ことばの教室の吃音指導|治す場ではない・指導の中身・通い方

目次

「ことばの教室に通うことになったけれど、そこで吃音(きつおん)の何をしてもらえるのだろう」「担当になったものの、吃音のある子に何をすればいいのか分からない」——ことばの教室と吃音が結びつくとき、保護者の側にも、担当する先生の側にも、同じ形の迷いが立ちます。通うほうは中で何が起きるのか見えず、迎えるほうは「治してあげられない」ことを最初にどう伝えるかで迷う。その迷いを言葉にしたページは、意外なほど見当たりません。

この記事では、ことばの教室の吃音指導について、何を目標にしているのか、教室の中で実際に何をしているのか、在籍する学級にどう伝えるのか、そしてどうやって通い始めるのかを整理します。よりどころにするのは、幼児吃音臨床ガイドライン2021、日本吃音・流暢性障害学会の解説、国立障害者リハビリテーションセンター系の発達障害ナビポータル、日本耳鼻咽喉科学会会報の総説といった公的な資料と、ことばの教室の担当教員2人・保護者・当事者本人が自分の言葉で残した記録です。なお、同じ書名の本(『もう迷わない!ことばの教室の吃音指導』菊池良和編著、高橋三郎・仲野里香、学苑社、2022年7月)が九州大学の教員データベースの著書一覧に載っていますが、この記事は本の中身を紹介するものではありません。

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吃音当事者。研究論文と当事者の声をもとに、吃音の情報を出典つきで発信しています。

この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の判断に代わるものではありません。気になる症状があるときは、言語聴覚士やことばの教室にご相談ください。書籍の本文・目次・教材の中身は引用も紹介もしていません。

まず結論から

  • ことばの教室(小学校の通級指導教室)は、就学後に吃音の指導にあたる場として、幼児吃音臨床ガイドライン2021が相談先の一つに挙げています。
  • 吃音の原因そのものを取り除く治療について、同じガイドラインは「現在は、不可能である」と答え、行わないよう勧められるという最も強い否定の等級を付けています。
  • 学齢期は、幼児期にくらべて治療の有効性が低くなりがちで、吃音のために学習や学校生活の困難も生じやすくなるとされています。つまり、教室の仕事は症状を消すことより、学校生活のほうに向きます。
  • 学齢期に約半数がいじめやからかいを経験するので対策が重要だと、日本耳鼻咽喉科学会会報の総説は書いています。
  • 本人が自分から「どもる」と伝えること(自己開示)を30年ぶん集めて整理した研究では、18件中15件(83.3%)で全体として好意的な影響が認められました。

ただし、これは全国のことばの教室に同じ指導があるという意味ではありません。担当者や地域によって中身も回数も違い、相談に対応している機関の多くは治療には対応できないことも多い、とガイドライン自身が注意を添えています。

ことばの教室は、吃音を「治す」場所なのか

ことばの教室は、在籍する学級に籍を置いたまま、決まった時間だけ別の教室で指導を受ける仕組み(通級指導教室)の一つです。就学後は、この教室が吃音の指導にあたると、幼児吃音臨床ガイドライン2021は相談先の一覧の中に書いています。ただ、「指導」という言葉から思い浮かべるものと、実際に行われていることの間には、たいてい大きなずれがあります。

保護者の声(40代・男児3人の母。次男が就学前検診をきっかけに月1〜2回の通級を始めた/個人ブログ note)

この教室は「吃音」を対象にしたもので、驚いたのはここが「治す場所ではない」ということです。

ここでは「吃音を知ること」「吃音を知ってもらうこと」が大切にされていて、友達に指摘されたときの対策や、学校での発表、日直当番のときにどうするか、といった具体的な相談もできます。先生と一緒に解決策を考えたり、練習したりする場でした。

