「3歳の吃音」とは?就学前に始まる話し方のこと
吃音(きつおん、どもり)とは、言いたいことははっきりしているのに、話し言葉がなめらかに出てこない状態のことです。多くは2〜5歳ごろの就学前に始まり、4歳までにおよそ11%の子どもにみられると報告されています。3歳は、ちょうどこの発症が集中する時期の真ん中にあたります。
つまり、3歳ごろにお子さんの話し方が詰まりはじめるのは、けっしてめずらしいことではありません。声の出し方や知能そのものの問題ではなく、言葉が育っていく途中で、話し言葉を組み立てる仕組みにわずかなつまずきが生じている状態だと考えられています。
当事者の母の声(保護者・個人ブログ note)
ママママママ、ママ、おおおおおお、お茶、ちょうだい
ある母親が、2歳3か月ごろに突然始まったわが子の話し方をこう書き留めています。語のはじめの音を繰り返す「連発」は、吃音の代表的な症状のひとつです。この母親は最初「ふざけているのかな」と思って注意してしまったそうですが、吃音はわざとや性格の問題ではなく、素因と環境が組み合わさって生じるものです。
出典: 息子と吃音(note・ななみ)(台帳: V0005)
3歳の吃音でみられる3つの話し方 — 連発・伸発・難発
吃音の話し方は、大きく次の3つに分けられ、どれか一つ以上がみられます。
- 連発(れんぱつ):音や言葉のはじめを繰り返す。例「ぼ、ぼ、ぼくは」
- 伸発(しんぱつ):音を引き伸ばす。例「ぼーーーくは」
- 難発(なんぱつ):声や息が詰まって、最初の音がなかなか出ない(ブロック)。例「……ぼくは」
一般には、はじめは軽い繰り返し(連発)が目立ち、経過のなかで引き伸ばしや難発がみられることもあると言われます。また、いつも同じ強さで出るわけではなく、調子のよい時期と出やすい時期の「波」があるのも特徴で、経過は時間とともに変化していく動的なものです。
当事者の母の声(保護者・個人ブログ)
呼吸すらできない無音のどもり
2歳半で音を繰り返す連発が始まった息子について、母親は約1週間で声も息も出せなくなる状態に移り変わったと振り返っています。このように、連発から難発(ブロック)へと数週間のうちに移ることがあり、話し方の幅も時期による波もあるのが吃音の特徴です。強く出る時期があっても、それだけで「重症化して固定した」とは限りません。
出典: 幼児の吃音と、回復までの体験記(個人ブログ)(台帳: V0014)
なぜ3歳で始まるの?原因は「一つ」ではない
3歳という時期は、からだ・認知・言葉・情緒が一気に育つ時期です。発達性吃音は、こうした複数のシステムが急速に発達しているさなかに生じる神経発達の現象で、運動・言語・情動の要因が複雑に影響し合って発症すると説明されています。公的資料も、吃音は子ども自身が持って生まれた素因的な要因と、環境の要因がある条件で組み合わさったときに生じると考えられる、としています。
大切なのは、これらが単独ではなく「重なり合って」働くという考え方です。「保育園に入ったから」「弟が生まれたから」といった一つの出来事を犯人にしても、原因の説明にはなりません。
「わたしの育て方のせい?」——いいえ、と言える理由
3歳の吃音に気づいた保護者が、まず自分を責めてしまうことは少なくありません。しかし、保護者の育て方やしつけが吃音の原因ではありません。吃音の専門ポータルサイトは、保護者に向けて「保護者の方の育て方のまずさが、お子様の吃音の問題の原因ではありません」とはっきり述べています。
原因が体質・発達・環境の重なりで説明される以上、「あのとき叱ったから」「もっと関わってあげられなかったから」と自分を責める必要はありません。自分を責める時間より、お子さんが安心して話せる時間を積み重ねるほうが、ずっと建設的です。
3歳の吃音は自然に治る?経過の見通し
いちばん気になるのは「この先どうなるのか」でしょう。幼児期に始まった吃音の多くは、徐々に軽くなっていきます。公的資料では、吃音のある幼児の少なくとも半数は、特別な指導や支援をしなくても小学校に入学するころまでに吃音の問題がみられなくなる(自然治癒)とされています。
一方で、すべてが自然に消えるわけではなく、大人になっても続く人もいます。回復するか持続するかは、発達のさまざまなシステムの相互作用によって、子どもごとに異なる道すじをたどると考えられています。だからこそ「必ず治る」とも「絶対に治らない」とも言い切れず、次の章で見る「持続しやすさ」の目安が役に立ちます。
様子見でいい?受診を考える目安と「持続しやすさ」のサイン
3歳の吃音でいちばん判断に迷うのが、「もう少し様子を見ていいのか、相談したほうがいいのか」でしょう。ここは情報があいまいになりがちな部分ですが、研究は「どんな子が持続しやすいか」の手がかりを示しています。
3〜5歳の吃音のある子どもを長期に追跡した研究では、次のような特徴が重なる子は、そうでない子より吃音が持続する確率が高いと報告されています。
- 吃音の家族歴がある(親やきょうだいなどに吃音のある人がいる)
- 発音(構音・音韻)の検査成績が振るわない
- ふだんの会話で吃音の出る頻度が高い
- 意味のない音のならび(非語)を復唱するのが苦手
これらは「当てはまれば必ず持続する」という印ではなく、あくまで確率の話です。ただし、こうした要因が重なっている場合や、症状が長く続く・だんだん強くなる・本人が話すことを気にしはじめた、という場合は、自然回復を期待して様子見を続けるより、早めに言語聴覚士へ相談するほうが安心です。本人の不安や負担といった情動的な要因は、経過を条件づける要因のひとつだからです。
当事者の母の声(保護者・育児メディア「たまひよ」の体験記/言語聴覚士監修)
どうして僕はみんなみたいにしゃべれないの? どうして詰まっちゃうの?
