読売新聞の吃音記事|見出しでたどる掲載歴・当事者の言葉・相談先

目次

読売新聞が吃音(きつおん)についてどんな記事を載せてきたのか。そう思って調べ始めると、すぐに行き止まりに突き当たります。新聞社のサイトで古い記事は読めなくなり、図書館の縮刷版までは手が伸びない。それでも知りたいのは、大きな新聞が自分や家族と同じことをどう書いてきたのか、そこに書かれていたことは今の自分に関係があるのか、ということだと思います。

この記事は、読売新聞の記事そのものを再現するものではありません。代わりにできるのは、取り上げられた側に残っている記録から、見出しと年月をたどることです。九州大学の教員データベースには、吃音を専門にする医師のメディア報道欄が年月つきで並んでいます。出版社の書籍ページにも、当事者が接客するカフェの公式ページにも、同じように掲載の記録が残っています。そのうえで、新聞に載った当事者3人の言葉を引き、日本吃音・流暢性障害学会の解説と、面接で吃音を先に伝えるとどうなるかを調べたシラキュース大学の研究者らの実験を、出典つきで添えます。

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吃音当事者。研究論文と当事者の声をもとに、吃音の情報を出典つきで発信しています。

この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の判断に代わるものではありません。気になる症状があるときは、言語聴覚士やことばの教室にご相談ください。

まず結論から

  • 読売新聞が吃音をどう取り上げてきたかは、取り上げられた側の記録に残っています。九州大学の教員データベースにある吃音の専門医のメディア報道欄には、読売新聞夕刊2018年3月「吃音で夢諦めないで 当事者らの就職体験 冊子に.」をはじめ、新聞・雑誌・テレビの掲載が年月つきで並んでいます。
  • 出版社の側にも記録があります。吃音のある高校生を描いた漫画の書籍ページには、メディア掲載情報として「読売新聞7/10号」の見出し「吃音の高1女子 成長する姿描く」が載っています。当事者が接客するカフェの公式ページには、2022年4月1日の読売新聞と、同3日の The Japan News(読売新聞英語版)の掲載が日付つきで記録されています。
  • 新聞の見出しが繰り返してきた主題の一つが、就職です。米国の全国規模の追跡調査では、家庭の背景や学歴などを差し引いたあとでも、吃音のある人の年収は低いままでした。ただし著者ら自身が、この結果を原因と結果の関係として読まないよう注意を促しています。
  • 面接の冒頭で自分から吃音があると伝えた場合、吃音のある候補者は吃音のない候補者と同じくらい高く評価されました。伝えなかった場合には、吃音のある候補者のほうが低く評価されています。
  • 吃音のある人は、学童期以降から成人までで100人に1人弱(0.8%)とされます。記事を読んで気になったときの相談先は、小児を扱う言語聴覚士(ことばとコミュニケーションの専門職)や、ことばの教室の教員です。

ただし、読売新聞の記事そのものは、この記事が参照した資料の中にありません。したがって扱えるのは見出しと掲載の年月までで、記事が何を書いていたかは要約も引用もしていません。掲載の記録も、その媒体に載った側が自分のページに残したものなので、読売新聞の吃音報道の全体を示すものではありません。

読売新聞の吃音記事は、取り上げられた側の記録に残っている

新聞記事を探すとき、いちばん確実なのは新聞社のデータベースですが、有料であったり、図書館に行く必要があったりします。もう一つ、手前に道があります。取材された人や団体が、自分のページに掲載歴を残していることがあるのです。吃音の分野では、これが思いのほか揃っています。

九州大学が公開している教員データベースの研究者詳細に、九州大学病院 耳鼻咽喉・頭頸部外科で吃音の診療にあたる医師のページがあります。経歴・学位・論文・書籍・講演にまじって「メディア報道」という欄があり、掲載の年月と見出しが時系列に並んでいます。そこに読売新聞として記録されているのは、次のものです。

  • 読売新聞夕刊 2018年3月「吃音で夢諦めないで 当事者らの就職体験 冊子に.」
  • 読売新聞朝刊 2017年12月「イフストーリーvol 39. どもってもいいんだよ 「吃音ドクター」菊池良和さん」
  • 読売新聞朝刊 2017年3月「すこやかカフェ「吃音の悩み、仲間を支えに前向きに」」
  • 読売新聞 2011年12月「吃音フォーラム 講演や体験談 大分で4日」

