まず結論から
- 子どもへの「ゆっくり」「落ち着いて」という声かけは極力控える。相づちやうなずきをしながら、できるだけ最後まで話を聞く——公的資料が挙げる接し方の中心はここです。
- 吃音をタブーにせず、親子で話せる関係をつくる。昔は主流だった「吃音に気がつかせない方がよい」という対応は、今は否定されています。
- 保護者の関わり方のまずさから子どもの吃音が生じることは、決してありません。育て方が原因だとする説は、日本語の学会誌のレビューでも否定されていると明記されています。
- 幼児期に始まった吃音は、少なくとも半数の子で、これといった指導や支援がなくても、小学校に上がるころには問題が見当たらなくなるとされています。吃音が出はじめてから2〜3年程度までの経過で7割以上が自然に治るという報告もあります。
- それでも、話すときに苦しそうな様子や力みがあるとき、就学の1年前ごろになっても変化の兆しがないときは、言語治療を始める判断の目安とされています。相談先は、小児を扱う言語聴覚士とことばの教室の教員です。
ただし、これは「こうすれば治る」という話ではありません。家庭でできるのは主に、話しやすさと安心を支える環境を整えることで、それで吃音の頻度が確実に下がると示されているわけではありません。むしろ、親の話す速さや返答までの間と、子どもの話し方のなめらかさとの関連は検出されなかった、という研究もあります。「完璧にやらないと悪くなる」と気負う必要はない、というところから始めてください。
「ゆっくり話して」は、言われた子どもにどう届くか
子どもが言葉に詰まっているとき、いちばん自然に出てくる言葉が「ゆっくりでいいよ」「落ち着いて」です。ところが公的資料は、この声かけを極力控えるように提案しています。なぜなのか。言われた側が、あとから書き残しているものがあります。
子どものころから吃音がある当事者の声(23歳・言語聴覚士の養成校に在学/個人ブログ note)
当時の私はこれが吃音とは認識しておらず、ただ、舌や喉に変な力が入っていると感じていたり、かみやすい時は漠然と舌が大きく感じるなど疲れるなあと思う程度でした。しかし、母親から
「ゆっくり話しなさい」「落ち着いて話せばいいから」と言われると、それがとてもプレッシャーになっていました。
保育園のころは言葉の少ない子どもで、家でもあまり話さなかった——本人はそう振り返ります。小学校に入り、人前で発言する機会が増え、母親に学校の出来事を話すようになってからが本番でした。今日あったことを話そうとすると、決まって最初の音が繰り返され、引き伸ばされ、なかなか出てこない。周りに指摘される形で、自分の話し方を意識しはじめます。かけられたのは、話し方を直させる言葉でした。それが「プレッシャー」として残ったと本人は書いています。この人は現在、言語聴覚士の養成校に通い、来年から臨床に出ます。本人は今も吃音があると書いています。
出典: 言語聴覚士志望、吃音あり(note)(台帳: V0172)
ここで、順番を逆にしないでおきたいことがあります。「親の話し方が子どもの吃音をつくっている」という考え方——親の接し方が悪かったことを原因とする説や、親が吃音だと思って対応することが原因だとする説——は、学会が間違った原因論として名指しで否定しているものです。話す速さや間についても、確かめた研究があります。2025年に発表された研究は、吃音のある子とない子の親子の会話を、助言を受ける前の録音で測りました。親の話す速さと、子どもが話し終えてから親が返すまでの間——この2つに、グループ間の意味のある差はなく、どちらも子どもの話し方のなめらかさとの関連は検出されませんでした。原典自身が、これは後ろ向きに集めたデータを観察した研究であり、解釈には慎重さが必要だと断っています。
では、なぜ「ゆっくり」を控えるのか。理由は「効くかどうか」ではなく、届き方です。話し方そのものを本人に意識させると、「うまく話せない自分」を突きつけることになりかねません。公的資料と学会の解説が挙げる、控えたい対応は次のとおりです。
- 子どもに「ゆっくり」「落ち着いて」などと話し方を指示する。極力控えるよう提案されています
- 子どもが話し終わるまでのあいだに、大人の側から別の話題を持ち出す
- 心配そうな表情を見せる。まずは話の内容に耳を傾けて聞くよう勧められています
- 「気がつかないふり」をする。昔は主流の対応でしたが、今は否定されています
直すのをやめて、最後まで聞く——言うのは簡単、やると難しい
話し方を直そうとするのをやめると、次に来るのは「聞く」です。文字にすると当たり前に見えますが、毎日の生活のなかでは、これがいちばん難しいところでもあります。
