まず結論から
- 「どの患者にも一様に有効である治療法はない」とされています。治療の中心は、周囲の対応を変えること・言語訓練・カウンセリング・心理療法や行動療法で、人に応じて組み合わせて選ぶ形です。
- 大人については、薬を使わない介入を、参加者をくじ引きのように割り付けて比べた研究9件・276人分をまとめても、なめらかさ・吃音の体験・生活の質のどれでも比較群との差は出ませんでした。
- それでも技法のあいだには差があると報告されています。42件・のべ756人分をまとめた1980年の統合では、話を引き伸ばす技法とやわらかく声を出し始める技法が、態度や呼気に働きかける技法より短期でも長期でも良い成績でした。
- 子どもは年齢で答えが変わります。就学前のリッカム・プログラムは最高等級と格づけされた一方、学齢期以降の子どもと思春期を対象にした比較試験は1件も無く、根拠の水準は「乏しい」と評価されました。
- 日本の解説は、青年期・成人の言語訓練について、これらのみで改善する症例は少なく、過半数では心理面の評価と対応も必要になる、としています。
ただし「差が出なかった」は「効かない」という意味ではありません——集まった治療も評価のものさしもばらばらで、技法どうしの比較にいたっては1980年の報告なので、ここに書けるのは「今のところ確かめられている範囲」だけです。
「その練習で治りますか」— 3年通った人が、最後に知ったこと
「吃音 治すトレーニング」という言葉で探されているものは、どこかにある特別なメニューではありません。実際に通った人の記録から始めます。
当事者本人(峰平佳直さん・大阪の会社員/自助団体の会報に再掲された手記)
22歳の時、同じ道を堂々巡りをしている自分の言葉に限界を感じていた。会社に4ヶ月の休職願いを出し、どもりの東大と言われていた東京正生学院に入学した。どもりが治らない事を、ここで初めて知った。紹介された本を読みあさり、自分のどもりを考え直す時間を持てた。
この人は、これより前に大阪の民間の吃音矯正所に3年間通っています。そこは「堂々と、ゆっくり話す習慣が身に付けば、どもりは治りますよ」と教えていて、本の朗読、外に出て道を聞きながら歩く実地訓練、人前でのスピーチを重ねたと書かれています。矯正所の中では堂々と話すことができた、とも。それでも自分の言葉が同じところを回っている感覚は消えず、22歳で休職して別の場所へ移りました。読者が「治すトレーニング」という言葉で探しているものの実物は、こういう場所とこういう時間です。この実物について、大人を対象にした研究をまとめた結果が出ています。
出典: 第7回ことば文学賞 受賞作品「三つ子の魂、百までも」(日本吃音臨床研究会)(台帳: V0233)
大人が受ける「薬を使わない治療」については、参加者をくじ引きのように割り付けて比べた研究だけを集めた統合があります。9件・276人分をまとめたこの報告は、集まった介入を4つに分類しました——話し方を組み立て直すもの、それに心理面の働きかけを足したもの、装置などの刺激を使うもの、不安に働きかけるものです。結果は、なめらかさの改善でも、吃音の体験全体でも、生活の質でも、比較群とのあいだにはっきりした差が出ませんでした。
ここは読み違えやすいところです。「差が出なかった」は「効かない」とは違います。同じ報告は、大人向けの治療も評価のものさしも実に多様だったと述べていて、なめらかさについては研究どうしの結果の食い違いも大きいものでした。つまり、ひとまとめにして測ったら差が消えた、という状態です。
日本の解説のほうは、もう少し踏み込んで書いています。青年期・成人の言語訓練はいくつかの方法を組み合わせて使われることが多いけれど、これらのみで改善する症例は少なく、過半数では社交不安障害などの心理面の評価と対応も必要になる、と。3年通ったあとに「治らない」と知った、という手記は、この記述の外側にある特別な話ではありません。
