まず結論から
- 「ブロック」は、3つ目の型である難発(なんぱつ)の別の呼び名です。別の種類ではありません。公的研究機関の解説は「ことばを出せずに間があいてしまう(難発、ブロック)」と書き、大学病院の解説は「ブロック、阻止(難発)」と書いています。呼び名が2つあるだけで、指しているものは同じです。
- 吃音の型は3つです。音をくりかえす連発(例「か、か、からす」)、音を引き伸ばす伸発(例「かーーらす」)、ことばを出せずに間があく難発(例「・・・・からす」)。この3つのどれか1つ以上が見られる話し方を吃音と定義しています。
- 型は、その人に貼りついた属性ではありません。発症してすぐの幼児期は連発が多く、思春期以降は連発や伸発よりも難発が中心になっていきます。同じ人の中で移っていきます。
- 周りの人が探している「吃音のある人の特徴」は、性格ではなく話し方・出やすい場面・隠すための工夫にあります。苦手な音や行が決まっていること、調子の良い時期と悪い時期があること、言いにくい語を言い換えること——これらが症状の側の特徴です。
- 誰にでもある言いよどみは吃音には数えません。また、吃音とよく似ていて別のものに、早口言語症(クラタリング)があります。
ただし、ここで挙げる型や経過は「多くの人に見られる傾向」であって、一人ひとりの出方・移り方はかなり違います。型の名前が分かっても、原因や見通しがそれで決まるわけではありません。
「ブロック」は3つ目の型の別名 — 呼び名の整理から
種類の話に入る前に、いちばんつまずきやすい呼び名を先に片づけます。
国立障害者リハビリテーションセンター研究所の解説は、吃音に特徴的な話し方を次の3つとし、このどれか1つ以上が見られることを吃音の定義としています。世界保健機関(WHO)の国際疾病分類にもとづく定義です。
- 連発(れんぱつ)=音のくりかえし。例「か、か、からす」
- 伸発(しんぱつ)=引き伸ばし。例「かーーらす」
- 難発(なんぱつ)=ことばを出せずに間があいてしまう。例「・・・・からす」
3つ目の難発には、括弧で「ブロック」という呼び名が添えられています。慶應義塾大学病院の解説も、同じ症状を「ブロック、阻止(難発)」と書き、例として「、、、、、とけい」を挙げています。つまり「ブロック」で調子を崩している人と「難発」で調子を崩している人は、同じものについて話しています。カタカナの書き方に多少のゆれはありますが、医学の資料が「難発、ブロック」と併記しているとおり、指しているのは3つ目の型です。
ここが分かれていると、困りごとが伝わりません。当事者どうしの会話では「ブロック」が普通に使われる一方、病院や学校で渡される資料には「難発」としか書かれていない、ということが起こります。名前が2つあることを知らないまま資料を読むと、自分の症状が載っていないように見えてしまいます。
なお、3つの型は世界共通の整理です。脳の研究を見渡した2014年の総説も、音・音節・語のくりかえし、音の引き伸ばし、発話のブロックの3つを吃音の古典的な特徴として挙げています。同じ総説は、吃音が主に音節の先頭か語の先頭で起きることも述べています。ことばの「出だし」で起きるという性質は、このあと出てくる当事者の話にも繰り返し現れます。
「ブロック」のとき、何が起きているのか
難発は、外から見ると「黙っている」ようにしか見えません。だから、当事者がその数秒をどう書いているかを見るのが近道です。
次の語り手は、高校時代に部活の部長を務めた当事者です。部が終わるときの号令を、部長がひとりで先に言うという決まりがありました。
当事者本人の声(2歳の頃に吃音を発症した当事者。高校で部活の部長を務めた/自助NPOのメディアへの寄稿)
高校生時代の私はブロック(難発)の吃音に悩まされていました。日常の挨拶や日直の号令、マニュアル対応などは、言い換えが難しいため吃音が出やすくなります。特に母音(あいうえお)で始まる言葉はブロックが出やすく、「おはよう」「ありがとう」などよく使う言葉で言いにくさを感じていました。
この人が言わなければならなかったのは、「部員一同、礼!ありがとうございました。」という一文でした。部員が全員そろったところで、部長だけが先に口を開く。ところが実際には、「ありがとうございました。」の前に毎回数秒の沈黙ができたと書いています。号令が苦手だと気づいたのは、部長に就任した直後でした。それまでは先代の部長が号令をかけ、自分は周りの部員と一緒に挨拶をしていた——そのときはブロックが出ていなかった、と本人は振り返っています。同じ言葉でも、ひとりで言うか声をそろえるかで出方が変わったわけです。難発が「言い換えのきかない場面」で強く出るという特徴は、資料の記述とも重なります。
