。日本言語聴覚士協会と各都道府県の言語聴覚士会へ問い合わせると、吃音の指導・支援を行っている言語聴覚士、学校以外で吃音の相談を受け入れている専門機関、近くの自助グループの情報が分かる。発達障害者支援センター(住んでいる地域の担当)へ問い合わせると、学校以外で吃音の相談を受け入れている専門機関が分かる。事業内容はセンターごとに異なるので、初めて利用するときはまずここへ問い合わせる。病院に直接問い合わせると、その病院で吃音の指導・支援を担当しているかが分かる。言語聴覚士は病院のリハビリテーション科や耳鼻咽喉科に勤務していることが多い
図2: どこに問い合わせると、何を紹介してもらえるか。出典: 国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター「ライフステージ別Q&A Q5」/発達障害教育推進センター「身近な相談機関」/発達障害者支援センター・一覧/吃音ポータルサイト「成人の方 ─ 相談や支援」

予約が取れない、取れても半年先

入口が見つかっても、次に待っているのが予約です。ことばの教室も専門外来も、申し込んでから会えるまでに月の単位で時間がかかることがあります。

3歳の息子の母(個人ブログ・アメブロ)

保健師さんは「言葉はたくさん話せるようになって問題は無いですが「どもり」について心配でしたら「言葉の教室」の予約を取りましょう」とすすめられ、

この言葉の教室、なかなか予約が取れないらしく最短でも数ヶ月先なんだそう。

保健師さんには「いますぐ緊急の問題はないので3歳になる月の予約を入れましょう」と言われ、

半年後の予約を入れました。

それが9月だったのですが、予約日に私が風邪をひいてしまいキャンセル。

代わりの予約を入れようとしても最短で来年の2月しか取れないと言われしかたなく2月に予約を入れていましたが、

先月急に保健所から電話があり急なキャンセルが出たからどうですか?と言われて先日行ってきました。

富山市に住む母親が、息子のことばの経過を、健診と教室の回数つきで書き残しています。市の教室が終わるころに「どもり」が気になり始め、保健師の勧めでことばの教室を予約することになりましたが、最短でも数か月先。半年後の予約日に自分が風邪をひいて流れると、次に取れたのは翌年の2月でした。実際に会えたのは、保健所からキャンセル待ちの連絡が入った日です。その日、言語聴覚士の前で息子は10問ほどの質問にどもらずに答えています。待つあいだに症状の波が過ぎてしまう——この話は次の見出しにつながります。待たされる理由は、支援する側の事情としても記録されています。言語聴覚士に尋ねた全国規模の調査では、根拠にもとづく支援を妨げるものとして、費用・長い待機の列・通う頻度が挙がっています。

出典: 『息子3歳のどもり(吃音)』(アメブロ「息子を連れてハワイに行くぞー」)(台帳: V0058)

待たされるのは、その窓口がたまたま混んでいるからというより、受け皿の側の人数の問題です。国立障害者リハビリテーションセンター病院の成人吃音相談外来は初診専用・完全予約制で、「現在、受診希望の方が多く予約が取りにくくなっております」と案内しています。同じセンターの特集は、幼児の吃音について、吃音になる幼児の10分の1だけが医療機関を受診するとしても全員を診られるだけの専門家はいないとし、「医療崩壊状態と言ってもいいくらい」と書いています。

だからこそ同じ特集は、専門家はすぐには増やせない以上、一般の相談・診療機関が吃音の詳しい説明とできれば経過観察を担い、必要を見極めて治療施設に紹介する連携が要る、としています。専門外来の順番を待つあいだに身近な相談機関で経過を見てもらう、という形は、専門家の側も想定している道筋です。待つ時間を「何もできない時間」にしないためにできることは、後の見出し「行く前に何を持っていくか」に書きました。紹介状が要る大学病院の順路と待ち時間の実例は、九州大学の吃音外来の記事にあります。

