まず結論から
- 吃音の治療の中心は、周りの接し方や場面のほうを変えること、言語訓練、カウンセリング、心理療法・行動療法だと整理されています。外科手術は、この中心の一覧に挙がっていません。
- 手術が試されなかったわけではありません。かつては喉頭(のど)や舌の形の異常が原因だと考えられ、その部分への外科手術や薬品の処置が行われましたが、症状は改善しませんでした。
- 検索で出てくる「声の手術」は、声のかすれなど「声そのもの」の問題への治療です。吃音は同じ「ことばの障害」の枠にありながら、スムースに話をすることが難しい問題として別に位置づけられています。
- 脳の奥に電極を入れる「脳深部刺激」は、パーキンソン病などに対しては確立した外科治療ですが、吃音に対しては、確立した治療としては使われていません。研究として報告された症例がごく少数あるだけです。
- 効果の裏づけがあるのは、言語訓練と、周りの接し方を変える方法です。就学前の子どもには、いちばん確かな裏づけを持つ方法があり、青年期・成人でも話し方を組み立て直していく練習に良好な裏づけがあるとされています。
ただし、誰にでも一様に効く方法があるわけではなく、その人に合ったものを、ときには複数を併用しながら選ぶとされています。さらに6歳から12歳については、どの治療についても効果を示す確かな根拠がまだありません。これは「効かない」ではなく「確かめられていない」という意味です。
「手術さえ受けさせてもらえれば」と待っていた
「吃音症 手術」ということばで調べる人の多くは、治療法を比較しにきたわけではないと思います。もっと切実な、「これは手術で終わりにできるはずだ」という期待を、確かめにきています。
幼いころから手術を待っていた当事者(新聞連載のインタビュー記事。記者が本人の語りを地の文にした部分を含む)
「お父さんとお母さんはどうして、私に手術を受けさせてくれないんだろう?」。中城村の國場真理子さん(46)は7歳の頃から、ずっと待っていた記憶がある。
7歳の子どもが親に向けていた問いは、「治してほしい」ではなく「どうして受けさせてくれないのか」でした。手術という手立てはもうこの世にあって、自分にだけ回ってこない——そう受け取ったまま待つ時間が続いたことになります。この記事にたどり着いた人の多くも、同じ順番で「手術」を探しにきているはずです。そして研究の側も、口や喉の形を治す手術を試さなかったわけではありませんでした。
出典: [吃音と生きる](5)2023年5月4日(沖縄タイムス+プラス)(台帳: V0215)
歴史をさかのぼると、吃音は喉頭や舌の形の異常が原因だと考えられていた時期がありました。その部分への外科手術や薬品の処置が実際に行われましたが、症状は改善しませんでした。19世紀には発声器官の異常が原因と考えられ、大がかりな「形成」手術による治療が行われて、しばしば体を損なう結果や別の障害を残したと整理されています。舌におもりを付ける器具や、口に入れる装具も使われました。吃音を脳の働きの異常として捉える見方が現れたのは、20世紀に入ってからのことです。
「治せる方法があるなら、みんながやってる」
では、なぜいまも「手術で治す」という選択肢が出てこないのか。この問いに、教室で正面から向き合った子どもがいます。ことばの教室の担当教員が、実際に行われてきた14の治療法を一覧にして、「そういう方法があったと思うか」「自分はやってみたいと思うか」を子どもと一緒に考えた記録です。
ことばの教室の担当教員が記録した、3年生の男子児童(B君)のことば(自助団体のサイトに載った教員の実践記録。当事者本人の手記ではなく、支援者の職業上の記録である点に留意)
全部○だと伝えると、「びっくり。手術や電気ショックなんて、すごいのもある。もし、ほんとに手術で治っても、痛いのは嫌だし、吃ったままでも生きていけるから、どうするかは分からない」そして、「これだけ科学が発達してるんだから、もし治せる方法があるなら、みんながやって、どもりがどんどん治ってると思う。そしたら吃る大人なんかいない。そうじゃないから、どれも『治せる方法』になってないと思う」
「全部○」というのは、表に並んだ14の治療法が、どれも実際に行われてきたものだった、という意味です。手術も電気ショックも、思いつきではなく試された。それを知ったうえで、B君は表をチェックしながら考えを組み立てていきます。よりどころにしたのは研究データではなく、身のまわりの観察でした。治せる方法があるなら、それはとっくに広まっていて、吃る大人はいないはずだ——。担当教員はこの学習を、症状を治そうとすることの限界を知らせるために行っています。研究の側も、子どもの治療について「完全に治ることが保証できるわけではない」と書いています。
出典: ことばの教室の実践(日本吃音臨床研究会「吃音と上手につきあうための吃音相談室」)(台帳: V0046)
