まず結論から
- 就学後に吃音の指導にあたる場として、幼児吃音臨床ガイドライン2021は小学校の通級指導教室である「ことばの教室」を挙げています。
- どの小学校に教室があるか、幼児の相談に対応しているかは、地元の小学校か各地域の教育委員会に問い合わせるとよい、というのが同じガイドラインの案内です。中学校にも少しずつ設置されてきています。
- 月2回以上の積極的な介入をいつ始めるかについて、ガイドラインは幼児期を学年で区切り、年少組までは経過観察的な支援、年中組では開始を検討、年長組では開始を推奨、としています。
- 学齢期には約半数がいじめやからかいを経験するので対策が重要だと、日本耳鼻咽喉科学会会報の総説は書いています。動く理由は症状の重さだけではありません。
- 相談に対応している機関の多くは治療には対応できないことも多い、という注意もガイドラインは添えています。「相談できる場所」と「指導を続けてもらえる場所」は同じとは限りません。
ただし、誰が対象になるか・どう申し込むか・週に何回通うかは、自治体や学校によって違います。ここに書けるのは公的な資料に書かれている範囲と、実際に通った家庭の記録までで、お住まいの地域の答えではありません。
「通わせようか」と思うのは、たいてい症状ではなく場面から
ことばの教室に行こうと決める瞬間は、症状が急に重くなったときとは限りません。むしろ、本人が自分の話し方に気づいて言葉にした日であることが多いようです。2歳から吃音があった年長の次男について、様子を見ながら過ごしてきた母親が、その日のことを書き残しています。
保護者の声(2歳から吃音のある年長の次男の母。年少のときに市の発達相談で「様子見」と言われ、経過を見ていた/個人ブログ note)
お迎えに行って、次男に「よかったね」と言ったら、次男は言いました。
「全然、上手くできなかった…」
涙目
「上手くしゃべれなかった、どうしてしゃべれないの?なんで○○だけこんな変なしゃべり方になっちゃうの??」 それを聞いて、胸がギュッとつかまれたような、 なんとも言えない悲しい気持ちになりました。
12月の生活発表会。劇は「桃太郎」で、次男は一人で演じる役に自分から立候補し、最初の一言で音が繰り返され、引き伸ばされながらも、最後までやり切りました。母親の側からは、緊張しながら舞台に立ち続けた姿が誇らしく見えていた——その同じ一日を、本人は「全然、上手くできなかった」と受け取っていた。この落差が、母親の判断を変えます。吃音はこの子の特性で、その都度一緒に考えていけばいい、と気楽に構えていた姿勢を改め、もう一度言語聴覚士に相談してみようと動き出した。そのうえで、次男本人に「言葉の先生のところに行ってみる?」と聞き、うなずいたのを確かめてから通うことを決めています。動き出す時期については、公的な指針も年齢を区切って示しています。
出典: 吃音年長次男「ことばの教室」に通うことになったきっかけ(note)(台帳: V0009)
幼児吃音臨床ガイドライン2021は、月2回以上の積極的な介入を始めるタイミングを、園の学年で区切って示しています。3歳児クラス(年少組)までは経過観察的な支援を行うことを基本とし、4歳児クラス(年中組)では積極的な介入の開始を検討し、5歳児クラス(年長組)では積極的な介入の開始を推奨する、というものです。国立障害者リハビリテーションセンター系の発達障害ナビポータルも、この3段階をそのまま引いています。
なぜ年齢で答えが変わるのか。ガイドラインは両側のリスクを正面から書いています。あまりに早期に始めれば、自然に改善したはずの多くの子に不要な介入を行うことになりかねない。その一方で開始が遅すぎれば、効果的な指導を適時に受けられないまま就学を迎える子が多く出てしまう。実際、吃音は3歳前後に多く始まり、幼児の1割程度に生じ、始まってから2〜3年程度までの経過で7割以上が自然に治ると報告されています。回復の割合は男女でも違い、発症後、男児では3年で6割、女児では3年で8割が自然回復するとされています。
ただし同じ資料は、「将来なおりますか」と尋ねられても「男児で家族歴がある場合は、なおりづらい」としか返答できない状況だ、とも書いています。日本耳鼻咽喉科学会会報の総説も、発話に苦悶や努力が見られたり悪化する傾向があるとき、あるいは就学1年前頃になっても改善傾向がない場合に言語治療を開始する、という判断の置き方を示しています。年長の秋に「そろそろどうしよう」と迷うのは、指針の側から見ても自然なタイミングだということになります。就学前の一年の動き方は年長の吃音、就学前にすることの記事にまとめています。
うちの子は対象になるのか——「言語」と「情緒」の分かれ道
