まず結論から
- 吃音で診断書や意見書(医師が書いて役所や職場に出す書類)が作られることはあります。ただしそれは「吃音がある」と証明する紙ではなく、吃音のせいで何ができないか、他人の助けが必要かを説明する紙です。
- だから、ひどくどもっていても、筆談などの代わりの手段や人の助けなしに生活も仕事も自分の発話でなんとか対応できているなら、手帳が交付される対象にはあたらないとされています。
- 子どものころに始まった吃音(発達性吃音)は、2005年に施行された発達障害者支援法の対象に含まれることから、精神障害者保健福祉手帳——うつ病のような精神疾患でも、吃音のような発達障害でも同じ名前で交付される手帳です——の交付対象になります。ただしその意見書は初診日から半年以上たってからでないと書いてもらえず、有効期限は2年です。
- 紙が動かすのは主に2つです。学校や職場に配慮を求めるときと、障害者雇用の枠で働くとき——この枠で人数に数えられるのは手帳を持っている人です。
- 書いてもらう先は、ふつうは耳鼻咽喉科です。ただし、ことばの訓練の専門家である言語聴覚士が在籍していて、吃音の検査を行っている病院でなければ診断がつかない場合もあるとされています。
ただし、ここに書いたのは公的な資料や専門家の解説に載っている原則で、実際の運用には自治体や医療機関ごとの差があります。この記事の後半で紹介するとおり、同じ書類について窓口ごとに違う説明を受けた人もいます。最後は受診して相談するしかない、というのが正直なところです。
「診断書」と呼ばれている紙は、ひとつではない
まず、言葉を整理します。同じ「吃音の診断書」でも、何のために出すかで別の紙になり、書ける診療科も、書く中身も変わります。
手帳の申請に添えるのは、吃音による困難な状況を説明した医師の診断書または意見書で、用紙は住所地の役所の福祉課で入手できると学会の解説は書いています。資料によって「診断書」と呼んだり「意見書」と呼んだりしますが、同じ目的の書類を指していると読めます。自治体ごとに指定の書式が決まっていることもあるとされているので、実際にどの紙が要るのかは窓口で確かめるのが確実です。手帳の申請では医師が診断書を書くことが必須だと、症例を報告した論文も述べています。
吃音で申請できる手帳は2種類あります。ひとつは精神障害者保健福祉手帳です。うつ病のような精神疾患で取る人も、自閉症や吃音のような発達障害で取る人も、手帳の名前はこれで共通します。ただし根拠になる法律は別で、担当する医師の専門も普通は異なると説明されています。子どものころに始まった吃音なら診断名は「発達性吃音」となり、発達障害者支援法によってこの手帳の交付対象に入ります。もうひとつは身体障害者手帳ですが、こちらは言語症状が非常に重く、しかも治療を受けても良くなる見込みがないと判断されたときにかぎられます。もともと脳卒中による失語症を念頭に置いた制度なので、吃音で該当する人はごく少数だとされています。学会の解説では、音声言語だけでは家族以外と意思を伝えることが難しいと認定された場合に身体障害者手帳4級が交付される、と書かれています。
どこで書いてもらうか。発達性吃音なら、2種類のどちらを申請する場合でも、診断の窓口はふつう耳鼻咽喉科です。ただし言語聴覚士が在籍していて、吃音の検査を行っている病院でなければ診断がつかないこともあり、リハビリテーション科など別の科が引き受けている病院もあると説明されています。そのうえ吃音の専門外来はもともと数が少なく、たとえばある大学病院は「全国的にも少ない吃音の専門外来」を設けていると書いたうえで、受診希望が多いため予約が取りにくいと断っています。また、話し方の症状よりも吃音による心理的な負担のほうが大きい場合——気分が落ち込んだ状態や、人前で注目される場面に強い不安が出る状態(社交不安障害と呼ばれます)——は、精神科を受診して精神科の病名で手帳を申請することもできるとされています。
なお、診断そのものの基準は、吃音検査で中核症状——音を繰り返す・音を引き伸ばす・言葉が出ずに間があく、という3つの主な症状のことです——が100文節(文を短く区切った単位)あたり合計3以上あること、とされています。ただし自分の名前のときだけどもる例もあり、この頻度は絶対的な基準ではないと同じ総説が断っています。当てはまるかどうかを自分で見立てたい方は、吃音症チェックの記事のほうで項目ごとに整理しています。
紙に書かれるのは「吃音がある」ではなく「何ができないか」
ここが、この手続きでいちばん心の負担が大きいところです。手帳の申請に添える紙に書かれるのは、自分の得意なことでも、乗り越えてきた工夫でもありません。できないこと、困っていることのほうです。