研究や専門家の合意にもとづく診療ガイドラインが「効果を裏づけられる」とした治療は、年代ごとに次のように整理されています。就学前の子どもでは、リッカムプログラムと呼ばれる言語訓練にいちばん確かな裏づけがあります。これは保護者と一緒に進めていく訓練で、なめらかに言えたときはほめ、どもったときはやさしく言い直しをうながす、という組み立てです。大人の側が話すお手本をゆっくりにする、ことばを簡単にする、どもりに落ち着いて反応する——といった間接的な方法にも強い裏づけがあるとされますが、その裏づけは1件のオランダの研究から来ています。青年期・成人では、楽にやわらかく話す形に話し方を組み立て直していく練習——これは「流暢性形成法」と呼ばれます——に良好な裏づけがあり、効果も大きいとされています。どもり方そのものを楽な形に変えていく練習は「吃音緩和法」と呼ばれますが、こちらは効果の大きさが中くらいで、裏づけは弱いとされます。そして6歳から12歳については、どの治療についても効果を示す確かな根拠がまだありません。
この一覧のどこにも、外科手術は出てきません。同じガイドラインは、薬による治療については「行うべきでない」とし、そう判断した根拠も強いとしています。
「治す薬も手術もない」と、先に聞かされていた子どもたち
手術が無いと知るタイミングは、人によってまったく違います。長く待ったあとで知る人がいる一方で、幼稚園のうちに親から聞かされていた子どももいます。次に引くのは、吃音のある小学3・4年生7人が1時間話し合った記録の一部です(自助団体が編集をせずに全文を公開しています)。
吃音のある小学3・4年生と、進行役の大人による話し合い(自助団体のキャンプの記録。B・C・Dは子ども、溝口・教員は進行役の大人)
D :1年くらい前に病院に行ったんや。でも病院に行ったけど、意味がなかった。
溝口 :えっ、意味がなかった? どういうこと?
D :何も変わらんかった。
溝口 :そこには何しに行ったの? 治してもらおうと思って行ったの?
D :うん。
C :どもり治らんの、当たり前やで。
B :なんで。
C :だって、まだ誰も治る方法、知らんもん。
みんな:わー、すごい。(拍手)
溝口 :なんで、そんなこと知ってるん? 誰に聞いたん?
C :お母さんに教えてもらった。お母さんが病院の先生に相談したら先生が、治らへんと教えてくれた。
溝口 :吃音は治らん、てか。治る方法がないってか。
B :僕もお母さんに幼稚園の年長のときに教えてもらった。
教員 :みんなすごいなあ。英才教育ですね。なんて教えてもらったの?
B :どもりを治す薬も手術もないから、病気でもないから、そのまま大きくなっていったら、治るからって。
先に口を開いたD君は、1年ほど前に病院へ行っています。治してもらうつもりで行き、何も変わらなかった。その報告を受けて、C君は「当たり前やで」と返します。よりどころは、母親が病院の医師から聞いた話でした。B君にいたっては、幼稚園の年長のときに同じことを聞かされていました。手術という選択肢が無いという事実を、この子どもたちは知らせを受け取るように受け取っています。ただし、B君が最後に言い添えた「そのまま大きくなっていったら、治る」という部分は、全員に当てはまるわけではありません。吃音のある幼児のうち、特別な指導や支援がなくても小学校に入るころまでに問題が見られなくなるのは「少なくとも半数」とされています。
出典: 吃音親子サマーキャンプの子どもたち(日本吃音臨床研究会「吃音と上手につきあうための吃音相談室」)(台帳: V0196)
幼児期については、「様子を見る」だけで終わらせないための目安が示されています。まず、周囲がゆったりと楽に話し、どもるかどうかではなく内容を聞くようにして経過を見ます。そのうえで、悪化がみられる、吃音が始まってから(発吃から)1年半〜2年以上たっている、就学1年前までに治っていない、吃音の家族歴などの危険因子がある、といった場合には訓練を行うとされています。幼児は治療によく反応する子が多く、この時期に治まれば本人の記憶に残らずに済む、とも書かれています。「手術が無い」ことと「できることが無い」ことは、まったく別の話です。
検索で出てくる「声の手術」は、吃音とは別のもの
「吃音症 手術」で調べていると、ボイスクリニックや耳鼻咽喉科の「声の手術」の情報にたどり着くことがあります。ここは混同しやすいので、専門職の団体自身の説明で切り分けておきます。
日本言語聴覚士協会は、話しことばの障害を説明する中で、声のかすれや大きな声が出ないといった「声の障害」を挙げ、その原因として脳血管障害・腫瘍・声帯ポリープなどを示しています。舌がんの手術のあとに発音が難しくなる場合や、声帯という声を出す部分の病気や怪我で発声に問題が出る場合も、ことばの障害として並べられています。そして同じ説明の中で、スムースに話をすることが難しい吃音も、ことばの障害に含まれると書かれています。
