2歳で吃音が出るのは珍しくない — まず知ってほしいこと
まず知っておいてほしいのは、2歳ごろに吃音が出はじめるのは、決してめずらしいことではない、ということです。吃音の多くは幼児期に始まり、研究を統合したレビューでは、4歳までにおよそ11%の子どもが吃音を経験するとされています。
吃音の原因はまだ完全には解明されていませんが、子ども自身が持っている素因的な要因と、環境の要因がある条件で組み合わさったときに生じるのではないか、と考えられています。2歳という、言葉が急速に育つ時期に起こりやすい現象で、「親の育て方が悪かったから」ではありません。まずは、必要以上に自分を責めないことが出発点です。
これは吃音症?2歳での見分け方 — 連発・伸発・難発
吃音に特徴的な話し方は、大きく3つのタイプに分けられます。2歳の子の様子がどれに当てはまるか、まず落ち着いて見てみましょう。
- 連発(れんぱつ):はじめの音を繰り返す。例「ぼ、ぼ、ぼくは」。2歳ではこの連発から始まることが多いです。
- 伸発(しんぱつ):音を引き伸ばす。例「ぼーーーくは」。
- 難発(なんぱつ):ことばがつまってなかなか出ず、間があいてしまう(ブロック)。例「・・・・ぼくは」。
多くは軽い繰り返し(連発)から始まり、進むと伸発や難発があらわれることがあります。また、調子のよい時期と出やすい時期の「波」があるのも特徴で、いったんおさまったように見えて、またぶり返すこともめずらしくありません。
当事者の母の声(30代・専業主婦/個人ブログ・まとり)
呼吸すらできない無音のどもり
2歳半ごろに音を繰り返す連発が始まった息子が、やがてことばが出ずに間があく「難発」に近い状態にまで変化していったことを、母親はこう書き残しています。連発から難発へと様子が変わっていくのは吃音の進み方の一つのパターンで、こうした変化は相談を考える手がかりになります(後の「様子見と受診の分かれ目」で扱います)。
出典: 幼児の吃音と回復についての記録(個人ブログ)(台帳: V0014)
2歳で吃音が出る原因 — 言葉が伸びる時期と体質
2歳前後は、単語が二語文・三語文へとつながり、話したいことが一気に増える時期です。伝えたい気持ちに、話す仕組みの発達が追いつかない場面が増えるのも、この時期の特徴です。吃音の原因は一つではなく、生まれ持った素因と環境の要因が組み合わさって生じると考えられています。
大切なのは、2歳で気づいた今の状態が、そのまま固定されるわけではないということです。発達の途上にある低年齢の子どもの状態は、発達や環境によって変化していくものだと考えられています。だからこそ「この子は一生このままだ」と決めつける必要はありません。
くり返しになりますが、しつけや愛情不足、親の接し方のまずさが吃音の原因ではないことは、専門の資料でもはっきり否定されています。自分を責める時間より、子どもが話しやすい環境をつくることにエネルギーを向けるほうが建設的です。
「様子見」と「受診」の分かれ目 — いつ動くべきか
2歳の吃音でいちばん知りたいのは、「このまま様子を見ていいのか、それとも早めに相談すべきか」でしょう。ここが、この記事でもっとも伝えたい部分です。
幼児期に始まった吃音の多くは、特別な指導をしなくても自然におさまっていきます。吃音のある幼児の少なくとも半数は、小学校に入学するぐらいまでに吃音が見られなくなるとされています。ですから、出はじめてすぐに深刻に考えすぎる必要はありません。
一方で、すべてが自然におさまるわけではありません。就学前の子ども(3〜5歳)を追跡した研究では、次のような要因があると、吃音が続きやすい(持続しやすい)傾向が報告されています。
- 家族に吃音のある人がいる(家族歴がある)
- 音の作り方(構音)を調べる検査の成績が低め
- ふだんの会話で、吃音特有の非流暢さが多く出る
- 意味のない音のならび(非語)を復唱する課題の成績が低め