出典: ブロックが酷い吃音があっても、私が部長を務められた理由(HAPPY FOX)(台帳: V0148)
挨拶・号令・決まり文句が特に苦しいのには理由があります。ふだん当事者が使っている工夫のひとつが、言いにくいことばを言いやすいことばに置き換える「言い換え」です。ところが挨拶や号令は文言が決まっているので、その工夫が使えません。
もうひとつ、慶應義塾大学病院の解説は、吃音の中核となる症状に「一貫性」という性質があると書いています。特定の単語や音、行(カ行、タ行など)をより苦手とすることです。苦手な音は人によって違い、この語り手の場合は母音でした。同じ「難発」でも、詰まる場所は一人ひとり違います。
同じ型でも、出方は一人ひとり違う
型の名前が分かっても、それだけでは自分の状態を説明しきれません。そのことを、当事者自身の言葉で説明している文章があります。
次の語り手は、NHK障害福祉賞に入選した手記の書き手です。3歳の頃から吃音があり、この文章を書いた時点で大学4年生でした。手記は、自分の症状の説明から始まります。
当事者本人の声(福井春香さん・大学4年生。3歳の頃から吃音/NHK厚生文化事業団の障害福祉賞 受賞作の全文公開)
私には三歳の頃から「吃音」があり、約二十年間吃音と共に生きてきました。吃音は、話し言葉が滑らかに出ない発話障害のひとつです。私はその中でも、言葉が出にくく、言葉を発するまでに時間がかかってしまう「難発」という症状があります。想像しづらいと思いますが、言葉を出そうとするのに、言葉が喉で詰まってしまい、声として出てくれないような状態です。また、吃音の症状には非常に大きな個人差があります。私の場合は、特に母音が出しにくく、また電話や人前での発表などで症状が強く出てしまいます。同じ吃音と呼ばれていても、その種類や症状が現れやすい場面、出しにくい言葉などは一人ひとり異なります。
手記はこのあと、周囲に吃音を伝えることの難しさへ進みます。外見からは分かりづらく、調子が良いときには普通に話せることもあるため、なかなか理解されにくい——その「分かりにくさ」に長年もどかしさを感じてきた、と書かれています。自分から誰かに打ち明けたことはほとんどなかったといい、理由として「普通でいたい」という気持ちと、「周りから理解されるのだろうか」という不安が挙げられています。症状の説明から始めて、個人差の大きさをことわり、そのうえで伝わらなさの話に入る——この順序自体が、型の名前だけでは足りないことを示しています。調子の良い状態と悪い状態が数週間から数か月にわたって続くことは、学会の資料も「波」として挙げています。
出典: 「伝えられなかった言葉と、伝わった想い」福井春香(第60回NHK障害福祉賞 ハートネット賞受賞作品)(台帳: V0155)
「一人ひとり異なる」という実感には、資料の裏づけがあります。慶應義塾大学病院の解説は、中核となる症状に4つの性質があるとしています。苦手な音や行が決まっている「一貫性」、症状が出やすい時期と出づらい時期がある「波現象」、一度言えた単語はその後言いやすくなる「適応効果」、そして話すときに首や手足が動いてしまう「随伴症状」です。どれも、型の名前とは別の軸で人ごとに違います。
症状が出にくくなる条件もあります。誰かと一緒に読むとき、歌うとき、ひとりごとのときにはどもりにくい、という特徴が知られています。前の節の部長が、部員と一緒に挨拶していたときには詰まらなかったのは、この条件と重なります。
ちなみに、どもっている時間そのものは、多くの人が想像するより短いことも測られています。就学前の吃音のある子ども19人の発話を実際に計った研究では、音や音節のくりかえしが平均0.87秒、音の引き伸ばしが平均0.63秒でした。複数のどもりが連なったものは平均1.78秒で、これがいちばん長くなりました。数字にすると一瞬ですが、待つ側にも待たれる側にも長く感じられる——そのずれが、この症状の伝わりにくさの一部を作っています。
型は、その人の中で移っていく
「あなたは連発タイプ」「私は難発タイプ」——そう決められるものだと思って調べ始める人は少なくありません。ところが、当事者の長い経過を追うと、そう単純ではないことが分かります。