相談の場では、いつもの症状が出ない

やっと会えた日に限って、本人がすらすら話す。保護者にとっては拍子抜けで、相談を受ける側から見れば「軽い」と映る場面です。

年中〜年長の娘に吃音がある母(小学校の英語専科教員・note)

そもそもの話。全く雑談もなく、ひたすらカードで名前を言わせたりする活動の中で、娘が発するのは全て「単語」。しかもうちの子はしっかり言わなきゃと緊張している時ほど吃音は出ず、リラックスして何も意識していない時の方が吃音が出るタイプです。こんな空間でリラックスできるわけがないし、吃音がここで出ないのはどうしてなのか、どんな活動が効果的なのかを考えるのがそっちの仕事でしょ!!と言うのが私の意見です。

娘に吃音があり、自身も小学校で英語を教えている母親が、病院内のことばの教室に2か月通ったあとに書いた記録です。カードで名前を言わせる活動のなかで娘が口にするのは単語ばかりで、その2か月のあいだ、教室で吃音が出ることは一度もありませんでした。担当者から、ここで出してくれない限り支援のしようがない、という趣旨のことを言われ、母親は通うのをやめています。次に見学した放課後の施設では、初日にたくさんおしゃべりして吃音が出た、とも書き添えています。「緊張しているときほど出ず、リラックスしていると出る」という出方は、母親が家で見てきたことでした。相談の場で症状が出ないことは、公的な資料が最初から想定している事態です。

出典: 娘と吃音の話③〜ことばの教室〜(病院内)(note)(台帳: V0106)

発達障害ナビポータルの吃音の解説は、保護者が症状を強く疑って相談に行っても、実際にその子と話すと思ったほど症状が出ないことが多いとし、その様子に相談を受けた側が「気にならないですね」「軽い吃音ですね」と声をかけることは、養育者にとってプラスに働くことが少ないと書いています。同じ資料は、伴奏に合わせて歌う・2人で同じ言葉を言うといった外からタイミングが与えられる場面では吃音が消えることから、吃音を発話のタイミングの障害と説明し、子どもが気をつけて話すときには出にくいと述べています。

研究の側でも、症状の重さは同じ人の中で日・週・月の単位で揺れ、見え方や聞こえ方は性格や場面、伝えたい目的、感情の状態で変わり、音や語を避ける・言い換える・つなぎ言葉を入れるといった隠す方略は人と場面で異なるとされています。表に出るどもりを数える検査は、避ける・言い換える・隠すといった外から見えない側面を捉えられず、検査で測った重さと本人が感じている負担は必ずしも一致しません。ドイツの診療ガイドラインは、隠れた吃音が疑われるときには、話をさえぎる・速く話すよう求めるといった負荷で症状を引き出すことを評価の手順に含めています。「その場で出なかった」は、軽いことの証拠にはならないのです。相談の場で出ない問題の子ども向けの詳細は「吃音症チェック」に、大人が自分で確かめる方法は「大人の吃音症セルフチェック」にあります。

行く前に何を持っていくか — 記録と、聞かれることの一覧

相談の場で出ないのなら、出ていたときの様子を持っていくしかありません。限られた時間で伝わるように、何を記録しておけばよいのでしょうか。

中2の娘の母の手記(日本吃音臨床研究会・機関誌の再掲)

幼児ことばの教室のドアに緊張しながら手をかけ、開けました。笑顔の素敵な先生が出迎えてくれました。部屋では、遊戯療法や、ことばのやりとりが、試されました。

ストレスや疲れを取り除くこと。しつけは大切ですが、本当に必要なときのみ、最低限を心がけること。甘やかすのとも、意味は違います。どもっていても、意識せずに聞くこと。などの、具体的なアドバイスを受けました。また、その日から、吃音の症状について日記をつけることになりました。

日記をつけることで、吃音には波があり、娘の吃音の特徴などを理解することができました。親子関係を見つめ直す良い機会であったと思いますが、当時は、常に、娘の吃音症状が気になり、頭から離れることがありませんでした。