保育園の先生の指摘で次男の話し方に名前がついたあと、就学前検診で吃音の疑いを伝えられ、町のことばの教室につながった母親の記録です。驚いた、と書いているのは、教室の目的が想像と違ったからでした。挙げられている中身は、友達に指摘されたときの対策、学校での発表、日直当番——どれも症状そのものではなく、学校生活の場面の側にあります。記事の終わりでこの母親は、通ってみて、吃音は「治すもの」ではなく「知って支えるもの」だと学んだ、と書いています。この向きは、母親ひとりの受け取り方ではありません。ガイドラインも、学齢期については症状の解消より学校生活の支援へ重心を移す形を書いています。

出典: 次男の吃音、通級「ことばの教室」で学んだこと(note)(台帳: V0291)

幼児吃音臨床ガイドライン2021は、「吃音の原因療法は可能か」という問いに「現在は、不可能である」と答え、行わないよう勧められるという最も強い否定の等級を付けています。理由として、吃音に対して脳内の遺伝子の変異を直接治療することはまだ行われておらず、すでに吃音が生じて脳内の回路ができている状態で遺伝子を入れても、その人の吃音がどの程度治るかは分かっていない、と説明されています。

そのうえで同じガイドラインは、答えが年齢で変わることを正面から書いています。幼児期は治療の有効率も比較的高く、今世紀に入ってから有効率7割の治療方法が複数確立された一方で、学齢期になると治療の有効性が低くなりがちで、吃音のために学習や学校生活の困難も生じやすくなる、という記述です。だからこそ、できれば就学前までに吃音が治癒または軽快することを目指し、解決しない場合は円滑に学校生活の支援と連携できるようになることが良い、と続きます。ことばの教室に子どもが来る時点で、多くはこの「解決しない場合」の側に立っています。

学齢期の目標が、症状を消すことより学校生活の側へ移る流れを順に並べた図。前提として、吃音の原因療法は「現在は、不可能である」とされ、推奨グレードDが付いている。1 幼児期は、就学前までの治癒や軽快を目指す(幼児期は治療の有効率も比較的高く、有効率7割の治療方法が複数確立された)。2 就学までに解決したか。解決しない場合は、3 学校生活の支援と連携する(学齢期は治療の有効性が低くなりがちで、学習や学校生活の困難も生じやすくなる)。4 クラスや学校の環境を整える(過半数が笑われたりからかわれ、二次障害が生じやすい。本人の意向を聴取しつつ行う)。5 周りの大人が本人に聞く(「真似されていない?」「笑われていない?」「話し方を質問されていない?」)。6 本人が自分から吃音を伝える(30年ぶんを集めた総説では、18件中15件で全体として好意的な影響が認められた)。
図1: 学齢期の目標の置き場所と、そこから続く手立て。出典: 幼児吃音臨床ガイドライン(第1版)2021 第I章・Q7-1 / 発達性吃音の研究プロジェクト「治療の解説」(学童期) / 発達障害ナビポータル「小児期発症流暢症(吃音)」 / Coalson ら (2026) J Fluency Disord.

学齢期に何が起きやすいのかも、資料が具体的に書いています。吃音のある子の過半数が笑われたりからかわれたりしており、それによって自尊感情の低下や不登校といった二次的な問題が生じやすくなるので、本人の意向を聞きながらクラスや学校の環境を整えることが必要だ、という記述です。また、吃る不安があると話す行為が意識的になり、意識するほど言葉が滑らかに出なくなって、さらに意識的になる、という悪循環も説明されています。教室が「治す場所ではない」のは、手を抜いているからではなく、手を掛けるべきところが別にあるからだ、と読むほうが実態に近いといえます。

どうやって通うのか——申し込みと、抜けた授業の扱い

「通ったほうがいいのかどうか」の前に、そもそもどう申し込むのかが分からない、という段階があります。抜けた授業の時間はどうなるのか、送り迎えは誰がするのか——手続きの形は自治体で違いますが、実際に通した家庭の説明がいちばん具体的です。

保護者の座談会の記録(社会福祉法人各務原市社会福祉事業団が開いた相談事業「吃音のつどい」。15家族が参加し、子の学年のみ公開)