当事者の声(69歳・会社顧問/自助団体の投稿集「吃音と発達障害、私の考え」に寄せられた一編)
吃音を発達障害として公的支援を受けるために障害者手帳を申請するとき、障害者としての一定の規準を超えなければ手帳の交付はしてもらえないだろう。その手続きで、「私は、吃音のためこれができません、こんな支障があります」等、自分のマイナス面をことさらに強調して診断書を書いてもらうことになる。こうして手帳の交付を受けたとして、それ以後、果たしてその人は自分を肯定して生きがいをもって自分の人生を歩んで行けるだろうか。
これは、吃音のある当事者9人が「吃音と発達障害、私の考え」という題で原稿を寄せた投稿集の一編です。この人は、吃音を発達障害と位置づける必要があるのか、それは当事者にとってプラスなのかマイナスなのか、という問いから書きはじめ、公的支援を受けたいと望む人もいれば受けたくない人もいる、それは症状の重い軽いではなく生き方に対する姿勢の違いではないか、と述べています。あくまで一人の見方です。しかもこの投稿集は、こう考える人たちがいることを知ってほしいという編者の思いで編まれたもので、9人とも吃音を発達障害に分類することにも手帳の取得にも否定的です。当事者の受け止め方の分布を示すものではない、ということです。それでも、申請の手続きが自分のマイナス面をことさらに強調する作業になる、という指摘そのものは、次に見る解説の書きぶりとぴたりと重なります。
出典: 私はこう生きる―吃音と発達障害、私の考え(日本吃音臨床研究会)(台帳: V0166)
実際、意見書に何を書くのかは、吃音の研究プロジェクトがまとめた解説にはっきり書かれています。書くのは吃音検査の結果に加えて、吃音のせいでできないことがあり、そのために他人の手を借りなければならない、という説明だ——そう述べたうえで、ひどくどもっても、筆談などの代わりの手段や他人の助けなしに自分の発話で生活も仕事もなんとか対応できているなら、手帳が交付される対象にはあたらないと明記されています。書類が求めているのは症状の証明ではなく、生活がどれだけ妨げられているかのほうだ、ということです。
これは専門家の評価の考え方とも一致しています。12人の臨床家・研究者の合意でまとめられた評価の指針は、吃音の包括的な評価に共通して含まれる領域を6つ挙げました。背景となる情報、ことばと気質の発達、話し言葉の流暢さと吃音行動、本人が吃音にどう反応しているか、まわりの人がどう反応しているか、そして吃音によって生じている生活上の支障です。話し方そのものは6つのうちの1つとして置かれています。どの領域をどれだけ含めるかは、本人の年齢や本人・家族の必要に応じて変わるとされています。
「対象ではない」と言われることがある
検索して出てくる記事の多くは「もらえる/使える」側から書かれています。けれど実際には、検査まで受けたうえで対象にならないと告げられることがあります。
保護者本人の語り(高校生の長女の受診に同席した父。本人も吃音当事者/個人ブログ)
その病院の初診、私も参加しました。
率直に「精神障害者保健福祉手帳取得できないか」「社交不安障害ではないか」と聞きました。
先生は発達障害を疑っている感じでした。
2回目からは「娘と妻」「娘だけ」で数時間の検査をしました。
その結果が6/28に聞けることになり、本人と妻で聞いて、妻から聞きました。
「結論から言うと手帳対象ではない」
が、
「将来困って取得したい時にはまた受診してください。3級ならもしかすると」
との事。
受験生の長女のために病院へ依頼したのが前年の11月か12月、初診が6月。半年待って受診し、2回目からは数時間の検査を受け、6月28日に結果を聞いた——その日の記録です。結果はすべて口頭で伝えられたそうで、初診のときに医師が疑っている様子だった発達障害についても、そうではないと告げられています。父親は同じ記事で、娘が今はそれなりに学校に通えているので結果は想定していたと書き、少なくとも進学と受験については手帳のサポート無しで頑張らないといけない、とも書いています。結果を聞いたときの気持ちを、ほっとしたようでもあり残念でもあった、と書き残し、社会の不寛容が和らいで本人も吃音を受け入れれば手帳は不要なのだろう、と結んでいます。
出典: 吃音持ちの長女が「(現状だと)精神障害者保健福祉手帳無理」と病院から言われた話(吃音(どもり)ネタを貼ってくブログ)(台帳: V0101)
