まず結論から
- 病院を選ぶときの決め手は、診療科の名前ではなく「吃音を扱う言語聴覚士(聞こえ・ことば・飲み込みの障害を扱う国家資格の専門職)がいるか」です。日本言語聴覚士協会は、スムーズに話すことが難しい吃音もことばの障害に含まれると明記しています。ただし言語聴覚士の業務は幅広く、全員が吃音の指導や支援を行えるわけではないため、あらかじめ病院等に直接問い合わせるか、日本言語聴覚士協会・各都道府県の言語聴覚士会に尋ねるよう案内されています。
- 近くにどんな施設があるか分からないときの問い合わせ順は決まっています。幼児吃音臨床ガイドラインは、治療あるいは相談できる近隣の施設が分からない場合は地元の保健センターか各都道府県の言語聴覚士会に問い合わせ、それでも見つからない場合は日本言語聴覚士協会に問い合わせることを勧めています。岐阜でその「各都道府県の言語聴覚士会」にあたるのは、協会の一覧にある岐阜県言語聴覚士会です。
- 就学後の子どもと中高生は、通っている学校か地域の教育委員会に相談すると、その地域の学校にある「ことばの教室」を紹介してもらえる、と国立障害者リハビリテーションセンターの発達障害情報・支援センターが答えています。どの小学校にあるかは、地元の小学校か各地域の教育委員会に問い合わせるとよい、とガイドラインも書いています。
- 当事者の会は、全国言友会連絡協議会の加盟団体一覧の中部ブロックに岐阜言友会が載っています。ただし全国組織は、子どもの吃音への対応方法の確認や医療機関の紹介といった個別の相談には原則として応じられないとし、近くの加盟団体に連絡するよう明記しています。
- 公的な相談窓口は、発達障害者支援センターの全国一覧で、岐阜県の欄に岐阜県発達障害者支援センター「のぞみ」(岐阜市鷺山向井・岐阜県障がい者総合相談センター2階)の1か所が載っています。京都府や静岡県のように圏域ごとの支援センターや市の窓口が別に並ぶ県もありますが、岐阜県の欄はこの1か所だけです。
ただし、ここに挙げた名前・所在地は、いずれも各サイトを取得した時点(2026年8月〜9月)の記載です。一覧に名前が載っていることは、いま受け付けているか、吃音を診ているかを保証しません。行くと決めたら、必ずその施設・団体の案内を開き直し、「吃音を診ていますか」を先に確かめてください。
「何科か」より先に決まること——言語聴覚士のいる医院へ
病院を探すとき、多くの人がまず「何科にかかればいいのか」を調べます。けれど、岐阜で実際に相談先を見つけた家族が口にしたのは、科の名前ではありませんでした。
岐阜県下呂市の男性(51・吃音のある長男の父)と、別途取材に応じた長男本人(大学生の当事者)/中日新聞2022年8月19日付朝刊に寄せられた読者の経験談
岐阜県下呂市の男性(51)も「言語聴覚士のいる医院に相談してみては」と勧める。男性の長男が吃音で、言語聴覚士から話し方の訓練のみならず、吃音とどう向き合うかという精神面のケアも受けた。
当事者の長男も取材に応じてくれた。中学校で吃音の話し方をまねされ、からかわれて悩んだという。対策のため、自己紹介のたびに、吃音とは何かや、自身の話し方をまねしてほしくないと伝えるようにすると、からかわれなくなった。
長男は「吃音は見た目で分からず、正しく知らない人が多い。自己紹介で吃音を打ち明けると、気持ちの面で一歩前に踏み出せるかもしれない」とエール。大学生になった今は自身の経験を生かそうと、言語聴覚士を目指して勉強中だ。
これは、小学4年の孫の話し方を心配する愛知県の女性の相談に、同じ紙面の読者が答えた回答の一つです。父親が名指ししたのは、診療科でも病院の規模でもなく、「言語聴覚士のいる医院」でした。長男がそこで受けたのは話し方の訓練だけではなく、吃音とどう向き合うかという面のケアも含まれていた、と書かれています。まねをされ、からかわれた中学時代を経て、大学生になった本人はいま、自分が受けた側から渡す側へ回ろうとしている——その進路が、父親の助言の中身を裏づけています。公的な案内も、同じところを起点にしています。
出典: 「吃音が心配な小4の孫、どうすれば…」の悩み(東京すくすく/中日新聞)(台帳: V0161)