通級には、対象とする困りごとごとに種類があります。吃音のある子が申し込むのは、言葉の面を扱う教室(多くの地域で「ことばの教室」と呼ばれます)ですが、ほかの特性を併せ持つ場合は、どの教室を希望するかという選択が生まれます。4歳で吃音が始まり、自閉スペクトラム症の診断もある息子について、母親が就学前の相談の場で迷ったことを書いています。
保護者の声(4歳で吃音が始まった息子の母。息子は小学2年生で、隔週で言語通級に通う/日本吃音協会のサイトに寄せられた体験談)
息子の吃音は良くなったり悪くなったりで、酷い時は強いブロックが出ます。良い時も「1日吃音がない」という日はありません。年長になるころには「息子は吃音と一生付き合うことになるだろう」と思うようになりました。
そのため、就学前相談を受けることに。息子はASDもあるので、情緒通級も対象です。
しかし、集団生活に困り感がなく、吃音への支援の重要性を強く感じていた私は、言語通級を強く希望しました。幸い希望が通り、小学校入学から言語通級に通っています。
この母親が「強いブロック」と書いているのは、言葉が途中で止まって出てこなくなる状態のことです。発語が遅かったことから自治体の発達相談を受けていた流れで療育センターにつながり、そこから言語聴覚士へ渡されていました。年長になるころ、長く付き合うことになりそうだという見通しが立ち、就学前の相談——入学前に子どもの状態と就学先や支援の形を学校側と話し合う場——を受けることにします。診断の面では別の教室も対象に入っていたけれど、集団生活での困りごとは見当たらない。だから言葉のほうを強く希望した、という順序です。療育センターの支援は幼稚園の卒業と同時に終わり、現在は隔週の通級だけが続いています。就学後の指導の担い手について、ガイドラインもはっきり書いています。
出典: 【子育て我が家流】吃音の子供が話し好きに!理解ある環境の大切さ(日本吃音協会)(台帳: V0122)
幼児吃音臨床ガイドライン2021は、相談先の一覧の中で、就学後は小学校の通級指導教室である「ことばの教室」等が指導にあたるとし、就学前相談を受けている地域もあること、小学校の特別支援教育コーディネーター(校内の支援の調整役を担う先生)が就学前でも連携を担っていることがあることを書いています。就学前の相談先としては、幼児の吃音の治療経験がある言語聴覚士のいる病院やクリニック、自治体の(小児)リハビリテーションセンター、大学教育学部に付属する発達や言語の相談室などが挙げられ、地域の児童発達支援センターには言語聴覚士が在籍する場合が多く相談窓口になっている、とも記されています。
つまり、就学の前と後では窓口そのものが入れ替わります。上の記録で療育センターの支援が幼稚園の卒業で終わったのは、この切り替わりが実際に起きた形です。就学前に相談していた場所がそのまま続くとは限らないので、年長の時期には「卒園後はどこが引き継ぐのか」を先に聞いておくと、空白が生まれにくくなります。
どこに申し込み、どう通うのか——授業を抜けることへの迷いも含めて
申し込みの入口は、担任の先生からの声かけであることも、保護者から切り出すこともあります。そして多くの家庭が最初に引っかかるのが、「通っている間、在籍する学級の授業はどうなるのか」という点です。小学1年生の2学期から4年生まで通級に通った子の母親が、その始まりを書き残しています。
保護者の手記(鈴木久代さん。息子は2歳半で話し方の変化が現れ、3歳児検診では「様子をみましょう」と言われていた/全国大会の吃音分科会での実践発表・日本吃音臨床研究会の会報)
小学校に通うようになり、担任の先生から「2学期からことばの教室に通いませんか?」と言われて初めて、ことの重大さに気づきました。通常の授業を抜け、一人だけ別室で通級指導を受けることには、親の私に抵抗がありましたので、Aには相談しないで、隣のB小学校の通級指導教室に授業後通うことにしました。毎週水曜日、5時間目が終わるとAを迎えに行き、B小学校へ移動して6時間目の授業を親子いっしょに受ける生活が始まりました。
通級は、1年の2学期から4年の2学期の終わりまで続きましたが、親子共々楽しく通わせてもらいました。小学校を2校も通って2倍楽しんだ感じです。「通級って何?」から始まった私たち親子でしたが、担当の先生との出会いにより、Aは伸び伸びと育つことができました。
