まず結論から
- 「音が出にくい」という感覚にいちばん近いのは、ことばを出せずに間があいてしまう難発(ブロック)です。思春期以降は、繰り返しや引き伸ばしよりも難発が中心になっていきます。
- 特定の単語・音・行(カ行、タ行など)をより苦手に感じることは、吃音の中核的な症状に共通する特徴の一つとして知られていて、「一貫性」と呼ばれています。気のせいではありません。
- ただし、どの音が苦手かは人によって違います。成人35人の音読を調べた研究では、どもった語は流暢に言えた語よりも「子音で始まる」「5文字以上と長い」「名詞・動詞・副詞・形容詞である」割合が高いという結果でした。一方、就学前の子ども14人を調べた研究では、次に来る語の音の複雑さは、その手前の語に起きる繰り返しを予測しませんでした。
- 同じ音でも、場面と時期で出やすさは動きます。歌うとき・2人で声を合わせるとき・独り言では一時的に流暢になる人が多く、調子の良い状態や悪い状態が数週間〜数か月続く「波」もあります。
- 言い換えはその場を乗り切るための工夫ですが、続けると「吃音が出ないか」を日々警戒しながら生活することになり、ストレスや悩みを抱え込みやすくなるとされています。
ただし、これは「この行だから必ずどもる」という意味でも、「工夫しても意味がない」という意味でもありません。吃音の症状は同じ人の中でも日・週・月の単位で揺れ、見え方や聞こえ方も場面や気持ちの状態によって変わることが知られています。いま出にくい音が、この先ずっと同じとは限りません。
どの音が出にくいかは、人によって違う
「吃音で出にくい音」と検索したとき、多くの人が期待しているのは「か行が苦手」「あ行が苦手」といった一覧かもしれません。けれど当事者の語りを並べていくと、挙がる音は驚くほどバラバラです。まず、母音で始まる言葉に困ってきたという人の話から見ていきます。
当事者本人の声(2歳ごろに発症・高校で部活の部長を務めた/自助団体のメディアへの寄稿)
高校生時代の私はブロック(難発)の吃音に悩まされていました。
日常の挨拶や日直の号令、マニュアル対応などは、言い換えが難しいため吃音が出やすくなります。
特に母音(あいうえお)で始まる言葉はブロックが出やすく、「おはよう」「ありがとう」などよく使う言葉で言いにくさを感じていました。
この方が部長として毎回言わなければならなかったのは、「部員一同、礼!ありがとうございました。」という部の決まり文句でした。就任した初日、「礼!」の号令で部員が一斉に頭を下げたあと、次の言葉がなかなか出てこない。それからというもの、お辞儀のあとに数秒の間があくことが毎回の光景になった、と本人が書いています。ここで目を引くのは、苦手として挙げられているのが「言い換えが難しい」場面ばかりだということです。学会資料も、どもらないための工夫として、ことばを言い換える・言いやすい言葉を最初に言うといった方法があることを紹介しています。
出典: ブロックが酷い吃音があっても、私が部長を務められたわけ。(HAPPY FOX)(台帳: V0148)
そもそも吃音には、なめらかに話せなくなる中核的な症状が3つあります。音を繰り返す「連発」(例:「か、か、からす」)、音を引き伸ばす「伸発」(例:「かーーらす」)、そしてことばを出せずに間があいてしまう「難発(ブロック)」(例:「・・・・からす」)です。「出にくい音」という悩みの中心にあるのは、3つめの難発です。そして大学病院の解説は、こうした中核症状に共通する特徴として、特定の単語・音・行(カ行、タ行など)をより苦手とすることを挙げ、これを「一貫性」と呼んでいます。苦手な音が決まっているように感じるのは、症状の性質として説明されている現象です。
言い換えのきかない言葉ほど、出にくくなる
苦手な音がどれかという話と並んで、当事者の語りに繰り返し出てくるのが「別の言い方ができるかどうか」です。同じ音でも、置き換えられる言葉と、絶対に置き換えられない言葉があります。
当事者本人の声(インタビュー記事。「ぽん」が当事者、「――」で始まる行は聞き手である記者の発言/文春オンライン)
人名や地名などの固有名詞は言い換えられないので苦手な人が多いと思います。僕は自分の名前が一番苦手です。
――言い換えられないプレッシャーで、余計言いづらくなる?