年長の秋、本人が泣きながらこう訴えたことが相談への転機だった、と母親は語ります。子ども本人が自分の話し方に気づいて悩むことがあり、そうした情動的な負担は経過を条件づける要因のひとつです。本人がつらそうにしているのは、専門家へ相談を考える一つの目安になります。就学前の吃音への支援は、言語聴覚士の指導のもと、家庭での練習と記録をともなって進められます。
出典: 「どうして僕はうまくしゃべれないの?」ある日突然、3才の息子に吃音の症状が…(たまひよ)(台帳: V0006)
受診科・相談先はどこ?就学前に行われる支援も出典つきで
吃音の相談先は、言語聴覚士(ST)のいる医療機関(小児科・耳鼻咽喉科・リハビリテーション科など)や、自治体の「ことばの教室」、保健センターの発達相談などです。就学前の吃音では、親子で言語聴覚士のもとに通い、家庭での関わり方の指導を受けるのが一般的な流れです。
就学前(6歳以下)の吃音に対しては、「リッカム・プログラム」と呼ばれる非薬物の介入があります。言語聴覚士の指導のもとで保護者が家庭で練習を行うもので、これを検討したランダム化比較試験4件(2〜6歳の子ども151人)をまとめたコクランの系統的レビューでは、待機していた子どもたち(待機群)より吃音の頻度(%SS)が下がったと報告されています。ただし、この結果はエビデンスの確実性が非常に低く、研究のバイアスのリスクもあるため慎重に解釈すべきとされ、プログラムの完了には1〜2年かかる設計です。どの支援が合うか・いつ始めるかは、必ず専門家と相談して決めることになります。
家庭でできる関わり方
吃音の経過は、言語的・情動的な要因によって強く条件づけられるとされています。だからこそ、お子さんが「話すこと」そのものを否定されず、安心して話せる情緒的な環境を整えることには意味があると考えられます。具体的な支援の方法は専門家と決めるものですが、家庭では次のような関わりが、多くの保護者の体験の中で選ばれています。
- 話し方を指摘したり、「ゆっくり」「言い直して」と急がせたりしない
- 言葉の内容に耳を傾け、話を最後まで聞く
- 子どもが安心して話せる、せかされない時間をつくる
これらは「こうすれば治る」という方法ではなく、子どもが話しやすい土台を整えるための関わりです。効果には個人差があり、症状が続くときは専門機関に相談してください。
3歳の吃音で陥りがちな3つの落とし穴
落とし穴1 − 原因を一つに決めようとする
「保育園のせい」「あのとき叱ったせい」と単一の原因を探すほど、事実から遠ざかります。原因は複数の要因の重なりで、単独犯はいません。
落とし穴2 − 「様子見」を根拠なく長引かせる
幼児期の吃音は自然に軽くなることが多いのですが、家族歴や発音の弱さなど持続に関係する要因が重なる子もいます。当てはまるなら、自然回復を待ち続けるより早めに相談するほうが安心です。
落とし穴3 − 不安と情報を一人で抱え込む
ネットの断片情報だけで判断せず、記録を手に専門家にあたるのが近道です。吃音は時期によって出方が変わるため、毎日の話し方の様子を記録しておくと、経過の波を専門家に伝えやすくなります。
まずは日々の様子を記録することから小さく始めるのが現実的です。アプリなどで記録を続けておくと相談のときに役立ちます(記録は治療の代わりではありません)。言語聴覚士など専門機関に相談できる場合は、そちらが確実です。
よくある質問
3歳の吃音は自然に治りますか?
幼児期に始まった吃音の多くは徐々に軽くなり、少なくとも半数は特別な指導をしなくても小学校入学ごろまでにみられなくなるとされています。ただし持続する子もおり、回復するかどうかは子どもごとに異なるため、気になるときは専門家に相談すると安心です。
3歳で吃音が出るのは親の育て方のせいですか?
いいえ。育て方やしつけが吃音の原因ではないことは、公的資料が明確に否定しています。原因は体質・発達・環境などが重なって生じると考えられています。
3歳の吃音はどんな話し方ですか?
音や言葉のはじめを繰り返す「連発」、音を引き伸ばす「伸発」、声が詰まって出にくい「難発」の3つが代表的で、どれか一つ以上がみられます。出方には時期による波があります。
様子を見るべきか、受診すべきか迷います。
吃音の家族歴がある、発音の検査成績が振るわない、吃音の頻度が高い、非語の復唱が苦手、といった要因が重なる子は持続しやすいと報告されています。当てはまる場合や本人が気にしはじめた場合は、早めに言語聴覚士へ相談することをおすすめします。
3歳の吃音はどこに相談すればいいですか?
言語聴覚士のいる医療機関や、自治体のことばの教室が相談先になります。就学前の吃音では、親子で言語聴覚士のもとに通って家庭での関わり方の指導を受けるのが一般的です。
まとめ
- 3歳の吃音はめずらしくなく、多くは2〜5歳の就学前に始まり、4歳までに約11%の子にみられます。
- 話し方は連発・伸発・難発の3つ。出方には時期による波があります。
- 原因は体質・発達・環境の重なりで、親の育て方は原因ではありません。
- 幼児期の吃音は自然に軽くなることが多い一方、家族歴や発音の弱さなど「持続しやすさ」の目安が当てはまるときは早めに相談を。
- 相談先は言語聴覚士のいる医療機関やことばの教室。毎日の様子の記録が相談に役立ちます。
