まず結論から
- 米国の労働市場の研究は、吃音のある人の一部が話すことの少ない仕事をあえて選ぶという証拠と、雇用主の側が採用や昇進の場面で機会を狭めているという証拠の両方を挙げています。「IT が向いている」は、本人が選んだ結果とも、選ばされた結果とも読めます。
- 同じ研究では、吃音のある男性の年収の差を要因ごとに分けると、就いている職業の違いが説明した分が約33%で最も大きく、吃音のある男性は賃金の低い職業に就いていたと記述されています。話す量で職種を狭めることは、収入の差の外側にある話ではありません。
- 電話で話すこと、自分や人を紹介すること、目上の人と話すことは特に緊張しやすい場面で、それらを避ける「回避」は多くの当事者にとって最も生活を妨げる部分になりうるとされています。開発現場の報告・連絡・相談、質問、進捗報告は、この場面にあたります。
- 上司に口頭で話すのが難しい場合に、業務手順を変更してメールで報告・連絡・相談することを了承してもらうのは、合理的配慮の一例とされています。「話さない仕事」を探すことと、「話し方を変えられる職場」を探すことは、別の道です。
- 社会の否定的な態度を自分のものとして取り込んでしまうこと(内面化されたスティグマ)は、職場では会議への参加をためらう、昇進を断るといった形で現れ、参加とキャリアの前進を妨げる心理的な壁になりうるとされています。
ただし、これは「IT を選ぶな」という意味ではありません。IT の現場で配慮を受けずに働き、「流暢性はそこまで求められていない印象」と書く当事者もいます。この記事は、選ぶ理由が「話さなくて済みそう」だけになっていないかを確かめるための材料です。
「話さなくて済みそう」で選んでも、選考は話す場面で来る
IT を志望する理由が「パソコンに向かう仕事だから」だったとして、その仕事に就くまでの手続きは、書類のあとは面接です。文系・未経験から IT 企業に内定した人が、就職活動を振り返って書いています。
20代・文系の大学から未経験で IT 企業に内定した当事者(個人ブログの就活の記録)
就活の中盤くらいまで、吃音=話すのが苦手=コミュニケーション能力が低いと考え、「弱みはなんですか?」と聞かれた時に、「コミュニケーション能力が低い点です」と答えていました
これがおそらく致命傷だったのではないかと考えています
プログラマーなどの基本的にパソコンと向き合っている仕事でも、社内の人や社外の人と話す機会は必ずあり、コミュニケーション能力は多かれ少なかれ必ず必要となります
受けた業界は出版、広告、金融、非営利と移り、最後が IT でした。約50社を受け、書類や試験は通るのに一次面接でほとんど落とされる日々が続いたと書いています。言葉を出すために使っているリズムの取り方が、集団面接では複数の人が作る空気にのまれて使えなかったこと。表情を変えない面接官や1対5の面接で、放心状態のまま帰ったこともあったこと。IT を選んだ理由として挙げているのは、人材不足で、プログラミング未経験の文系でも採用してくれることでした。内定した2社はどちらも面接が1回だけだった、とも書かれています。話さなくて済みそうな職種を目指しても、そこへ入る手続きは口頭で行われます。その面接という場面は、研究が「特に緊張しやすい」と挙げる場面と重なっています。
出典: 【体験談】吃音持ちが就活をした話。内定を得るためにしたこと。(わたね調味料クッキング)(台帳: V0203)
吃音の行動療法をまとめたレビューは、どもるのを避けるために身についていく回避の例として、言いにくい語を避ける、緊張する場面を避ける、以前よくどもった相手との会話を避けることを挙げ、特に緊張しやすい場面として電話で話すこと、自分や人を紹介すること、目上の人と話すことを挙げています。そして、多くの当事者にとって回避は最も生活を妨げる部分になりうるとし、社会や仕事への参加が減ることにつながりうると述べています。面接は、自己紹介と目上の人との会話が一度に来る場面です。話す量の少ない職種を選ぶという判断そのものが、この「回避」の延長にあるのかどうかは、ここでは決められません。ただ、選考の場面はどの職種でも消えない、というところまでは記録が示しています。
入ってからのほうが長い——開発現場で起きたこと
面接を通ったあと、IT の現場では何が起きるのか。ここが、「エンジニアがおすすめ」と書く助言のほとんどが触れていない部分です。IT ベンチャー企業に転職し、客先の開発現場でシステム開発に従事した人の手記があります。
IT ベンチャー企業に転職し、客先常駐でシステム開発に従事した当事者の手記(HAPPY FOX・NPO法人日本吃音協会)
また、開発現場の雰囲気に圧倒されてしまい劣等感や絶望感に苛まれました。自分は未経験なのに、みんなは経験者ばかりで仕事のできる人しかいないと思ったからです。