同じ欄には、朝日新聞GLOBE(2019年3月)、西日本新聞朝刊(2019年3月)、日本経済新聞朝刊全国版(2017年8月)、信濃毎日新聞(2017年9月)、熊本日日新聞(2017年9月)、毎日新聞朝刊(2011年12月)といった新聞の掲載も並んでいます。全国紙も地方紙も、吃音を単発ではなく繰り返し扱ってきたことが、この一覧からは分かります。見出しを眺めると、講演やつどいの告知、専門医の紹介、就職体験をまとめた冊子の紹介というように、報じられているのは「吃音そのもの」より「吃音のある人が集まって何かをした」出来事であることも見えてきます。

作品の側にも記録があります。吃音のある高校生を描いた漫画の書籍ページには、編集部の記載として実写映画が2018年7月14日より新宿武蔵野館ほか全国にて順次公開されたこと、公開前に文部科学省特別選定作品に選ばれたことが書かれ、続くメディア掲載情報に「読売新聞7/10号」の見出しとして「吃音の高1女子 成長する姿描く」が2018.07.03の日付で並んでいます。同じ欄には、著者インタビューの見出しとして「吃音描いた漫画に広がる共感 作者「克服より、どう生きていくかが大切」」も記録されています。

当事者団体の側も同じです。吃音のある人が接客するカフェの公式ページには、掲載歴が日付つきで並び、「2022年4月01日 読売新聞に注文に時間がかかるカフェが取り上げられました。」「2022年4月03日 The Japan News(読売新聞英語版)に注文に時間がかかるカフェが取り上げられました。」と記録されています。同じ週には、アメリカの新聞 UNION LEADER、NHK「おはよう日本」、毎日新聞などの掲載も続いており、一つの取り組みが数日のうちに国内外へ広がった様子が、日付の並びだけで読み取れます。

ここに挙げたのは、あくまで各ページが自分で記録している掲載歴です。記事の本文は手元にないので、それぞれの記事が何を書いていたかは分かりません。報道全般については吃音のニュースの記事で、放送については吃音とNHK吃音とテレビの記事で扱っています。

新聞の連載が伝えたのは、治ると思って待っていた時間だった

見出しの一覧からは分からないのが、記事の中で当事者が何を語ったか、です。新聞は連載という形で、一人の人の時間をまとまった分量で書くことがあります。沖縄タイムス+プラスの連載[吃音と生きる]の第5回は、中城村の國場真理子さん(46)を取り上げました。冒頭に置かれたのは、子どもの頃の問いです。

当事者の声(國場真理子さん・46歳・中城村/沖縄タイムス+プラス 連載[吃音と生きる](5)。記者が本人の子ども時代の受け止めを地の文で書いた部分。引用は無料で読める冒頭部分から)

口の周りの筋肉を治せば、きっとすらすら話せる。そうすれば、学校の授業で手を挙げるか挙げないか、悩まないでいい。答えが分からない子だと思われたくないけれど、何度も息だけ出て声にならなかったら、みんなにまた変な顔をされてしまう。

小学5年で専門医の問診を受け、そのまま自宅に帰された。その時初めて気付いた。手術なんてないんだ、治らないものなんだ-。布団に潜って泣き、お風呂では泣き声をシャワーで隠した。「死にたい」と思った。

記事は「お父さんとお母さんはどうして、私に手術を受けさせてくれないんだろう?」という問いから始まります。7歳の頃から、ずっと待っていた記憶がある、と記事は書きます。待っていたのは手術です。口の周りの筋肉さえ治れば話せるようになり、授業で手を挙げるかどうかで迷わなくて済む——そう考えていた子どもに、待っている相手がいたことになります。その待ち時間が終わったのが小学5年、専門医の問診を受けて、そのまま自宅に帰された日でした。治す手立てがあると思って待ち続けた数年間と、それが無いと知った一日が、同じ記事の中に並んでいます。この続きは会員限定部分にあり、ここで引けるのは冒頭までです。子どもの吃音が時間とともにどうなるかは、学会の解説が数値で示しています。