6歳の娘の母の声(30代・パートで保育士/個人ブログ note)
「◯◯ってことか!!」と悪気はないのですがついバタバタしていて先回りしてしまうことがあり
話終わるのを待ってあげられた回数より待てなかった回数の方が最近は多かったかもしれない、、、と反省しました、、、。
娘は3歳ごろに吃音が出はじめ、いったん気にならなくなり、年長になって3か月ほど経ったころに再びあらわれました。「ありがとう」が「あ、あ、あ、ありがとう」になる、最初の言葉を繰り返すタイプです。娘が自分から「話しにくいときがあるんだよね」と話したこと、小学校入学が近いことが重なって、母親は言語聴覚士に相談します。面談のあいだ、娘の吃音は一度しか見られませんでした。持ち帰った「家でできること」を書き出したあと、母親は自分の聞き方のほうを振り返っています。忙しいときほど、子どもはたくさん話しかけてくる、と。
出典: 6歳の娘の吃音。言語聴覚士の先生とのお話。(note)(台帳: V0173)
この母親が書き留めたことは、公的資料が挙げる「望ましい接し方」とほとんど重なります。
- 相づちやうなずきをしながら、できるだけ最後まで話を聞く
- 子どもが話し終わるまで、大人の側から別の話題を持ち出さない
- 家事などで手が離せないときは「あとで聞くから待っててね」と伝え、あとで必ず聞く時間をつくる
- 短くてよいので、1日のどこかに、親と子が1対1で向き合う時間を毎日つくる(寝る前、入浴中、帰宅後のおやつの時間など)
- 大人の側が「ゆっくり」「ゆったり」した話し方をし、子どもの話す速さと同じか、少しゆっくりめの速さで話す
家庭全体の過ごし方についての提案もあります。早寝・早起きなど規則正しい生活習慣を整えること、休日や放課後に予定を入れすぎないこと、忙しくなりがちな朝や夕方の過ごし方に気をつけること。吃音のある子どもには、新しい場所や人が苦手だったり、まわりからの評価を気にしたりする繊細な面がみられることが知られており、その子ならではの特性に合わせて「特別な環境」を用意するという考え方です。日本語の学会誌のレビューも、幼児期は楽に話せる環境を整えながら経過を追うことを基本としています。
吃音の話を、笑ってごまかさない
子どもが自分から「うまく話せない」と言ってきたとき、多くの保護者は動揺して、何と言えばよいか分からなくなり、あいまいにはぐらかしてしまう——公的資料は、そこを名指しで注意しています。はぐらかされた子どもは「これは口にしてはいけない話なんだ」と感じ、誰にも相談できなくなる可能性があるからです。
小学1年生の子の保護者の声(保護者交流会「吃音のつどい」の記録/社会福祉法人が公開)
吃音の話をした時、笑ってごまかしているのは危険だと感じた方がいい。本人とフランクに話せるようになってから、以前のことを聞くと、人から「ゆっくり話して」とか言われたのはやはり嫌だったと言っていた。本人が困っているので、味方を作る気持ちで、周りの人にも話すようにしている。案外皆さんわかってくださる。
岐阜県の社会福祉法人が3年ぶりに対面で開いた「第8回吃音のつどい」の記録です。いちばん小さい子が3歳、上は小学4年生まで、15家族が集まりました。「本人と吃音の事を話せる関係作りと周りの人の理解について」という話題のなかで、小学1年生の子の保護者がこう発言しています。同じ場では、小学4年生の子の保護者が、年齢が上がると子どもから吃音のことを話してくることは少なくなるので、親のほうから普通に話題にするよう心がけている、とも述べていました。「あとで本人に聞く」ができる関係が、先にあったということです。
出典: 第8回「吃音のつどい」を開催しました!(社会福祉法人各務原市社会福祉事業団)(台帳: V0083)
学会の解説は、親子で吃音について話ができる関係づくりを心がけ、「どもってもよいから、たくさんおしゃべりしてね」というメッセージを伝えることを勧めています。打ち明けられたときに備えて、普段からしておける準備も挙げられています。
- 「吃音の話し方」は「くせ」に近いもので、悪いことでも、してはいけないことでもない——そう伝える。背の高い子もいれば低い子もいるのと同じで、話し方にもいろいろな型がある、と説明するのも有効
- 子どものほうから吃音の話題が出た場面をあらかじめ思い描き、どう応じるかを前もって考えておく
- 普段から吃音以外の悩みごとにもよく耳を傾け、吃音で困ったときに子どもが相談をためらわずにすむ関係をつくっておく