この劣等感から無口になり、報連相もできなくなりました。ビジネス上のコミュニケーション能力が欠如していると判断されましたが、吃音があったことで自分から積極的に話しかけることが難しかったことも原因だったと思います。
ある日、誰も聞こえないであろう離れた場所まで先輩に連れられました。報連相ができていない、吃りは気にしなくても良いから質問には3秒以内に的確にこたえるようにと言われました。
2008年1月に渋谷の IT ベンチャー企業へ転職し、同じ年の3月から開発現場に参画した人の記録です。研修では毎朝夕の進捗報告で第一声に連発が出ながら切り抜け、役員から「何を言っているのか分からないよ」と言われた場面もあったと書いています。現場では、先輩から「メモを取れ」と注意されたところから信頼関係が崩れ、続いて上の引用の場面になります。その後もコミュニケーション能力についての説教を何度も受け、参画から1年半で開発現場を離れ、システム開発の経験は1年8か月で終わったと結んでいます。開発の現場で求められていたのは、コードを書くことだけではありませんでした。報告・連絡・相談と、質問への即答——つまり声です。会話がうまくいかないことへの恐れから職業上の場を避けることが、日々の役割を続けにくくするという解釈は、研究の側にもあります。
出典: 吃音を持っている僕のITベンチャー企業での出来事(HAPPY FOX・NPO法人日本吃音協会)(台帳: V0201)
吃音のある大人64人と吃音のない大人64人を比べた研究の考察は、吃音のある人は会話がうまくいかないことを恐れて社会的な場や職業上の場を避けやすく、その回避が日々の役割を続けにくくすると解釈しています。さらに、社会の否定的な態度や決めつけを自分のものとして取り込んでしまう過程を「内面化されたスティグマ」と呼び、職場では話す役割やリーダー役を避ける、会議への参加をためらう、否定的に評価されるのが怖くて昇進を断るといった形で現れうるとしています。周囲の吃音への理解の乏しさ、話しやすい環境への配慮がないこと、同僚の無自覚な偏見が、この思い込みをさらに強めうるとも書かれています。「無口になり、報連相もできなくなった」という上の記録は、この記述とよく重なります。
一方で、報告の手段そのものを変える道もあります。発達性吃音の研究プロジェクトのQ&Aは、上司に口頭で話すのが難しい場合に、業務手順を変更してメールで報告・連絡・相談することを了承してもらえれば配慮されたことになる、と説明しています。「報連相ができていない」と「口頭での報連相が難しい」は、同じではありません。この区別が職場と本人のあいだで共有されていたかどうかが、上の記録の分かれ目だったように読めます。
それでも IT を勧める、現場で働くエンジニアの見方
ここまでの2人の記録だけを読むと「IT も同じだ」で終わってしまいます。けれど、IT の現場で配慮を受けずに働き、それでも IT 業界を勧める当事者の記録もあります。自助団体が集めた就労体験記の一つです。
就労体験記 No.8(男性・20代後半・職種 IT・業種 エンジニア・中部・勤続1年目/自助団体「うぃーすたプロジェクト」)
困っていること: 仕事上電話はあまりなさそうだが、うまく話せるかという不安がある。
工夫していること: ゆっくり話すようにしている。特に第一声を意識的に伸ばすことがある。
周囲の配慮: 配慮は受けていないし、今のところは必要ないと考えている。症状が出たとしても、それをないものとして接してもらえればうれしい。
アドバイス: 自分の性格や価値観・症状の特徴などを踏まえた上で、自分が活躍できそうなフィールドを選択してみるのも一手かと思います(例えばIT業界は思考力やヒアリング力が重要視される業界で、かつしゃべる際の流暢性はそこまで求められていないような印象があります。)あとは吃音者には集団面接が苦手な人が多いので、個人面接だけの企業を選ぶなど。
主な仕事内容は情報システムの開発・設計と書かれています。症状は普段はあまり出ないが、あいさつなどの決まり文句や初対面の人と話すときに連発・難発の両方が出る。新卒のときは面接でうまく喋れず失敗し、既卒になってからの就活で「どもっても気にするな」と自分に言い聞かせるようになり、数回の面接で内定をもらった、と記しています。勤続1年目の時点の印象として「流暢性はそこまで求められていない」と書きながら、同時に「うまく話せるかという不安」も残しています。同じ就労体験記には、対人より対物の仕事や、専門知識や能力で評価される職種を勧める人もいます。ここで気をつけたいのは、こうした見立てが本人の適性の話なのか、周りがどの職種なら任せるかという話なのかを、記録だけでは分けられないことです。米国の労働市場の研究は、その両方に証拠があると整理しています。
