吃音外来 福岡|県内2か所の外来・子どもと大人の入口・言友会

吃音外来 福岡|県内2か所の外来・子どもと大人の入口・言友会
目次

「福岡で吃音を診てもらえる病院はどこか」「九州大学病院に吃音外来があると聞いたけれど、どうやって行けばいいのか」「子どものことばのことを、福岡市の誰に相談すればいいのか」——探し始めた人が最初にぶつかるのは、出てくる案内が埼玉や神奈川の外来のものと、福岡の施設がそれぞれ自分のページに出している短い案内ばかりで、横に並べて見比べられる場所が無いことです。名前は聞いたことがあっても、そこが子どもを診るのか大人を診るのか、自分で電話して予約できるのか、紹介状が要るのかが見えないと、最初の一本がかけられません。

この記事は、九州大学病院の公開ページ、国立障害者リハビリテーションセンター(発達障害情報・支援センターと、幼児吃音臨床ガイドライン2021を作った研究班)、日本言語聴覚士協会、全国言友会連絡協議会の公開資料から、福岡で辿れる入口を子どもと大人に分けて整理します。九州大学病院の外来そのものの順路は別の記事にまとめてあるので、ここでは「九州大学病院以外も含めて、福岡にどんな選択肢があり、どの順で当たるか」を扱います。あいだに、福岡で相談先を探した保護者2人と、福岡を拠点にする当事者1人の記録を置きます。団体や施設の名前は公開資料に実際に書かれているものだけを挙げ、書かれていないことは「書かれていない」と言います。

ソンタクマン(toVoice 運営)
吃音当事者。研究論文と当事者の声をもとに、吃音の情報を出典つきで発信しています。

この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の判断に代わるものではありません。特定の医療機関や団体をおすすめするものでもありません。ここに挙げた名前・所在地・診療の記載は、いずれも公開資料を取得した時点のものです。受診や連絡の前に、必ず各施設・団体の案内と電話で最新の状況をご確認ください。気になる症状があるときは、言語聴覚士やことばの教室にご相談ください。

まず結論から

  • 福岡には、「吃音外来」と公式に書かれた窓口があります。九州大学病院は2025年10月8日付のお知らせで、耳鼻咽喉・頭頸部外科の医師が九州大学病院など福岡県内2か所で全国的に珍しい「吃音外来」を開いていると記しています。ただしこれは広報で、対象年齢や予約の方法はそこには書かれていません。
  • 久留米市内の耳鼻咽喉科の診療所が、2017年9月から全年齢を対象に吃音の診療を始め、2021年8月までに239例の新規来院があったと学術誌に報告しています。市外・県外からも来ていて、受け入れ先が少ない、というのがその報告の結論です。
  • 子どもの入口は病院だけではありません。幼児は、吃音の治療経験がある言語聴覚士(聞こえ・ことば・飲み込みの障害を扱う国家資格の専門職)のいる病院や、地域の児童発達支援センターが窓口とされ、就学後は通っている学校か教育委員会に相談すれば「ことばの教室」を紹介してもらえます。近隣の施設が分からなければ、地元の保健センターか都道府県の言語聴覚士会——福岡では福岡県言語聴覚士会——に問い合わせる順番が示されています。
  • 公的な相談先として、発達障害者支援センターの全国一覧には福岡県内に6つの窓口が載っています。当事者の会は、全国言友会連絡協議会の一覧の九州・沖縄ブロックに福岡言友会と北九州言友会があります。
  • 大学病院の初診は本人からは予約できず、医療機関からの予約と紹介状が要ります。入口の型は施設ごとに違い、本人が予約センターで専門外来の予約を取る型の窓口もあります。

ただし、ここに挙げた名前や所在地はいずれも公開資料を取得した時点(2026年7月から8月)の記載で、一覧に載っていることは、いま受け付けているか、吃音を診ているかを保証しません。全ての言語聴覚士が吃音の指導や支援を行えるわけではないので、出かける前・電話をかける前に、「吃音を診ていますか」を各窓口へ直接確かめてください。

福岡でも、「近くに相談できる場所」はすぐには見つからない

福岡は、「吃音外来」という名前の窓口がある県です。それでも、子どもの吃音に気づいた親が最初にぶつかるのは、「どこに行けばいいのか」が分からないことです。名前のある窓口が県内にあることと、自分の家から辿り着けることは、別の問題だからです。

福岡県に住む母の声(仮名・専業主婦。次男は3歳になる少し前に吃音が始まり、取材時は7歳/Benesse「たまひよ」の体験記)