タイミングの目安もあります。4歳ごろ(早い子は2〜3歳でも)になると、本人が「言いにくい」「他の子の話し方と違う」と気づき始めます。同じころ、周りの子どもも違いを不思議に思う時期になり、「○○ちゃんはなんで、『あああ』ってなるの?」というような指摘が始まることがあります。話題にできる関係は、その前につくっておくほうが間に合いやすい、ということになります。
善意が重なるとき——祖父母・親戚・きょうだい
家の中で方針を決めても、それが通じるのは家の中だけです。連休や帰省で人が集まると、悪気のない言葉が一度にいくつも降ってきます。
4歳から吃音が出た娘の母の声(肢体不自由のある娘の母/個人ブログ note)
「ゆっくり話して〜」「落ち着いて!」「考えてから話して!」
でも、吃音のことを知らない人からすると“助けているつもり”の言葉なのだと思う。
するとGW終わる頃から話すことを諦めようとすることが出てきた。言いたいのに出ない。
引用したのは、ゴールデンウィークで親族や親戚と過ごす時間が増えた場面です。娘は4歳ごろから詰まることが増え、病院の言語聴覚士からは「話し方そのものへの指摘は、しないほうがいい」と教わっていました。母親は自分のほうがペースを落とし、娘が言葉に詰まったときは「な・ん・の・は・な・し?」とゆっくり聞き返すようにしていました。待つこと、急かさないこと、先回りしないこと。それが連休のあいだ、善意の言葉に上書きされていきます。母親はこのあと、病院の言語聴覚士のところへ家族にも一緒に来てもらい、説明を聞いてもらうことにしました。
出典: 子どもが吃音になりまして(note)(台帳: V0186)
同じことは、支援者向けの解説でも注意されています。母親の育児のしかたが祖父母から責められている家庭もあります。そのため、祖父母も加えて情報を共有しておく必要がある、と書かれています。学会の解説も、きょうだいや親戚はもちろん、所属している集団の場で、吃音は病気ではないこと、緊張やストレスや家庭環境のみから生じるものではないこと、本人がわざとやっているわけではないことを伝え、クラス内や学童保育、習い事などで理解と啓発の機会を設けてもらえるよう働きかけることを勧めています。吃音の指摘やからかいが減ることで、本人が「安心して吃音を出しながら話し続けてよいのだ」と実感できるからです。
家の中のきょうだい関係についても、具体的な提案があります。きょうだいが親を取り合うようにして次々と話しかけてくる場面があるなら、話す順番をあらかじめ決めておき、話している途中で言葉をさえぎられないようにする、というものです。食卓のように全員が同時に話し出しやすい場面ほど、効いてきます。
「あなたのせいだ」と言われたとき
子どもへの対応と同じくらい重いのが、保護者自身に向けられる言葉です。しかもそれは、たいてい身内から来ます。
保護者の声(自助団体「島根スタタリングフォーラム」の話し合い記録・発言者は匿名)
どもるのは、母親のせいだと言われ、姑からは「私は息子(夫)が小さいとき、吃音を治した」と言われました。フォーラムに参加してから、親のせいではないと伝えることができました。母親が怒るからではないかとも言われたけれど、この会に出てからは、そう言われても、大丈夫。平気で言い返したり、説明できるようになりました。
自助団体が開いた第7回島根スタタリングフォーラムの、保護者の話し合いの記録です。2日間で6時間に及んだ話し合いのなかに、同じ形の経験がいくつも並びました。空手の昇段試験で子どもの「オイ」が出なかったとき、指導者から「両親が厳しいから、そうなったんではないですか?」と言われた保護者。4年前に夫から「吃音は母親のせいだ」と言われ、子どもがどもる姿を自分の存在の否定のように感じていた保護者。共通していたのは、知識を得たあとで身内の言葉に呑まれなくなった、という一点でした。
出典: 第7回島根スタタリングフォーラム 親の話し合い 3(日本吃音臨床研究会「吃音相談室」)(台帳: V0115)
言われている内容には、根拠がありません。吃音の専門機関の資料は「保護者の接し方のまずさが原因で、お子さんに吃音が生じるわけでは決してありません」と明記しています。学会の解説も、親の接し方が悪かった(愛情不足)ことを原因とする説や、親が吃音だと思って対応することが原因だとする説を、最も問題のある間違った原因論として名指しで否定しています。2000年ごろ以降の双子研究・脳研究・遺伝子研究によって、環境的な要因よりも生まれ持った体質的な要因が原因の多くを占めることが分かってきたためです。双子研究では、その子が生まれつき持っている体質が原因の約8割を占めるとされています。日本語の学会誌のレビューも、育て方が原因という説は否定されている、とはっきり書いています。