出典: 就労体験記 No.1〜20(うぃーすたプロジェクト)(台帳: V0099)
青年期から成人期まで14年・4回にわたって追跡した米国の全国調査(13,564人のうち261人が吃音があると回答)を分析した研究は、考察で二つの証拠を並べています。一つは、吃音のある人の一部が、話すことの少ない仕事や社会経済的な地位の低い仕事をあえて選ぶという証拠。もう一つは、雇用主の側が採用や昇進の場面で、吃音のある人の職業上の機会を狭めている——原典は「役割の閉じ込め」と呼んでいます——という証拠です。「IT が向いている」という見立てには、この二つが混ざっています。本人が選んだ結果として IT に向かう人もいれば、ほかの職種を任されにくいために IT に残る人もいる。どちらであるかは、その人の記録を読まなければ分かりません。
「喋らない仕事は無い」——元システムエンジニアが16社を経て
話す量の少ない職種へ移ることで、話す場面は消えるのか。吃音を隠したまま転職を重ねた人が、10年近くたって振り返っています。
36歳・男性・元システムエンジニアで、現在は特例子会社の事務職。吃音症と発達障害のある当事者本人の手記(note)
今までしてきた仕事を思い返してみると、工場や倉庫などのブルーカラーの仕事でも人と喋らない日はほぼありません、多少の会話はありました。そう考えると喋らない仕事は無いと言うことに身を持って実感したのです。
小学5年生から吃音の自覚があり、面接では喋れるか喋れないかで優劣をつけられる、と書く人です。仕事を始めて10年近くたった頃には既に数回の転職を重ね、どの面接を受けても受からず、喋りを指摘される状態だったといいます。そこで振り返ったのが、上の一節——これまでの職場で人と喋らない日はほぼなかった、という事実でした。その後、精神科を受診して吃音のほかに発達障害が分かり、障害者手帳を申請したこと。「発達障害や吃音症だと一般枠は厳しいなと言うのが正直な感想」で、一概には言えないとしつつ、配慮してもらえる環境のほうが働きやすいと思ったこと。記録はそう続きます。元システムエンジニアで、いまは特例子会社の事務職です。職種を変え続けても話す場面が消えなかったという道筋は、研究の側では「より地位の低い職業へ誘導される」という形で記述されています。
出典: 吃音症を隠し続け16社転職した(note)(台帳: V0027)
吃音のある人の経験を整理した総説は、大人が受ける活動の制限として、より地位の低い職業へ誘導されること、収入の損失、失職、社会的な拒絶を挙げ、これらが積み重なって生活の質全体に影響しうると述べています。先ほどの米国の全国調査では、吃音のある男性と吃音のない男性の年収の差を要因ごとに分けると、就いている職業の違いが説明した分が約33%で要因の中で最も大きく、吃音のある男性は賃金の低い職業に就いていたと記述されています。「話さない仕事」を探して職種を選び直し続けることは、収入の差の外側にある話ではなく、内側にあります。
「どもるから理工系」という決め方への反論
最後に、「話すことの少ない仕事を選んだほうがいい」という前提そのものに反対している人の言葉を置きます。当事者どうしの問答で、質問した人は「電話がない仕事を探したが、そんな仕事はなかった」と述べたうえで、それが本当にいいのかと尋ねています。
自助団体の会長(日本吃音臨床研究会・大阪吃音教室のQ&A。質問した人も吃音のある当事者)
基本的には、話すことが少ない仕事に就くことは損だと思うね。研究職なら話すことが少なくていいかと思うけれど、研究職だって、話すことはついてくるし、研究発表など「話さなければいけない場面」はだんだん増えてくる。話さないですむ仕事なんてない。そう考えると、若いときにいっぱい苦労することが必要だと思う。
僕は、むしろ、話すことが多い仕事に就く方がいいと思う。話すことが多い仕事に就いている人の方が、早く壁にぶつかる。若い気力のある時だから、それをなんとか乗り越えていくことができる。困難なことに対する適応力や耐性ができる。
回答者は、どもる子どもの親が先回りして「話すことの少ない仕事」を選ばせようとすることに反対だと述べ、一番いいのは本人の興味があること、勉強してきたことが活かせることだと言います。同じ回答の中で、文学青年で小説家を希望していた人が「どもるから理工系」という強い勧めに押し切られて理工系の大学へ行き、耐えられずに退学した例を挙げ、親は子どものためにと勝手に決めないこと、本人と対話して意向を尊重することを求めています。「話さないですむ仕事なんてない」は、一人の当事者の意見です。ただ、上の4人の記録は、この意見と食い違っていません。話す場面の回避が最も生活を妨げる部分になりうるという記述とも、内面化されたスティグマが参加とキャリアの前進を妨げる壁になりうるという記述とも、向きが揃っています。
