まず結論から
- 連発は音のくりかえしのことで(例:「か、か、からす」)、伸発・難発とならぶ吃音の中核症状のひとつです。
- 発達性吃音の多くは、軽い繰り返しから始まります。親が最初のサインとして挙げるものでも、音節や単語の繰り返しが最も多いと報告されています。
- 発症直後の幼児を録音して数えた研究では、最も多いのは語の一部の繰り返し、次いで1音節の語の繰り返しでした。回数が多いだけでなく、繰り返しの間隔が短い(速い)という違いもあります。
- 連発が減ったからといって、軽くなったとは限りません。症状が進むと、話そうとしても最初のことばが出なくなることが多いとされています。思春期以降は連発や伸発より難発が中心になるとも書かれています。
- どこで出るかも、でたらめではありません。吃音の頻度や出る場所には、言語的な要因が関わっていることが研究で整理されています。
ただし、症状の出方には個人差も時期による波もあります。この記事に出てくる「多い」「変わりやすい」は集団を見たときの傾向で、目の前の一人の見通しを言い当てるものではありません。気になるときは、様子を見るだけにせず、ことばの教室や言語聴覚士に相談してください。
連発は、最初に出るサインであることが多い
吃音が始まるとき、多くの場合いちばん先に現れるのが連発です。2歳11か月から月ごとに記録を残した保護者のブログがあります。
2022年生まれの息子に吃音がある母(月齢ごとの経過をまとめた育児記録・個人ブログ)
2歳11ヶ月
⚫︎吃音出現(連発)
⚫︎「全然言えないー 」と本人も自覚あり
⚫︎1・2週間くらいしたら、ちょっと落ち着く
⚫︎保育園ではちょっと見られるもののそこまで目立たないと言われる
記録の1行目が「吃音出現(連発)」です。始まりの形として連発が書かれ、そのすぐあとに「1・2週間くらいしたら、ちょっと落ち着く」と続きます。同じ記録の後半では、3歳0か月で伸発が見られるようになったこと、3歳2か月では伸発が中心で連発もあること、そして1か月の中でも目立つ時期と目立たない時期があることが、月齢ごとに書き分けられています。始まりが連発で、そこから形と量が動いていく——この経過は、公的資料が書いている進み方と重なります。
出典: 【2y11m〜3y7m】吃音経過(アメブロ)(台帳: V0052)
公的機関の解説は、発達性吃音の多くは軽い繰り返し(例:「あ、あ、あのね」)から始まる、と書いています。うまく話せる時期もあるのが特徴で、これを「波がある」と言うことがある、とも添えられています。
研究の側も同じ方向を示しています。親が何をもって吃音の始まりと判断したかを複数の研究から整理した疫学レビューによれば、最初のサインとして最も多く挙げられたのは音節や単語(特に短い語)の繰り返しで、1回の症状で3〜5回繰り返すという報告が多かったとされています。音の引き伸ばし(伸発)や、声が出ずに詰まる状態(ブロック・難発)を挙げる親は少数でした。臨床家が発症直後に直接診た記録でも、同じ傾向が確認されています。
連発が減ったのは、良い知らせとは限らない
ここがこの記事でいちばん伝えたいところです。連発が目立たなくなったとき、症状が軽くなったのではなく、別の形に変わっていることがあります。転校をきっかけにそれに気づいた母親の記録です。
小学3年の息子に吃音がある母(父の転勤で10月に転校した年の記録・個人ブログ)
『息子君は、吃音はあまり出てないみたいです。話す時に言葉が詰まることはあっても、あああああって連発したりは無いので!』
と言っていた。
やはり担任の先生には、転入する時に吃音のこと説明したけど、連発から難発になってる吃音のことなんて分かるはずないよね
あちゃー、ブロック出てるってことねー
担任が伝えたのは「吃音はあまり出てないみたい」という観察です。その根拠として挙げられているのが、連発が無いこと。ところが母親は、同じ報告の中の「言葉が詰まることはあっても」という一言のほうを読んでいます。連発が消えて詰まりが出ているなら、それは軽くなったのではなく形が変わったということ——同じ記録によれば、この電話のあと母親は、引っ越し前より話しにくい状態になってきていると受け止めています。息子自身は転校先で「もう吃音治ったから言わなくていいよ」と言っていた、とも書かれています。連発が減ることは、本人にも周囲にも「治った」ように見えることがあります。
