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子どもの吃音への対応|NG声かけ・場面別の接し方・親の心のケア

子どもの吃音への対応|NG声かけ・場面別の接し方・親の心のケア
目次

「子どもがどもるようになった。どう声をかけたらいいんだろう」「『ゆっくり話して』と励ましていいのか、それとも触れないほうがいいのか」——子どもの吃音を前にすると、よかれと思った一言が逆効果にならないか、迷ってしまいますよね。

この記事では、子どもの吃音への対応を、①やってはいけない声かけ、②最後まで聞く望ましい接し方、③食卓・登園しぶり・きょうだいなど場面別の工夫、④保護者自身の心のケア、⑤相談先の目安、という順で、公的資料と研究の出典つきに整理します。かつて吃音のある子どもだった当事者の声も交えます。

ソンタクマン
ソンタクマン(toVoice 運営)
吃音当事者。研究論文と当事者の声をもとに、吃音の情報を出典つきで発信しています。

この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の判断に代わるものではありません。気になる症状があるときは、言語聴覚士のいる医療機関やことばの教室にご相談ください。

まず結論 — 子どもの吃音対応、大切なのは「3つの土台」

細かいテクニックの前に、まず土台になる考え方が3つあります。公的な吃音ポータルサイトが保護者向けにまとめている「接し方の提案」を軸に整理すると、次のようになります。

そしてもう一つ、対応を考えるうえで前提にしてほしいことがあります。親の関わり方が吃音を悪くしているわけではない、という点です。「親がゆっくり話す」「返事までの間を長くとる」といった会話の時間的な工夫と、子どもの流暢性(なめらかさ)のあいだに関連は確認されていない、という2025年の研究があります。原因そのものについては吃音とは?原因をわかりやすくでくわしく扱っていますが、まずは「自分の育て方のせいだ」と身構えなくて大丈夫、という前提から対応を始めてください。

なお、この記事は主に幼児期から学童期の子どもを想定しています。幼児期は家庭の環境づくりと受容的な接し方が中心になり、学童期以降は本人が吃音を自覚しはじめ、からかいへの備えや専門機関への相談の比重が上がっていきます。

やってはいけない対応 — 「ゆっくり」「言い直して」がなぜ逆効果になりうるのか

よかれと思ってやりがちで、実は控えたほうがよいとされる対応があります。公的資料は、子どもに対して「ゆっくり」「落ち着いて」などの声かけは極力控えるように提案しています。話し方そのものを本人に意識させると、かえって話しにくくなったり、「うまく話せない自分」を強く感じさせてしまうことがあるためです。

避けたい対応を、具体的に挙げると次のとおりです。

「ゆっくり」という助言は、言う側の善意とはうらはらに、本人には届かないことがあります。ここで、かつて吃音のある子どもだった当事者の声を紹介します。

元・吃音の子どもだった当事者の声(難発性吃音・現在は看護師で1児の母/個人ブログ)

返ってくるのは「ゆっくり話せば大丈夫だよ」だけ。

音読や発表で最初の音がなかなか出ず苦しんだ子ども時代、親に「本読みができない」「声が出ない」と訴えても、返ってきたのはこの言葉だけだった——と振り返る手記です。「ゆっくり」という励ましが、本人には「分かってもらえない」という孤立感として残ってしまうことがあります。実際、公的資料も子どもへの「ゆっくり」「落ち着いて」という声かけは極力控えるよう提案しており、親の話し方の速さと子どもの流暢性のあいだに関連は確認されていません。

出典: 学生時代の音読・発表のつらさ(misa・当事者ブログ)(台帳: V0034)

望ましい対応 — 話し方ではなく「話の中身」を受け止める

では、代わりに何をすればよいのでしょうか。ポイントは、話し方を直そうとするのをやめて、話の中身をしっかり受け止めることに切り替えることです。公的資料が挙げる望ましい接し方は、次のようなものです。

先ほどの「やってはいけない対応」と並べると、方向性がはっきりします。話し方に注目するのではなく、話したい気持ちと内容に注目する。この一点の切り替えが、家庭でできる対応の中心です。

当事者の親の声(2児の母/個人ブログ note)

あ、これはわざとじゃないんだ

2歳3か月ごろ、語頭を繰り返す話し方が突然始まった息子に、最初は「変なクセがつくよ」と注意してしまった、という母親の手記です。きょとんとした表情を見て、わざとではないと気づいてからは、指摘や言い直しをやめて、最後まで話を聞くようにしたと振り返ります。まず「わざとではない」と親が理解することが、対応の出発点になります。公的資料も、相づちやうなずきをしながらできるだけ最後まで話を聞き、子どもが話し終わるまで大人が別の話題を出さないことを提案しています。

出典: 息子と吃音(note・ななみ)(台帳: V0005)