「下の子が生まれたせいで愛情が足りなくなった」「習い事でストレスをかけたのがよくなかった」「利き手を直させたのがまずかった」といった説明も、環境のせいだとする過去の原因論として整理されており、なかでも養育者を原因に据える説が語られてきた歴史がある、と支援者向けの解説は書いています。同じ資料は、支援者の側に、相談に訪れた養育者の味方に立つことを求めています。
波と見通し——どのくらいの子が、いつごろ落ち着くのか
吃音には、症状が増える時期と落ち着く時期の波があります。幼児期はことばの発達も発話運動も未熟で、疲労や環境の変化に敏感な子どももいるため、少しのことで症状が多くなったり少なくなったりします。まったく症状が出なくなる時期もあります。この波がなぜ起きるのかは、解明がほとんど進んでいません。
見通しについては、いくつかの数字が出ています。ただし、数え方も期間も資料ごとに違うので、そのまま横並びに比べられるものではありません。
幼児期に始まった吃音については、特別な手立てを取らなくても、少なくとも半数の子で小学校に上がるころには吃音の問題が見当たらなくなる、と専門機関の資料が書いています。日本語の学会誌のレビューは、吃音が出はじめてから2〜3年程度までの経過で7割以上が自然に治ると述べています。支援者向けの解説では、発症後3年で男児では6割、女児では8割が自然回復するという数字が挙げられています。
ただし、どの子がそうなるかを前もって当てることはできません。同じ資料は、将来なおるのかと尋ねられても、男児で家族に吃音のある人がいる場合はなおりにくい、としか答えられないのが実情だと率直に書いています。だからこそ、なおるかどうかを言い当てる代わりに、うまく吃音と付き合っていく道を一緒に探しましょう、と保護者に伝えている、としています。
だからこそ、日々の波に一喜一憂しない言葉づかいが勧められています。「吃音が悪化する」「吃音がひどくなる」ではなく「吃音が増える」、「吃音が改善する」ではなく「吃音が減った」という中立的な言い方を使う、という提案です。表面上の吃音の状態に保護者の心理が左右されるのではなく、話すという行為の内面にある「話したい気持ち」を育てることを重く見るとよい、とも書かれています。
相談の目安と、どこに相談するか
相談先として名前が挙がるのは、小児を扱う言語聴覚士とことばの教室の教員です。楽に話しやすくなるように周囲のコミュニケーション環境を整える方法、直接発話に働きかける方法、吃音のことを理解する方法など、年齢や状態に合わせた指導が行われます。
では、いつ相談するか。日本語の学会誌のレビューは、幼児期は楽に話せる環境を整えながら経過を追うことを基本としたうえで、言語治療を始める判断として次の2つを挙げています。
- 話すときに苦しそうな様子や力みがあるか、症状が増える傾向があるか
- 就学の1年前ごろになっても、改善の傾向がみられないか
声を出そうとして顔をしかめたり、手足を動かしたりする動きは「随伴症状」と呼ばれ、吃音にかなり特徴的な現れ方だとされています。こうした様子が出てきたときは、一つの手がかりになります。
幼児吃音臨床ガイドライン第1版は、月2回以上の指導にあたる「積極的な介入」をいつ始めるかについて、年少組のあいだは経過観察的な支援を基本とし、年中組では開始を検討、年長組では開始を推奨する、と段階を分けています。
相談に行っても、その場では思ったほど症状が出ないことがよくあります。それを見た相談先が、つい「軽い吃音ですね」と言ったり、「気にならない」と返したりすることがありますが、そうした言葉が養育者の助けになることは少ない、と支援者向けの解説はわざわざ注意しています。家庭での様子を書き留めて持っていくと、この行き違いを減らせます。
就学前の子どもへの訓練については、保護者が家庭で行う方法の研究がいちばん進んでいます。世界の無作為に振り分けた比較試験を集めて評価した国際的なレビューは、条件に合う試験を4件見つけました。参加したのは2歳から6歳の子ども151人で、いずれも保護者が家庭で行う「リッカム・プログラム」と、順番待ちの子どもたちとを比べたものです。訓練を受けた子のほうが吃音の頻度は低くなりましたが、レビューはこの結果の確実性(この結果をどれだけ当てにしてよいかの度合い)を「非常に低い」と評価し、慎重に解釈するよう求めています。このプログラムは本来1〜2年かけて行うもので、集められた試験のどの測定時点でも、最後まで終えた子どもは一人もいませんでした。いっぽう日本語の学会誌のレビューは、幼児期の言語訓練は有効率が比較的高いとも述べています。数字の確かさと臨床の実感には差がある、というのが正直なところで、どうするかは相談してから決めるのが現実的です。