この結果は、制度の解説と食い違うものではありません。手帳の申請について、この研究プロジェクトの解説は、そもそも「すべき」ということはない、と書いています。吃音のために働くことが難しい、配慮を求めても得られない、といった事情があって、診断書だけでは——学校や職場に配慮を求めるための法律(障害者差別解消法)の枠だけでは——問題が解消できないときに、手帳が役に立ちそうだと思えるなら個人の考えで申請すればよい、という位置づけです。そして繰り返しになりますが、ひどくどもっていても、筆談などの代わりの手段や他人の助けなしに自分の発話で生活も仕事もなんとか対応できているなら、手帳が交付される対象にはあたらないとされています。
いま対象外でも、状況が変われば話は変わります。さきほどの医師が、将来困ったらまた受診してほしいと言い添えたのも、そこを見てのことでしょう。制度の側でも、この精神障害者保健福祉手帳には有効期限があり、2年とされていて、すでに手帳を持っている人は、2年のうちに訓練や治療で良くならなければ、あらためて意見書を書いてもらって継続を申請することになると説明されています。状態は変わりうるものとして扱われている、ということです。
窓口によって、答えが違うことがある
子どもの場合、必要になる紙は手帳とはかぎりません。放課後等デイサービス(学校のあとや休みの日に子どもが通える福祉サービス)を使うには、市区町村が出す受給者証という別の書類が要ります。そして、その申請でも医師の診断書を求められることがあります。
保護者の語り(吃音のある幼稚園児の息子をもつ母/自助団体のインタビュー。「三谷)」は聞き手である団体代表の発言)
Aさん) 三谷さんからも札幌市内で吃音も診てもらえる医療機関について情報をもらい、私自身でも探してみました。耳鼻科の病院に電話をし、受給者証の申請のために診断書も書いてもらいたい旨を伝えたところ、結論としては「小児の吃音に関しては、書類は出せない」と言われたんです。
三谷) 整理すると、療育センターに電話をしたら区役所ですぐもらえると言われ、区役所に電話したら保健センターに行くのと医師から診断書が必要と言われ、病院からは診断書を出せないと言われた、ということですね。とんでもない大混乱が起こっていますが、これが現状なんですね・・・。
転居先で息子の小学校生活を考え、放課後等デイサービスを使うには受給者証が要ると知って動き出した母親の記録です。役所は診断書があれば取得できると言い、療育センターは診断書は要らないと言い、区役所は保健センターへ行けと言い、病院は書類は出せないと言う。母親は、誰もがあまり分かっていないという感じだった、と振り返っています。この件は最終的に、地域の保健センターに電話をして、病院からはっきり診断書は出せないと言われて困っていると伝えたところ話が動きはじめ、心理士による発達相談を経て受給者証の交付に至りました。
出典: 「全てが曖昧で、情報に振り回されて大変でした。」吃音がある幼稚園児のお母様にインタビューしました。(北海道吃音・失語症ネットワーク note)(台帳: V0075)
この耳鼻科が書類を断った理由は、母親の記録によれば、吃音は耳鼻科の領域だけでなく精神科の領域も絡むので耳鼻科だけでは診断書を出せなくなった、というものでした。なお、ここで求められていたのは受給者証の申請に添える診断書で、手帳の申請に添える意見書とは別の書類です。
断られる事情は、これだけではありません。手帳の意見書のほうについても、発達性吃音の診断はふつう耳鼻咽喉科で行うとされる一方で、言語聴覚士が在籍していて、吃音の検査を行っている病院でなければ診断がつかないことがあると、研究プロジェクトの解説がはっきり断っています。診療科の名前だけで書けるかどうかが決まるわけではない、ということです。しかも吃音の専門外来はもともと数が少なく、さきほどの大学病院のように、受診希望が多くて予約が取りにくいところもあります。電話をかける前に、何のための書類なのかを伝えたうえで、その医療機関で吃音を診ているか、言語聴覚士がいるかを確かめておくと、空振りを減らせます。
迷ったときの相談先は病院だけではありません。手帳の申請書類や様式は市区町村の福祉課の窓口に確かめるものとされていますし、ことばの教室や自治体の相談窓口も入口になります。なお、診断書の作成料は医療機関ごとに違うため、金額をこの記事で示すことはできません。受診の前か会計のときに窓口で確かめておくと安心です。様式も目的によって変わるので、「何のための診断書か」を医療機関にも役所にも先に伝えておくと、やり直しが減ります。
半年待って、2年で更新する
もうひとつ、事前に知っておくと計画が立てやすいのが時間です。手帳は「受診したその日に出る」ものではありません。
当事者の声(77歳・自助団体の会員/地方言友会の公式サイトに寄せられた報告)