出典: [吃音と生きる](5)(沖縄タイムス+プラス)(台帳: V0215)

日本吃音・流暢性障害学会の解説によれば、吃音の多くは幼児期に発症し、幼児期における調査からの発症率は約8〜11%と報告されています。そのうえで、自然に治まる割合は、吃音が始まって2年後までで31%、4年以上たつと(あるいは8歳以上になると)自然治癒の確率は減少するとされています。小学5年生というのは、この「減少する」側に入っている時期です。

そして学会の解説が挙げている対応は、周囲のコミュニケーション環境を整える方法(環境調整)や、直接発話に働きかける方法、吃音のことを理解する方法を、年齢や状態に合わせて指導するというもので、相談先として小児を扱う言語聴覚士やことばの教室の教員が示されています。中高生以上や成人については、本人が治療を希望する場合に言語聴覚士による発話訓練という選択肢があり、不安が強い場合はカウンセリングや心理療法が役立つこともあるとされています。手術を待っていた子どもが探していた種類の答えとは違いますが、相談できる相手は具体的に示されています。

新聞の紙面に相談が載り、読者が答えた

新聞が吃音を扱う形は、取材記事だけではありません。読者からの相談を載せ、それに読者が答える欄があります。中日新聞の子育ての面に、小学4年の孫のことで困っている祖母の相談が載りました。

相談者の声(愛知県の女性・72歳/小学4年の孫の祖母。中日新聞2022年8月19日付朝刊の子育て相談に寄せられた相談本文)

小学4年の男の孫が5月の大型連休明けから、話し始めの言葉に詰まるようになりました。いわゆる吃音(きつおん)で、特に最初の音がア行だとつらそうです。小児科にも学校にも相談しましたが、なかなかいい案がなく困っています。幼いころからプレッシャーを感じやすい面があります。(愛知県、72歳)

小児科にも学校にも相談したのに、手がかりが得られなかった——この一文が、この紙面の起点になりました。記事によれば、この相談に対して吃音の子どもを育ててきた親や当事者から経験談が寄せられ、「ゆっくり話を聞いてあげて」「言語聴覚士に相談を」といった助言や励ましが多かったと書かれています。答えたのは、愛知県一宮市の女性(47)、三重県鈴鹿市の女性(60)、愛知県の女性(41)、岐阜県下呂市の男性(51)といった読者たちです。下呂市の男性の長男には別途取材があり、中学校で吃音の話し方をまねされてからかわれたこと、自己紹介のたびに吃音とは何かと自身の話し方をまねしてほしくないことを伝えるようにするとからかわれなくなったことが、本人の言葉として載っています。同じ紙面には、日本吃音臨床研究会の伊藤伸二さん(78)の、今も吃音が出るという語りも並びます。ひとつの紙面に、落ち着いていった子と、大人になっても続いている人が、どちらも載っているということです。専門家の解説も同じ面に添えられました。相談先として挙げられた言語聴覚士は、学会の解説でも最初に示されている相談先です。

出典: 言葉に詰まる「吃音」の孫、どうすれば(中日新聞「すくすく」)(台帳: V0161)

この祖母が書いた「話し始めの言葉に詰まる」という言い方は、学会の解説にある中核症状の一つと重なります。学会は吃音に特徴的な症状として、同じ音を繰り返す(連発。例:「か、か、からす」)、音を引き伸ばす(伸発。例:「かーーらす」)、ことばを出せずに間があいてしまう(難発、ブロック。例:「・・・・からす」)の3つを挙げています。孫の様子として書かれていたのは、このうち3つ目に近いものです。

学齢期について学会が書いているのは、先生の対応や周囲の友達関係に大きく影響されるということ、吃音をからかわれたり、発表や音読で思ったように話せない経験をすることで、吃音を否定的にとらえ自分自身もマイナスに捉えるような認識が起こると、難発が強くなったり言い換えの工夫をしたりする方向に進む場合があるということです。一方で、周囲の受け入れが良好で、吃音があっても伸び伸びと生活できている子どももいるとしています。紙面に並んだ経過の幅は、この記述と矛盾しません。相談先として学会が示しているのは、小児を扱う言語聴覚士と、ことばの教室の教員です。