これらは「あれば必ず続く」というものではなく、あくまで確率を高める要因です。こうした要因が思い当たるときや、次のような様子が続くときは、様子見だけにせず、早めに専門家へ相談する目安になります——連発から難発(ことばがつまって出ない状態)へ進んでいる、話すときに顔や体に力が入る、言いたい言葉を避ける・話すのを嫌がる、本人が話しにくさを気にしはじめている、そして発症からの期間が長引いている、といったサインです。
「様子を見る」か「相談する」かの二択で悩む必要はありません。記録をとりながら様子を見つつ、気になる点があれば相談する、という両立が現実的です。次に、どこへ相談すればよいかを整理します。
2歳の子への接し方の基本
相談先を考える前に、家庭で今日からできる接し方の基本を押さえておきましょう。専門家がおおむね共通して勧めているのは、次のような関わり方です。
- 話をさえぎらず、最後まで聞く。言い直させたり、「ゆっくり言って」と急かしたりしない。
- 話し方そのものを注意しない・指摘しない。
- 親自身が、少しゆっくりめにゆったりと話す。
- 吃音が出ても、話の内容にきちんと反応し、気持ちを受け止める。
- 親の不安な表情を、子どもにそのまま伝えないように気をつける。
当事者の母の声(2児の母/個人ブログ note・ななみ)
あ、これはわざとじゃないんだ
2歳3か月ごろに語頭を繰り返す話し方が突然始まったとき、この母親は最初「変なクセがつくよ」と注意してしまったといいます。けれど、きょとんとした我が子の顔を見て、わざとやっているのではないと気づいた——という一節です。まず「わざとではない」と親が理解することが、注意や言い直しをやめて、話しやすい環境をつくる出発点になります。育て方が原因ではないという事実は、こうして自分を責めがちな保護者にとっての支えにもなります。
出典: 息子と吃音(note・ななみ)(台帳: V0005)
受診科・相談先の目安 — 何科・どこへ
「相談したほうがいい気がするけれど、どこへ行けばいいのか分からない」という声はとても多いです。2歳の吃音の主な相談先は、次のとおりです。
- 言語聴覚士(ST)のいる医療機関:ことばの専門職です。吃音の評価や、家庭での関わり方の助言を受けられます。
- ことばの教室・地域の子育て/発達相談(保健センター・療育センターなど):2歳の段階でも、まず身近な相談窓口として利用できます。
- 小児科・かかりつけ医:どこに相談すべきか迷うときの最初の窓口として。必要に応じて専門機関を紹介してもらえます。
受診・相談の目安は、前の章で挙げたサイン(難発や随伴する力み、言葉の回避、本人の気がかり、症状の長期化)や、家族歴などの持続しやすい要因が当てはまるときです。就学後も吃音が続く場合でも、ことばの教室や言語聴覚士の指導・支援を受けることで、日常生活で大きな支障なく過ごせるようになることが多いとされています。「早すぎる相談」はありません。気になったら、その時点で相談して構いません。
2歳での早期介入 — リッカムプログラムとは
「2歳から何か訓練を受けたほうがいいの?」という疑問もよく聞かれます。就学前の子どもの吃音に対する代表的な介入として、リッカムプログラム(Lidcombe Program)という方法があります。
コクランという国際的な組織の系統的レビューでは、就学前(6歳以下)の吃音を対象にしたランダム化比較試験4件(2〜6歳の子ども151人)が統合され、リッカムプログラムは待機(何もしない)群とくらべて吃音の頻度を下げたと報告されています。このプログラムは、保護者が言語聴覚士の指導のもとで、家庭での子どもへの関わり方を学んで実践していく形をとります。
ただし、この結果は慎重に受け止める必要があります。エビデンスの確実性は非常に低い〜中程度で、含まれた研究にはバイアス(偏り)のリスクが高いものが多いと評価されているためです。また、プログラムは完了までにおよそ1〜2年かかる設計で、短期間で終わるものではありません。2歳で「今すぐ訓練を」と焦るより、まずは専門家に相談し、その子に合った時期と方法を一緒に考えるのが現実的です。
当事者の母の声(専業主婦・福岡県在住/たまひよ 家族体験記・言語聴覚士監修)
どうして僕はみんなみたいにしゃべれないの? どうして詰まっちゃうの?