2023年の5月2日に新居浜市役所へ交付申請に行き、診断書3部提出しました。2023年の7月27日に障害者手帳3級を受領しました。2023年の5月2日が交付日で手帳番号は〇〇〇〇〇〇〇、有効期限は2025年の5月31日でした。
手帳を取ろうと思った理由から更新までを、日付ごとに並べた報告の一節です。この人は、同じ会にすでに手帳を取っていた人が数名いたこと、75歳でアルバイト先を辞める予定があり、勤務先に出す年末調整の書類に障害者と記入しても問題ないと思ったことを、申請の動機として挙げています。初診は2022年10月21日。診断書が書けるのは初診日から半年後で、実際に対面の診察を受けたのは2023年4月26日でした。申請から受領まではさらに約3か月。2025年には更新の手続きも済ませています。
出典: 吃音当事者からのメッセージ(愛媛言友会)(台帳: V0223)
この半年は、この人だけの事情ではありません。制度としての精神障害者保健福祉手帳では、初診日から半年以上が過ぎるまで意見書を書いてもらえないとされており、その半年は治療を受けて改善が見られるかどうかを見きわめる期間にあたると説明されています。さらに有効期限が2年で、2年のうちに訓練や治療で良くならなければ、医師にあらためて意見書を書いてもらって継続を申請します。「思い立ってから手元に届くまで」は年単位で見ておくほうが現実的だ、というのが本記事の整理です。
その紙で動くもの、動かないもの
では、手に入れた紙は何を動かすのか。資料に書かれている範囲で整理します。
学校や職場に配慮を求めるとき。 就学・就労の支援として、診断書によって障害者差別解消法にもとづく配慮——困りごとが減るように進め方や環境を調整してもらうこと(合理的配慮と呼ばれます)——を求めることができる、と総説は述べています。学会の解説はもう少し具体的で、発表や電話応対の免除、試験などでの面接時間の延長といった例を挙げたうえで、その際に医師の診断書や言語聴覚士の報告書の提出を求められる場合があると書いています。2024年には改正された障害者差別解消法が施行され、国公立の学校だけでなく私立の学校にも配慮の提供が義務づけられました。高校入試や大学入試の面接で事前に吃音があることを伝えておけば、学校側に重すぎる負担(「過重な負担」)となる範囲を除いて、寛容な聞き手の姿勢や時間的な余裕の確保といった配慮を受けられるとされています。学齢期には約半数がいじめやからかいを経験するため対策が重要で、診断書等で対応すると総説が書いているのも、この文脈です。
障害者雇用の枠で働くとき。 一定規模以上の会社には、従業員に占める障害のある人の割合を法定雇用率以上にする義務があり、この人数に数えられるのは身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳という3種類の手帳の所有者です。手帳を持っていれば、障害者枠での就職という道が開け、雇用主の側にも配慮をする義務が生じる、と吃音の解説側も書いています。会社の側では、募集や採用にあたって本人からの申出により障害の特性に配慮した措置を講じなければならないとされ、ただし会社に過重な負担となる場合はこの限りでない、とも定められています。障害のある従業員を5人以上雇用する事業所には、職業生活の相談にあたる相談員を選ぶ義務もあります。
紙が無ければ何もできない、わけではない。 ここは見落とされがちです。ハローワークや地域障害者職業センターなどによる支援では、手帳を持っていない人も対象になり得ます。支援の対象は「心身の障害があるために長期にわたり職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な方」と定められているためです。手帳を取るかどうかを決める前に、まず相談だけしてみる、という順番でも構いません。
子どもの場合。 従来、吃音のある人が手帳を申請する目的は、成人が福祉の制度を使った働き方(福祉的就労)のために取ることがほとんどでした。ただ2020年には、幼稚園で吃音への理解が低く、吃音が障害として軽視されている印象を母親が持っていたケースで、吃音を障害として公的に証明し周囲の理解を得るために手帳の申請を医師に希望し、取得した4歳児の症例が報告されています。取得後は園で手帳を開示することで一定の配慮が認められるようになった、と母親が話したことも記されています。ただしこれは1例の報告なので、同じようにすれば同じ結果になる、という話ではありません。
診断書まわりで陥りがちな3つの落とし穴
落とし穴1 − 「吃音がある」と書いてもらえば手帳が出ると思い込む