次の語り手は41歳の男性で、会社員として不動産の営業職を経験したのち、会社を立ち上げて自営業をしています。吃音を自覚した時期を聞かれて、こう答えています。
当事者本人の声(土肥さん・41歳。不動産の営業職を経て自営業/吃音情報サイトの当事者インタビュー)
自覚したのは結構早かったですね、少なくとも小学校2年生の時。ずっとですねそこから、気づいたらそうでした。大学生の時までは連発(繰り返し)オンリーだった気がするんですけど、社会人になってから難発(ブロック)も一緒に出るようになって、そこからずっとこの歳まで吃音です。
小学2年生から40代までを、ひとつづきの経過として語っている点が重要です。この人の場合、10年以上にわたって出ていたのは連発だけでした。難発が加わったのは社会人になってからで、そこから型が2つになったまま今に至ります。同じインタビューでは、弱い場面として電話とインターホンを挙げ、新卒で入った会社では社名は言いやすかったのに自分の苗字が言いづらく、固有名詞だけはどうしようもないと語っています。小学校の頃は、周りから見れば違和感があったかもしれないが自分は普通に喋っているつもりだった、とも振り返っています。本人の中では、型が入れ替わったというより、出方の層が増えていったという語られ方をしています。
出典: 土肥さんインタビュー(きつおんりんく)(台帳: V0225)
この移り方は、その人だけの特別な経過ではありません。日本吃音・流暢性障害学会の解説は、思春期以降になると、吃音の症状は連発や伸発よりも、最初の音が出しにくくなる難発が中心になる、とはっきり書いています。難発が頻繁に出るようになると発話そのものが困難になり、やりとりに支障が出ます。
困りやすい場面も、年代ごとに挙げられています。中高生では部活動や入学面接、大学生ではゼミの発表や就職活動、社会人では職場の電話応対です。失敗の経験が重なると、話し始める前から不安や恐怖を感じるようになり、次第に会話や人づきあいを避けるようになっていきます。営業の仕事で電話とインターホンが弱い、という語りは、この記述のちょうど真ん中にあります。
子どものうちにも、型は動く
移り変わりは大人になってから始まるわけではありません。小さい子どもの日々を近くで見ている保護者は、もっと短い期間での変化に気づきます。
次の語り手は、私立幼稚園2年・公立保育園14年の勤務歴を持つ元保育士の母親です。自分が送り手として何度も立ち会ってきた市の4歳児訪問に、その日は我が子の親として立ち会いました。その時期の息子の様子を、専門用語を使わずにこう書いています。
保護者の声(元保育士の母。私立幼稚園2年・公立保育園14年の勤務歴/個人ブログ note)
この時期、息子の吃音は少しずつ変化していました。幼い頃に見られた「言葉の出だしを繰り返す」症状から、段々と「始まりの言葉を長く伸ばす」ようになり、さらには「言葉が出ずに詰まってしまう」ことが多くなっていったのです。家でリラックスしている時でさえ、喉に言葉が引っかかるような息子の姿。
この母親が書いているのは、そのまま連発・伸発・難発の順序です。専門用語は一つも使われていません。書き手が気にしていたのは、4歳児訪問が事細かに決められた「設定保育」であり、専門員がずらりと並ぶ独特の緊張感の中では、子どもは「自然ないつも通りの姿」にならないということでした。家でくつろいでいるときでさえ喉に引っかかる子が、この場で自分の名前を最後まで言えるだろうか——始まる前から不安でいっぱいだった、と書いています。実際の自己紹介では、息子は「…お!……おっ……」と口を動かしたところで先へ進めませんでした。名前が言えないという場面は、前の節の営業職の人が「自分の苗字が言えない」と語っていたことと同じ形をしています。
出典: 4歳児訪問の自己紹介で、息子の名前が最後まで出なかった日(note)(台帳: V0185)
学会の資料は、この時期の動きを次のように整理しています。発症してすぐの幼児期は「繰り返し」(連発)の症状が多く、中には引き伸ばし(伸発)や、なかなか最初の音が出しにくくなる(難発)症状で始まったり、比較的早い時期にそのような話し方に変わっていったりする子どももいます。幼児期はことばの発達も発話の運動も未熟なので、少しのことで症状がよくなったり悪くなったりします。これを「変動」または「波」と呼びます。
4歳ごろ(早い子は2〜3歳でも)になると、本人が「言いにくい」「他の子の話し方と違う」と気がつき始めます。同じ頃、周りの子どもも違いを不思議に思うようになり、「○○ちゃんはなんで、『あああ』ってなるの?」という指摘が始まることがあります。こうした指摘をきっかけに、発話に力が入って声が出しにくくなったり、体を動かしながら話そうとしたりする子も出てきます。