新聞が記事にすると、当事者が作ったものが外へ出る

新聞に載ることには、当事者にとってもう一つの意味があります。自分たちが作ったものを、身内の外へ届ける経路になるということです。吃音や失語症のある人たちが作ったシンボルマークの公表が、新聞記事になりました。

当事者の声(富里周太さん・40歳・慶応大医学部助教・吃音当事者/中日新聞Web 2026年6月25日。記者の地の文の中に本人の発言が置かれた記事で、大部分は会員限定。引用は無料部分から)

吃音(きつおん)や失語症などの当事者らが、声や言葉に関する疾患のあることを知らせる「声とことばマーク」を作り、25日に公表した。発案者で吃音の当事者でもある慶応大医学部の富里周太助教(40)は「これらの疾患は外見からは分かりにくいことが多い。困難を『見える化』し、周囲に理解と配慮を広げるシンボルにしたい」と話す。

マークは当事者らが公募して決めたもので、赤い吹き出しに白い十字マークを配し、優しい表情を組み合わせたデザインだと記事は説明しています。誕生のきっかけは2023年、発案者が所属する吃音の当事者団体「よこはま言友会」が開いた「声とことばの交流会」でした。そこで吃音以外の疾患がある人とも接し、電話が苦手だとか、話し終えるのを待ってほしいとか、困り事や必要としていることに共通するものを見つけていった——記事はそこまで書いたところで会員限定の部分に入ります。外見から分かりにくいものを目に見える形にする、という発想そのものは、この記事の見出しと冒頭だけでも伝わります。作ったのは当事者で、それを当事者以外の人の目に触れさせたのが新聞記事だったという順序です。自分に吃音があると先に伝えることが相手の受け止めをどう変えるかは、実験でも調べられています。

出典: 吃音や失語症など知らせる「声とことばマーク」誕生 当事者らが公募し決定(中日新聞Web)(台帳: V0435)

「見えにくいものを先に知らせる」という考え方は、研究でも扱われています。シラキュース大学の心理学部の研究者らは、模擬的な就職面接の動画を使った実験を行いました。面接を受ける人が冒頭で自分の話し方について一言伝える条件と、伝えない条件を作り、参加者に候補者を評価してもらうという設計です。

結果は、吃音の有無と「先に伝えたかどうか」の間にはっきりした関係が出ました。伝えなかったときは、吃音のある候補者が吃音のない候補者より低く評価されました。ところが伝えたときには、吃音のある候補者と吃音のない候補者の評価に差がありませんでした。著者らは、吃音を早く伝えるほうが後から伝えるより聞き手の受け止めに効くという先行研究を引き、あらかじめ偏りの可能性を知らされることで、相手の振る舞いをどう受け取り記憶するかを本人が調整できるためではないかと述べています。

この実験には但し書きがあります。著者ら自身が、参加者を大学生だけから集めたため一般の人口を代表していないこと、面接を演じたのが実際には吃音のない俳優であり、本物の吃音とは微妙に違っていたかもしれないことを、限界として書いています。

新聞の見出しが繰り返してきた「就職」を、数字で見ると

掲載の記録に残っていた読売新聞夕刊2018年3月の見出しは「吃音で夢諦めないで 当事者らの就職体験 冊子に.」でした。就職は、新聞が吃音を扱うときに繰り返し選んできた主題です。記事の中身は手元にありませんが、この主題について何が測られているかは、研究の側から言えます。

米国で、全国を代表する青年を成人期まで追いかけた大規模な追跡調査のデータを使って、吃音と仕事の関係を推定した研究があります。統計的な調整をかける前の平均年収は、吃音のない男性が約42,100ドル、吃音のある男性が33,600ドル、吃音のない女性が約29,300ドル、吃音のある女性が19,100ドルでした。ただし、この段階の数字をそのまま「吃音の影響」と読むことはできません。吃音のある人は、注意欠如・多動症(ADHD)や学習障害を持つ割合が高く、家庭の収入が低く、最終学歴も低い傾向にあったと同じ箇所に書かれているからです。