公的な資料が示している順番も、まったく同じ形をしています。吃音は、日本言語聴覚士協会が「ことばの障害」に含めている問題で、言語聴覚士は主に病院のリハビリテーション科や耳鼻咽喉科などのリハビリテーションのスタッフとして勤務している場合が多い、とされています。つまり「吃音外来」という看板が無くても、吃音を診る言語聴覚士のいる病院はありえます。逆に、言語聴覚士の取り扱う業務は多岐にわたるため、必ずしも全ての言語聴覚士が吃音の指導や支援を行えるわけではありません。だから吃音ポータルサイトは、あらかじめ病院等に直接問い合わせるか、日本言語聴覚士協会・各都道府県の言語聴覚士会に尋ねるよう案内しています。岐阜では、協会の都道府県士会一覧に載っている岐阜県言語聴覚士会がそれにあたります。
医師の側の窓口も、あらかじめ想定されています。幼児吃音臨床ガイドラインは、想定している利用者を、幼児の吃音に接する機会がある医師(主に小児科医と耳鼻咽喉科医、児童精神科医)と、症状の評価と治療を担当する言語聴覚士、保健センター等で吃音の相談を受ける保健師である、と書いています。かかりつけの小児科や耳鼻咽喉科は、通り道として最初から想定に入っている、ということです。「吃音科」という診療科は無いので、科の名前で迷ったときの考え方は吃音は何科・どの病院?の記事に、言語聴覚士の見分け方と聞き方は吃音と言語聴覚士の記事にまとめています。
診察室では、いつもの話し方が出ない
病院の名前が決まっても、次に分からないのは「行ったら何をされるのか」です。そして、やっと行けた日に限って、家で見ているようには出ないことがあります。
物心ついた頃から吃音のある21歳の大学生(自身の21年間を綴った手記・note)
病院では、先生の前で国語の教科書を音読することになった。
しかし、そういう時に限って、私はスラスラ読めた。自分でも驚くくらい、言葉は引っかからなかった。先生も少し驚いた様子で、「大丈夫。普段、緊張してるだけだよ」と言った。あまり深刻なものとしては受け止められていないように感じた。
そして先生は続けた。
「19歳、20歳くらいになると、自然に治ることも多いから。あんまり気にしなくていいよ」
その言葉が、私は本当に嬉しかった。
書き手は6歳の昼ごはんの時間に「たまごっち」が言えず友達に笑われ、8歳の頃には自分の話し方が人と違うことに気づいていました。弟に「なんでそんな話し方なん?」と聞かれて答えられなかったあと、母親が病院に連れて行っています。診察室で渡されたのは国語の教科書で、その日は引っかからずに読めてしまった。そして、その日に受け取った言葉を、本人は「嬉しかった」と書いています。ただし同じ手記は、その頃から言葉に詰まりそうなら黙る、出にくい言葉は別の言葉に変える、という選び方を覚えていったとも書いています。診察室で出なかったことは、公的な資料が最初から想定している事態です。
出典: 吃音と生きた21年(note)(台帳: V0012)
発達障害ナビポータルの解説は、保護者が症状を強く疑って相談に行っても、実際にその子と話すと思ったほど症状が出ないことが多いとし、その様子に相談を受けた側が「気にならないですね」「軽い吃音ですね」と声をかけることは、養育者にとってプラスに働くことが少ないと書いています。伴奏に合わせて歌う・2人で同じ言葉を言うといった外からタイミングが与えられる場面では症状が消えることから、吃音は発話のタイミングの障害と言われ、気をつけて話すときほど出にくいとも説明されています。診察室は、まさに「気をつけて話す」場所です。
だから、持っていくものが要ります。吃音の評価について専門家の合意で作られた指針は、年齢を問わず包括的な評価に共通する中核領域として、背景の情報、ことば・言語・気質の発達、話し方の流暢さと吃音の出方、本人の反応、周囲の反応、生活への支障という6つを挙げています。いつごろ始まったか、家族に吃音のある人がいるか、どんな場面でどのくらい出るか、避けている言葉や場面、園や学校での扱い、いま一番困っている場面——この順に一枚にまとめておくと、窓口を変えても最初から話し直さずに済みます。ドイツの診療ガイドラインが、客観的な評価のために一定の長さの連続した発話を録音・録画して分析するとしていることを踏まえると、家で出ているときの短い動画も材料になります。窓口によっては事前に書く紙が用意されていて、国立障害者リハビリテーションセンター病院の成人吃音相談外来は、問診票を受診前に印刷・記入して持参するよう求め、当日その場で書く場合は30分程度かかるとし、紹介状があればそれも持参するよう案内しています。初診の日に何が行われるかの詳しい流れは子どもの吃音外来の記事に、紹介状が要る大学病院の順路は九州大学の吃音外来の記事にあります。