幼稚園に入って間もなく娘の話し方が変わったことに気づいた宇都宮市の母親は、夫が調べてきた幼児ことばの教室に、すぐ電話をかけています。初日に受け取ったのは、接し方の助言と、症状の日記をつけるという宿題でした。日記を続けるうちに、吃音には波があること、娘の出方の特徴が見えてきた、と書いています。ただ同時に、症状が軽い日は自分の接し方がよかったと判断し、強く出た日は自分の注意が足りなかったと判断するようになり、頭から離れなくなったとも記しています。記録は相談の材料になる一方で、親が自分を採点する道具にもなってしまう——その両面が、そのまま書かれています。何を記録に載せればよいかは、専門家の合意で作られた評価の指針が6つの領域に整理しています。

出典: レジリエンスを育てる〜親の体験・親の気持ち〜(吃音と上手につきあうための吃音相談室・日本吃音臨床研究会)(台帳: V0159)

吃音の評価について専門家の合意で作られた指針は、年齢を問わず包括的な評価に共通する中核領域として、次の6つを挙げています。

  • 吃音に関する背景の情報
  • ことば・言語・気質の発達(特に年少の場合)
  • 話し方の流暢さと、吃音の出方
  • 本人の、吃音への反応
  • 周囲の人の、吃音への反応
  • 吃音が生活に及ぼしている支障

相談を受ける側が見ようとしているのがこの6つなら、持っていく記録もこの順に並べると伝わりやすくなります。いつごろ始まったか、家族に吃音のある人がいるか、これまでに相談した先とそこで言われたこと(背景)。ことばの発達の経過(発達)。どんなどもり方が、どんな場面で、どのくらい出るか——日記や短い動画(出方)。避けている言葉や場面、言い換え(本人の反応)。家族・園や学校・職場でどう扱われているか(周囲の反応)。いま一番困っている具体的な場面(支障)。診療ガイドラインが、客観的な評価のために一定の長さの連続した発話を録音・録画して分析するとしていることを踏まえると、家で症状が出ているときの短い動画は、相談の場で出なかったときの材料になりえます。

窓口によっては、事前に書く紙が用意されています。国立障害者リハビリテーションセンター病院の成人吃音相談外来は、問診票を受診前にダウンロードして記入して持参するよう求め、当日その場で記入する場合は30分程度かかると案内し、紹介状があればそれも持参するよう書いています。診断書が必要になる場面(職場や学校への配慮、手帳)については、「吃音の診断書はもらえる?」にまとめています。

病院で終わらない — 自助グループで得られるもの、得られないもの

医療や教室が「症状」を見る場所だとすれば、自助グループは「吃音とどう暮らすか」を話す場所です。ただ、最初に行った日に受け入れられるとは限りません。

24歳の当事者の手記(日本吃音臨床研究会・発表の逐語記録)

僕が最後に行こうと決心したのが、「大阪吃音教室」です。実は、言語治療を受けていた総合病院のスピーチセラピストにつき添われて、大学在学中に一度だけ吃音教室に参加した事がありました。その時僕は、驚きました。みんなが、わきあいあいとどもって喋り、「どもりと仲良くつき合おう」と言うのです。しかし、「どもりと仲良く」なんて、絶対に受け入れられません。「どもりが治らなければ絶対に良い人生は送れない、絶対に治さなければ」と、一度行っただけで、通わなくなりました。

高校2年で吃音を自覚し、ピアノで入った芸術大学を中退した24歳の男性の手記です。在学中、総合病院で言語治療を受けていたときに担当者に付き添われて一度だけ吃音教室に参加し、「どもりと仲良くつき合おう」という空気に驚いて、受け入れられずに通うのをやめています。その後の数年間は「治る」と聞けばどこへでも行った時期で、矯正所や針灸、催眠療法、気功、整体まで回ったと書いています。教室に戻ったのは、大学を辞め、そうした場所を回りきったあとでした。今は毎週欠かさず通っている、と結んでいます。自助グループは専門的な指導の場ではないが当事者同士でしか得られないものがある、という公的な整理は、この往復をそのまま説明しています。