ぽん そういう側面はすごくあります。
この方はインタビューの前半で、「今吃りそうだな」と思った時に言いやすい言葉に言い換えていること、頭の中にいくつも選択肢を出しながら喋っていることを説明しています。その延長線上に出てくるのが、選択肢を用意できない言葉——人名・地名、そして自分の名前です。逃げ道が無いという条件そのものが、言いにくさを押し上げているという語りです。学会資料も、どもらないための工夫として、言いやすい言葉を最初に言う・ことばを言い換えるといった方法を挙げています。
出典: バイデンの告白で話題に…「就活の面接、時間内に名前を言うのがやっと」光が当たらない“吃音”のリアル(文春オンライン)(台帳: V0129)
「この言葉は詰まりそうだ」と話す前から予感して不安になることは、「予期不安」と呼ばれています。大学病院の解説は、思春期以降に加わっていく変化として、この予期不安、予感した言葉をとっさに別の言葉に置き換える「言い換え」、そして人前や電話など話す場面自体を避ける「回避行動」の3つを並べています。学会資料も、発話場面での失敗体験が重なると、話し始める前に不安や恐怖を感じ、次第に会話や社交を避けるようになると説明しています。言い換えができないから苦手になるというより、逃げ道があるかどうかが、その言葉を体験のなかでどれだけ怖くするかを左右している——そう読むほうが、当事者の語りには近いようです。
言い換えという工夫と、その代償
出にくい音があるとき、多くの人が自然に身につけるのが言い換えです。ただ、言い換えは無料の道具ではありません。使い続けると、別の負担が乗ってきます。
当事者本人の声(難発が主・職場での名乗りに苦労してきた/個人ブログ note)
一番は「あ」行が言えず、次に「か」行、「た」行も言いづらかったので、その行から始まる単語はよく言い換えていた。
この方は同じ記事のなかで、自分の言い換えの実例をいくつも並べています。「ありがとうございます」を「すみません」に置き換える、教室名が言えないので職場の名乗りから固有名詞を落とす、文頭に「はい」「えっと」「あの」を添えて最初の一言に助走をつける。そのうえで、言いたい言葉を事前に変換してから話すこと自体がとてもストレスなのだと書いています。工夫がうまくいっているときほど、その負担は外から見えなくなります。
出典: 感謝を伝えるはずが、謝罪に変わる。吃音と「言い換え」の矛盾した苦しさ(note・nagy)(台帳: V0147)
この「見えなくなる」ところが、学会資料が注意を促している点でもあります。吃音を巧みに隠そうとして言いにくい単語を言い換えると、吃音は目立たなくなりますが、実際には「吃音が出ないか」を日々警戒しながら生活することになり、ストレスや悩みを抱え込みやすくなる、と説明されています。神経科学の総説も、表に出る話し方だけでなく、音や語を避ける・言い回しを変える・つなぎ言葉を差し込むといった、吃音を隠すための幅広い方法があること、そしてその隠し方の度合いは人によっても場面によっても違うことを述べています。言い換えをやめるべきだ、という話ではありません。ただ、うまく隠せていることと、楽に話せていることは、同じではないということです。
同じ音でも、場面によって出やすさが変わる
「この音が苦手」という感覚は、音だけで決まっているわけではありません。同じ音でも、言う場面が変わると結果が変わります。高校のプールの授業で、自分のタイムを申告する決まりに直面したときの話です。
当事者本人の声(小学生のときに発症・当時は誰にも打ち明けていない高校生/自助団体のメディアへの寄稿)
その日の私の記録は20.25でした。
私はナ行を言う時によく吃ります。20と言いたくても「に、に、ににぃぃぃじゅう」という声になってしまうのです。
この記録を聞いたときは「あ、終わった」と思いました。それと同時に、もう少し早ければ19秒だったから吃る心配もなかったのに、と訳の分からない後悔がありました。
順番が近づくにつれて心臓の鼓動が聞こえるほど緊張し、友達との会話も上の空だった、とこの方は書いています。ところが直前に呼ばれた友達が、23秒63を「にーさんろくさん」と読み上げた。その言い方があったのか、正式な言い方でなくてもいいんだ、と頭のなかで急ハンドルを切り、砕けた言い方に変えて無事に言い終えたと振り返っています。同じ「20.25」という数字でも、読み方を一つ変えられるかどうかで、そこは越えられる場所にも越えられない場所にもなった——逃げ道の有無をこう読むのは、出典の範囲を超えた記事側の見方です。