入学の時に、市内の通級(通級指導教室)や支援学級の一覧表がもらえた。利用希望は市の教育委員会に相談し面談がありその後通知が来て開始した。自分の学校に通級がない場合は、親が地区の学校に送迎が必要。週1回教科の1時間分。その時間は欠席扱いにはならない。自分の学校内に通級があると親の送迎は不要。利用に際しては子どもの気持ちを聞いてみること。クラスで緊張状態が続いているようなら、息抜き的に利用する方法もあるし、途中でやめてまた再開することもできる。

・小3 クラスでは発言が少ないが、通級だと家と同じくらいリラックスして先生と話ができるので、学校にそういう場があることはいいかなと思って通っている。

3年ぶりに対面で開かれた集まりで、15家族が順に質問と答えを出し合った記録です。手続きは一覧表・教育委員会への相談・面談・通知という順で、抜けた1時間は欠席の扱いにならない。自分の学校に教室が無ければ送迎がいる。そして最後に、利用に際しては子どもの気持ちを聞いてみること、と添えられています。途中でやめて再開もできる、という一文があるのは、迷ったまま決めきれない家庭が同じ場にいたからでしょう。相談先の探し方については、ガイドラインが問い合わせの順番まで書いています。

出典: 第8回「吃音のつどい」座談会(社会福祉法人各務原市社会福祉事業団)(台帳: V0083)

幼児吃音臨床ガイドライン2021は、相談先として、幼児の吃音の治療経験がある言語聴覚士のいる病院やクリニック、自治体の(小児)リハビリテーションセンター、大学教育学部に付属する発達や言語の相談室などを挙げ、地域の児童発達支援センターには言語聴覚士が在籍する場合が多く相談窓口になっている、としています。そのうえで、就学後は小学校の通級指導教室である「ことばの教室」等が指導にあたり、就学前相談を受けている地域もあること、小学校の特別支援教育コーディネーター(校内の支援の調整役の先生)が連携を担っていることがあることを書いています。公立学校のことばの教室がどの小学校にあるか、幼児の相談に対応しているかは、地元の小学校か各地域の教育委員会に問い合わせるとよい、というのが同じガイドラインの案内です。

相談先が就学前と就学後で変わることを順に並べた図。1 「吃音かな?」と思ったら——近隣の施設が分からないときは、地元の保健センターか各都道府県の言語聴覚士会へ。2 子どもは就学前か、就学後かで分かれる。就学前なら、3 幼児の相談・治療の窓口へ——言語聴覚士のいる病院やクリニック、(小児)リハビリテーションセンター、大学に付属する相談室、児童発達支援センター。就学後なら、4 小学校の通級指導教室「ことばの教室」等——どの小学校にあるかは、地元の小学校か各地域の教育委員会に問い合わせる。ただし、相談対応機関の多くは治療に対応できないことも多い。
図2: 相談先は、就学前と就学後で変わる。出典: 幼児吃音臨床ガイドライン(第1版)2021 Q23(本文と解説)

ここで一つ、先に知っておきたい注意があります。ガイドラインは、相談対応機関の多くは治療には対応できないことも多い、と明記しています。相談できる場所と、指導を続けてもらえる場所は同じとは限らない、ということです。だからこそ、幼児の吃音の治療に対応できる機関が中心になって、保健センター、保育所・幼稚園・認定こども園、地域の耳鼻咽喉科・小児科、小学校のことばの教室や養護教諭・特別支援教育コーディネーター・教育委員会、自治体の福祉や母子保健の窓口と連携し、発見と基本的な対応を分担する形が必要だ、と示されています。就学前の医療機関の入口については小児吃音外来の記事に、学校側でできる配慮の中身は吃音と学校の配慮の記事にまとめてあります。

教室の中では、何をしているのか

では、週1回のその時間に何が起きているのか。個別の指導だけでなく、同じ教室に通う子どもどうしを集めたグループ活動を置いている教室があります。静岡のことばの教室が残した記録に、子どもが子どもの相談に答える「相談員になろう」という活動の場面が、やりとりのまま載っています。

ことばの教室のグループ活動の記録(静岡市立の教室・担当教員による実践報告。H・U・Rは通級している子ども、担は担当教員)

H 僕は、友だちと話すときにどもってしまいます。どもりは治らないのでしょうか。どうしたらいいですか。

U 質問してもいいですか? 友だちに悪口を言われたことあるのですか?