月に1回、通い続けられるか——岐阜は南北に長い
相談先が見つかっても、そこで終わりではありません。吃音の相談は一度きりで済むものではなく、通い続けられるかどうかが次の壁になります。岐阜では、それがそのまま距離の問題になります。
第8回「吃音のつどい」の座談会で語った、年長の子の保護者(岐阜県各務原市の社会福祉法人が開いた交流会の記録。氏名は非公開で、子の学年のみ公開されている)
3才から連発が出始めた。ちょうどその頃、ドラマで福山雅治が演じていたので吃音だと分かった。その後いろいろ調べたりして、山田病院(岐阜市)に月1回相談に通ったが、遠いので最近福祉の里に変わった。本人はあまり吃音の事を気にしていないように思うが、これからが大事な時期になると思い、皆さんのお話を参考にしたい。
各務原市の社会福祉事業団が開いた交流会の、少人数に分かれた座談会の記録です。この保護者は、3歳で症状に気づき、テレビドラマをきっかけにそれが吃音だと知り、自分で調べて岐阜市の病院に月1回通うところまで辿り着いています。それでも、続かなかった理由は症状でも担当者でもなく、距離でした。同じ座談会には、通級指導教室(在籍する学級とは別に、ことばの指導を受けに通う教室)の申し込み方を市の一覧と教育委員会の面談から説明する保護者や、就学に向けて何を準備すればいいか聞きたいという保護者の発言が並んでいます。同じ場で、通い先を変えた家庭と、これから通い先を探す家庭とが、並んで話しています。公的な整理も、相談に対応している施設の種類は多いと認めています。
出典: 第8回「吃音のつどい」を開催しました!(社会福祉法人 各務原市社会福祉事業団)(台帳: V0083)
どのくらいの頻度で通うことになるのかは、あらかじめ目安が示されています。幼児吃音臨床ガイドラインは、積極的な介入を「月2回以上の指導」と定義したうえで、3歳児クラス(年少組)までは経過観察的な支援を基本とし、4歳児クラス(年中組)では開始を検討、5歳児クラス(年長組)では開始を推奨する、としています。園の学年で答えが変わるので、問い合わせるときに「いま何歳か」を添えると話が早くなります。そして経過観察の期間も、何もしない期間ではありません。保護者が過度に心配しないよう資料を渡しながら適切な知識と家庭・集団での望ましい関わり方を伝え、定期的な面談で経過を見る。その間は家庭で日々の症状を記録してもらい、面談ではその記録をもとに変化を評価する。1年経過する中で悪化が認められる場合は言語聴覚士につなぐ——そこまで決められています。
つまり、月2回の通院が難しい距離なら、そのことを最初に相談先へ伝えてよい、ということです。ガイドライン自身が、開始の時期は重症度や改善傾向だけでなく保護者の状況や専門機関の受け入れ状況によって前倒しにも先延ばしにもなりうる、と書いています。「遠いから諦める」ではなく「遠いので、どの形なら続けられるか」を最初の電話で聞く。岐阜のように南北に長い県では、そこが分かれ目になります。通える範囲に相談先が無いときの組み立ては相談先が近くにない場合の記事に、画面越しの相談で足りるかどうかはオンライン吃音相談の記事にまとめています。
岐阜で、最初の一本の電話をどこにかけるか
ここまでの入口を、「最初にかける先」の形に並べ直します。病院の固有名を先に探すのではなく、種類から辿る順番です。窓口の名前や担当は変わりやすいので、名前を覚えるより辿り方を持っておくほうが長持ちします。