病院では何をするの?—「ゆっくり話す練習」は、何のためにあるか
では、医療機関で受ける言語訓練の中身は何でしょうか。25年この仕事をしてきた言語聴覚士が、自分のやり方を書き残しています。
言語聴覚士(久保田功さん・近畿大学医学部附属病院/自助団体のサイトに載った実践記)
ケースによっては「ゆっくり話す練習」や「軟らかく声を出す練習(軟起声)」などをすることもあります。しかし、それは「吃音を治す」ための練習ではなく、具体的に困っている場面に備え「役に立ちそうな技能を仕入れておく」という観点で取り組んでもらいます。話す技能だけではなく、気持ちの構えを変える試みや、周囲への実際の働きかけ(吃音であることを周囲にうまく伝える作戦、配慮を求める手紙など)を一緒に考えるようにしています。
青年期以降の吃音を担当することが増えたという言語聴覚士が、自分の臨床の基本スタンスを3つ挙げたあとに書いている一節です。その1つめが、吃音は「治すべき」対象だと考えていない、というもの。それを最初の面談で伝えると書かれています。言語治療室という看板を掲げた職場で働く専門職としては矛盾をはらんだ言い方だ、と本人も断ったうえでのことです。狙いは、最終的に「吃音を以前ほど気にしなくてすむようになった」と言ってもらうこと。ここで名前の挙がった2つの練習は、実は技法どうしを比べた研究にも出てきます。
出典: 吃音相談室『言語聴覚士の実践』(日本吃音臨床研究会)(台帳: V0114)
「言語訓練」とひとくくりにされますが、中身はいくつかに分かれます。ゆっくり柔らかく言うなど、話し方そのものを作り替えていく訓練は流暢性形成法と呼ばれます。どもり方のほうを楽な・軽い形に変えていく訓練は吃音緩和法で、わざとどもってみせる随意吃という訓練もあります(この2つの中身は逆説志向と随意吃を扱った記事にまとめています)。誰かと声をそろえて読む斉読やリズムに合わせた朗読は流暢性を誘導しやすいため、発話に自信を持たせる訓練としてよく行われるとされます。自分の声を少し遅らせて聞かせる装置(DAF)は症状が重い場合の選択肢で、青年期・成人で有効なのは半数程度と書かれています。装置の仕組みは聴覚フィードバックと吃音で詳しく扱いました。
ここからが、検索上位のどのページも書いていないところです。これらの技法のあいだに、優劣はあるのでしょうか。比べた報告はあります。1980年に発表された統合は、治療成績を報告した研究42件・のべ756人分を集めたものです。集まった研究の典型は、25歳・症状の重い人が、症状を減らす訓練を80時間受け、終了から半年ほどたった時点で測られる、というものでした。全体としては、治療を受けたあとの成績は受ける前より改善しており、吃音の治療は有益になりうる、何もしないよりは確かに良い、と結論されています。
そのうえでこの報告は、技法ごとの差に踏み込みます。話をゆっくり引き伸ばす技法と、声をやわらかく出し始める技法は、態度に働きかける技法や呼気を使う技法より、短期でも長期でも良い成績を示した——そう書かれています。日本の解説でも「柔らかくゆっくり言う」ことは流暢性形成法の中身として挙げられていて、この節で引いた言語聴覚士が名前を挙げた2つと重なります。
ただし、これは1980年の報告で、当時の分類での比較です。新しい報告では逆向きの結果も出ています。2歳から18歳を対象にした行動的な介入9件・327人分をまとめた統合では、無治療の対照群と比べた効果ははっきり出た一方で、2つの治療どうしを比べた研究のあいだには差が出ませんでした。技法の優劣は「決着している」と言える段階ではありません。それでも、「メニューさえ知れば治る」という前提よりは、「どの技法を、誰に、何のために使うか」で結果が動く、という前提のほうが実態に近いと言えます。
子どもと大人で、答えが変わるって本当?