H 何回かある。だからどもるのは嫌です。

担 相談員さんもあるの?

R ある。「そういうこと言わないで」とか「ふざけるな。それがどうした?」と言う。

U 僕もある。でも、どもりについて本当に分からなくて聞いてきたんだったら答える。でも、そうでなかったら無視する。

R どもりは治らないかもしれない。だから、気持ちを成長させた方がいい。

担 成長させるってどういうことですか?

R 「みんなの前でどもるのは嫌だ」と、普段から思わないようになること。

担 Rはもう成長できたの?

R いや、僕もまだ成長の途中です。

この活動は、それまで架空の相談者の悩みに答える形で続けられてきたもので、仲間本人からの直接の相談はこの日が初めてだった、と担当者は書いています。相談された二人が「えっ?ほんとに?」と驚いた表情を見せてから、真剣に答え始めた。悪口を言われた経験があるかを質問で確かめ、自分にもあると明かし、言い返す言葉を具体的に出し、最後に「僕もまだ成長の途中です」と留保する。大人が答えを配ったのではなく、子どもが自分の経験から言葉を作っています。研究の側から見ても、自分の吃音を相手に伝えるという行いには、繰り返し調べられてきた効果があります。

出典: ことばの教室の実践(日本吃音臨床研究会「吃音と上手につきあうための吃音相談室」)(台帳: V0046)

自分から「自分は吃音がある」と相手に伝えること(自己開示)については、30年ぶんの研究を条件を決めて集めて整理した研究があります。含まれた18件の研究のうち15件(83.3%)で、自己開示は全体として好意的な影響を持っていました。さらに、伝え方を条件にして比べた研究では、謝る形の開示や開示しない場合よりも、謝らない形の開示のほうが好意的に受け止められており、これは13件中12件(92.3%)にあたります。著者らは、謝らない形の自己開示が、否定的な思い込みを向けられるかもしれないという負担(ステレオタイプ脅威)をやわらげる、と結論しています。ただし、話し手や聞き手の性別による違いは研究によってまちまちで、伝える場面・年齢・吃音の頻度や重さ・聞き手が吃音のある人を知っているかどうかは、そもそも調べた研究が少ない、とも書かれています。

日本語の資料にも同じ筋の記述があります。周囲への対応は本人が自分の吃る事実を開示して協力を求めることになり、わざとどもってみせる(随意吃)などで先に伝えておくと心理的な負担が減り、楽にやりとりできるようになる、というものです。また、同じ立場の人どうしが出会う場について、日本吃音・流暢性障害学会は、「吃音があるのは自分だけではない」と認識し、共通の体験を語り合い、苦悩を分かち合い、互いに援助し合うことが自助団体の活動の中心だ、と説明しています。上の記録で起きていたのは、学校の中に小さくその場ができていた、ということでもあります。

在籍する学級に伝えるか、隠すか

通級は、在籍する学級を離れる時間が必ず生まれます。その時間をクラスにどう説明するか——ここを決めないまま始めると、子どもが一人で処理することになります。保育園から小学4年生までことばの教室に通った人が、当時していたことを書き残しています。

当事者本人の声(20代。地元の小学校の中にあったことばの教室に、保育園の頃から小学4年生まで通った/個人ブログ note)