できるだけ気をつけようとは思っても、康太がうまくしゃべれないのがかわいそうで、もどかしくて。『ぼぼぼぼぼぼくはね、きょきょきょきょきょうね、きゅきゅきゅきゅきゅうしょくが…』と話をするので、何を言いたいのか先にわかるんですが、それをさえぎらないで聞いてあげようと、なるべく最後まで待っているようにしました。でも毎日続くと、イラッとしてしまうこともありました。

だれかに助けてほしい、早く答えがほしい、とあせる気持ちでしたが、近くに吃音に関する支援の場所は見つかりませんでした。療育や言語聴覚士のいる小児科も調べましたが、遠方だったり、予約がいっぱいだったりと、現実的に相談をするのが難しい状況でした

次男の吃音は、幼稚園の慣らし保育に出かけた2歳8か月の日に始まった、と母親は日付まで覚えています。最初に相談したのは幼稚園の先生と、地域の市民センターで行われる発育相談の保健師でした。返ってきたのは「環境を整えたら自然に治るかも」「ママが忙しすぎて、お子さんと一緒にいる時間が少ないんじゃない?」という言葉で、具体的な治療についての情報は得られなかったと書かれています。周囲には「気にしすぎ」と言われ、誰にも相談できない。そのあいだに調べた療育や言語聴覚士のいる小児科は、遠方か予約がいっぱいでした。支援先を探し直したのは、年長になった息子が「どうして僕はみんなみたいにしゃべれないの?」と口にした日で、そのとき初めて、症状が出始めて1年以上たっても落ち着かなければすぐに相談したほうがいい、ということを知ったと振り返っています。最後に辿り着いたのは福岡ではなく東京の言語聴覚士の相談室で、オンラインでの面談でした。最初の窓口で止まってしまうこの型は、幼児吃音の臨床ガイドラインが想定している事態そのものです。

出典: 「どうして僕はうまくしゃべれないの?」ある日突然、3才の息子に吃音の症状が…。誰にも相談できずに悩み続けた日々【体験記】(たまひよ)(台帳: V0006)

幼児吃音臨床ガイドライン2021(国立障害者リハビリテーションセンターを中心とする研究班が作ったもの)は、「吃音かな?」と思ったときの相談先として、幼児の吃音の治療経験がある言語聴覚士のいる病院やクリニック、自治体の(小児)リハビリテーションセンター、大学教育学部に付属する発達や言語の相談室を挙げ、地域の児童発達支援センターには言語聴覚士が在籍する場合が多く相談窓口になっている、としています。そして解説で、治療や相談ができる近隣の施設が分からない場合は地元の保健センターか各都道府県の言語聴覚士会に問い合わせ、それでも見つからなければ日本言語聴覚士協会に問い合わせる、という順番を示しています。福岡でこの「都道府県の言語聴覚士会」にあたるのは、日本言語聴覚士協会の一覧にある福岡県言語聴覚士会です。上の母親が相談した保健師は、この順番の最初の窓口にあたります。

「遠方だったり、予約がいっぱいだったり」は、福岡だけの事情ではありません。国立障害者リハビリテーションセンターの解説は、吃音になる幼児の10分の1だけが医療機関を受診するとしても全員を診られるだけの専門家はいない、幼児の吃音についてはすでに医療崩壊状態と言ってもいいくらいだ、と書いています。ガイドラインもこの専門家不足を前提に作られていて、吃音の専門家がいる機関では症状の軽い重いにかかわらず多くの子が来るため初診までに数か月の待機になることが多く、専門としていない施設での経過観察はしばしば放置も同然になって、その間に保護者の不安が解消されない、と現状を書いています。待たされる理由は支援する側からも挙がっていて、言語聴覚士に尋ねた全国規模の調査では、根拠にもとづく支援を妨げるものとして費用・長い待機の列・通う頻度が報告されています。

だからこそ同じガイドラインは、最初の窓口になりやすい耳鼻咽喉科・小児科での対応を決めています。明らかに吃音と診断でき、始まってから1年以上たっているか4歳を超えている場合は言語聴覚士等へ紹介し、軽度で始まってから1年以内・4歳未満なら家庭でできる対応のリーフレットを渡して数か月ごとに経過を見て、改善が見られなければ紹介する、という分かれ目です。上の母親があとから知った「1年以上」は、この分かれ目と重なります。あわせて、「様子を見ましょう」というだけでなく、積極的な助言指導を受けられる専門機関につなげることが大切だ、とも書かれています。最初の窓口で「自然に治るかも」と言われて止まったら、次の窓口——保健センター、福岡県言語聴覚士会——に「どこなら受けてもらえますか」と聞く。それが、この順番が読者に渡している道です。