つまり「声の手術」がねらうのは、声帯など声を作る部分そのものの状態です。吃音は同じ「ことばの障害」の枠の中にありながら、扱っている対象が違います。ガイドラインも吃音を、子どものころに生じる、話すことと話す計画を立てることの神経の問題として位置づけています。
困りごとが「声の状態」なのか「ことばの出にくさ」なのかを分けて考えると、相談先を選びやすくなります。どちらも言語聴覚士が扱う領域です。
「脳の手術」や薬ではどうか
手術ということばから、脳の手術を思い浮かべた人もいるかもしれません。ここは、はっきりした事実と、まだ見通しでしかないことを分けて読む必要があります。
脳深部刺激——他の病気には確立した手術、吃音には使われていない
脳の奥の決まった場所に細い電極を植え込んで電気で刺激する治療は、「脳深部刺激」と呼ばれます。これはパーキンソン病・ジストニア(体がこわばって思うように動かせなくなる病気)・振戦(ふるえ)といった運動の病気に対して確立した外科治療で、その安全性と有効性から、トゥレット症候群・強迫症・重症のうつなど、ほかの病気にも使われる範囲が広がっています。
ただし、吃音に対しては、確立した治療としては使われていません。2025年の総説は、脳深部刺激はいまのところ吃音の治療には使われていない、と明記しています。研究の世界では、病気やけがのあとから生じた吃音に脳深部刺激を行った症例報告がいくつかあり、子どものころから続く吃音(発達性吃音)についても、初めての症例報告と、フランスでの同様の報告が出ています。ただしどれも一例ずつの報告で、いま受けられる治療ではありません。そのうえで2025年の総説は、この技術がすでに広く安全に使われていること、大脳基底核(体の動きの調節にかかわる脳の奥の部分)の異常な処理をやわらげられることから、重い持続性の吃音に対する現実的な選択肢に将来なりうるのではないか、という見通しを述べています。あくまで「なりうる」という段階です。
むしろ注意が要るのは、逆向きの報告があることです。ほかの病気のために大脳基底核に刺激用の電極を植え込んだあと、吃音が悪化した例や、術後に新たに吃音が現れた例が複数報告されています。悪化した例の中には、子どものころの吃音がパーキンソン病の進行とともに再び現れていて、手術のあとさらに悪化した、という経過のものもあります。一方で、まれに、パーキンソン病に伴って出た吃音が改善した例もあります。脳への手術は、吃音を良くする方向にも悪くする方向にも働きうる——いまわかっているのは、そこまでです。
薬——有効性が確立したものはない
吃音そのものに効くと確かめられた薬は無く、吃音を適応として保険の使える薬もありません。ただし、症例のおよそ3分の1で効いたという報告のある薬はあるとされています。世界的にも、吃音の治療薬として米国食品医薬品局(FDA)に承認された薬はありません。ドパミンという脳内の物質の働きを抑える薬が症状の重さを軽くするという報告は蓄積しつつあり、新しい仕組みの薬が治験の段階にあります。一方で診療ガイドラインは、吃音そのものへの薬による治療は「行うべきでない」とし、そう判断した根拠も強いとしています。薬が使われるのは、吃音そのものよりも、吃音が原因となった二次的な抑うつや、人前で話す場面などに強い不安が出る状態(社交不安障害)に対してです。
では何をするのか、どこに相談すればいいのか
治療の中心は、周りの接し方や場面のほうを変えること、言語訓練、カウンセリング、心理療法・行動療法の組み合わせです。周りの人の対応を変えて、吃音のある人が話しやすい環境をつくることは「環境調整」と呼ばれています。誰にでも一様に効く治療法は無いため、その人に合ったやり方を、必要なら併用しながら選んでいくことで、一定の効果につながる例が多い、と書かれています。
幼児期
意識して発話を修正することが難しいため、まず環境調整を行います。周囲がゆったりと楽に話し、どもるかどうかではなく内容を聞くように努めます。どもると笑ったり真似をしたりする子がいる場合は、保育園・幼稚園の先生にも協力を求め、本人がわざとやっているのではないことを説明してもらいます。悪化がみられる、発吃から1年半〜2年以上たっている、就学1年前までに治っていない、家族歴などの危険因子がある——といった場合には、リッカムプログラムなどの訓練に進みます。
学童期
吃音のある子どものうち半数を超える子が、笑われたり、からかいの対象になったりしています。そこから自尊感情が下がったり、学校へ行けなくなったりといった二次的な問題につながりやすいと説明されています。そのため、本人の希望を確かめたうえで、クラスや学校の側の環境を整えにいきます。声をそろえて読む斉読や、リズムに乗せた朗読はなめらかさを引き出しやすく、これを使って話すことへの自信をつける訓練がよく行われます。高学年になれば、やわらかくゆっくり言う練習が使える子もいますが、ほかのことを考える余裕がない子の場合、ふだんの生活で使いこなせるところまでは届きにくいとされています。ほかに、楽に軽くどもる練習や、心理的な支えとしての認知行動療法(考え方と行動のクセに働きかける心理療法のことです)も併せて使われます。