- 就学前の子どものこと— 幼児の吃音の治療経験がある言語聴覚士のいる病院やクリニック、自治体の(小児)リハビリテーションセンター、大学教育学部に付属する発達や言語の相談室、地域の児童発達支援センター(就学前の子どもの発達を支援する施設。言語聴覚士が在籍する場合が多く、吃音の相談窓口になっているとされています)が挙げられています。保健センターでも相談に対応しているところがあり、地域の言語聴覚士の相談窓口を把握している場合もあります。近隣の施設が分からなければ、地元の保健センターか岐阜県言語聴覚士会、それでも見つからなければ日本言語聴覚士協会、という順番です。
- 小学生・中学生・高校生のこと— 通っている学校か、地域の教育委員会。その地域の学校に設置されている「ことばの教室」などを紹介してもらえます。中学校にも少しずつ設置されてきている、とも書かれています。どの小学校にあるか、幼児の相談にも対応しているかは、地元の小学校か各地域の教育委員会に問い合わせるとよい、とガイドラインが案内しています。本人が隠したがっているなら、保護者が先に相談に行き「聞いてきてほしいことがあったら教えて」と本人に尋ねてよい、というのが公的な助言です。
- 大人のこと— 吃音を診る言語聴覚士のいる病院を探すには、病院に直接問い合わせるか、岐阜県言語聴覚士会・日本言語聴覚士協会に尋ねます。「吃音を診ていますか」を先に聞くこと、全ての言語聴覚士が吃音を扱えるわけではないことは、上に書いたとおりです。この記事の資料に、岐阜県内の医療機関の名前は書かれていません。名前のついた専門外来として資料にあるのは国立障害者リハビリテーションセンター病院の成人吃音相談外来で、18歳以上を対象にした初診専用・完全予約制の外来ですが、「現在、受診希望の方が多く予約が取りにくくなっております」と案内されています。
- 当事者の会— 全国言友会連絡協議会の加盟団体一覧の中部ブロックに、にいがた言友会・富山言友会・石川言友会・福井言友会・やまなし言友会・信州言友会・岐阜言友会・しずおか言友会・名古屋言友会・どーもわーく・豊橋言友会・三重言友会が並んでいます(2026年8月30日閲覧時点)。全国組織は、子どもの吃音への対応方法の確認や医療機関の紹介といった個別の相談には原則として応じられないとし、近くの加盟団体まで連絡してほしいと明記しています。連絡する先は全国の窓口ではなく、岐阜の団体のほうです。近くの会の情報は、ホームページで調べるか言語聴覚士会に問い合わせても分かる、と国立障害者リハビリテーションセンターのQ&Aは案内しています。
- 公的な相談窓口— 発達障害者支援センターの全国一覧で、岐阜県の欄に載っているのは岐阜県発達障害者支援センター「のぞみ」(岐阜市鷺山向井・岐阜県障がい者総合相談センター2階)の1か所です(2026年8月30日取得時点)。一覧の冒頭には、人口規模・面積・交通アクセス・既存の地域資源の有無・自治体内の支援体制の整備状況などによってセンターごとに事業内容が異なるので、初めて利用する人はまず住んでいる地域を担当しているセンターに問い合わせるように、と書かれています。ガイドラインも、併存する発達障害その他の障害が疑われる場合の窓口として各地の発達障害者支援センターや自治体の福祉相談窓口を挙げています。
相談先の総論——どこに何を相談できて何はしてもらえないのか、予約待ちはどのくらいか、初回に何を持っていくか——は吃音の相談先の記事にまとめています。当てはまる症状があるかどうかで迷っているときは吃音症チェックの記事へ。
「岐阜には診てくれるところが無い」と思う前に
電話をかけても見つからない、窓口によって答えが違う——そうなったとき、多くの人は「この県には無いのだ」と結論づけます。けれど、見つからない理由の一部は、岐阜という場所にではなく、仕組みの側にあります。幼児吃音臨床ガイドラインは、現時点では吃音の専門家の認証や登録の仕組みが日本には無く、相談に対応している施設の種類は多いものの、吃音に対応している(あるいはしていない)ことを明示していない場合もしばしばあって分かりにくい、と認めています。相談対応機関の多くは治療には対応できないことも多い、とも書かれています。