だからもし、ことばの教室の前を誰かが歩いていたりしたら、

「私はこの教室に用はないでーす」って心の中で言いながら

通り過ぎて、見えなくなったら、

忍者のようにそそくさと教室に入っていました。

教室に入れば、中の様子が見えるところはないので、

一安心なんですけどね。

担任の先生や言葉の教室の先生から、

クラスメイトへの説明は一切なかったので、

私が隠せばなんとか隠せる状況だったので、

そんなこんなで小学3年生からこの行動をし続け、

小4になると、もういつバレるのかという恐怖と戦う日々に、

身体的にも精神的にも疲れてしまって、

何のためにことばの教室に行っているのか分からなくなりました。

同じ記事には、通う日に「今日お母さんが迎えに来る日なんだったぁー、忘れてたよ~」と演技をして、保護者専用駐車場まで行き、木の下に隠れて時間をつぶし、友達が帰ったころに教室へ走ったこと、下駄箱に自分の靴が残るのを見られたくなくて別の玄関に靴を移したことが書かれています。小学3年生から小学4年生まで、この段取りが続きました。そして本人が理由として挙げているのが、担任からもことばの教室の先生からも、クラスメイトへの説明が一切なかったこと。学級の側に説明があるかどうかは、本人の負担の量を直接変えます。

出典: ことばの教室に通っていた話(note)(台帳: V0227)

教室の中での立ち位置については、英国の研究があります。吃音のある子ども16人が一人ずつ在籍する通常学級を集め、そのクラスの子ども全員(合計403人)に、好きな子と嫌いな子を3人ずつ挙げてもらう方法で調べたものです。結果は、吃音のある子は吃音のない同級生より「嫌い」と挙げられることが有意に多く、人気があると分類されにくいというものでした。拒否されたグループに入った割合は43.75%で、吃音のない子(18.86%)の2倍以上、人気のグループに入ったのは6.25%で、吃音のない子は25.84%でした。行動の分類でも、いじめられている子(37.5%対10.6%)と助けを求める子(25%対13.18%)に挙げられる割合が高く、まとめとして、吃音のある子は弱い立場を示す枠に集まり、前向きな枠であるリーダーには少ない、と述べられています。

この研究でもう一つ重要なのは、そうした立場の割り振りが、吃音の重さでは決まっていなかったことです。いじめられている子に挙げられた中にも、拒否のグループに入った子の中にも、話しにくさの重い子と軽い子の両方が含まれていました。「軽いから大丈夫」も「重いから仕方ない」も、この結果からは言えません。日本の資料でも、学齢期に約半数がいじめやからかいを経験するので対策が重要だ、と書かれています。

では何をするか。発達障害ナビポータルの解説は、吃音のある子どもは話す場面でしか症状が出ないため悩みが過小評価されやすいとしたうえで、担任の先生・養育者・支援者が本人に「真似されていない?」「笑われていない?」「話し方を質問されていない?」とオープンに聞くことが、吃音の話をオープンにするきっかけになるとしています。学校では毎年クラス替えがあり、真似・笑い・質問を受けるリスクがあるため、早期発見とその対応法をオープンに話すことが予防につながる、と続きます。困りやすい場面として、日直の号令、音読、発表、かけ算の九九、学習発表会、卒業式が挙げられています。仲間からの否定的な反応に直面している学齢の子どもへの手立てとして、どう返すかを一緒に考える活動や、教室で仲間に吃音を説明する取り組みを示した報告もあります。

英国の研究の考察には、子どもは教師の態度を映すので、教師の姿勢と実際に接する機会を組み合わせることが、子どもたちの態度を良くするのに最も有効だという先行研究が引かれています。同じ考察は、吃音のある子が自分の話しにくさだけでなく、それが同級生の否定的な反応を招きうることにも気づいていて、危険を避けて教室の空気に合わせがちだとも述べ、からかいやいじめにどう対処するかの具体的な助言が、ふだんのやりとりから締め出されるのを避ける助けになりうるとしています。

担当の先生は、何を伝えるところから始めているか

迷っているのは保護者や子どもだけではありません。「治してあげられない」と分かっている人が、それを最初に言うかどうかで迷います。東京都内のことばの教室の担当教員が、初回相談で何を話しているかを書いた実践報告があります。

ことばの教室担当教員の実践報告(東京都日野市立日野第二小学校 きこえの教室・ことばの教室「せせらぎ」担当の楠雅代さん/日本吃音臨床研究会の会報に掲載された、3年間のグループ活動の記録)