「吃音治療」と検索する人の多くは、自分が何歳の話を探しているかを言葉にしていません。けれど、言えることの量は年齢でかなり違います。まず、子どもを受け入れている現場の言葉から。
ことばの教室の担当教員(楠雅代さん・東京都日野市立日野第二小学校/自助団体の会報に載った実践報告)
そして、吃音の症状がある程度軽くなることはあっても、完全に消えるような指導技術を当教室がもっていないこと、自分達が行っていることは、子どもが、自分の吃音に向き合い、吃音と共に生きていくことを支援するということもお話します。
小学校のことばの教室で、吃音のある子どものグループ活動を3年続けた担当者の実践報告です。指導の対象は小学生ですが、症状が出て間もない4歳・5歳の相談も時々来る。多くは母親からの電話で始まり、初回相談ではまず、検査によって子どもを傷つけるようなことはしないこと、子どもはどんなに幼くても自分の話し方に気づいていることを伝える、と書かれています。そのうえで、この一節が来ます。支える側が到達点をどこに置いているか——研究の側でも、年齢によって言えていることの量は大きく違っています。
出典: ことばの教室における吃音児童グループ活動の実践(日本吃音臨床研究会)(台帳: V0231)
子どもと思春期を対象にした介入を集めて評価した2021年のレビューは、就学前の子どもに対するリッカム・プログラムを最高等級(Grade A・excellent)と格づけしました。一方で、学齢期以降の子どもと思春期については、参加者をくじ引きのように割り付けて比べた研究が1件も含まれておらず、この年齢層の根拠の水準は「乏しい」と評価されています。同じレビューは、リッカム・プログラムを調べた8件のうち6件が、この方法をもともと開発した著者たちによるものだという注記も付けています。高い評価がついた側にも、読み方の但し書きはあります。
学齢期以降がまったくの空白というわけではありません。2歳から18歳を対象にした9件・327人分の統合では、無治療の対照群と比べたときの効果は有意でした。ただし同じ報告は、効果を支える材料があるのは限られた種類の介入についてだけで、方法として許容できる研究の数もわずかだ、と結論しています。
日本の解説も、年齢で書き分けています。幼児期はまず環境調整、つまり周囲の人が対応を変えて、本人が話しやすい、あるいはあまりどもらずに話せる場をつくることから入る。学童期は、斉読などで発話に自信を持たせる訓練がよく行われる。青年期・成人は言語訓練だけでは足りず、心理面の対応も要る——そういう並びです。ことばの教室の初回相談で語られていたのは、この地図の中の一区画です。
「様子を見ましょう」と言われた。遅れませんか?
治療の中身より先に、多くの家庭が迷うのが時期です。診断はついたのに、すぐには訓練が始まらない。その時間を、あとから振り返っている人がいます。
当事者本人(note の名義「梅」さん・執筆時は大学生/個人ブログ)
話し始めたときから吃音症です。母が私の話し方を気にして病院に行ったところ、「吃音症」と診断されました。でも、このときのお医者さんは「成長につれてなくなるよ」と母に言ったみたいで、母もあまり気にしていませんでした。この頃の私の記憶はありません。
吃音とともに過ごした20年をふり返って書かれた記事の、いちばん最初の場面です。就学前に診断はついていて、そこで告げられたのが「成長につれてなくなるよ」でした。実際、小学校の低学年から中学年までは本人も症状を自覚していません。変わるのは高学年で、自分の話し方が周りと違うと気づいたところから、話すこと自体が怖くなっていきます。幼児期に吃音のある子の少なくとも半数は、特別な指導や支援がなくても小学校に入るころまでに吃音の問題が見られなくなるとされており、このときの見通しが誤りだったと決めることはできません。決められないからこそ、「では、待つと遅れるのか」が別に問われます。この問いは、リッカム・プログラムの治療期間を調べた研究の中で正面から検討されています。
出典: 吃音と私の20年(note)(台帳: V0230)
その研究は、イギリスで6歳前に治療を始めた66人を追い、同じ設計で行われたオーストラリアの研究とデータを合わせて計算し直したものです。就学前の子ども向けのリッカム・プログラムでは、第1段階が中央値11回の通院で終わっていました。
注目されたのは、データを合わせたことで新しく見つかった予測因子です。どもり始めてから治療開始までの期間が、治療にかかる時間と関係していました。しかも、12か月以上どもっていた子のほうが、プログラムを進むのが速かったのです。ここから著者らは、就学前の範囲であれば、発吃から1年ほど介入を遅らせてもリッカム・プログラムへの反応を損なうとは考えにくい、と述べています。
この結果には、外してはいけない条件が3つ付いています。2003年の報告であること、対象が就学前の子どもであること、そして見ているのが「この1つのプログラムへの反応」だということです。「様子見が正しい」と一般に広げられる材料ではありません。声の側は不安を語り、データの側は、就学前の範囲であれば遅れの影響は考えにくいと答えている——そのずれ自体が、いま分かっていることの形です。
訓練でどこまで減るの?— 減るものと、減らないもの
最後に、訓練の「効き目」をどう受け取るかという話をします。50代で言語訓練を始めた人が、仲間内で出た話題をブログに書いています。