国立障害者リハビリテーションセンターの特集は、さらに踏み込んでいます。吃音になる幼児の10分の1だけが医療機関を受診するとしても全員を診られるだけの人数の吃音の専門家はいないとし、幼児の吃音についてはすでに「医療崩壊状態と言ってもいいくらい」と書いています。そのうえで、専門家はすぐには増やせないので、一般の相談・診療機関が吃音の詳しい説明とできれば経過観察も担当し、必要を見極めて治療施設に紹介するという連携が必要だ、としています。ガイドラインも同じ方向で、幼児の吃音の治療に対応できる機関が中心となって、保健センター・保育所や幼稚園・認定こども園、地域の耳鼻咽喉科や小児科・医師会、小学校のことばの教室や特別支援教育コーディネーター・教育委員会、自治体の福祉や子育て支援・母子保健の窓口と連携し、発見と基本的な対応を分担する形を示しています。つまり、最初にかけた先が「うちでは治療はできません」と答えるのは、想定された役割分担の中の答えでもあります。
岐阜が吃音の空白地帯というわけでもありません。日本吃音・流暢性障害学会の記録によれば、2017年8月19日から20日にかけて開かれた第5回大会の会場は、岐阜市長良福光の長良川国際会議場でした。吃音を専門にする臨床家と研究者が全国から集まる大会が、県内で開かれたことがある、ということです。日本言語聴覚士協会の都道府県士会一覧にも岐阜県言語聴覚士会が載っています。名前が表に出ていないだけで、辿る先はあります。
そして、県内で見つからないときの次の一手として、通わずに受けられる相談もあります。吃音を専門とするNPO法人のオンライン相談室は、受給者証が無くても利用でき、子どもから大人まで誰でも使えるとしたうえで、まず初回相談を受ける必要があり、それは1時間程度・費用は無料で、対面のほかオンラインでも可能(電話による相談には応じていない)と案内しています。当事者どうしの会への参加も、ドイツの診療ガイドラインが臨床的なコンセンサス(専門家の合意)にもとづいて推奨しています。⚠ この推奨は効果を数値で測った研究にもとづくものではなく、またドイツの団体について書かれた記述なので、日本の団体の評価にそのまま当てはめることはできません。
岐阜で吃音の病院を探すときに陥りがちな3つの落とし穴
落とし穴1 − 「言語聴覚士がいる病院」というだけで決める
言語聴覚士は吃音をことばの障害として守備範囲に含めていますが、扱う業務が幅広く、全員が吃音の指導や支援を担当しているわけではありません。病院に「言語聴覚士がいる」ことと「吃音を扱っている」ことは別です。予約の前に、その病院に直接、あるいは岐阜県言語聴覚士会・日本言語聴覚士協会に、吃音の相談を受けているかを確かめておくことが勧められています。聞き方は「吃音を診ていますか」「吃音のある方をよく担当されていますか」です。
落とし穴2 − いちばん専門的に見える遠い施設を選んで、続かなくなる
吃音の相談は一度で終わりません。積極的な介入は月2回以上の指導と定義され、年中組で開始を検討、年長組で開始を推奨とされています。経過観察の期間も、定期的な面談と家庭での記録が組み込まれています。片道に何時間もかかる施設を選ぶと、この頻度が続きません。ガイドラインは、開始の時期が保護者の状況や専門機関の受け入れ状況によって前後しうることも書いています。遠さは隠す条件ではなく、最初に伝える条件です。
落とし穴3 − 診察室で出なかったから「軽い」と受け取ってしまう
相談の場で思ったほど症状が出ないことは多く、その様子に「気にならないですね」「軽い吃音ですね」と声をかけることは、養育者にとってプラスに働くことが少ないとされています。外からタイミングが与えられる場面では症状が消えるため、吃音は発話のタイミングの障害と言われ、気をつけて話すときほど出にくいと説明されています。出なかった日の印象を、自分でも「軽い」の証拠にしないでください。持っていく材料は、専門家の合意で作られた評価の指針が挙げる6つの領域——背景の情報、ことばと言語と気質の発達、話し方の流暢さと吃音の出方、本人の反応、周囲の反応、生活への支障——の順に一枚にまとめておくと伝わります。まずは気づいたことを書き留めることから小さく始め、言語聴覚士やことばの教室に相談できる場合はそちらが確実です。
よくある質問
岐阜県内で吃音を診てもらえる病院はどこですか?