公的研究機関の解説も、同じ動きを経過として書いています。発達性の吃音の多くは軽いくりかえし(例「あ、あ、あのね」)から始まり、うまく話せる時期もあるのが特徴です。7〜8割くらいは自然に治るとされますが、残りの2〜3割は徐々に症状が固定化して、楽に話せる時期が減っていきます。さらに症状が進むと、話そうとしても最初のことばが出なくなることが多い、と書かれています。連発から難発へ、というよく語られる道筋は、この「進展」の説明そのものです。連発そのものについては吃音の連発(音の繰り返し)で、難発の詳細は吃音症の無声型(難発)とはで個別に扱っています。
周りから見える「特徴」は、話し方と場面と、隠す工夫
家族や同僚が「吃音のある人の特徴」を知りたいと思うとき、期待されがちなのは人物像です。けれども、資料と当事者の記述が示すのは人柄の話ではありません。話し方と、出やすい場面と、隠すために使われている工夫です。
次の語り手は、包装機械メーカーで機械の電機図面作成を担当している20代の男性です。自助団体の集まりで読み上げた経験談の原稿は、自己紹介のあと、いきなり自分の症状の説明から始まります。
当事者本人の声(Oさん・20代男性。愛媛言友会/自助団体サイトに掲載された経験談スピーチ原稿)
自分の吃音の症状に関しては難発が強く、僕の場合「母音」を言うのが困難です。自分の名前も「母音」で始まり、自己紹介にはじめ、挨拶『おはようございます』『おつかれさまです』『ありがとうございます』や『お』が言いにくいこともあり、敬語を避けて話すことがあります。
ここに並んでいるのは、外から観察できる事実だけです。母音が出にくい、自分の名前が母音で始まる、挨拶と敬語を避ける。この人が3歳か4歳のころは連発型で、名前の最初の文字をくりかえしていたと同じ原稿に書かれており、難発が中心になったのは小学校に入ってからだといいます。原稿は続けて、毎朝の健康観察で声が出なかったこと、電気工事の仕事に就いてからは職場や現場での挨拶・業務上の電話・作業時の意思疎通が非常に困難だったこと、吃音であることを事前に伝えたうえで入った派遣先で「どもって言えなくてもええがな」と背中を押されたことを並べていきます。本人が語る「特徴」は、性格ではなく、場面と対処の一覧でした。言いにくい単語を言い換えて吃音を巧みに隠そうとすることは、学会の資料も当事者に共通する工夫として挙げています。
出典: 吃音当事者からのメッセージ(愛媛言友会)(台帳: V0223)
周りの人が見分けたいときに手がかりになるのは、次のようなところです。特定の単語・音・行を苦手にしていること、症状が出やすい時期と出づらい時期があること、話すときに首や手足が動いてしまうことがあること、そして言いにくい語を言いやすい語に置き換えたり、言いやすい言葉を先に言ったりする工夫をしていることです。
ここで気をつけたいのは、隠す工夫がうまくいっているほど、外からは何も見えなくなるということです。学会の資料は、言い換えなどによって吃音は目立たなくなる一方、実際には吃音が出ないかを日々警戒しながら生活しているため、ストレスや悩みを抱え込みやすくなると書いています。「話し方が普通だから吃音ではない」とは言えません。むしろ、目立たない人ほど負担を一人で持っている可能性があります。
逆に、性格や人柄を吃音の「特徴」として一覧にすることはできません。手元の資料は、症状・場面・工夫については具体的に書いていますが、人物像については書いていないからです。場面ごとの対処は吃音症の話し方と吃音の難発をやわらげるコツで個別にまとめています。
もうひとつの「種類」— 症状の型ではなく、始まり方による分け方
「吃音の種類」という言葉には、じつは2つの意味があります。ここまで見てきた連発・伸発・難発は症状の型による分け方です。もうひとつ、どう始まったかによる分け方があります。
公的研究機関の解説は、吃音を発達性吃音と獲得性吃音に分け、吃音の9割は発達性吃音だとしています。発達性吃音は、幼児が2語文以上の複雑な発話を始める時期に起きやすく、多くは2〜5歳に発症します(小学校以降に発症することもあります)。吃音になる確率は5%程度で、国や言語による差はないと言われています。大人まで含めた全人口のうち吃音のある人の割合は約1%です。男女比は4対1くらいで男性に多いものの、幼児期には男女差はあまりありません。