「通級って何?」から始まった、と書かれているとおり、この家庭にとっても最初は名前だけの制度でした。抵抗があったのは、授業を抜けて一人だけ別室へ行くという形のほうで、それを避けるために選んだのが「授業後に、隣の小学校へ、親子で一緒に通う」という通い方です。毎週水曜日の5時間目が終わると迎えに行き、移動して6時間目を二人で受ける。3年余り続いたその時間には、1週間の出来事を先生に話してノートに書いてもらい、それを本人が読み返す、というやりとりが毎回あったと書かれています。通い方は一つではない、ということが、この記録のいちばん実務的な部分です。どこに問い合わせるかについては、公的な資料が答えを持っています。
出典: 息子Aの吃音を受け入れて(日本吃音臨床研究会)(台帳: V0050)
幼児吃音臨床ガイドライン2021は、公立学校の言語障害通級指導教室(ことばの教室)がどの小学校にあるか、また幼児の吃音の相談に対応しているかどうかについては、地元の小学校あるいは各地域の教育委員会に問い合わせるとよい、と案内しています。国立障害者リハビリテーションセンターの発達障害情報・支援センターも同じ道筋を示していて、通っている学校か、地域の教育委員会に相談すれば、その地域の学校に設置されている「ことばの教室」などを紹介してくれるでしょう、と書いています。
窓口の名前を知らなくてもたどり着ける、というのがこの2つの資料に共通する点です。学校に直接聞きにくいときは教育委員会へ、教育委員会が遠く感じるなら学校へ——どちらから入っても同じ場所に着きます。その先の手続きの形(面談の有無、決定までの期間、送り迎えの要否、抜けた授業の扱い)は自治体ごとに違うので、問い合わせのときに一緒に確認しておくと二度手間になりません。在籍する学級の側でしてもらえることは吃音と学校の配慮の記事に、担任の先生にどう伝えるかは吃音を学校の先生へ伝えるときの記事にまとめています。
通うと何が変わるのか——本人には、その場では分からない
保護者がいちばん知りたいのは「行ったら良くなるのか」でしょう。けれど通っている当の子どもは、たいてい別のことを考えています。保育園の頃からことばの教室に通っていた人が、20代になってから当時の気持ちを書いています。
当事者本人の声(20代。保育園の頃から小学生時代までことばの教室に通っていた/個人ブログ note)
私、小学生の時、ことばの教室って好きじゃなかったんです。 「皆が行かない場所に行くのは恥ずかしいだけだし、行っても吃音が良くなるわけじゃないし、意味ない」 って。 担当の先生には申し訳なくて言えたもんじゃないですけどね。
だからたまに、 「今ことばの教室に行っています」って笑顔で言う小学生とか 「教室があってよかった」って言っている方をテレビとかSNSで見ると、
え、本当に? 嫌だったのは私だけなの?
「意味ない」と思っていた、と本人が書いています。けれど大学を卒業し、吃音と正面から向き合えるようになった今は、当時は嫌だったけれど行っていてよかった、気づいていなかっただけでたくさん意味があったのかもしれない、と書き直している。その理由として挙げているのは、話し方の改善ではありません。自分が吃音であると早くから理解できたことです。言葉が出ないときに「自分自身がおかしい」ではなく「吃音のせい」と切り分けられたので、自分を全部否定せずに済んだ——そう振り返っています。教室が効いた先は、発話ではなく学校生活の側にありました。研究の側でも、吃音のある子が教室で置かれやすい立場が調べられています。
出典: ことばの教室に行った意味(note)(台帳: V0228)
英国の研究チームは、吃音のある子どもが一人ずつ在籍する通常学級を集め、そのクラスの子ども全員に互いの好き嫌いを挙げてもらう方法で、教室の中での立ち位置を調べました。結果は、吃音のある子は吃音のない同級生より「嫌い」と挙げられることが有意に多く、人気があると分類されにくいというものでした。さらに、リーダーに挙げられることが少なく、いじめられている子・助けを求める子に挙げられることが多かったと報告されています。
同じ論文は、その背景の見立ても書いています。吃音のある子は授業や集団の場で声を出して参加するのをためらったり、うまく参加できなかったりすることが多い。そのことが周りから内気・引っ込み思案と受け取られ、その印象のせいで仲間関係が築きにくくなり、いじめの標的になりやすいのではないか、という筋道です。日本語の資料でも、学齢期に約半数がいじめやからかいを経験するので対策が重要だと書かれています。