言語聴覚士に話を聞きに行くと、何が分かるのか

相談先の名前として必ず出てくるのが言語聴覚士です。ただ、行ったら何を教えてもらえるのかが見えないと、電話をかける理由になりません。福岡に引っ越してきたばかりの母親の記録に、その中身が書かれています。

3歳の息子の母の声(37歳・夫の転勤で関西から福岡へ・税理士事務所で時短勤務/個人ブログ note)

言語聴覚士の方に話を聞きに行き、吃音について教えていただきました。

・2〜5歳頃にはじまることが多く、約20人に1人の割合で見られる。

・原因ははっきりと特定されておらず、確実な治療法も確立されていない。

親の接し方やストレスによって吃音になるという考え方は誤り。

息子の吃音が始まったのは3歳4か月、家族で電車に乗った日に「にしじん」という地名を「に、に、に、にしじん」と言ったのが最初でした。母親はそのとき吃音とは思わず、一緒になって真似をした、と書いています。言語聴覚士に話を聞きに行って教わったのは、上の3点です。母親はこのあと、自分が最初におちょくるような真似をしたからだと自分を責めていたが、そういう訳では無いようで安心した、と続け、急がずゆっくり間をとって話しかける、目の前のことについて簡単な文で話す、質問を減らして答えやすい質問にする、という接し方を書き留めています。一度話を聞きに行って持ち帰ったのは、治療法ではなく、原因についての誤解が解けたことと、家での接し方でした。この母親が会いに行った言語聴覚士は、吃音を自分たちの守備範囲に含めている専門職です。

出典: 3歳息子の吃音のはなし(note)(台帳: V0285)

日本言語聴覚士協会は、聞こえやことばの障害、飲み込みの障害のある人を支援する専門職が言語聴覚士であり、検査・訓練・指導や援助を行うと説明し、なめらかに話すことが難しい吃音も「ことばの障害」に含まれると書いています。ただし、扱う業務が多岐にわたるため、必ずしも全ての言語聴覚士が吃音の指導や支援を行えるわけではありません。病院のリハビリテーション科や耳鼻咽喉科などに勤務していることが多いので、吃音の相談を希望する場合はあらかじめ病院に直接問い合わせるか、日本言語聴覚士協会や各都道府県の言語聴覚士会に尋ねるよう案内されています。福岡で言えば、その「都道府県の言語聴覚士会」が福岡県言語聴覚士会にあたります。誰に会えるかを先に確かめる話は、吃音と言語聴覚士の記事にまとめています。

「話を聞きに行く」と「訓練を始める」は、別の段階です。幼児吃音臨床ガイドライン2021は、月2回以上の積極的な介入を始める時期について、3歳児クラス(年少組)までは経過観察的な支援を基本とし、4歳児クラス(年中組)で開始を検討、5歳児クラス(年長組)で開始を推奨する、という区切りを示し、症状の重さや改善の傾向、保護者の状況、専門機関の受け入れ状況によって前倒しや先延ばしもありうる、としています。早すぎれば自然に良くなったはずの多くの子に不要な介入をすることになり、遅すぎれば就学までに十分な改善を得られない、という両側の理由が添えられています。ドイツの診療ガイドラインも、3〜6歳の子どもは吃音が始まってから6〜12か月のあいだ経過を見て、続いていれば治療を始めるとしたうえで、持続しやすい手がかりがいくつも重なっている、言葉を思うように出せない状態や努力を伴う症状が長く続いている、症状が親や子にとって負担で話す場面を避けるようになっている、という場合にはすぐに始めるべきだと書いています。3歳4か月で始まったばかりの子について、まず話を聞きに行き、接し方を持ち帰る——上の母親の順路は、この区切りに沿っています。

もう一つ、相談の場では本人がどもらないことがあります。ガイドラインは、短時間の診療場面では症状を示さないことが多いが保護者は心配して来ているので、安易に「吃音なし」「心配なし」と決めつけないよう医療者に求めています。家で出ているときの様子を書き留めて持っていくと、その場で出なかった日の材料になります。持っていくものの並べ方は、吃音の相談先の記事に書いています。

同じ悩みの親や、吃音のある大人に、福岡で会えるか

病院や言語聴覚士が「症状」を見る場所だとすれば、親がもう一つ知りたいのは「この子は大人になったらどうなるのか」です。それに答えられるのは、吃音のある大人です。福岡を拠点にする当事者が、その問いを保護者から直接受け取った記録があります。