家庭の「特別な環境」を整える

個々の声かけだけでなく、家庭全体の雰囲気を「話しやすい環境」に整えるという発想も、公的資料で提案されています。吃音のある子どもには、新しい場所や人が苦手だったり、まわりの評価を気にしたりする繊細な面がみられることが知られており、その特性に合わせた環境づくりが役立つと考えられています。

ただし、これらはあくまで「話しやすさ」や「安心感」を支えるための環境の提案です。大人がゆっくり話すことで吃音の頻度が確実に減る、と示されているわけではなく、親の発話速度と子どもの流暢性のあいだに関連は確認されていない、という研究もあります。「完璧にやらないと悪化する」と気負う必要はなく、子どもが安心して話せる家庭であることを大切にする、という受け止め方で十分です。

場面別の対応 — 食卓・登園しぶり・発表前・祖父母

ここからは、抽象論になりがちな「対応」を、実際の生活の場面に落として考えます。いずれも土台は同じ(話し方でなく中身を受け止める・急がせない・受容的に)ですが、場面ごとに具体化しておくと迷いにくくなります。

食卓・きょうだいと競って話すとき

食卓は、きょうだいや家族が一斉に話し出しやすく、子どもが「早く言わなきゃ」と焦りやすい場面です。「順番に話す」ルールを決めて、話の途中で割り込まれないようにすると、落ち着いて話せます。一人が話しているあいだは最後まで聞く、を家族の共通ルールにしておくとよいでしょう。

登園・登校をしぶるとき

理由を問い詰めるより、まず気持ちを受け止めます。すぐに聞けないときは「あとで必ずお話を聞くから」と伝え、落ち着いてから1対1で話す時間をつくります。園や学校で話す場面に不安がある様子なら、後述する相談先や、園・学校との連携も検討します。

発表・音読の前

音読や発表は、吃音のある子どもが特に負担を感じやすい場面です。「がんばって」「ゆっくりね」と話し方を意識させるより、「どんな順番でも大丈夫」と内容を受け止める姿勢を伝えるほうが安心につながります。負担が大きいときは、無理に一人で抱えず、担任や専門機関に配慮を相談するのも選択肢です。

祖父母・まわりの人への説明

祖父母や周囲の大人が、よかれと思って「言い直させる」「真似する」こともあります。吃音は「くせ」のようなもので悪いことではない、背の高い子・低い子がいるように話し方にもいろいろある——という理解を、まわりにも共有しておくと、家庭の外でも一貫した対応になります。

保護者自身の心のケア — 自分を責めないために

子どもへの対応と同じくらい大切なのが、保護者自身の気持ちの整理です。「下の子が生まれたせいかも」「あのとき叱ったからかも」と、自分の関わりに原因を探してしまう保護者は少なくありません。けれど、親の関わり方が吃音の原因だという想定は研究で支持されておらず、自分を責め続けることは、子どもへの落ち着いた対応にもつながりにくいものです。

当事者の親の声(下の子の誕生後に上の子へ吃音が出た経験/保護者向けメディアの体験回答)

泣きながら長男を抱きしめたことを、今でもはっきり覚えています。

次男が早産で生まれて入院が続いたころ、わがままを言わず我慢していた長男に、半年ほどして吃音があらわれ、やがて小さな円形脱毛にも気づいた——その場面を、母親はこう振り返ります。「気づいてあげられなかった」と自分を責める気持ちは自然なものです。ただ、親の関わりが吃音の原因だという想定は研究で支持されておらず、自責よりも、上の子と1対1で過ごす時間を意識してつくるなど、環境を整えることに気持ちを向けるほうが建設的です。

出典: 下の子が生まれてから上の子に吃音が出た、という相談への体験回答(子育てIdea Box)(台帳: V0035)

保護者が落ち着いていることそのものが、子どもにとっての「安心できる環境」の一部です。一人で抱え込まず、後述の相談先や、同じ経験をもつ家族の声にも触れながら、長い経過につきあっていければ十分です。

受診科・相談先と、園・学校との連携

家庭での対応と並行して、専門機関を上手に頼ることが大切です。相談先と目安を整理します。

どこに相談する?

吃音の相談・支援の中心になるのは、言語聴覚士(ST)のいる医療機関や、ことばの教室(通級指導教室)です。「何科か分からない」というときは、小児科や耳鼻咽喉科を入り口に、言語聴覚士のいる機関を紹介してもらう方法もあります。受診の目安や相談先の探し方は吃音症チェック|受診の目安と相談先でくわしく扱っています。

相談を考える目安

「必ず様子見」でも「すぐ受診」でもなく、次のようなときは早めの相談を検討してください。症状が数か月続く/だんだん強くなっている/本人が話すことをいやがったり気にしたりしている/からかいがある、といったサインです。就学前(6歳以下)の子どもについては、言語聴覚士の指導のもとで家庭で取り組む介入があり、待って様子を見た場合より吃音の頻度が下がったと報告されています。ただしエビデンスの確実性は高くなく、慎重な解釈が必要とされています。

当事者の親の声(次男の吃音を振り返る母・仮名/たまひよ 体験記・言語聴覚士監修)

どうして僕はみんなみたいにしゃべれないの? どうして詰まっちゃうの?