出典: 高校時代、吃音の予期不安で大ピンチ!その恐怖を救ってくれた友達の行動(HAPPY FOX)(台帳: V0149)
学会資料は、吃音の特徴として、状況によって症状が出やすかったり出にくくなったりすることを挙げ、歌を歌うとき・2人で声を合わせるとき・独り言を言うときなどには一時的に流暢になる人が多いと説明しています。逆に困難を感じやすい場面としては、中高生の部活動や入学面接、大学生のゼミの発表や就職活動、社会人の職場の電話応対が挙げられています。神経科学の総説も、人や聴衆に向けられた発話・伝える目的を持った発話では吃音が現れるのに対し、声に出した独り言では吃音が出ないことを、まだ説明のついていない現象として挙げ、症状の重さが伝達の文脈と時間的な切迫によって変わると述べています。もし「音そのもの」だけで決まるのなら、歌でも独り言でも同じ音でつまるはずですが、実際にはそうならないのです。
年月で変わるもの、変わらないもの
では、苦手な音は年齢とともに変わるのでしょうか。32年目の自分を棚卸しした、成人当事者の記録があります。
当事者本人の声(40歳・社内研修講師・吃音歴およそ32年/個人ブログ)
約32年間の吃音人生の中で、かなり軽く感じるようになっています。
言葉の言い換えもほとんどなく、少し吃りながら言いにくい言葉も物理的な負担(息苦しいなど)なく話せている気がします。
タ行やナ行など苦手な言葉の種類は特に変わってないですね。
「言いたいけど言えない」ということはほとんど無くなっています。
この方は同じ記事のなかで、吃音であることに引け目を感じることはほぼ無くなった一方、会議や大勢が参加する場での発言は、吃ることが頭をよぎって控えてしまうことが5回に1回ほどある、とも書いています。さらにその年は仕事の変化が大きく、3月までは症状が強く出て話しにくい日が続いたと振り返り、環境の変化と吃音は連動していると感じる、と結んでいます。苦手な音の顔ぶれは変わらないまま、その音とどう暮らすかのほうが動いていく——年月の効き方が二手に分かれることを、当事者自身の言葉で示した記録です。
出典: 40歳になった私の吃音ライフ(はてなブログ「どもれども どもれども」)(台帳: V0064)
公的な資料も、この2つの動き方を別々に説明しています。学会資料は、調子が良い状態あるいは悪い状態が数週間〜数か月にわたって続く人が多く、こうした症状の変動を「波」と呼ぶと述べています。大学病院の解説も、症状が出やすい時期と出にくい時期があることを「波現象」として挙げ、さらに、どもった単語を一度言えてしまうとその後は言いやすくなることを「適応効果」として挙げています。神経科学の総説も、同じ人の中で症状の重さが日・週・月の単位で揺れること、見え方や聞こえ方が性格・社会的な文脈・伝えたい目的・そのときの気持ちの状態によって変わることを述べています。「一生この音はダメ」と固定して考えなくてよい根拠は、ここにあります。
研究は「どの語でどもるか」を、どこまで言えているのか
「この音が言いにくい」という実感には、はっきりした手ざわりがあります。では研究のほうは、それをどこまで裏づけているのでしょうか。先に言ってしまうと、年齢と測り方によって結果が違い、一本の説明にはまとまっていません。
英語を母語とする成人が文章を音読した記録を分析した研究があります。子どものころに始まった吃音(発達性吃音)のある35人について、どもった語と流暢に言えた語のそれぞれに、①語頭の音が子音である ②名詞・動詞・副詞・形容詞である ③5文字以上と長い ④文の最初の3語に入っている、という4つの条件を1点ずつ与えて0〜4点の「重み」を付け、比べたものです。どもった語の平均は2.51点、流暢に言えた語は1.86点でした。
要因ごとに見ると、語の長さ・語頭が子音であること・品詞(名詞・動詞・副詞・形容詞)の3つでは、どもった語のほうがその条件に当てはまる割合が高くなっていました。ところが、長く信じられてきた「文のはじめのほうの語ほどどもりやすい」という見方だけは支持されませんでした。文の最初の3語で数えても、節の最初の3語で数え直しても、どもった語と流暢な語で差は見られなかったのです。著者らは、これらの要因が互いに絡み合っていることを踏まえたうえで、ある語で吃音が起きる確率は、言語的な要因よりも発話の運動に関わる要因に影響されているのではないか、と解釈しています。なお、これは英語の音読での結果であり、日本語の「あ行」「か行」といった行を調べたものではありません。