米国の全国調査の記述統計から、統計的な調整をかける前の平均年収を男女と吃音の有無で並べた図。男性は吃音なし(n=6,315)が42,100ドル、吃音あり(n=169)が33,600ドル。女性は吃音なし(n=6,988)が29,300ドル、吃音あり(n=92)が19,100ドル。いずれも調査第4波の年収の回答で、学歴・家庭の収入・ADHDや学習障害といった併存する状態の違いを含んだままの値のため、この差をそのまま吃音の影響として読むことはできない
図1: 調整をかける前の平均年収。差の中には学歴や家庭の背景の違いも混ざっています。出典: Gerlach et al. (2018) Stuttering and Labor Market Outcomes in the United States. J Speech Lang Hear Res.

そこで著者らは、人口統計の変数や併存する状態を差し引いて比べ直しました。それでも男女とも吃音のある人の年収は有意に低いままで、差は男性で7,627ドル、女性で7,154ドルでした。傾向スコアマッチングという別の方法でも差は残り、しかも推定される差はより大きくなりました。回帰分析では、吃音のある男性は労働力に参加している割合が8.1%低いという結果も出ています。労働力への参加とは「働いているか、失業中でも職を探しているか」を指すので、これは失業率には表れない種類の不利です。

⚠ この研究は米国のデータで、日本にそのまま当てはめられるものではありません。そして著者ら自身が、観察されない変数の影響はすべての相関研究につきまとう脅威だとしたうえで、この結果から吃音と労働市場の結果のあいだに原因と結果の関係を読み取る前には慎重であるべきだ、と明記しています。「吃音のせいで収入が下がる」とは、この研究からは言えません。

むしろ実務的に手がかりになるのは、先ほどの面接の実験のほうです。伝えなければ差が出て、先に伝えれば差が消えた、という結果は、本人が動かせる部分に関わっています。著者らは、評価される場面を控えている人に専門家がどんな助言をできるかに関わる結果だと述べています。もっとも、これは模擬面接の実験であって、伝えれば必ずうまくいくと約束するものではありません。

記事を読んで気になったら——相談先と、周りの人ができること

新聞記事をきっかけに自分や子どものことが気になった人のために、相談先を置いておきます。日本吃音・流暢性障害学会の解説によれば、吃音のある人の割合は、学童期以降から成人までの時点有症率(ある特定の時点で吃音のある人の割合)で0.8%が妥当とされています。100人に1人弱です。

子どもについては、小児を扱う言語聴覚士や、ことばの教室の教員に相談するよう勧められています。大人については、言語聴覚士による発話訓練という選択肢のほか、吃音の自助団体に参加してほかの吃音のある人と出会うことが心理的な変化のきっかけになることもあるとされ、1965年に発足した言友会が日本で最も歴史が古いと書かれています。自助団体の活動の中心は、「吃音があるのは自分だけではない」と認識し、共通の体験を語り合い、苦悩を分かち合い、互いに援助し合うことだとされています。

制度の面では、2016年に施行された障害者差別解消法により、学校や職場での吃音に対する差別的言動および差別的扱いは禁止され、発表や電話応対の免除、試験等での面接時間の延長といった合理的配慮(本人の申し出に応じて学校や職場が行う調整)を求めることができます。その際、医師の診断書や言語聴覚士の報告書の提出などが求められる場合があります。

周りの人の側ができることは、当事者団体が短くまとめています。吃音のある人が接客するカフェの公式ページは、周囲への対応として、遮ったり憶測して代わりに言ったりせずに言い終わるまで待つこと、緊張して吃っているわけではないので「リラックスして」「ゆっくり話せばいいよ」とアドバイスしないこと、真似しないこと、他の人と同じように接することの4つを挙げています。同じページは吃音を、話し言葉が滑らかに出ない発話障害のひとつで、時間が止まったように感じるのは難発という症状だと説明しています。