当事者本人(アメブロの名義「miporin」さん・50代で言語訓練を始めた/個人ブログ)
言語訓練とメンタル面を別々に捉える考え方もあるけれど、メッチャ吃ったままで吃音を「受容」しカミングアウトにつなげたり、諦めていたことに挑戦するのはかなり難しいと思う
早朝に電話をつないで、お題を決めて数分のスピーチをする——そういう練習を仲間と続けていると書かれているブログです。引用したのは、その場で出た「吃音の受容と改善について」というお題を受けて書かれた一節。言語訓練と気持ちの面を切り離して考える立場があることを認めたうえで、切り離したままでは難しい、というのが本人の見方です。では、訓練で何が減り、何が減らないのか。同じ人でも、話す場面が変われば出方が変わることを示した観察があります。
出典: 受容と改善(アメブロ)(台帳: V0229)
発達性吃音のある20人、パーキンソン病のある20人、そしてなめらかに話す40人に、3つの場面で話してもらった研究があります。一人で自由に話す場面、臨床家と声をそろえて読む斉読、そして一人での音読です。それぞれ最初の200音節が分析されました。
発達性吃音のある人では、一人で話す場面と一人での音読で、吃音らしい詰まりが多く出ました。声をそろえて読む斉読では、そのどちらと比べても大きく減っています。一方、なめらかに話す対照群では、場面による差は見られませんでした。同じ人が、同じ日に、誰とどう話すかだけで、数字が動くということです。
だから、訓練室で測った成績を、そのまま日常の見通しに読み替えることはできません。何を目標に置くかも、そこで変わってきます。日本の解説は、認知行動療法を用いた治療について、発話という行為そのものに注目することがなめらかに出なくなる主な原因だと理解してもらったうえで、どもるかどうかにこだわらず、楽なコミュニケーションを目標とする、と書いています。そうしたほうが発話行為自体から注意が外れるので、かえって発話症状も改善しやすい、とも。「減らすこと」を目標から外すという選択肢が、治療の側に用意されています。「受容」と「改善」は切り離せない、という当事者の書き方も、この重なりの上にあります。
どこに相談するか、と、この記事が扱わなかったこと
吃音の専門機関の資料は、小学校に入っても吃音が引き続き見られる子どもでも、ことばの教室や言語聴覚士の適切な指導・支援を受けることで、多くの場合、身体の緊張を伴う重い吃音があまり見られなくなったり、緊張をうまくコントロールしながら話す方法を身につけたりして、日常生活の中でそれほど大きな支障なく過ごせるようになる、としています。思春期や就職活動の時期にあらためて悩みや不安が出ることもありますが、多くはそれを乗り越えるなかで再び軽減し、言語症状も徐々に軽快していくと考えられています。どこで受けられるかは大学病院の吃音外来を扱った記事に、近くに相談先が見つからないときの選び方は近くに相談先がないときの記事にまとめました。
相談や訓練に進む目安として、日本の解説は幼児期について次の4つを挙げています。
- 吃音の悪化が見られる
- どもり始めてから1年半から2年以上たっても続いている
- 就学の1年前までに治らない
- 吃音の家族歴などの危険因子がある
この記事では、日本の標準検査「吃音検査法」で何を測るのかと、メンタルリハーサル法の「有効率74%」という数字には触れていません。前者は日本の検査そのものの一次資料が手元に無く、後者は数字の出所を原典で特定できていないためです。日本の解説にある範囲で言えば、メンタルリハーサル法は、うつなどの精神的な合併症がない症例に対して、イメージトレーニングを中心として実際の発話訓練をしない方法として使われるが、2年程度かかることと、実施できる臨床家が少ないという問題がある、とされています。
「治療」を探すときに陥りがちな3つの落とし穴
落とし穴1 − 「量を増やせば治る」と考える
「治すトレーニング」という言い方は、方法と結果を1つの言葉に結んでしまいます。けれど、大人向けの介入をまとめた統合では、比較群との差ははっきり出ていません。子ども向けでも、効果を支える材料があるのは限られた種類の介入についてだけだ、とされています。差が出やすいのは、練習した量よりも、どの技法を使うかのほうでした。数をこなすこと自体を目標にすると、いちばん結果を動かしにくいところに力を注ぐことになります。
落とし穴2 − 大人向けの答えと、子ども向けの答えを取り違える
就学前の子どもに高い評価がついている方法と、大人が受ける訓練は、別のものです。学齢期以降の子どもと思春期については、くじ引きのように割り付けて比べた研究が1件も無く、根拠の水準は「乏しい」と評価されています。ネットで見つけた「効果がある」という記述の主語が誰なのか——何歳の、どんな困りごとを持った人なのか——を先に確かめてください。
落とし穴3 − 訓練室の成績を、そのまま日常の見通しにする
同じ人でも、一人で話す場面と、誰かと声をそろえて読む場面では、出方が大きく違います。練習の場でうまくいったこと自体は良い材料ですが、それを日常の予測に読み替えるのは早すぎます。どの場面で何が起きたのかを、日付とセットで書き留めておくと、専門職に相談するときの材料になります。
まずは気づいたことを書き留めておくことから小さく始め、言語聴覚士やことばの教室に相談できる場合はそちらが確実です。
よくある質問
吃音に効く薬はありますか?