一方、年齢が下がると結果が変わります。吃音のある就学前の子ども14人(平均3歳7か月)の親子の会話を書き起こし、発話の2番目の語——つまり次に来る語——の音の複雑さが、その手前の語に起きる繰り返しを予測するかを調べた研究では、語彙や文法などほかの要因を一緒に計算に入れると、音の複雑さは意味のある予測要因ではありませんでした。著者らは、少なくとも語の音の複雑さを点数にするこの指標(WCM)で見るかぎり、音の複雑さは就学前の子どもの吃音発話に際立った影響を与えていない、と結論づけています。
まとめると、語の音の性質は関係していそうだけれど、それだけで「出にくさ」が決まるわけでもない、ということです。神経科学の総説も、話すときには吃音が出るのに歌うときには出ないのはなぜか、伝える相手がいる場面では出るのに独り言では出ないのはなぜかを、いまだ解かれていない問いとして正面から挙げています。研究がまだ答えを持っていない領域なので、「この音だから吃る」と言い切る説明を見かけたら、その根拠がどこまでのものかを確かめてください。
相談先・受診の目安 — 言語聴覚士・ことばの教室
「出にくい音」で困っているとき、どこに相談すればよいのでしょうか。
- 言語聴覚士:ことばの訓練の専門職です。子どもの場合は、小児を扱う言語聴覚士に相談できます。
- ことばの教室:ことばの教室の教員に相談できます。
- 医療機関:大学病院の耳鼻咽喉科に吃音の専門外来が置かれ、言語聴覚士や臨床心理士と協働して支援している例もあります。
相談を始める時期については、ドイツの診療ガイドラインが、自国では吃音の治療の開始が不必要に遅れがちだと指摘しています。日本の事情がそのまま同じとは限りませんが、気になることがあれば、早めに相談してみてよいでしょう。本人が吃音の治療を希望する場合には、言語聴覚士による発話訓練を受けるという選択肢があり、発話訓練だけで症状が改善しない場合や不安が強い場合には、カウンセリングや心理療法が役立つこともあるとされています。青年・成人については、話し方の組み立て方そのものを新しく学び直していく訓練(「発話再構成法」と呼ばれる方法です)に良好なエビデンスがあり、効果も大きいと診療ガイドラインが報告しています。ただし治療は年齢に応じてさまざまで、確実な治療法はまだないとも説明されています。
また、ほかの当事者と出会える自助団体に参加することが、吃音を否定的に捉えることが減るといった心理的な変化のきっかけになることもあります。学校や職場では、2016年に施行された障害者差別解消法により、吃音に対する差別的な言動や取り扱いは禁止されており、発表や電話応対の免除、試験等での面接時間の延長といった、その人に合わせた調整(合理的配慮)を求めることができます。ただしその際、医師の診断書や言語聴覚士の報告書の提出などが求められる場合があります。「出にくい音」で失敗しやすい場面を、無理に一人で乗り切る必要はありません。
「出にくい音」で陥りがちな3つの落とし穴
落とし穴1 − 他人の「苦手な音リスト」を自分に当てはめる
この記事に登場した5人だけでも、挙げている音は母音・タ行・ナ行・カ行・固有名詞とバラバラでした。特定の単語・音・行を苦手とすること自体は症状の特徴として知られていますが、その中身は人によって違います。他人の苦手リストを覚えるより、自分がどの音・どの場面で詰まったかを書き留めるほうが役に立ちます。
落とし穴2 − 「この音は一生言えない」と決めつける
出やすさには数週間〜数か月続く調子の「波」があり、場面によっても変わります。研究のほうも、成人では語頭が子音であることなどとの関連が見られた一方、就学前の子どもでは、次に来る語の音の複雑さの影響がはっきりとは見られませんでした。「一生この音はダメ」と固定して考える必要はありません。
落とし穴3 − 隠せていることを、楽になったことと取り違える
言い換えを続けると吃音は目立たなくなりますが、実際には「吃音が出ないか」を日々警戒しながら生活することになり、ストレスを抱え込みやすくなります。とくに中高生は、吃音の悩みを一人で抱え込み、打ち明けられないことが少なくありません。自助団体でほかの吃音のある人と出会うことが、吃音を否定的に捉えることを減らすきっかけになる場合もあります。話せる相手を持つことは、状況を整理する助けになるはずです。
相談の前段階として、「どの音・どの場面で出やすかったか」「調子の波はどうか」を日々記録しておくと、自分の傾向が見えやすくなり、専門家に相談するときの材料にもなります。毎日の発話を手軽に記録し、経過を見返すことから小さく始めるのも一つの方法です(記録はあくまで気づきと継続のための支援で、治療に代わるものではありません)。
よくある質問
吃音で出にくい音には、決まった傾向がありますか?