出典: 何とか治したいと思い続けた日々(吃音と上手につきあうための吃音相談室・日本吃音臨床研究会)(台帳: V0090)

吃音ポータルサイトは、言友会などのセルフヘルプグループについて、当事者の集まりなので言語聴覚士のような学術的な知識や専門的な指導・支援が受けられるわけではないと明記したうえで、同じ問題を持つ仲間と出会い、当事者同士でないと感じられない連帯感の中で悩みを聞いてもらったり、同じ立場からの具体的な助言をもらったりできることは、ここでしか得られないとしています。多くの会は月1回程度の例会を開き、会報の発行や講演会も行っています。ドイツの診療ガイドラインは、自助グループへの参加を臨床的な合意にもとづいて推奨しています。ただしこの推奨は、効果を測った研究にもとづくものではなく専門家の合意によるものです。近くの自助グループの情報は、ホームページで調べるか言語聴覚士会に問い合わせれば分かる、と公的機関も案内しています。

オンラインの相談は、対面の代わりになるのか

近くに相談先が無いとき、ビデオ通話での相談や訓練が選択肢に上がります。研究が言えているのは、「代わりになる」でも「ならない」でもなく、置き場所の話です。

ビデオ通話で吃音の治療を行った研究を集めて整理したレビューは、ライブ配信の動画による遠隔は治療の提供方法として有望に見えるとしつつ、初回の評価と診断まで遠隔でできるかどうかはさらに研究が必要だとしています。遠隔の利用を左右する要因を整理した別のレビューは、遠隔は対面の置き換えではなく補完で、評価と診断のために最初の回は対面が勧められ、年齢は6歳より上の子どもに向くとまとめています。

対面と遠隔の両方を受けたことのある当事者に聞き取った研究では、対面を好む人が5人(46%)、遠隔を選んだ人が3人(27%)、どちらでもよいと答えた人が3人(27%)で、対面がよい理由には、対面でしかできない練習があること、技法を実地で試しやすいこと、通信の不具合や中断が無いことが挙がりました。それでも全員が、遠隔を他の当事者にも勧めると答えており、著者らは対面と遠隔を組み合わせる形を提言しています。つまり「最初の一回は対面で、続きは遠隔も含めて」が、いま研究が示している置き場所です。近くに相談先が無い場合の入口と費用の話は、「吃音の相談先が近くにない」に詳しく書いています。

年齢で入口が変わる — 幼児・思春期・大人

幼児の吃音の相談が寄せられるのは、保健センター・幼稚園・保育園・認定こども園・小児科・耳鼻咽喉科・ことばの教室など多岐にわたりますが、言語聴覚士がいない施設がほとんどです。だからこそ、身近な機関が説明と経過観察を担い、必要に応じて専門施設へ紹介する連携が必要だとされています。

思春期の吃音は、幼児期とは性質が違うことがあります。どもるときに力が入る・言葉がつまって出ないことが中心になり、言いにくい言葉を言いやすい言葉に置き換えるため、周囲からはどもっていないように見えて気づかれないことがあります。隠したい・認めたくない気持ちがあるなら無理に受診させることはなく、保護者が先に相談に行き「聞いてきてほしいことがあったら教えて」と本人に尋ねるやり方が勧められています。中学校にもことばの教室は少しずつ設置されてきています。

大人には、成人吃音相談外来のような18歳以上を対象にした専門外来があります。一方で、支援する側の自信は年齢層で大きく違います。研究を集めて整理したレビューが引く、米国の学校で働く言語聴覚士を対象にした調査では、大人の治療に自信がないと答えた割合が98%、青年で88%、就学前の子どもで86%だったのに対し、学齢期の子どもでは38%でした。全国規模の別の調査でも、吃音の評価と就学前の子どもへの支援では自信が高かった一方、思春期の吃音で目安を下回る回答が最も多く、適切な支援の選択・教員との連携・成果の見きわめが挙がっています。⚠ これらは支援する側の自己評価であって、実際の支援の質を測った結果ではありません。大人の相談先が細くなる実情と、それでも辿り着いた人の順路は、「吃音は何科・どの病院?」に記録があります。