園・学校との連携と、からかいへの備え
4歳ごろになると、周りの子どもが違いを不思議に思う時期になり、指摘が始まることがあります。こうした指摘をきっかけに、発話に力が入って声が出しにくくなったり、体を動かして話そうとしたりする子も出てきます。学齢期になると、約半数がいじめやからかいを経験するとされ、対策が重要だと書かれています。
教室のなかで実際に何が起きているかを、クラスメイト同士の指名で調べた研究があります。イギリスの16の学校の16クラス、403人の子ども(8歳3か月〜14歳9か月)が参加し、各クラスに1人ずつ吃音のある子がいました。
「いじめられている子」に挙げられた割合は、吃音のある子で37.5%、吃音のない子で10.6%でした。「助けを求める子」は25%対13.18%、「リーダー」は6.5%対12.92%です。ただし、統計的に意味のある差が確かめられたのは「いじめられている子」の区分だけで、ほかは傾向にとどまります。また、クラスでの位置づけを見ると、「嫌われている」に分類される割合は吃音のある子で高く、「人気がある」に分類される割合は低い——どちらも統計的に確かめられています。対象となった吃音のある子は16人で、規模の小さい調査である点は差し引いて読む必要があります。
備えとして、支援者向けの資料は、担任の先生や養育者、支援者の側から、まねをされていないか、笑われていないか、話し方のことを聞かれていないか、と本人に率直にたずねることを勧めています。それが、吃音の話を隠さずにできるきっかけになる、という説明です。毎年クラスが替わる学校では、まねや笑い、質問を受ける可能性がそのつど生まれるので、早く気づくことと、対応の仕方まで含めて話し合っておくことが予防になる、と書かれています。困りやすい場面も具体的です——音読、発表、日直の号令、かけ算の九九、卒業式、学習発表会。「学校はどう?」と漠然と聞くより、この単位でたずねるほうが、困り感を早く見つけられるとされています。
小学校に上がってからも吃音が続いている子どもについては、専門機関の資料が見通しを書いています。言語聴覚士やことばの教室で適切な指導と支援を受けられれば、多くの場合、体に力の入る重い吃音があまり出なくなるか、力みを自分で加減しながら話す方法が身につくかして、暮らしのなかで大きく困ることなく過ごせるところまで来る、というものです。
対応でありがちな3つの落とし穴
落とし穴1 − 「早く治そう」と焦って話し方を直させる
話し方に介入するほど、本人は話しにくさを意識してしまいがちです。公的資料も、子どもに向かって「ゆっくり」「落ち着いて」と声をかけるのは極力控えるよう提案しています。また、親自身の話す速さや返答までの間についても、子どもの話し方のなめらかさとの関連は検出されなかったという研究があります。この研究が測ったのは親の話し方であって、子どもへの声かけの効果ではありません。直そうとするより、話の中身を受け止めることに切り替えるほうが、根拠のある方向です。
落とし穴2 − 親(自分)を責め続ける
保護者の関わり方がまずかったせいで子どもに吃音が起こることは、決してありません。親の接し方や愛情不足を原因とする説は、学会の解説が「最も問題のある間違った原因論」として名指しで否定しています。自分を責める時間より、子どもが安心して話せる環境をつくることにエネルギーを向けるほうが建設的です。身内から責められて苦しいときは、同じ経験をした保護者が集まる場が現実的な支えになることもあります。
落とし穴3 − 症状の波に一喜一憂して対応がぶれる
吃音には出やすい時期と落ち着く時期の波があり、なぜ波が起きるのかは解明がほとんど進んでいません。日によって一喜一憂して対応をころころ変えると、子どもも戸惑います。「悪化した」ではなく「増えた」という中立的な言葉を使い、日々の様子を淡々と記録しておくと、波を客観的に見られます。相談の場では、思ったほど症状が出ないことがよくあります。記録は、その備えにもなります。
まずは日々の様子を書き留めることから小さく始めるのが現実的です。アプリ「toVoice」のように毎日の発話や様子を記録するツールは、経過を見える化して相談時に共有する助けになります(記録・継続の支援であり、治療効果をうたうものではありません)。言語聴覚士やことばの教室に相談できる場合は、まずそちらに相談してください。
よくある質問
子どもが吃音になったら、まず何をすればいいですか?