特定の単語・音・行(カ行、タ行など)をより苦手とすることは、吃音の中核症状に共通する特徴の一つとして知られています。ただし、その中身は人によって違います。この記事で紹介した当事者も、母音・タ行・ナ行・カ行・自分の名前と、挙げるものが分かれていました。学会資料も、症状は状況によって出やすかったり出にくくなったりし、数週間〜数か月続く調子の「波」もあると説明しています。
なぜ場面によって出やすい音が変わるのですか?
歌を歌うときや2人で声を合わせるとき、独り言では一時的に流暢になる人が多く、逆に部活動・入学面接・ゼミの発表・就職活動・職場の電話応対などは困難を感じやすい場面として挙げられています。症状の重さが伝える相手の有無や時間的な切迫で変わることは、研究でもまだ説明のついていない現象として挙げられています。なお、話す前から「この言葉は詰まりそうだ」と予感して不安になること(予期不安)は、思春期以降に加わっていく変化の一つとして知られています。
言い換えや回避はしてもよいのでしょうか?
その場を乗り切る工夫の一つで、学会資料も、どもらないための工夫として、ことばを言い換える・言いやすい言葉を最初に言うといった方法があることを紹介しています。一方で、続けると「吃音が出ないか」を警戒しながら生活することになり、ストレスを抱え込みやすい面もあるとされています。気になるときは、専門家に相談しながら付き合い方を考えるとよいでしょう。
大人になってから特定の音が出にくくなったのはなぜですか?
吃音の症状は、思春期以降になると、繰り返し(連発)や引き伸ばし(伸発)よりも、最初の音が出しにくくなる難発が中心になっていく傾向があります。「出にくい音が増えた」と感じる背景には、この移り変わりがあることがあります。また、症状の重さは同じ人の中でも日・週・月の単位で揺れることが知られています。
出にくい音は、相談すれば楽になりますか?どこに相談すればよいですか?
本人が希望する場合には言語聴覚士による発話訓練という選択肢があり、青年・成人については、話し方の組み立て方を学び直していく訓練に良好なエビデンスがあり効果も大きいと診療ガイドラインが報告しています。ただし治療は年齢に応じてさまざまで、確実な治療法はまだないとも説明されています。気になるときは、言語聴覚士やことばの教室に相談できます。大学病院の耳鼻咽喉科に吃音の専門外来が置かれている例もあります。
まとめ
- 「出にくい音」という感覚にいちばん近いのは難発(ブロック)。思春期以降は、連発や伸発よりも難発が中心になっていきます。
- 特定の単語・音・行を苦手とすることは症状の特徴として知られていますが、どの音が苦手かは人によって違います。研究の結果も年齢で分かれ、成人では語頭が子音であることなどと関連が見られた一方、就学前の子どもでは、次に来る語の音の複雑さの影響が見られませんでした。
- 出やすさは場面と時期で動きます。歌・2人で声を合わせるとき・独り言では流暢になる人が多く、調子の波は数週間〜数か月続くことがあります。同じ人の中でも症状の重さは日・週・月の単位で揺れます。
- 言い換えはその場を乗り切る工夫ですが、隠し続けると日々の警戒でストレスを抱え込みやすくなります。専門家と付き合い方を考える選択肢もあります。
- 相談先は言語聴覚士やことばの教室。ドイツの診療ガイドラインは、自国では治療の開始が不必要に遅れがちだと指摘しています。気になることがあれば早めに相談を。どの音・どの場面で出やすいかを記録しておくと役立ちます。