当事者本人(32歳・プロバスケットボール選手・ライジングゼファー福岡)を取材した記者の地の文。かぎ括弧の中は保護者と本人の言葉(西日本新聞社系「西スポWEB OTTO!」の実名取材記事)

活動していると、ある保護者に告げられた。「吃音を持って大人になった方が、どんな生活をしているのか分からなかった。加藤選手という目標になれる存在が現れた。本当に心強い」。今後の道しるべになる言葉を受け取った。

これまで福岡市や久留米市などで講演した。吃音の治療、研究に取り組む九州大の菊池良和助教との縁が生まれるなど、活動の幅は広がっている。「自分の取り組みが、症状に悩む子のロールモデルにつながれば」。プロ選手としてのキャリアに、新たな目標が加わった。

幼稚園のころ、「ありがとう」の最初の「あ」を繰り返して言葉が出ず、話し方をまねされ、からかわれた。「自分は普通とは違うんだ」という記憶を抱えたまま、バスケットボールに夢中になっているあいだだけ症状が気にならなかった、と記事は本人の来歴をたどっています。神奈川県の出身で、2023年に福岡のチームに加入し、2024年の秋に自身の吃音を公表。公表を知った母親から「吃音の子を持つ親にしか分からないことがある」「自分を責めている母親が多いはず」と涙ながらに告げられたことが、講演で保護者の切実な姿に向き合う原点になった、と書かれています。講演では助言ではなく自分の経験を語り、参加者どうしが「私もそうでした」と共感する場ができた。上の一節は、その先で受け取った言葉です。吃音のある大人に会うことで得られるものと、そこでは得られないものは、公的な資料が線を引いています。

出典: 「未来を諦めないで」吃音を公表したBリーガー、母の涙が活動の原点に(西スポWEB OTTO!)(台帳: V0007)

福岡には、当事者が集まる会があります。全国言友会連絡協議会の加盟団体一覧では、九州・沖縄ブロックに福岡言友会北九州言友会が載っています(2026年8月30日閲覧時点)。同じページは、加盟団体のない都道府県として青森・秋田・福島・鳥取・長崎・沖縄を名指ししていて、福岡はその空白には入っていません。ただし全国組織は、子どもの吃音への対応方法の確認や医療機関の紹介といった個別の相談には原則として応じられないとし、希望する場合は近くの加盟団体に連絡してほしいと明記しています。連絡する先は、全国の窓口ではなく地域の会のほうです。国立障害者リハビリテーションセンターのQ&Aも、本人が望むなら自助グループ(当事者どうしの会)に参加してみることが心を開いて自分のことを話す突破口になるかもしれないとし、近くの会の情報はホームページで調べるか言語聴覚士会に問い合わせれば分かる、と書いています。

当事者の会は、何をしてくれる場所なのか。吃音ポータルサイトは、セルフヘルプグループ(当事者どうしの自助グループ)は当事者の集まりなので、言語聴覚士のように吃音についての学術的な知識や、改善のための専門的な指導や支援が受けられるわけではない、とはっきり書いたうえで、同じ問題を持つ仲間と出会い、当事者同士でないと感じることのできない連帯感の中で悩みを聞いてもらったり、同じ立場からの具体的な助言をもらったりできるという、そこでしか得られないものがあるとしています。上の保護者が口にした「吃音を持って大人になった方が、どんな生活をしているのか」は、この後半にあたります。ドイツの診療ガイドラインは、自助グループへの参加を、効果を測った研究ではなく専門家の合意にもとづいて推奨しています。ドイツの団体についての記述なので日本の団体の評価にそのまま当てはめることはできませんが、「治療の代わりではないが、勧める」という位置づけは、上のポータルサイトの線引きと重なります。

福岡には、当事者の会とは別の形の場も記録されています。吃音のある若者が接客をする「注文に時間がかかるカフェ」の公式ページの開催一覧には、2022年12月3日に福岡県みやま市、2023年8月12日と2024年9月7日に福岡県福岡市(後者の会場は福岡工業大学附属城東高等学校)と記載されています(2026年8月4日取得時点)。このカフェは接客をしたい若者や企業からの依頼で開く催しで、決まった地域での定期開催や常設店は無く、吃音のある人同士の交流というより一般のカフェだ、と公式ページ自身が書いています。仕組みの詳しい話は、東京の例ですが吃音カフェ東京の記事にあります。