だからこそ、通級の時間に扱われるのは、発表や日直のような場面の話になります。発達障害ナビポータルは、吃音のある子は話す場面でしか症状が出ないため悩みが過小評価されやすいとしたうえで、担任の先生・養育者・支援者が本人に「真似されていない?」「笑われていない?」「話し方を質問されていない?」とオープンに聞くことが、吃音の話をオープンにするきっかけになるとしています。学校では毎年クラス替えがあるため、早期発見とその対応法をオープンに話すことが予防につながる、とも書かれています。困りやすい場面として、日直の号令、音読、発表、かけ算の九九、学習発表会、卒業式が具体的に挙げられています。仲間からの否定的な反応に直面している学齢の子どもへの手立てとしては、どう返すかを一緒に考える活動や、教室で仲間に吃音を説明する取り組みを示した報告もあります。教室の中で実際に何をしているのかはことばの教室の吃音指導の記事に詳しくまとめています。
「通わない」という選択をしてもいいのか
紹介されたから必ず通わなければならない、というものではありません。一度足を運んで、そのうえで継続しないことを選んだ家庭もあります。3歳のころに言葉がつまる時期があり、5歳ごろには落ち着いてきていた息子について、通園先から市町村のことばの教室を紹介された母親の記録です。
保護者の声(4歳の息子の母。3歳のころ言葉がつまる時期があり、病院に相談したこともある/個人ブログ note)
うちの息子のタイプはというと、 言われたら倍にして言い返すタイプ。 やられたら倍でやり返すタイプ。笑
母の心の声としては、
『これ以上、作戦会議なんてしないで〜!!笑』
そんな感じでもあった。
結果的に、我が家としては継続して通うご縁は無かった。
笑いを交えて書かれていますが、この結論に至るまでに、この母親は実際に教室へ足を運んでいます。病院とは違う穏やかな時間が流れていたこと、先生が子ども自身を丁寧に見てくれたこと、そして「もし吃音を誰かに言われて嫌な気持ちになった時は、一緒に作戦会議をするんです」という言葉に感動したことが、同じ記事に書かれている。そのうえで、自分の子には今のところ必要がなさそうだと判断した。それでも、こういう場所がちゃんと存在していると知れたことは大きかった、実際に足を運んで自分の目で見て、その上で取捨選択できた、と結んでいます。行かないと決めるためにも、一度は見に行く価値がある——この記録が示しているのはそういう順序です。相談先は通級だけではないことも、公的な資料が書いています。
出典: 子どもの“吃音” ことばの教室を体感して感じたこと(note)(台帳: V0080)
発達障害情報・支援センターは、学校以外に吃音の相談を受け入れている専門機関について、各都道府県にある言語聴覚士会や発達障害者支援センターなどに問い合わせてみるとよい、としています。本人が望むなら、吃音のある人たちの自助グループに参加してみることも心を開いて自分のことを話す突破口になるかもしれないとして、その情報はホームページか言語聴覚士会への問い合わせで分かる、とも書いています。幼児吃音臨床ガイドライン2021の相談先の一覧にも、病院やクリニック、自治体の(小児)リハビリテーションセンター、大学に付属する相談室、児童発達支援センターが並びます。
そして、本人の気持ちの扱い方についても助言があります。吃音を隠したい・認めたくないという気持ちがあるなら、無理に受診させることはない。ただしその場合でも、保護者のほうが先に相談に行き、「聞いてきてほしいことがあったら教えてちょうだい」と本人に尋ねてみるのはいいことだ、というものです。大切なのは、困ったときに気軽に保護者へ相談できる状況を作っておくことと、保護者がどこに相談すればよいかを知っていることだ、とまとめられています。「通う/通わない」の二択にする前に、この二つが手元にあるかを確かめるほうが先ということになります。
すぐに通えないとき、中学以降はどうなるのか
申し込めばすぐ通える、とは限りません。制度の側の事情を、幼児吃音臨床ガイドライン2021自身がかなり率直に書いています。日本では吃音の専門家が不足しており、発症後すぐの治療を原則にすると治療を受けられない子がほとんどになってしまう、という現状認識です。そのうえで、吃音の専門家がいる機関では症状の軽重に関わらず多くの子が来るため、初診までに数か月の待機になってしまうことが多いとも書かれています。
待っている間が空白になりやすいことにも触れています。吃音を専門としていない施設での経過観察はしばしば放置も同然となる場合があり、その間は保護者の不安が解消されず、重症化したり、治療を受けないままに就学することになってしまう可能性も無視できない、という記述です。だからこのガイドラインは「戦略的対応」を名乗り、自然に治る力をできるだけ生かすために直接的な治療介入に入る時機を妥当な範囲で遅らせること、慣れていない施設でも大まかな重症度の判断と軽度の子の経過観察ができるようにすること、重い子に対応できる施設と分担することを、優先順位として挙げています。順番待ちは家庭の努力不足ではなく、分担の設計に織り込まれた前提だということです。