出典: 息子が「もう吃音治った」と言った年(アメブロ)(台帳: V0068)
公的機関の解説は、発達性吃音の進み方をこう説明しています。多くは軽い繰り返しから始まり、7〜8割くらいが自然に治るとされる一方、残りの2〜3割は徐々に症状が固定化して、楽に話せる時期が減ってくる。そしてさらに症状が進むと、話そうとしても最初のことばが出なくなることが多い。学会の解説も、思春期以降になると症状は連発や伸発よりも難発が中心になる、と書いています。
そのうえで、症状の量以外の変化も起きます。症状がしばらく続いたりことばの出にくさが強くなってくると、「話す」という行為と「嫌悪」や「恐怖」という感情が結びついて、よりことばが出にくくなるとされています。また、身体を動かして勢いをつける、ことばの最初に「あのー」をつけるといった工夫でたまたま言えた経験をすると、出にくいときは常にその方法を使うようになることがあり、これが二次的行動として見られるようになる、とも書かれています。連発が減っているように見えても、こうした層が増えていることがあります。
呼び方も、組み合わせも、人によって違う
3つの症状は、全員に3つとも出るわけではありません。自分がどの型を持っているかを書いている当事者がいます。舞台役者として活動している人の記事です。
舞台を中心に活動する役者(吃音当事者。自身の稽古方法を紹介した記事・note)
吃音には大きく分けて3種類あります。
1.連声型
発声時に音が連続して出てしまう状態。
例)あ、あ、あ、あ、ありがとうございます。
2.伸発型
言葉の語頭が伸びてしまう状態。
例)あーーーりがとうございます。
3.無声型
言いたい言葉が声としてでない状態。
例)・・・・・ありがとうございます。
ここで使われているのは「連声型」という呼び方です。公的資料の「連発」と同じ状態を指していますが、当事者や現場では言い方に幅があります。そして書き手は、この3つのうち自分は連声型と無声型の2種類を抱えている、と続けています。3つ全部ではなく、2つ。組み合わせは人によって違う、ということです。この記事では、本番前の稽古で苦手なセリフに目星をつけておくこと、動作を添えること、脚本家にセリフの変更を相談することといった工夫も紹介されています。どの型が出るかを自分で把握していることが、その工夫の前提になっています。資料の側でも、3つのうち1つ以上が見られることを吃音と呼ぶとされており、3つ揃うことは条件ではありません。
出典: 吃音症でも舞台役者になれるのか(note)(台帳: V0037)
加えて、同じ人の中でも出方は動きます。学会の解説は、状況によって症状が出やすかったり出にくくなったりすること、歌を歌うときや2人で声を合わせるとき、独り言を言うときには一時的に流暢になる人が多いこと、そして調子の良い状態・悪い状態が数週間から数か月にわたって続く「波」があることを挙げています。連発が今週目立っているからといって、来月も同じとは限りません。
連発は、どんな語で起きやすいのか
「なぜこの言葉だけ言えないのか」は、当事者からよく出る疑問です。これについては、言語の側から吃音を調べた研究のまとめがあります。吃音は発話の障害として定義されますが、ことばを組み立てる仕組みと重要な形で関わっている、というのがこのレビューの出発点です。
レビューが整理しているのは、まず吃音の頻度を上げ、どこで起きるかを左右する言語的な特徴についての研究です。次に、吃音のある人にことばの面での微妙な違いや弱さがあるのかという問い、幼児期の吃音からの回復に関わると見られることばの要因、そして2つの言語を使う子どもで吃音を見分けるときの難しさが扱われています。結論として、吃音のある人は、ことばと発話の要求を組み合わせるやり方が、流暢に話す人とは違っている点があるとまとめられています。
もう一つ、ふつうの言いよどみとの違いも押さえておく価値があります。発症から半年以内の幼児と、吃音のない対照児の発話を録音して、なめらかに出なかった箇所を数えた研究では、吃音のある子で最も多かったのは語の一部の繰り返しで、次いで1音節の語の繰り返し、そして声の途切れの順でした。吃音のある子は1回あたりの繰り返し回数が多いだけでなく、音響分析では繰り返しの間隔が短い、つまり速いという違いもありました。一方、句(ひとまとまりの言い回し)の繰り返しは、ふつうの言いよどみとして扱われるのが一般的だとされています。「繰り返しがあるかどうか」ではなく「何をどう繰り返すか」で見分けられている、ということです。