一方の獲得性吃音には2種類あります。脳の病気やけがのあとに出てくる獲得性神経原性吃音と、強いストレスやつらい出来事に続いて生じる獲得性心因性吃音です。どちらも発症するのは青年期以降(10代後半から)です。慶應義塾大学病院の解説も、獲得性吃音は発達性吃音と症状は基本的に同じだが、調子の波が少ないなど少し特徴が異なると書いています。
さらに、薬を使ったことがきっかけで吃音が始まることもあります。2025年に発表された研究は、これを薬剤性吃音——薬という化学物質にさらされたことで、どもる話し方が始まる現象——と定義しています。この研究によれば、表に現れる話し方の特徴の多くは発達性吃音と同じです。これまでの調査は副作用の報告と個別の症例報告に限られていましたが、この研究は大学の医療センターの電子カルテを使って探し出す方法をとりました。約300万人分の記録から発達性吃音を探した先行の調査の中に、薬剤性が疑われる40例があった、と報告されています。大人になってから急にどもり始めた場合には、症状の型よりも、この「始まり方」のほうを医療機関に伝えるほうが役に立ちます。
大切なのは、原因が1つに定まるものではないということです。就学前の子どもを対象にした研究は、吃音が現れるために必要十分な体質の要因も環境の要因も1つとしてない、という立場を前提として述べています。持続するか回復するかの分かれ目についても同じです。型の名前も、始まり方の分類も、原因を1つに絞り込むためのものではありません。
吃音に似ていて、吃音ではないもの/どこに相談するか
「これは吃音なのか」を確かめに来る人もいます。線引きの手がかりを2つ挙げます。
ひとつは、誰にでもある言いよどみです。米国の専門職団体の解説は、多くの人に起こるもので吃音とは見なさないものとして、「えーと」のような語を足すこと、単語をまるごとくりかえすこと("Cookies cookies and milk.")、句をくりかえすこと("He is–he is 4 years old.")、言いかけて別の言い方に直すこと("I had–I lost my tooth.")、言いかけて最後まで言わないことを挙げています。会議で言いよどんだ、名前を言い直した——それだけでは吃音には数えません。
もうひとつは、早口言語症(クラタリング)です。慶應義塾大学病院の解説によれば、これは吃音と症状が似ていますが特徴の異なる別の発話流暢性障害です。早口であること、単語の途中の音を省略してしまうこと(「ホッチキス」を「ホキ」と発音するなど)、「えーと」などの挿入や言い直しが多いこと、文の中の語順や話す順序があべこべでまとまりなく話してしまうことが挙げられています。
この2つを分けるうえで重要な違いがあります。クラタリングに特徴的な症状には本人の自覚が少ないことが多く、そのため自分の症状を「吃音だ」と勘違いすることがあり、吃音だと思って受診する方の何割かはクラタリングだと言われています。しかも「ゆっくり話そう」「落ち着いて話そう」と症状に注意を向けることで一時的に改善することがあり、これは吃音では一般的に逆のことが多い、と書かれています。「意識したらむしろ楽になる」なら、吃音とは別のものかもしれない——これが、自分では気づきにくい違いです。
いずれにしても、型の名前を自分で確定させることが目的ではありません。相談先は年代で分かれます。
- 子どもの場合:小児を扱う言語聴覚士や、ことばの教室の教員に相談します。
- 本人が治療を希望する場合:言語聴覚士による発話訓練を受けるという選択肢があります。慶應義塾大学病院では、ことばの訓練の専門家である言語聴覚士と、カウンセリングの専門家である臨床心理士が協働して支援にあたっていると説明されています。
- 大学生の場合:発表などで配慮を求めたり、就職活動の負担が多いときに学生相談室でカウンセラーに相談したりすることは有効だとされています。
- 社会人の場合:上司や同僚に相談することで、職場の配置や電話業務などで配慮を得られることがあります。ただしその際、医師の診断書や言語聴覚士の報告書の提出などが求められる場合があります。
「種類」で調べるときに陥りがちな3つの落とし穴
落とし穴1 −「自分は◯◯タイプ」と型で自分を固定してしまう
型は、その人に貼りついた属性ではありません。発症してすぐの幼児期は連発が多く、思春期以降は難発が中心になっていきます。同じ人の中で移りますし、場面によっても出方が変わります。「自分は難発タイプだから」と決めてしまうと、変化が起きたときに説明できなくなります。