次のようなときは、記事を読むだけにせず、相談を考えてみてください(あくまで目安で、当てはまらなくても相談して構いません)。

  • 新聞や雑誌で読んだ症状と、自分や子どもの話し方が似ていて、様子を見るべきか判断がつかない
  • 小児科や学校に相談したが手がかりが得られず、次にどこへ行けばいいか分からない
  • 就職や進学が近く、面接や電話で話す場面をどう乗り切るか決めかねている

この3つは相談を考えるきっかけとして挙げたもので、特定の資料が「受診の目安」として定めているものではありません。

新聞で吃音の記事を探すときの3つの落とし穴

落とし穴1 − 掲載歴の一覧を、その媒体の報道の全体だと思ってしまう

この記事が並べた読売新聞の見出しは、どれも取り上げられた側が自分のページに残した記録です。一人の医師のページ、一冊の本のページ、一つの取り組みのページに載っているものを合わせただけなので、読売新聞が吃音について書いた記事はこれで全部、ということにはなりません。逆に、ここに名前が出ていない新聞が吃音を扱っていないわけでもありません。同じ欄には朝日新聞GLOBE・西日本新聞・日本経済新聞・信濃毎日新聞・熊本日日新聞・毎日新聞の掲載も並んでいます。

落とし穴2 − 見出しの印象で、記事が何を書いていたかを決めてしまう

見出しは記事の中身より短く、そして強くできています。「吃音で夢諦めないで」という見出しから、記事が何をどう書いていたかは分かりません。この記事も、見出しと掲載の年月までしか手元に持っていないので、中身の要約は一切していません。新聞の連載が実際に書いていたことがどういうものかは、この記事で引いた沖縄タイムス+プラスの例のように、本文まで読んで初めて見えてきます。

落とし穴3 − ひとつの記事の結末を、自分や子どもの見通しにしてしまう

中日新聞の紙面には、保育園の頃に症状が出てその後落ち着いていった子と、78歳になった今も吃音が出る当事者が、同じ面に並んで載っていました。学会の解説も、自然に治まる割合を示す一方で、発症から4年以上たつと自然治癒の確率は減少するとしています。どちらか一方だけを読んで見通しを立てると、外れたときに苦しくなります。気になる段階でできるのは、どんな場面で出やすいか、そのとき周りがどう応じたかを書き留めておくことです。相談のときに伝えやすくなります。相談先は、小児を扱う言語聴覚士やことばの教室です。

よくある質問

読売新聞が載せた吃音の記事を、いま読むことはできますか?

この記事が参照した資料の中に、読売新聞の記事本文はありません。分かるのは、取り上げられた側のページに残っている見出しと掲載の年月までです。過去の紙面を読みたい場合は、新聞社の記事データベースや、図書館が備えている縮刷版・データベースを当たることになります。この記事はその案内までしかできません。

読売新聞は吃音についてどんなテーマを取り上げてきたのですか?

見出しから読み取れる範囲では、当事者らの就職体験をまとめた冊子(2018年3月夕刊)、吃音を専門にする医師の紹介(2017年12月朝刊)、悩みと仲間についての記事(2017年3月朝刊)、講演や体験談のつどいの告知(2011年12月)です。ほかに、吃音のある高校生を描いた漫画についての記事(「吃音の高1女子 成長する姿描く」)、吃音のある人が接客するカフェの取り組み(2022年4月1日、英語版 The Japan News は同3日)が記録されています。いずれも見出しの範囲で、記事の中身は確認していません。

新聞の取材を受けると、当事者には何が起きますか?

この記事で引いた例では、当事者らが作ったシンボルマークの公表が記事になり、外見から分かりにくい困難を「見える化」したいという発案者の言葉が紙面に載りました。研究の側では、面接の冒頭で自分から吃音を伝えた場合、吃音のある候補者が吃音のない候補者と同じくらい高く評価されたという実験結果が報告されています。ただしこれは模擬面接の実験で、参加者は大学生に限られ、面接を演じたのは吃音のない俳優でした。取材を受けるかどうか、どこまで出すかは本人が決めることです。

新聞で「吃音のある人は就職で不利」と読みました。本当ですか?