年齢によって最初の入口が変わることを示した流れ図。1 吃音のことを相談したい。最初に当たる窓口は、相談する本人の年齢で変わる。2 未就学の幼児ですか。3 はいの場合は、保健センター・園・小児科・ことばの教室。言語聴覚士がいない施設がほとんどで、身近な機関が説明と経過観察を担い、必要を見極めて治療施設へ紹介する連携が要るとされている。4 いいえの場合は、18歳以上ですか。5 いいえ(小学生から高校生)の場合は、通っている学校か、地域の教育委員会。その地域に設置されていることばの教室を紹介してもらえ、中学校にも少しずつ設置されてきている。6 はいの場合は、成人吃音相談外来(完全予約制)。18歳以上が対象で、高校生は小児吃音外来。初診専用で、受診希望が多く予約が取りにくいと案内されている
図3: 年齢で、最初の入口が変わる。国の機関の案内が示している最初の窓口で、手続きは施設ごとに異なります。出典: 国立障害者リハビリテーションセンター リハニュース No.370/同 発達障害情報・支援センター「ライフステージ別Q&A Q5」/同センター病院「成人吃音相談外来」

相談先を探すときに陥りがちな3つの落とし穴

落とし穴1 − 「言語聴覚士がいる」だけで決める

言語聴覚士は吃音をことばの障害として守備範囲に含めていますが、扱う業務が幅広く、全員が吃音の指導や支援を担当しているわけではありません。病院に「言語聴覚士がいる」ことと「吃音を扱っている」ことは別です。予約の前に、病院に直接、あるいは日本言語聴覚士協会や都道府県の言語聴覚士会に、吃音の相談を受けているかを確かめておくことが勧められています。

落とし穴2 − その場で出なかったから「軽い」と思ってしまう

相談の場で症状が出ないことは、公的な資料が最初から想定している事態で、「気にならないですね」という言葉は養育者にとってプラスに働くことが少ないとされています。症状は日や週の単位で揺れ、隠す方略は人と場面で異なります。検査で測った重さと本人の負担は必ずしも一致しません。出なかった日の結果を、自分でも「軽い」の証拠にしないでください。家で出ているときの記録と動画を持って、もう一度相談に行く材料にしてください。

落とし穴3 − 一つの窓口で断られて、そこで止まる

同じ名前の窓口でも、対象の年齢や事業内容は地域ごとに異なります。「対応できない」と言われたら、それはその窓口の対象外だったということで、相談できないという意味ではありません。教育委員会はことばの教室を、言語聴覚士会は専門機関や自助グループを紹介する役割を持っています。断られた先で「どこなら受けてもらえるか」を聞き、日々の様子を書き留めながら次の窓口へ進むのが、遠回りに見えて確実です。まずは気づいたことを記録することから小さく始め、言語聴覚士やことばの教室に相談できる場合はそちらが確実です。

よくある質問

吃音はどこに相談すればいいですか?

公的機関の案内では、学校か教育委員会に相談すればことばの教室を、各都道府県の言語聴覚士会や発達障害者支援センターに問い合わせれば学校以外の専門機関を紹介してもらえるとされ、本人が望むなら自助グループという道も示されています。医療機関では、小児吃音外来や成人吃音相談外来のような専門外来を置く病院もあります。年齢と困りごとで入口が変わるので、一つに絞らず複数を並行して当たるのが現実的です。

言語聴覚士なら誰でも吃音を診てもらえますか?