2歳8か月で連発が始まった子が、就学前に自分の話しにくさを言葉にして訴えたときのことばです。この訴えをきっかけに、母親はオンラインで言語聴覚士に相談し、就学前の適応年齢のうちに指導のもとでリッカムプログラムに取り組むことを選んだといいます。これは一つの家庭の経過であり、リッカムプログラムは7歳未満を対象に言語聴覚士の指導下で行うことが前提です。効果や進め方には個人差があり、同じようにすればよいというものではありません。
出典: ある日突然、息子に吃音の症状が…(たまひよ)(台帳: V0006)
この先どうなる?回復の見通しと予測因子
最後に、いちばん気がかりな「この先どうなるのか」を整理します。くり返しになりますが、幼児期に始まった吃音の多くは自然におさまり、幼児の少なくとも半数は小学校に入学するぐらいまでに吃音が見られなくなるとされています。
一方で、続く場合もあります。どんな子が続きやすいかは前述のとおりで、家族歴・構音の弱さ・非流暢さの多さ・非語復唱課題の成績などの要因を組み合わせると、持続する確率をより正確に見積もれることが研究で示されています。これは「わが子が続くと決まる」という話ではなく、リスクを見て早めに手を打つための材料です。数字だけで一喜一憂せず、専門家と一緒に経過を見ていくのが安心です。
2歳の吃音でやりがちな3つの落とし穴
落とし穴1 − 原因を一つに決めて自分を責める
「あのとき叱ったせい」「保育園に入れたせい」と単一の原因を探しても、答えは見つかりません。原因はまだ完全には解明されておらず、素因と環境の組み合わせで生じると考えられています。ネットには利き手や睡眠との関係などさまざまな説がありますが、確立した原因ではありません。育て方が原因でないことは、専門の資料でも否定されています。
落とし穴2 − 話し方を指摘して「直させよう」とする
「ゆっくり言って」「もう一回」と言い直させるほど、本人は話すことに緊張しやすくなります。2歳の段階では、話し方を直すことより、話しやすい環境を整えることが基本です。
落とし穴3 − 記録せず、記憶だけで判断する
吃音は波があり、日によって出方が変わります。「先週より増えた気がする」という記憶だけでは、様子見か相談かの判断が難しくなります。いつ・どんな場面で・どのタイプ(連発/伸発/難発)が出たかを短くメモしておくと、経過の変化に気づきやすく、相談のときにも役立ちます。
毎日の様子を記録することは、家庭で無理なく始められる第一歩です。記録はあくまで経過を見える化し、継続的に見守るための支援であって、それ自体が治療ではありません。気になる状態が続くときは、言語聴覚士など専門機関への相談を優先してください。
よくある質問
2歳の吃音は様子見でいいですか?
幼児期に始まった吃音の多くは自然におさまり、少なくとも半数は小学校に入学するぐらいまでに見られなくなるとされています。そのため、出はじめてすぐに深刻に考えすぎる必要はありません。ただし、家族歴などの要因があると続きやすい傾向が報告されており、難発や体の力み、話すのを避ける様子が見られるときも相談を検討する目安になるため、気になるときは記録をとりつつ早めに相談すると安心です。
2歳の吃音は何科に相談すればいいですか?
言語聴覚士のいる医療機関、ことばの教室や地域の発達相談(保健センター・療育センターなど)、まず迷うときはかかりつけの小児科が窓口になります。就学後まで続く場合でも、ことばの教室や言語聴覚士の支援によって、日常生活に大きな支障なく過ごせるようになることが多いとされています。
2歳から訓練を受けたほうがいいですか?
就学前の吃音にはリッカムプログラムという方法があり、待機群より吃音の頻度を下げたという報告があります。ただしエビデンスの確実性は高くなく、完了までに1〜2年かかる設計のため、焦って始めるより、専門家に相談してその子に合った時期と方法を一緒に決めるのがよいでしょう。
吃音は親の育て方のせいですか?
いいえ。育て方や接し方のまずさが吃音の原因ではないことは、専門の資料ではっきり否定されています。原因はまだ完全には解明されておらず、生まれ持った素因と環境の要因が組み合わさって生じると考えられています。
2歳で吃音が出たら、この先ずっと続きますか?
多くは自然におさまりますが、家族歴・構音の弱さ・非流暢さの多さなどの要因があると続きやすい傾向が報告されています。これらは確率を高める要因であって、続くと決まるものではありません。低年齢の子どもの状態は発達や環境で変化していくものと考えられており、専門家と経過を見ていくのが安心です。
まとめ
- 2歳で吃音が出るのは珍しくなく、4歳までにおよそ11%の子どもが経験するとされます。原因は素因と環境の組み合わせで、親の育て方のせいではありません。
- 症状は連発・伸発・難発の3タイプ。連発から難発へ進む、力みや回避が出る、長引くといったサインや、家族歴などの持続しやすい要因があるときは、様子見だけにせず相談の目安です。
- 幼児期の吃音は少なくとも半数が就学ごろまでに自然におさまる一方、続く子もいます。相談先は言語聴覚士・ことばの教室・小児科です。
- 就学前にはリッカムプログラムという選択肢もありますが、エビデンスは慎重な解釈が必要で、時期と方法は専門家と決めるのが現実的です。