なお、「1音節の語の繰り返しを吃音と呼んでよいか」については研究者のあいだで論争があることにも、このレビューは触れています。線引きは完全に確定しているわけではありません。
連発を見るときの3つの落とし穴
落とし穴1 − 連発が減った=軽くなった、と読む
症状が進むと、話そうとしても最初のことばが出なくなることが多いとされています。思春期以降は連発や伸発より難発が中心になるとも書かれています。連発が目立たなくなったときは、詰まりが増えていないか、言い換えや回避が増えていないかもあわせて見ることです。周囲からは「治った」ように見える段階があります。
落とし穴2 − 一時期の量で判断する
症状には波があり、うまく話せる時期もあるのが特徴だとされています。歌うときや2人で声を合わせるとき、独り言では一時的に流暢になる人が多いとも書かれています。1回の面談や1週間の様子で決めず、期間をとって記録するほうが実態に近づきます。
落とし穴3 − 「繰り返しがあるかどうか」だけで見分けようとする
誰にでも言いよどみはあります。研究では、吃音のある子で多かったのは語の一部の繰り返しと1音節の語の繰り返しで、回数が多く、間隔が短いという違いがありました。一方、句の繰り返しはふつうの言いよどみとして扱われるのが一般的だとされています。何をどう繰り返すかを見る必要があり、そこは専門職の領分です。
まずは、いつ・どの場面で・どんな形で出たかを短く書き留めておくと、相談のときに経過を伝えやすくなります。相談先は、小児を扱う言語聴覚士とことばの教室です。
よくある質問
吃音の「連発」とは何ですか?
音のくりかえしのことで、公的機関の解説は「か、か、からす」を例に挙げています。伸発(引き伸ばし。「かーーらす」)、難発・ブロック(ことばを出せずに間があいてしまう。「・・・・からす」)とならぶ、吃音の3つの中核症状のひとつです。当事者や現場では「連声型」と呼ばれることもあります。
子どもの吃音は連発から始まることが多いのですか?
そう報告されています。公的機関の解説は、発達性吃音の多くは軽い繰り返し(例:「あ、あ、あのね」)から始まるとしています。親が最初のサインとして挙げたものでも、音節や単語(特に短い語)の繰り返しが最も多く、1回の症状で3〜5回繰り返すという報告が多かったとされています。
連発が減ってきました。良くなっているということですか?
そうとは限りません。自然に治る人も多い一方で、症状が進むと話そうとしても最初のことばが出なくなることが多いとされています。思春期以降は連発や伸発より難発が中心になるとも書かれています。連発が減ったときは、詰まりや言い換えが増えていないかもあわせて見てください。
3つの症状は全部出るものですか?
いいえ。定義では、3つのうち1つ以上が見られることを吃音と呼びます。この記事に登場した当事者も、3つのうち連声型(連発)と無声型(難発)の2種類を抱えていると書いています。組み合わせは人によって違います。
なぜ特定の言葉だけ繰り返してしまうのですか?
言語の側から吃音を調べた研究のまとめによれば、吃音の頻度を上げ、どこで起きるかを左右する言語的な特徴が研究されてきました。そして、吃音のある人は、ことばと発話の要求を組み合わせるやり方が流暢に話す人とは違う点があるとまとめられています。ただし「この語なら必ず出る」といった単純な規則が確立しているわけではありません。
まとめ
- 連発は音のくりかえしで、伸発・難発とならぶ中核症状のひとつ。3つのうち1つ以上が見られることを吃音と呼ぶ。
- 発達性吃音の多くは軽い繰り返しから始まる。親が挙げる最初のサインも、音節や単語の繰り返しが最多だった。
- 連発が減っても軽くなったとは限らない。症状が進むと最初のことばが出なくなることが多く、思春期以降は難発が中心になる。
- 3つ全部が出るわけではなく、組み合わせは人によって違う。波もあり、歌や斉読、独り言では出にくい。
- どこで出るかには言語的な要因が関わることが研究で整理されている。ふつうの言いよどみとの違いは「何をどう繰り返すか」に出る。