米国の全国規模の追跡調査では、家庭の背景や併存する状態を差し引いたあとでも、吃音のある人の年収は男女とも有意に低く、差は男性で7,627ドル、女性で7,154ドルでした。吃音のある男性は労働力に参加している割合も8.1%低いという結果です。ただし著者ら自身が、この結果から原因と結果の関係を読み取る前には慎重であるべきだと明記しています。米国のデータであることにも注意が必要です。

子どもの吃音が新聞記事と似ています。どこに相談すればいいですか?

日本吃音・流暢性障害学会の解説は、小児を扱う言語聴覚士や、ことばの教室の教員に相談するよう勧めています。指導の内容は、周囲のコミュニケーション環境を整える方法(環境調整)や、直接発話に働きかける方法、吃音のことを理解する方法を、年齢や状態に合わせて行うものとされています。中高生以上や成人では、言語聴覚士による発話訓練のほか、自助団体に参加してほかの吃音のある人と出会うことが心理的な変化のきっかけになることもあるとされています。

まとめ

  • 読売新聞の吃音記事は、取り上げられた側の記録からたどれる。九州大学の教員データベースのメディア報道欄には、読売新聞夕刊2018年3月「吃音で夢諦めないで 当事者らの就職体験 冊子に.」ほかの見出しが年月つきで並ぶ。出版社の書籍ページには「読売新聞7/10号」の見出し、当事者のカフェの公式ページには2022年4月1日の読売新聞と同3日の The Japan News の掲載が記録されている。
  • ただし、これらは各ページが自分で残した記録であって、読売新聞の吃音報道の全体ではない。記事本文は手元にないので、中身の要約はしていない。
  • 新聞の連載は、見出しからは見えない時間を書く。沖縄タイムス+プラスの連載は、手術で治ると思って7歳から待ち続け、小学5年でそれが無いと知った日を書いた。学会の解説では、自然に治まる割合は吃音が始まって2年後までで31%で、4年以上たつと自然治癒の確率は減少するとされる。
  • 新聞の紙面は、相談を受け取る場にもなる。中日新聞の子育て相談には小学4年の孫についての相談が載り、読者から経験談が寄せられた。同じ面には落ち着いていった子と、78歳の今も吃音が出る当事者の両方が載っている。
  • 新聞が繰り返してきた「就職」について、米国の追跡調査は調整後も年収の差が残ったと報告する一方、著者ら自身が因果として読まないよう注意している。面接の冒頭で自分から伝えた場合には評価の差が消えたという実験もある。気になったら、小児を扱う言語聴覚士・ことばの教室・自助団体へ。

参考文献

  1. 九州大学 教員データベース「研究者詳細 — 菊池 良和(九州大学病院 耳鼻咽喉・頭頸部外科 助教)」(2026年8月22日更新)。メディア報道欄に新聞・雑誌・テレビの掲載歴が年月つきで並ぶ
  2. 太田出版『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』(押見修造)書籍ページ — 編集部より・メディア掲載情報
  3. 注文に時間がかかるカフェ(吃音カフェ)公式ページ — 趣旨・吃音とは・周囲にお願いしたいこと・掲載歴(吃音の人数の参考として国立障害者リハビリテーションセンター研究所を挙げている)
  4. 日本吃音・流暢性障害学会 広報委員会「吃音(きつおん)について」(2023年10月。基礎知識は九州大学病院 耳鼻咽喉・頭頸部外科 菊池良和、幼児期・学齢期は北里大学 医療衛生学部 原由紀が文責)
  5. Perez, Newman & Walmer (2025) Acknowledging a Stutter Affects the Impression One Makes in a Job Interview. Int J Lang Commun Disord.(シラキュース大学 心理学部)
  6. Gerlach et al. (2018) Stuttering and Labor Market Outcomes in the United States. J Speech Lang Hear Res.

当事者の声の出典: V0215(沖縄タイムス+プラス・連載[吃音と生きる](5)/記者・平島夏実。引用は無料で読める冒頭部分から)/ V0161(中日新聞「すくすく」・2022年8月19日付朝刊の子育て相談/記者・藤原啓嗣)/ V0435(中日新聞Web・2026年6月25日/記事の大部分は会員限定で、引用は無料部分から)。いずれも公開記事。引用は原文どおり。

更新履歴: 2026-09-12 公開