この記事の資料には、岐阜県内の医療機関の名前は書かれていません。案内されている探し方は、病院等に直接問い合わせるか、日本言語聴覚士協会・各都道府県の言語聴覚士会に尋ねることで、岐阜では協会の一覧にある岐阜県言語聴覚士会がそれにあたります。幼児については、近隣の施設が分からない場合は地元の保健センターか都道府県の言語聴覚士会に問い合わせ、それでも見つからなければ日本言語聴覚士協会へ、という順番が示されています。全ての言語聴覚士が吃音を扱えるわけではないので、「吃音を診ていますか」を先に聞くことが勧められています。
吃音は何科に行けばいいですか?
「吃音科」という診療科はありません。幼児吃音臨床ガイドラインは、想定する利用者として、幼児の吃音に接する機会がある医師(主に小児科医と耳鼻咽喉科医、児童精神科医)、症状の評価と治療を担当する言語聴覚士、保健センター等で相談を受ける保健師を挙げています。言語聴覚士は主に病院のリハビリテーション科や耳鼻咽喉科などに勤務している場合が多い、とも案内されています。科の名前で迷ったときの考え方は、吃音は何科・どの病院?の記事にまとめています。
紹介状は必要ですか?
必要かどうかは施設ごとに違うので、予約の電話で確かめるのが確実です。資料にある例では、国立障害者リハビリテーションセンター病院の成人吃音相談外来が、初診専用・完全予約制で、予約センターで予約を取ったうえで受診するよう案内し、紹介状を持っている場合は当日持参するよう書いています。同じ外来は問診票を受診前に印刷・記入して持参するよう求め、当日その場で書く場合は記載に30分程度かかるとしています。紹介状が前提になる大学病院の順路は九州大学の吃音外来の記事にあります。
岐阜言友会には、どうやって連絡すればいいですか?
全国言友会連絡協議会の加盟団体一覧の中部ブロックに、岐阜言友会が載っています。全国組織は、子どもの吃音への対応方法の確認や医療機関の紹介といった個別の相談には原則として応じられないとしているので、連絡先は地域の加盟団体になります。近くの自助グループの情報は、ホームページで調べるか言語聴覚士会に問い合わせると分かる、とも案内されています。例会の日時や会場はこの記事の資料に無いので、団体の案内で確かめてください。当事者の会への参加は、ドイツの診療ガイドラインでも専門家の合意にもとづいて推奨されていますが、効果を測った研究にもとづく推奨ではありません。
岐阜で「吃音カフェ」は開かれていますか?
吃音などのある人が接客に挑戦する催しの公式ページには、これまでの開催地の一覧があり、2024年10月13日に岐阜県岐阜市で開かれた回が載っています。同じページのメディア掲載欄には、2024年10月16日に岐阜新聞に掲載されたことも記されています。ただしこれは過去の開催記録で、次にいつどこで開かれるかは書かれていません。仕組みと、開催が不定期であることの読み方は吃音カフェ東京の記事にまとめています。
まとめ
- 病院を選ぶ決め手は診療科の名前ではなく、吃音を扱う言語聴覚士がいるかどうか。全員が吃音を扱えるわけではないので、予約の前に「吃音を診ていますか」を確かめる。
- 近隣の施設が分からないときは、地元の保健センター → 岐阜県言語聴覚士会 → 日本言語聴覚士協会、の順に問い合わせる。就学後の子どもと中高生は、学校か地域の教育委員会がことばの教室への入口。
- 診察室では、家で見ているようには出ないことが多い。出なかった日を「軽い」の証拠にせず、背景・発達・出方・本人の反応・周囲の反応・生活への支障の6領域に沿って記録を持っていく。
- 積極的な介入は月2回以上と定義され、年中組で検討・年長組で推奨。通えない距離なら、それを最初の電話で伝える。開始の時期は保護者の状況や受け入れ状況で前後しうる。
- 当事者の会は全国言友会連絡協議会の中部ブロックにある岐阜言友会、公的な窓口は発達障害者支援センター一覧の岐阜県の欄にある「のぞみ」1か所。
- 見つからない理由の一部は、吃音の専門家の認証の仕組みが無く、対応の有無を明示していない施設が多いことにある。専門家の数自体も足りていない。一方で、学会の全国大会が岐阜市で開かれたこともある。一覧に載っていることと、いま受け付けていることは別なので、行く前に必ず案内を開き直す。