就学前の秋、本人が泣きながらこう訴えたことが、専門家に相談する転機になった、という母親の体験記です。子ども自身が吃音を意識しはじめたサインは、相談のタイミングを考える一つの目安になります。前述のとおり、就学前の子どもには言語聴覚士の指導下で家庭で取り組む介入があり、待機して様子を見た場合より吃音の頻度が下がったと報告されていますが、エビデンスの確実性は高くなく、慎重な解釈が必要とされています。

出典: ある日突然、息子に吃音の症状が(たまひよ・言語聴覚士監修)(台帳: V0006)

園・学校との連携、からかいへの備え

家庭だけで抱え込まず、園や学校とも「話し方を直させない・最後まで聞く・タブーにしない」という方針を共有しておくと、集団生活のなかでも一貫した対応になります。からかいが心配なときも、担任やことばの教室に早めに相談し、本人が安心して過ごせる環境を一緒に整えていくのが現実的です。

対応でありがちな3つの落とし穴

落とし穴1 − 「早く治そう」と焦って話し方を直させる

「言い直して」「ゆっくり」と話し方に介入するほど、本人は話しにくさを意識してしまいがちです。公的資料も、子どもへの「ゆっくり」「落ち着いて」の声かけは極力控えるよう提案しています。直そうとするより、話の中身を受け止めることに切り替えましょう。

落とし穴2 − 親(自分)を責め続ける

親の関わり方が原因だという想定は研究で支持されていません。自分を責める時間より、子どもが安心して話せる環境をつくることにエネルギーを向けるほうが建設的です。

落とし穴3 − 症状の波に一喜一憂して対応がぶれる

吃音は、出やすい時期と落ち着く時期の波があります。日によって一喜一憂して対応をころころ変えると、子どもも戸惑います。むしろ日々の様子を淡々と記録しておくと、波を客観的に見られ、相談のときにも役立ちます。

まずは日々の様子を記録することから小さく始めるのが現実的です。アプリ「toVoice」のように毎日の発話や様子を記録するツールは、経過を見える化して相談時に共有する助けになります(記録・継続の支援であり、治療効果をうたうものではありません)。言語聴覚士など専門機関に相談できる場合は、そちらが確実です。

よくある質問

子どもが吃音になったら、まず何をすればいいですか?

話し方を直そうとせず、相づちを打ちながら最後まで話を聞くこと、吃音をタブーにしないことが土台になります。「わざとではない」と理解し、親自身が落ち着くことが出発点です。気になる状態が続くときは、言語聴覚士のいる医療機関やことばの教室への相談を検討してください。

「ゆっくり話してごらん」と言ってはいけないのですか?

公的資料は、子どもへの「ゆっくり」「落ち着いて」という声かけは極力控えるよう提案しています。話し方を意識させると、かえって話しにくくなることがあるためです。また、親の話し方の速さと子どもの流暢性のあいだに関連は確認されていない、という研究もあります。絶対の禁止というより、逆効果になりうるので控えめに、と考えるとよいでしょう。

家庭での対応だけで吃音は治りますか?

家庭でできるのは、主に「話しやすい環境」を整えることで、それだけで確実に治ると言えるものではありません。就学前(6歳以下)については、言語聴覚士の指導下で家庭で取り組む介入が、待機群より吃音の頻度を下げたと報告されていますが、エビデンスの確実性は高くなく慎重な解釈が必要です。心配なときは専門機関に相談してください。

下の子が生まれてから吃音が出ました。私のせいですか?

親の関わり方が吃音の原因だという想定は、研究で支持されていません。自分を責めるよりも、上の子と1対1で過ごす時間を意識してつくるなど、環境を整えることに気持ちを向けるほうが建設的です。気になるときは専門機関にも相談してください。

いつ専門機関に相談すればいいですか?

症状が数か月続く、だんだん強くなっている、本人が話すことをいやがる・気にしている、からかいがある、といったときは早めの相談を検討してください。相談先は言語聴覚士のいる医療機関やことばの教室です。就学前は介入の適応年齢の面でも、早めに相談しておくと選択肢が広がります。

まとめ

参考文献

  1. Godsey & Ratner (2025) It's About Time: Parent-Child Turn-Taking in Early Stuttering. American Journal of Speech-Language Pathology.
  2. Sjøstrand et al. (2021) Non-pharmacological interventions for stuttering in children six years and younger. Cochrane Database Syst Rev.
  3. 吃音ポータルサイト「お子さんとの接し方の提案」

当事者の声の出典: V0005(note・ななみ)/ V0006(たまひよ・佐野和子 仮名)/ V0034(当事者ブログ・misa)/ V0035(ハートフルコミュニケーション「子育てIdea Box」)。いずれも公開記事。引用は原文どおり。

更新履歴: 2026-07-22 公開

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