保護者担当は、保護者と共に、モニターで子どもの様子を見ながら、面談を行います。生育歴や、吃音歴の他、現在の心配事等の聞き取りをします。一方で、吃音の症状や、進展悪化、波等、吃音についての簡単なガイダンスを行います。

そして、吃音の症状がある程度軽くなることはあっても、完全に消えるような指導技術を当教室がもっていないこと、自分達が行っていることは、子どもが、自分の吃音に向き合い、吃音と共に生きていくことを支援するということもお話します。

報告の冒頭には、電話をかけてくる保護者から「吃音のことは、家庭では触れないようにしているから、どう説明して、子どもを連れていけばよいか」「そのような所へ連れていくと、子どもが傷つくので、親だけが相談したい」と言われることが時折ある、と書かれています。それに対してこの担当者は、子どもはどんなに幼くても、たとえ親が話題にしていなくても自分の話し方に気づいていること、だからこそ相談にのってくれる場所があることを子どもに伝えてから来てほしい、とお願いしている。できることの範囲を先に開いてから始める、という順序です。その「気づかせない方がよい」という考え方については、学会の解説がはっきり否定しています。

出典: ことばの教室における吃音児童グループ活動の実践(日本吃音臨床研究会)(台帳: V0231)

日本吃音・流暢性障害学会の解説は、保護者の対応について、心配そうな表情をせずに子どもが楽しくおしゃべりを続けられるように話の内容に耳を傾けること、と書いたうえで、昔は「吃音に気がつかせない方がよい」という対応が主流だったが、今はそのような考え方は否定されていると明記しています。そして、親子で吃音について話ができる関係づくりを心がけ、「どもってもよいから、たくさんおしゃべりしてね」というメッセージを伝えましょう、と続きます。教室で担当者がしていることと、家庭で保護者に勧められていることは、同じ方向を向いています。

周囲の子どもが違いに気づく時期についても、同じ解説が書いています。4歳ごろ(早い子は2〜3歳でも)になると本人が「言いにくい」「他の子の話し方と違う」と気づき始め、周囲の子どもも違いを不思議に思う時期になって、おおむね4歳ごろには「○○ちゃんはなんで、『あああ』ってなるの?」というような指摘が始まることがある、というものです。学齢になるころには、症状の多い時期・少ない時期の波はあっても、幼児期のように全く出ない時期を経験することは少なくなる、とも書かれています。就学のタイミングでことばの教室に相談が集まるのは、この経過と重なっています。

先生と保護者が手に取れる資料、そして相談先

手元に置ける資料は、思っているより揃っています。全国言友会連絡協議会は、ことばの教室など学校の先生や言語聴覚士など支援者を主な対象とした指導教材や、吃音についての啓発資料を制作していると案内しています。日本吃音臨床研究会の案内ページには、保護者・ことばの教室の先生・通常の学級の先生に向けて、どもる子どもが幸せに生きるための具体的な提案をまとめた小冊子や、幼児期・学童期の吃音についてよく出される24の質問に答えた本が並びます。後者は、親や教師がどもる子どもに、どもる子どもがクラスの子どもに吃音を説明するときに役に立つ、と紹介されています。折れない力(レジリエンス)を主題にした年報もあり、親・教師・言語聴覚士のための講習会での学びをもとに、それが何か、子どものそれをどう育てるかを提案しています。

記録の取り方も、指針の中に具体的に書かれています。幼児吃音臨床ガイドライン2021は、積極的な介入を始めるまでの期間について、保護者が過度に心配することがないように資料を提供しながら、適切な吃音の知識や家庭・集団での望ましい関わり方を伝え、定期的な面談で経過を見ることを勧めています。その面談では、家庭での日々の吃音症状を記録してもらい、その記録をもとに症状の変化を評価するという手順が示されています。幼児期についての記述ですが、「その日の印象」ではなく「場面ごとの記録」を持ち寄って話すという進め方は、学齢期の面談でもそのまま使えます。