出典: 吃音と就職(日本吃音臨床研究会・大阪吃音教室 Q&A)(台帳: V0150)
研究の側は、「話す仕事を選べ」とも「話さない仕事を選べ」とも言っていません。米国の労働市場の研究が並べたのは、話すことの少ない仕事をあえて選ぶ人がいるという証拠と、雇用主側が機会を狭めているという証拠の両方でした。トルコの2つの大学による研究は、内面化されたスティグマが参加とキャリアの前進を妨げる心理的な壁になりうるとしつつ、周囲の理解の乏しさや、話しやすい環境への配慮がないことがそれを強めうると述べています。裏を返せば、周囲の理解と、話し方を調整できる環境は、この壁を低くする側に置かれています。「話す仕事か、話さない仕事か」ではなく、選んだ先で話し方を調整できる余地があるか——記録と研究が共通して指しているのは、そこです。
頼める配慮の形と、相談できる窓口
職種を決める前でも、入ってからでも、話し方を調整するための道はあります。配慮の頼み方から見ていきます。
発達性吃音の研究プロジェクトのQ&Aは、吃音で電話が困難な場合は他の人に電話をとってもらう(人員配置の配慮が要る)、上司に口頭で話すのが難しい場合は業務手順を変更してメールで報告・連絡・相談する、といった例を挙げ、「合理的」とは雇用主に過大な負担を生じさせない範囲という意味だと説明しています。業種や会社によって範囲は狭くなり、たとえば電車の車掌がアナウンスを免除してほしいという要望は、車掌をもう1人乗せる必要が出るため合理的ではないと判断されるだろう、とも書かれています。開発の現場で「メールでの報連相」が通るかどうかは、その職場に代わりの手段を受け入れる余地があるかで決まります。配慮を受けるには、吃音があることを開示したうえで、どういう配慮を希望するのか具体的に示して相談・交渉する必要があるとされています。
この資料は2020年1月時点の記述で、私企業の合理的配慮が努力義務だったことを前提に書かれています。その後2024年に改正障害者差別解消法が施行されているので、現在の位置づけは窓口で確認してください。手帳を取るかどうかの判断材料は吃音と合理的配慮の記事にまとめています。
就職の相談先としては、ハローワークに「精神・発達障害者雇用サポーター」が置かれ、障害の特性を踏まえた就職支援と職場定着支援を行っています。同じくハローワークの「障害学生等雇用サポーター」は、障害があることを開示して就職を希望している学生などに、就職の準備段階から職場定着までの支援を行っています。就職したあとの職場への慣れについては、職場にジョブコーチ(職場に来て手助けをする支援員)を派遣する仕組みもあります。これらのページは発達障害のある人向けの案内で、吃音に限った記述はありません。自分が使えるかどうかは、窓口で確かめてください。
話し方そのものの相談先は、言語聴覚士のいる医療機関です。学齢期から通っている人であれば、ことばの教室も窓口になります。面接で吃音を伝えるかどうかは吃音面接のカミングアウトの記事に、就職活動の全体の設計は吃音の就活の記事に、「向いている仕事」の一覧をどう読むかは吃音症の仕事の記事にまとめています。
IT を選ぶときに陥りやすい3つの落とし穴
落とし穴1 − 職種名で「話す量」を見積もる
「パソコンに向かう仕事」でも、社内外の人と話す機会は必ずあると、IT 企業に内定した当事者は書いています。開発現場の記録では、報告・連絡・相談と質問への即答が求められていました。研究が特に緊張しやすい場面として挙げるのは、電話・自己紹介・目上の人との会話です。職種名ではなく、その職場でこの3つがどのくらいの頻度で来るかを見たほうが、実際に近づきます。
落とし穴2 − 選考の短さを、入ってからの長さと取り違える
面接が1回で済む会社は、確かに入りやすい。ただ、入ったあとは毎日の報告と質問が続きます。就活の記録を書いた当事者自身が、「働くともっと大変です」と書き添えています。選考で話す場面を減らす工夫と、入ってからの話し方を調整する準備は、別に用意しておくものです。
落とし穴3 − 配慮の形を知らないまま「向いていなかった」と結論する
口頭での報連相が難しいとき、メールで報連相することを了承してもらうのは合理的配慮の一例です。この形を知らずに「コミュニケーション能力が欠如している」という判断だけを受け取ると、職種そのものが向いていなかったという結論に飛びやすくなります。開示したうえで具体的に頼む、あるいはハローワークのサポーターやジョブコーチの支援を使う——結論を出す前に試せることがあります。
よくある質問
吃音があると、プログラマーやエンジニアは向いていますか?