日本の解説は「吃音に有効性が確立された薬物はない」と明記しています。1/3程度の症例に有効だと報告されているものはあるものの、吃音が適応として保険収載されている薬は無いとされています。世界の研究をまとめたレビューも、新しい抗精神病薬や、言語療法にアトモキセチンを併用した報告に有望な所見はあるが、方法の限界のため確定的な治療推奨は出せない、と結論しています。銅・チアミン・緑茶などのサプリは根拠が不十分とされました。
練習の量を増やせば治りますか?
量で決まるという報告は手元にありません。大人への介入9件・276人分をまとめても比較群との差は出ず、2歳から18歳の9件・327人分でも、無治療の対照群より効果はあるものの、根拠となる研究の数も質も限られるとされています。一方で技法どうしを比べた1980年の統合では、話を引き伸ばす技法とやわらかく声を出し始める技法のほうが良い成績でした。量より、どの技法をどの年齢で使うかのほうに差が出ています。
子どもの場合、いつから始めればいいですか?
日本の解説は幼児期について、悪化が見られる場合、どもり始めてから1年半から2年以上たっても続く場合、就学1年前までに治らない場合、吃音の家族歴などの危険因子がある場合に訓練を行う、という目安を挙げています。また、就学前の範囲であれば、発吃から1年ほど介入を遅らせてもリッカム・プログラムへの反応を損なうとは考えにくい、という2003年の報告もあります。迷ったときは、待つかどうかも含めて専門職と相談するのが確実です。
認知行動療法は、どもりを減らすための治療ですか?
日本の解説の書き方は少し違います。認知行動療法を用いた治療では、発話という行為そのものに注目することがなめらかに出なくなる主な原因だと理解してもらったうえで、どもるかどうかにこだわらず、楽なコミュニケーションを目標にするとされています。そのほうが発話行為自体から注意が外れるので、かえって発話症状も改善しやすい、とも書かれています。「減らすこと」を目標に置かない選択肢がある、と理解しておくとよさそうです。
飲んでいる薬でどもり始めることはありますか?
大学医療センターの電子カルテを調べた研究では、22人・18種類の薬が薬剤性吃音の可能性ありと判定され、抗てんかん薬・中枢神経刺激薬・抗うつ薬が最も多い薬効群でした。ただしこれは症例を数え上げたもので、起こる頻度を示した数字ではなく、原典自身が実際より少なく拾えている可能性を述べています。心当たりがあっても自己判断で中止せず、処方元に相談してください。
まとめ
- 「どの患者にも一様に有効である治療法はない」。治療の中心は周囲の対応を変えること・言語訓練・カウンセリング・心理療法や行動療法で、組み合わせて選ぶ形とされている。
- 大人への薬を使わない介入は、9件・276人分をまとめても比較群との差が出ていない。ただし集まった治療も評価のものさしもばらばらで、「効かない」とは違う。
- 技法のあいだには差があると報告されている。話を引き伸ばす技法とやわらかく声を出し始める技法が、態度や呼気の技法より良い成績だった。ただし1980年の報告で、新しい統合では治療どうしの差は出ていない。
- 子どもは年齢で答えが変わる。就学前のリッカム・プログラムは最高等級、学齢期以降と思春期は比較試験が1件も無く水準は「乏しい」。就学前なら1年ほど遅らせても反応を損なうとは考えにくい、という2003年の報告もある。
- 訓練室の成績は日常の見通しではない。同じ人でも場面で出方が変わる。「減らすこと」を目標から外す選択肢も治療の側にある。相談先はことばの教室と言語聴覚士。