落とし穴2 −「連発が減ってきた」だけを見て安心する
くりかえしが減ったからといって、軽くなったとは限りません。公的研究機関の解説は、症状が進むと話そうとしても最初のことばが出なくなることが多いと書いています。学会の資料も、吃音を否定的にとらえるようになると難発が強くなったり言い換えの工夫が増えたりして、状態が悪化していくことがあると述べています。減ったのが症状なのか、それとも表に出す機会なのかは、分けて見る必要があります。
落とし穴3 −「特徴」を人の性格の話として受け取る
資料が「特徴」として挙げているのは、苦手な音や行があること、調子に波があること、話すときに首や手足が動いてしまうこと、そして言い換えなどで隠そうとすることです。人柄の一覧ではありません。性格の話にすり替えると、本人が実際に困っている場面——挨拶、号令、電話、自己紹介——から目が離れてしまいます。
そして、どの落とし穴も「その日の印象」で判断すると起きやすくなります。症状には数週間から数か月にわたる波があるので、ある日の様子だけでは全体像がつかめません。どの場面で・どの音で詰まったか、体の動きがあったか、言い換えたかを、期間をとって記録しておくと、相談のときに具体的に伝えられます。まずは記録から小さく始めるのが現実的で、言語聴覚士など専門機関に相談できる場合は、そちらが確実です。
よくある質問
吃音の種類はいくつありますか?
症状の型としては3つです。音をくりかえす連発(例「か、か、からす」)、音を引き伸ばす伸発(例「かーーらす」)、ことばを出せずに間があく難発(例「・・・・からす」)で、このどれか1つ以上が見られる話し方を吃音と定義しています。これとは別に、どう始まったかによる分け方(発達性吃音と獲得性吃音)もあり、9割は発達性吃音です。
「ブロック」と「難発」は違うものですか?
同じものです。公的研究機関の解説は3つ目の型を「ことばを出せずに間があいてしまう(難発、ブロック)」と書いており、大学病院の解説も「ブロック、阻止(難発)」と併記しています。当事者の間ではカタカナの「ブロック」がよく使われ、医療や教育の資料では「難発」が使われる、という違いです。「無声型」という言い方も同じ症状を指します。
吃音のある人にはどんな特徴がありますか?
性格ではなく、話し方と場面の特徴として整理されています。特定の単語・音・行を苦手とすること、症状が出やすい時期と出づらい時期があること、一度言えた単語はその後言いやすくなること、話すときに首や手足が動いてしまうことがあります。また、言いにくい語を言い換えたり、言いやすい言葉を先に言ったりする工夫をしている人も多くいます。人柄についての特徴は、これらの資料には書かれていません。
連発だったのに難発が出るようになりました。悪化したということですか?
年代による変化としては、よく見られる経過です。思春期以降は、連発や伸発よりも最初の音が出しにくくなる難発が中心になるとされています。一方で、症状が固定化して楽に話せる時期が減っていく進み方も説明されており、どちらなのかは自己判断が難しいところです。気になるときは、言語聴覚士のいる医療機関やことばの教室に相談してください。
吃音に似ているけれど吃音ではないものはありますか?
あります。誰にでもある言いよどみ——「えーと」を足す、単語や句をくりかえす、言いかけて直す、言いかけて最後まで言わない——は吃音とは見なしません。また、早口言語症(クラタリング)は吃音と症状が似ていますが別のものです。本人の自覚が少ないことが多く、吃音だと思って受診する方の何割かはクラタリングだと言われています。
まとめ
- 吃音の症状の型は3つ。連発(か、か、からす)・伸発(かーーらす)・難発(・・・・からす)で、このどれか1つ以上が見られる話し方を吃音と定義している。
- 「ブロック」は難発の別の呼び名で、4つ目の種類ではない。資料は「難発、ブロック」、「ブロック、阻止(難発)」と併記している。
- 型は人に固定されない。幼児期は連発が多く、思春期以降は難発が中心になっていく。進むと最初のことばが出なくなることが多い。
- 周りが探すべき「特徴」は性格ではなく、苦手な音や行・調子の波・随伴する体の動きと、言い換えなどの隠す工夫。隠せている人ほど負担が見えにくい。
- 誰にでもある言いよどみは吃音に数えず、早口言語症(クラタリング)は似ているが別のもの。迷ったら、言語聴覚士やことばの教室へ。