話し方を直そうとせず、相づちやうなずきをしながらできるだけ最後まで話を聞くこと、話し終わるまで大人の側から別の話題を持ち出さないことが土台になります。心配そうな表情をせずに話の内容に耳を傾け、吃音をタブーにしない関係をつくることも勧められています。気になる状態が続くときは、小児を扱う言語聴覚士やことばの教室に相談してください。
「ゆっくり話してごらん」と言ってはいけないのですか?
公的資料は、子どもへの「ゆっくり」「落ち着いて」という声かけは極力控えるよう提案しています。話し方を意識させると、かえって話しにくくなることがあるためです。また、親自身の話す速さや返答までの間と、子どもの話し方のなめらかさとの関連は検出されなかったという研究もあります(測ったのは親の話し方で、子どもへの声かけの効果ではありません)。絶対の禁止というより、控えめにしておくほうが根拠に沿っている、と考えるとよいでしょう。
下の子が生まれてから吃音が出ました。私のせいですか?
保護者の関わり方のまずさが子どもの吃音の原因になることは、決してありません。「下の子が生まれたせいで愛情が足りなくなった」といった説明は、かつて言われた環境要因説として整理されており、双子研究では、その子が生まれつき持っている体質が原因の約8割を占めるとされています。育て方が原因という説は、日本語の学会誌のレビューでも否定されていると明記されています。
いつ、どこに相談すればいいですか?
相談先は、小児を扱う言語聴覚士とことばの教室の教員です。時期の目安として、話すときに苦しそうな様子や力みがあるか症状が増える傾向があるか、就学の1年前ごろになっても改善の傾向がみられないか、の2点が挙げられています。ガイドラインは、年少組のうちは経過観察的な支援が基本、年中組で積極的な介入を始めることを検討、年長組では推奨としています。
祖父母や親戚から「甘やかすからだ」と言われます。どう説明すればいいですか?
祖父母が母親の育児のしかたを責めている場合もあるので、祖父母まで含めた情報共有が要る、とされています。学会の解説は、きょうだいや親戚、所属する集団に対して、吃音は病気ではないこと、緊張やストレスや家庭環境のみから生じるものではないこと、本人がわざとやっているわけではないことを伝え、理解と啓発の機会を設けてもらえるよう働きかけることを勧めています。可能なら、相談先の専門家に一緒に説明してもらうのも方法です。
まとめ
- 子どもへの「ゆっくり」「落ち着いて」は極力控え、相づちを打ちながら最後まで聞く。話し終わるまで大人から別の話題を出さない。
- 吃音をタブーにしない。「気がつかせない方がよい」という昔の対応は否定されており、「どもってもよいから、たくさんおしゃべりしてね」と伝えることが勧められている。
- 祖父母・親戚・きょうだい・園・学校まで含めて、わざとではないこと・家庭環境だけが原因ではないことを共有しておく。きょうだいには「順番に話す」ルールが有効。
- 保護者の関わり方のまずさが子どもの吃音を招くことは決してない。親の接し方を原因とする説は学会が名指しで否定しており、双子研究では原因の約8割が生まれ持った体質とされる。
- 幼児期は少なくとも半数が就学ごろまでに問題が見られなくなり、吃音が出はじめてから2〜3年程度までの経過で7割以上が自然に治るとされる。それでも苦しそうな様子や力みがあるとき、就学1年前ごろでも変化がないときは相談を。学齢期は約半数がからかいを経験するため、備えも要る。