相談先については、ガイドラインが「様子を見ましょう」というだけでなく、積極的な助言指導を受けられる専門機関につなげることが大切だ、と書いています。次のようなときは、通級に通っている・いないにかかわらず、学級担任やことばの教室、言語聴覚士への相談を考えてみてください(あくまで目安で、当てはまらなくても相談して構いません)。

  • 本人が音読・発表・日直の号令などの場面を避け始めている
  • クラスで真似されたり笑われたりしていると本人が話している
  • 通級していることを本人が隠していて、その段取りに疲れているように見える

この3つは相談を考えるきっかけとして挙げたもので、特定の資料が「相談の目安」として定めているものではありません。なお、真似・笑い・質問の有無を本人に聞くことと、困りやすい学校場面を具体的に尋ねることは、支援する側の資料が実際に提案しているものです。家庭での接し方は子どもの吃音への対応の記事環境調整法(周りの人の接し方や場面のほうを変えること)の記事もあわせてどうぞ。

ことばの教室をめぐって陥りやすい3つの落とし穴

落とし穴1 − 「通えば消える」と期待して、消えないと通うのをやめる

吃音の原因そのものを取り除く治療は現在は不可能だとガイドラインが答えており、行わないよう勧められるという最も強い否定の等級が付いています。学齢期は治療の有効性が低くなりがちだとも明記されています。症状が消えることを唯一の物差しにすると、教室で起きている変化——場面ごとの手立てが増える、自分の言葉で説明できるようになる——が全部「成果なし」に見えてしまいます。期待の置き場所を、症状から学校生活のほうへ移すのが最初の一歩です。

落とし穴2 − 家庭で吃音の話題を避けたまま、教室にだけ任せる

「吃音に気がつかせない方がよい」という考え方は、今は否定されています。学会の解説は、親子で吃音について話ができる関係づくりを心がけ、「どもってもよいから、たくさんおしゃべりしてね」というメッセージを伝えるよう勧めています。子どもはどんなに幼くても自分の話し方に気づいているので、家庭だけが話題を避けると、子どもは「触れてはいけないこと」として学びます。教室の外でも話せることが、教室での時間を効かせます。

落とし穴3 − 在籍学級に何も伝えないまま通わせる

学級の側に説明がないと、子どもは自分で隠す段取りを作ることになります。吃音のある子は同級生から拒否されやすく、いじめられている子に挙げられやすいことが報告されており、しかもそれは吃音の重さでは決まっていません。学校では毎年クラス替えがあるため、真似・笑い・質問について早く気づいて対応をオープンに話すことが予防につながる、と支援者向けの資料は書いています。伝えるかどうかと、どう伝えるかは、本人の意向を聞きながら決めることです。

どの場面で言葉が出にくいのか、どの週が重かったのかは、後から思い出そうとすると曖昧になります。気づいたことを短くでも書き留めておくと、面談で記録をもとに変化を評価するという進め方(ガイドラインが勧めている形です)に乗せやすくなります。記録から始めて、ことばの教室や言語聴覚士に相談できる場合はそちらが確実です。

よくある質問

ことばの教室では、吃音について何をするのですか?

指導の中身は教室によって違うため、全国共通の内容を示した資料は手元にありません。公的な資料から言えるのは、就学後は小学校の通級指導教室である「ことばの教室」等が指導にあたるということ、学齢期は本人の意向を聞きながらクラスや学校の環境を整えることが必要だとされていること、そして自分から吃音を伝えることには繰り返し調べられてきた効果があることです。実際の記録では、場面ごとの対策を一緒に考えたり、同じ教室の子どもどうしで相談し合ったりする活動が行われていました。

ことばの教室に通えば、吃音は治りますか?

幼児吃音臨床ガイドライン2021は、原因そのものを取り除く治療について「現在は、不可能である」と答えています。また、幼児期は治療の有効率が比較的高い一方、学齢期になると治療の有効性が低くなりがちで、吃音のために学習や学校生活の困難も生じやすくなる、とも書いています。そのため、学齢期の支援は症状を消すことより、学校生活の困りごとを減らすほうに重心があります。

ことばの教室は、どうすれば通えますか?