もう一つ、多くのページが書かないまま終わるのが「中学以降」です。発達障害情報・支援センターは、中学校にも「ことばの教室」は少しずつ設置されてきていますと書いており、通っている学校か地域の教育委員会に相談すれば設置状況を紹介してもらえる、としています。同じ解説は、幼児期から小学校低学年までの吃音と、それ以降も続く吃音では性質が違っていることがあるとも説明します。どもるときに力が入ったり、言葉がつまって出ないことが症状の中心になり、言いにくい言葉は言いやすい言い換えで避けるため、周囲からはどもっていないように見えて気づかれないことがある、という説明です。
日本耳鼻咽喉科学会会報の総説も、8歳頃以降は自然に治ることが少なくなる一方で状況によって出方が変わりやすくなること、学齢の後半以降は吃音を隠そうとして多彩な、しばしば不適切な対処行動を身につけること、思春期以降は社交不安障害やうつなどの精神科的な問題も併発しやすいことを、一続きの経過として書いています。そして、言語訓練は単独では長期的な有効率が低く、心理面・社会面のサポートも必要であるとしています。通級を「話し方の練習に行く場所」とだけ考えていると、この部分が抜け落ちます。中学・高校の時期の見え方は吃音のある中学生・高校生の記事に、小学生の時期の変化は小学生の吃音への対応の記事にまとめています。
次のようなときは、通級に通っている・いないにかかわらず、学級担任やことばの教室、言語聴覚士への相談を考えてみてください(あくまで目安で、当てはまらなくても相談して構いません)。
- 就学1年前頃になっても改善する傾向が見られない、あるいは話すときの苦しさや努力が目立つ
- 音読・発表・日直の号令といった場面を本人が避け始めている
- クラスで真似されたり笑われたりしていると本人が話している
1つめは学会誌の総説が言語治療を始める判断時期として挙げているもの、2つめと3つめは支援する側の資料が実際に確認を勧めている項目です。窓口の探し方は吃音の相談先の記事に、電話で問い合わせること自体がつらい場合は吃音ホットラインの記事と電話だけが苦手なときの記事にまとめています。
通級をめぐって陥りやすい3つの落とし穴
落とし穴1 − 「通えば話し方が変わる」と期待して、変わらないとやめる
幼児吃音臨床ガイドライン2021は、幼児期は治療の有効率も比較的高く、今世紀に入ってから有効率7割の治療方法が複数確立された一方で、学齢期になると治療の有効性が低くなりがちで、吃音のために学習や学校生活の困難も生じやすくなる、と書いています。学会誌の総説も、言語訓練は単独では長期的な有効率が低く、心理面・社会面のサポートも必要だとしています。話し方が変わったかどうかだけを物差しにすると、教室で起きている変化——場面ごとの手立てが増える、自分の言葉で説明できるようになる——が全部「成果なし」に見えてしまいます。
落とし穴2 − 「様子を見ましょう」と言われたまま、就学を迎える
ガイドラインは、吃音を専門としていない施設での経過観察はしばしば放置も同然となる場合があり、その間は保護者の不安が解消されず、重症化したり、治療を受けないままに就学することになってしまう可能性も無視できない、と明記しています。年少組までは経過観察、年中組では開始を検討、年長組では開始を推奨、という区切りも示されています。「様子を見る」は、次にいつ誰と確かめるかが決まっているときだけ、経過観察になります。決まっていなければ、ただ時間が過ぎるだけになりかねません。
落とし穴3 − 在籍する学級に何も伝えないまま通わせる
吃音のある子は同級生から「嫌い」と挙げられることが有意に多く、いじめられている子・助けを求める子に挙げられやすいと報告されています。その背景として、授業で声を出して参加するのをためらうことが内気と受け取られ、仲間関係の難しさにつながるのではないかという見立ても示されています。学校では毎年クラス替えがあるため、真似・笑い・質問について早く気づいて対応をオープンに話すことが予防につながる、と支援者向けの資料は書いています。教室で仲間に吃音を説明する取り組みを報告した論文もあります。
どの場面で言葉が出にくかったのか、どの週が重かったのかは、後から思い出そうとすると曖昧になります。日直の号令・音読・発表といった場面を具体的に尋ねることが困り感の早期発見につながるとされているので、気づいたことを短くでも書き留めておくと、面談や問い合わせのときにそのまま材料になります。記録から始めて、ことばの教室や言語聴覚士に相談できる場合はそちらが確実です。
よくある質問
吃音があると、通級(ことばの教室)に通えますか?