青年期・成人
この年代の言語訓練では、話し方を組み立て直す練習と、楽に軽くどもる練習を合わせたやり方がよく使われます。ただし、それだけで良くなる例は少なく、半数を超える人には社交不安障害をはじめとする心理面の評価と手当ても要る、と書かれています。そこで見つかることの多い社交不安障害には、認知行動療法が奏功するとされています。ちょうどよい速さの話し方をなぞる練習——聞いた声を追いかけて声に出すシャドーイング——を3か月ほど続けたところ、声が出ずに詰まる状態(ブロック)が消えた例もあると書かれています。重症の場合は、自分の声を少し遅らせて耳に返す装置を使うことも選択肢になりますが、有効なのは半数程度とされています。
受診科・相談先
手術を扱う科を探すよりも、話しことばの専門家に相談するのが近道です。日本言語聴覚士協会は、聞こえやことばの障害、飲み込みの障害のある人を支援する専門職が言語聴覚士だと説明し、検査・訓練・指導や援助を行うとしています。そして吃音は、その言語聴覚士が扱う「ことばの障害」に含まれると明記されています。子どもの場合は、地域の「ことばの教室」も相談先です。就学後も吃音が続く子どもについて、この資料はこう述べています——ことばの教室や、言語聴覚士による指導・支援を適切に受けられれば、多くは、体のこわばりを伴う重い症状があまり出なくなるか、緊張の加減を自分で扱いながら話す手立てを身につけるかして、大きな不自由なく日々を送れるようになる。
相談する時期の目安もあります。幼児期は、悪化がみられる/発吃から1年半〜2年以上続いている/就学1年前まで治っていない/吃音の家族歴などの危険因子がある、といったときが訓練を検討するタイミングです。
大人の場合も、言語聴覚士のいる医療機関で相談できます。仕事の場面では、障害者差別解消法などにより、雇用主は本人から求められれば、面接時間を長くする・電話業務を免除するといった調整をする義務があります。この調整は「合理的配慮」と呼ばれています。ただし、その配慮を受けるには吃音の診断書を求められる場合が多い、とも書かれています。また、発達障害者支援法は発達性吃音を対象に含んでおり、状態によっては手帳の対象になることもあります。
なお、このガイドラインは、吃音の治療の開始が必要以上に遅れがちであることを問題として挙げています。気になるときは、様子見だけにせず早めに相談するほうが安心です。
「手術で一発解決」を探すときの3つの落とし穴
落とし穴1 − 「即効・根治」を手術に求め続けてしまう
早く確実に治したいという気持ちは、とても自然なものです。ただ、喉頭や舌への手術は歴史的にすでに試され、症状は改善しませんでした。19世紀の大がかりな手術は、体を損なう結果や別の障害を残すこともあったと整理されています。そしてガイドラインは、使うべきでない治療のやり方のひとつとして、「治ることを約束し、治療の目標と進め方を分かるように説明しないもの」を挙げています。「これで治る」と言い切ってくれる情報ほど安心して見えますが、その言い切りかたのほうが、専門家が避けるべきだとしている印です。効果が確かめられている言語訓練や環境調整に目を向けるほうが、現実的な近道です。
落とし穴2 − 「声の手術」と混同したまま相談先を選んでしまう
声の障害の原因は、脳血管障害・腫瘍・声帯ポリープなどとされています。つまり声の手術がねらうのは、声帯など声を作る部分そのものの状態です。相談先を選ぶ前に、自分の困りごとが「声の状態」なのか「ことばの出にくさ」なのかを整理しておくと、遠回りを避けられます。どちらも言語聴覚士が扱う領域です。迷ったときは、そこから相談してみるのがひとつの入り口になります。
落とし穴3 − 一人で抱え込み、記録を残さない
吃音には調子の良い時期と出やすい時期の波があり、経過にも時間がかかります。日々の様子(どんな場面で出やすいか、どのくらい続いているか)を書き留めておくと、専門家に相談するときに経過が伝わりやすくなります。特に大人の場合、職場で配慮を申し出る際には、吃音があると示す診断書を出すよう求められることが多いとされています。受診の前に手元の記録があると、そこでの話が早く進みます。
まずは書き留めることから小さく始め、言語聴覚士やことばの教室に相談できる場合はそちらが確実です。記録を続ける手段のひとつとして、こうした記録・継続を支えるアプリを使う方法もあります(治療をうたうものではありません)。
よくある質問
吃音症は手術で治せますか?