意見書に求められるのは症状の証明ではなく、吃音のせいでできないことがあり、他人の助けが要るのだという説明です。逆に言えば、代わりの手段や人の助けなしに生活と仕事が回せているなら交付対象にはあたらないとされています。診断名がつくことと、手帳が交付されることは別の話だと考えておくと、期待とのずれが小さくなります。
落とし穴2 − 診断書を出せば配慮が自動的に決まると考える
職場での配慮は、本人からの申出を起点に、会社に過重な負担とならない範囲で講じられるものとされています。学校でも、双方の建設的な対話の上に配慮が受けられるという建て付けです。診断書は、その対話を始めるための材料であって、結論そのものではありません。何をしてほしいのかを自分の言葉で用意しておくほうが、話は早く進みます。
落とし穴3 − 困っている場面を言葉にしないまま受診する
評価では、吃音によって生活にどんな支障が出ているかが確認の対象になります。裏を返せば、いつ・どの場面で・何に困ったかを整理して持っていくほど、医師にも状況が伝わりやすくなります。まずは日々の様子を記録することから小さく始めるのが現実的です。発話を記録するアプリなどで経過を残しておくと、受診や申請のときの相談材料になります(記録は診断・治療に代わるものではありません)。ことばの訓練の専門家である言語聴覚士や、ことばの教室に相談できる場合は、そちらのほうが確実です。
よくある質問
吃音で診断書はもらえますか?
医師が診察のうえ必要と判断すれば、診断書や意見書が作成されます。ただし手帳の申請に使う場合、そこに書くのは吃音のせいでできないことがあり、他人の助けが要るのだという説明です。自分の発話で生活も仕事もなんとか回せているなら交付対象にはあたらないとされています。必ず出るとは言えないため、まずは受診して相談するのが出発点になります。
吃音の診断書は何科でもらえますか?
発達性吃音を診るのは、ふつう耳鼻咽喉科です。ただし言語聴覚士が在籍していて、吃音の検査を行っている病院でなければ診断がつかないことがあり、リハビリテーション科など別の科が受けている病院もあるとされています。専門外来はもともと数が少なく、受診希望が多くて予約が取りにくい病院もあるため、電話の前に言語聴覚士の在籍と吃音の検査の有無を確認しておくと空振りが減ります。
診断書は何に使えますか?
学校や職場に配慮を求めるときと、障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳など)の申請のときに使われます。総説は、診断書によって障害者差別解消法にもとづく配慮を求めることができるとしており、学会の解説も、発表や電話応対の免除や試験での面接時間の延長といった配慮を求める際に診断書や言語聴覚士の報告書の提出を求められる場合があると書いています。ただし提出先や制度によって様式や要件が異なるため、実際の可否は各窓口でご確認ください。
手帳が手元に届くまで、どれくらいかかりますか?
精神障害者保健福祉手帳に添える意見書は、初診日から半年以上たたないと書いてもらえないとされており、その半年は治療を受けて改善が見られるかどうかを確かめる期間にあたります。そのあとに役所への申請と審査が入るため、思い立ってから手元に届くまでは年単位で見ておくほうが現実的です。有効期限は2年で、良くならなければあらためて意見書を書いてもらって継続を申請します。
手帳がないと配慮や支援は受けられませんか?
そうとはかぎりません。ハローワークや地域障害者職業センターなどによる支援では、心身の障害があるために長期にわたり職業生活に相当の制限を受ける方も対象になり得るとされています。学校での配慮も、事前に伝えることで過重な負担とならない範囲で受けられるという建て付けです。手帳を取るかどうかを決める前に、相談だけ先にしてみることもできます。
まとめ
- 手帳の申請に添える紙に書くのは「吃音がある」ではなく、吃音のせいでできないことがあり、他人の助けが要るのだという説明です。
- だから、他人の助けなしに生活も仕事もなんとか回せているなら交付対象にはあたらないとされ、実際に「対象ではない」と告げられることがあります。
- 書いてもらう先は、ふつうは耳鼻咽喉科。ただし言語聴覚士が在籍していて、吃音の検査を行っている病院でなければ診断がつかないこともあり、専門外来は数が少ないのが実情です。
- 意見書は初診日から半年以上たってから、有効期限は2年。時間を見込んで早めに動くほうが選択肢を確保しやすくなります。
- 紙が動かすのは、学校や職場への配慮の申し出と、障害者雇用の枠です。一方で、手帳が無くても受けられる就労支援もあります。