幼児吃音臨床ガイドライン2021は、就学後は小学校の通級指導教室である「ことばの教室」等が吃音の指導にあたる、と書いています。ただし、誰が対象になるかの決め方や申し込みの手順は自治体や学校によって違うため、全国共通の基準を示した資料は手元にありません。どの小学校に教室があるか、相談に対応しているかは、地元の小学校か各地域の教育委員会に問い合わせるとよい、というのが同じガイドラインの案内です。
通級に申し込むには、どこに連絡すればいいですか?
公立学校の言語障害通級指導教室(ことばの教室)がどの小学校にあるかは、地元の小学校あるいは各地域の教育委員会に問い合わせるとよい、とされています。発達障害情報・支援センターも、通っている学校か地域の教育委員会に相談すればその地域の「ことばの教室」などを紹介してくれるでしょう、と書いています。小学校の特別支援教育コーディネーター(校内の支援の調整役の先生)が就学前でも連携を担っていることがあります。
いつごろ動き出せばいいですか?
幼児期については、年少組までは経過観察的な支援を基本とし、年中組では積極的な介入の開始を検討、年長組では開始を推奨する、とガイドラインが示しています。日本耳鼻咽喉科学会会報の総説は、発話に苦悶や努力、悪化の傾向があるとき、または就学1年前頃になっても改善傾向がない場合に言語治療を開始する、という判断の置き方を書いています。始まってから2〜3年程度までの経過で7割以上が自然に治るとも報告されています。
通級に通えば、吃音は治りますか?
学齢期になると治療の有効性が低くなりがちで、吃音のために学習や学校生活の困難も生じやすくなる、とガイドラインは書いています。また言語訓練は単独では長期的な有効率が低く、心理面・社会面のサポートも必要だとされています。学齢期に約半数がいじめやからかいを経験するので対策が重要だとも書かれており、支援の重心は話し方より学校生活の側にあります。
中学生になっても通級には通えますか?
中学校にも「ことばの教室」は少しずつ設置されてきています、と国立障害者リハビリテーションセンターの発達障害情報・支援センターは書いており、通っている学校か地域の教育委員会に相談すれば設置状況を紹介してもらえる、としています。学校以外の相談先としては、各都道府県の言語聴覚士会や発達障害者支援センターが挙げられ、本人が望むなら自助グループという道もあると書かれています。
まとめ
- 就学後の吃音の指導にあたる場として、幼児吃音臨床ガイドライン2021は小学校の通級指導教室「ことばの教室」を挙げている。問い合わせ先は地元の小学校か各地域の教育委員会。
- 動き出す時期の目安は学年で示されている。年少組までは経過観察、年中組で検討、年長組で推奨。就学1年前頃になっても改善傾向がないときが、言語治療を始める判断時期の一つとされている。
- 通い方は一つではない。授業を抜けることに抵抗があれば授業後に他校へ通う形を選んだ家庭もあり、手続きの形は自治体で違う。
- 教室が効いた先は、話し方ではなく学校生活の側にあることが多い。吃音のある子は同級生から拒否やいじめの枠に挙げられやすく、学齢期に約半数がいじめやからかいを経験するとされる。
- 通わないという選択もある。相談先は通級だけではなく、各都道府県の言語聴覚士会・発達障害者支援センター・自助グループという道もある。大切なのは、本人が気軽に相談できる状況と、保護者がどこに相談すればよいかを知っていることだとされている。