吃音の治療の中心は、周りの接し方や場面を変えること・言語訓練・カウンセリング・心理療法や行動療法だと整理されており、外科手術はこの一覧に挙がっていません。かつては喉頭や舌の形の異常が原因と考えられ、その部分への外科手術や薬品の処置が行われましたが、症状は改善しませんでした。診療ガイドラインが効果を裏づけたのも言語訓練で、手術は登場しません。
ボイスクリニックの「声の手術」で吃音は治りますか?
声の障害の原因は、脳血管障害・腫瘍・声帯ポリープなどとされています。つまり声の手術がねらうのは、声帯など声を作る部分そのものの状態です。吃音は同じ「ことばの障害」の枠にありながら、スムースに話をすることが難しい問題として別に位置づけられています。ガイドラインも吃音を、話すことと話す計画を立てることの神経の問題としています。困りごとが声の状態かことばの出にくさかで、相談先を選ぶと安心です。
脳の手術(脳深部刺激)で吃音は治りますか?
脳深部刺激はパーキンソン病などに対しては確立した外科治療ですが、吃音に対しては、確立した治療としては使われていません。研究として報告された症例がごく少数あるだけで、いま受けられる治療ではありません。重い持続性の吃音に対する将来の選択肢になりうるのではないか、という見通しが述べられている段階です。ほかの病気のために電極を植え込んだあと、吃音が悪化した例や、術後に新たに吃音が現れた例が報告されています。まれに、パーキンソン病に伴って出た吃音が改善した例もあります。
吃音は薬で治せますか?
吃音そのものに効くと確かめられた薬はなく、吃音を適応として保険の使える薬もありません。世界的にもFDAが承認した治療薬はありません。ガイドラインは、吃音そのものへの薬による治療は「行うべきでない」とし、そう判断した根拠も強いとしています。二次的な抑うつや強い不安に対して薬が使われることはあります。
手術ではなく、何をすれば改善が期待できますか?
その人に合わせた言語訓練、周りの接し方や場面を変えること、必要に応じて認知行動療法の組み合わせが中心です。就学前ではリッカムプログラムにいちばん確かな裏づけがあり、青年期・成人では話し方を組み立て直していく練習に良好な裏づけがあるとされています。ただし6歳から12歳については、どの治療についても確かな根拠がまだありません。
まとめ
- 吃音の治療の中心は、周りの接し方や場面を変えること・言語訓練・カウンセリング・心理療法や行動療法で、外科手術はこの一覧に挙がっていません。
- 手術は試されなかったのではなく、試されて退けられました。喉頭や舌への外科手術や薬品の処置では症状は改善せず、19世紀の大がかりな手術は体を損なう結果や別の障害を残すこともありました。
- 検索で出てくる「声の手術」は、声帯など声を作る部分そのものへの治療です。吃音は同じ「ことばの障害」の枠にありながら、扱う対象が違います。
- 脳深部刺激はパーキンソン病などには確立した外科治療ですが、吃音に対しては確立した治療としては使われておらず、将来の選択肢に「なりうる」という見通しの段階です。術後に吃音が悪化した報告もあります。
- 手術を探すよりも、言語聴覚士やことばの教室に早めに相談を。吃音は言語聴覚士が扱う「ことばの障害」に含まれ、ことばの教室や言語聴覚士の指導・支援で日常生活の支障を減らせることが多いとされています。治療の開始が必要以上に遅れがちなことも問題として挙げられています。