公立学校のことばの教室がどの小学校にあるか、また相談に対応しているかどうかは、地元の小学校か各地域の教育委員会に問い合わせるとよい、とガイドラインは案内しています。小学校の特別支援教育コーディネーター(校内の支援の調整役の先生)が連携を担っていることもあります。ただし、相談に対応している機関の多くは治療には対応できないことも多い、という注意も添えられています。

クラスの友達に、ことばの教室のことを伝えたほうがいいですか?

本人の意向を聞きながら決めることが前提です。そのうえで、自分から吃音を伝えることを30年ぶん集めて整理した研究では、18件中15件(83.3%)で全体として好意的な影響が認められ、謝る形や伝えない場合より謝らない形の伝え方のほうが好意的に受け止められていました。担任や支援者が本人に「真似されていない?」「笑われていない?」と聞くことが、吃音の話をオープンにするきっかけになるとも書かれています。教室で仲間に吃音を説明する取り組みを報告した論文もあります。

担当になった先生や保護者が読める資料はありますか?

全国言友会連絡協議会は、ことばの教室など学校の先生や言語聴覚士を主な対象とした指導教材と啓発資料を制作しています。日本吃音臨床研究会の案内ページには、保護者・ことばの教室の先生・通常の学級の先生に向けた小冊子、子どもと一緒に取り組む教材、よく出される24の質問への回答集などが並びます。親や教師が子どもに、子どもがクラスの子に吃音を説明するときに役立つ、と紹介されているものもあります。

まとめ

  • 就学後の吃音の指導にあたる場として、幼児吃音臨床ガイドライン2021は小学校の通級指導教室「ことばの教室」を挙げている。ただし相談できる場所と指導を続けられる場所は同じとは限らない。
  • 原因そのものを取り除く治療は「現在は、不可能である」とされ、学齢期は治療の有効性が低くなりがちで学校生活の困難が生じやすい。だから教室の仕事は、症状より学校生活の側にある。
  • 教室の中では、場面ごとの対策を一緒に考えたり、子どもどうしで相談し合ったりする活動が行われている。自分から吃音を伝えることには、18件中15件(83.3%)で好意的な影響が報告されている。
  • 在籍学級への説明がないと、子どもが自分で隠す段取りを作ることになる。吃音のある子は拒否やいじめの枠に挙げられやすく、それは吃音の重さで決まっていない。毎年のクラス替えごとに、真似・笑い・質問をオープンに聞くことが勧められている。
  • 「吃音に気がつかせない方がよい」という考え方は否定されている。家庭で話せることと、教室で話せることは、同じ方向を向いている。記録を残して面談に持ち込むやり方は、指針が具体的に勧めている形でもある。

参考文献

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  5. 「吃音(どもり)の評価と対応」日本耳鼻咽喉科学会会報 123巻9号(2020)
  6. 全国言友会連絡協議会「出版事業案内」(支援者向けの指導教材・啓発資料の案内ページ)
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  8. 九州大学 教員データベース「研究者詳細 - 菊池 良和」(著書一覧)
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  10. Murphy, Yaruss & Quesal (2007) Enhancing treatment for school-age children who stutter II. Reducing bullying through role-playing and self-disclosure. J Fluency Disord.
  11. Coalson, Rodriguez, Albaum, Allen & Byrd (2026) Self-disclosure of stuttering: A systematic review. J Fluency Disord.

当事者・支援者の声の出典: V0291(note・ななママさんの記録)/ V0083(社会福祉法人各務原市社会福祉事業団「吃音のつどい」座談会の記録)/ V0046(日本吃音臨床研究会「ことばの教室の実践」・静岡市立の教室の実践報告)/ V0227(note・名義「ちな」)/ V0231(日本吃音臨床研究会の会報に掲載された、東京都日野市立日野第二小学校「せせらぎ」担当・楠雅代さんの実践報告)。いずれも公開記事。引用は原文どおり。

更新履歴: 2026-09-11 公開