「この職種なら続く」と確かめた研究は見当たりません。IT の現場で配慮を受けずに働き、流暢性はそこまで求められていない印象だと書く当事者もいれば、開発現場で報連相ができなくなり1年半で現場を離れた当事者もいます。研究が示すのは、吃音のある人の一部が話すことの少ない仕事をあえて選ぶという証拠と、雇用主側が機会を狭めているという証拠の両方です。
IT の仕事なら、話す場面は少ないですか?
コードを書く時間は長くても、報告・連絡・相談、質問、進捗報告、会議は口頭で行われることが多く、当事者の記録でもそこで困っています。研究のレビューは、電話・自己紹介・目上の人と話す場面を特に緊張しやすい場面として挙げ、それらを避ける回避が最も生活を妨げる部分になりうると述べています。
面接で吃音を伝えたほうがいいですか?
一律には言えません。配慮を受けるには、吃音があることを開示したうえで、希望する配慮を具体的に示して相談・交渉する必要があるとされています。伝えるかどうかの判断材料は吃音面接のカミングアウトの記事に、就職活動の全体は吃音の就活の記事にまとめています。
入社してから、電話や口頭の報告が難しいときはどうすればいいですか?
他の人に電話をとってもらう、業務手順を変更してメールで報告・連絡・相談する、といった形が合理的配慮の例として挙げられています。ただし「合理的」の客観的な基準はなく、会社や上司の裁量が大きいため、開示したうえで具体的に相談・交渉する必要があります。職場定着の支援としては、ハローワークのサポーターやジョブコーチの派遣があります。
「話さなくてよい仕事」を選ぶのは、間違いですか?
間違いとは言えません。ただ、収入の差の内側にあることは知っておく価値があります。米国の全国調査では、吃音のある男性の年収の差を要因ごとに分けると、就いている職業の違いが説明した分が最も大きく、吃音のある男性は賃金の低い職業に就いていたと記述されています。また、会議での発言や昇進を避け続けることが、参加とキャリアの前進を妨げる壁になりうるとされています。
まとめ
- 「IT が向いている」は、本人が話すことの少ない仕事を選んだ結果とも、雇用主が機会を狭めた結果とも読める。研究はその両方に証拠があると整理している。
- 選考は口頭で行われ、入ってからは報告・連絡・相談と質問への即答が続く。研究が特に緊張しやすいと挙げる電話・自己紹介・目上の人との会話は、IT の現場にもある。
- 話す量で職種を狭めることは、収入の差の内側にある。吃音のある男性の年収の差を分けると、職業の違いが説明した分が最も大きかった。より地位の低い職業へ誘導されることは、活動の制限の一つとして総説にも挙げられている。
- 会議への参加をためらう、昇進を断るといった形で現れる内面化されたスティグマは、キャリアの前進を妨げる壁になりうる。周囲の理解と話しやすい環境の有無が、その壁の高さに関わる。
- 「話さない仕事」を探すより、「話し方を調整できる職場」を探す道がある。メールでの報連相は合理的配慮の一例で、開示したうえで具体的に相談する。迷ったらハローワークのサポーター・言語聴覚士・自助グループへ。