日本言語聴覚士協会は吃音をことばの障害に含めていますが、言語聴覚士の業務は多岐にわたるため、全員が吃音の指導や支援を行えるわけではないとされています。希望する場合は、あらかじめ病院に直接問い合わせるか、日本言語聴覚士協会や各都道府県の言語聴覚士会に尋ねることが勧められています。

予約が半年先と言われました。待つ間に何ができますか?

専門外来は「受診希望の方が多く予約が取りにくい」と国の医療機関自身が案内しており、幼児については専門家の数が足りないため、身近な相談・診療機関が説明と経過観察を担って必要に応じて紹介する連携が要るとされています。待つあいだは、症状の背景・出方・本人と周囲の反応・生活への支障といった、評価で見られる領域に沿って記録をつけておくと、初診の材料になります。

相談に行ったら子どもがどもらず、「様子を見ましょう」と言われました。どうすればいいですか?

相談の場では思ったほど症状が出ないことが多く、その様子に「気にならないですね」と声をかけることは養育者にとってプラスに働くことが少ない、と公的な資料は書いています。症状は日や週の単位で揺れるものです。家で出ているときの記録や短い動画を持って、もう一度相談するか、別の入口に当たることを検討してください。

オンラインの相談だけで済ませてもいいですか?

ビデオ通話による遠隔は治療の提供方法として有望とされる一方、初回の評価と診断まで遠隔でできるかは研究が足りないとされています。遠隔は対面の置き換えではなく補完で、最初の回は対面が勧められています。当事者への聞き取りでも、対面と遠隔を組み合わせる形が提言されています。

まとめ

  • 吃音の相談先は、医療機関・言語聴覚士・学校のことばの教室と教育委員会・発達障害者支援センター・自助グループの5つの入口に分かれ、公的機関の案内も学校・教育委員会・言語聴覚士会・発達障害者支援センター・自助グループの組み合わせで示している。同じ名前の窓口でも、できることは地域ごとに異なる。
  • 言語聴覚士は吃音を守備範囲に含めているが、全員が吃音を扱うわけではない。予約の前に病院・協会・都道府県の言語聴覚士会に確かめる。
  • 専門外来は予約が取りにくく、幼児の吃音は専門家の数が足りていない。待つあいだは身近な機関で経過を見てもらい、記録をつける。
  • 相談の場では症状が出ないことが多く、症状は日や週で揺れ、検査の重さと本人の負担は一致しない。出なかった日を「軽い」の証拠にしない。
  • 持っていく記録は、背景・発達・出方・本人の反応・周囲の反応・生活への支障の6つの領域に沿って。問診票を事前に用意している窓口もある。
  • 自助グループは専門的な指導の場ではないが、当事者同士でしか得られないものがある。オンラインは対面の置き換えではなく補完で、最初の一回は対面が勧められている。

参考文献

  1. 国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター「ライフステージ別Q&A Q5.どもっている高校生のDくん」
  2. 一般社団法人 日本言語聴覚士協会「言語聴覚士に相談する」
  3. 吃音ポータルサイト「成人の方 ─ 相談や支援」
  4. 国立障害者リハビリテーションセンター病院「成人吃音相談外来」
  5. 国立障害者リハビリテーションセンター病院「言語聴覚療法」
  6. 発達障害教育推進センター「身近な相談機関」
  7. 国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター「発達障害者支援センター・一覧」
  8. 発達障害ナビポータル「小児期発症流暢症(吃音)」(国立障害者リハビリテーションセンター系)
  9. 国立障害者リハビリテーションセンター リハニュース No.370 特集「幼児吃音臨床ガイドライン」の作成と公開
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当事者の声の出典: V0108(日本吃音臨床研究会「保護者の体験」・中学1年の息子をもつ母の手記)/ V0058(アメブロ・3歳の息子の母のブログ)/ V0106(note・年中〜年長の娘に吃音がある母の記録)/ V0159(日本吃音臨床研究会・中2の娘の母の手記)/ V0090(日本吃音臨床研究会・24歳の当事者の発表記録)。いずれも公開記事。引用は原文どおり。

更新履歴: 2026-09-05 公開