大人が福岡で外来を探すとき——名前のある窓口と、その入口

大人の入口は、子どもより細くなります。それでも福岡には、「吃音外来」という名前が公式に書かれた窓口があります。九州大学病院は2025年10月8日付の病院からのお知らせで、耳鼻咽喉・頭頸部外科の医師について、専門は吃音をはじめとした音声言語医学であること、自身も吃音の当事者であること、九州大学病院など福岡県内2か所で全国的に珍しい「吃音外来」を開いていることを書いています。ただしこれは受賞の告知であって診療案内ではないので、対象年齢・予約方法・曜日・費用はそこには書かれていません。「2か所」のもう1か所がどこかも、このページには書かれていません。

九州大学病院の耳鼻咽喉・頭頸部外科の案内には「初診の方は医療機関からの予約、および紹介状が必要です」とあり、本人が電話で初診の予約を取る経路は案内されていません。病院全体の初診案内も、原則として医療機関からの紹介・予約制で、まずかかりつけ医を受診し、そのかかりつけ医から初診患者専用の予約センターへ初診の予約を申し込む順路です。紹介状(診療情報提供書)を持たずに受診すると治療費とは別に定額負担として医科7,700円が必要になり、紹介状が無いと受診できない診療科もある、と注意欄にあります。この順路の詳しいところ——かかりつけ医で何を頼むか、どのくらい待つか、初診の日に何をされるか——は、九州大学の吃音外来の記事に1本の線にしてあります。

大学病院以外にも、県内で大人を受けている窓口はあります。久留米市内にある耳鼻咽喉科の診療所が、2017年9月から全年齢層を対象とした吃音診療を始め、2021年8月までに239例の新規来院があったと、耳鼻咽喉科の学術誌に報告しています。受診の経路は、始めた当初はインターネット経由が半数以上だったのが、他の機関からの紹介や家族・知人の紹介が増え、居住地も久留米市外・福岡県外からの来院が増えたとされ、著者らは、吃音で困っている患者が多い一方で受け入れ先が少ないと結論し、医師と言語聴覚士が協力して切れ目のない支援体制を続ける必要があると結んでいます。この抄録に診療所の名前は書かれていないので、ここでも名前は挙げません。1つの診療所の実績であって、県内の窓口の数を数えた値でもありません。それでも、「福岡には大学病院しか無い」わけではないこと、そして県外から通ってくる人がいるほど受け皿が少ないことの両方が、この報告から読めます。

久留米市内の耳鼻咽喉科診療所が、全年齢層を対象とした吃音診療を2017年9月に始めてから2021年8月までに受けた新規来院は239例。受診経路は、開始当初はインターネット経由が半数以上で、その後は他機関からの紹介、家族・知人の紹介が増加。居住地は、診療所があるのは久留米市内だが、その後は久留米市外・福岡県外からの来院が増加。著者らは、吃音症で困っている患者が多く受け入れ先が少ない、医師・言語聴覚士は協力して切れ目のない吃音支援体制を続ける必要があると結論している。1つの診療所の実績で、県内の窓口の数を数えた値ではない。
図1: 4年間で239例。県外から通ってくる人がいるほど、受け皿は少ない。出典: 北村 匠ほか (2023)「耳鼻咽喉科医院が吃音診療を始めた4年間の推移」耳鼻と臨床 69巻1号 抄録.

入口の型は施設ごとに違います。国立障害者リハビリテーションセンター病院の成人吃音相談外来は初診専用で、受診を希望する人が予約センターで専門外来の予約を取ってから受診する型ですが、受診希望の方が多く予約が取りにくくなっている、と案内しています。「大学病院は紹介状」「専門外来は本人が予約」と型で覚えるのではなく、行きたい窓口のページを一つずつ確かめることになります。電話をかける工程そのものが吃音のある人には軽くないことも報告されていて、吃音のある成人への聞き取りの研究では、受付の職員と電話で話すことが強い抵抗の原因になっていたこと、予約の電話を家族や秘書に代わってもらうという対処が語られています。かかりつけ医から予約センターへ申し込む順路は、自分で電話をかけずに済む道が最初から用意されている、と読み替えることもできます。何科にかかるかという考え方そのものは、「吃音は何科・どの病院?」にまとめています。

福岡で辿る入口を、順番に並べる

ここまでの入口を、種類ごとに並べ直します。固有の施設名を先に探すのではなく、種類から辿る順番です。地域の窓口の情報は変わりやすいので、名前を覚えるより辿り方を持っておくほうが長持ちします。

  1. 就学前の子ども— 幼児の吃音の治療経験がある言語聴覚士のいる病院やクリニック、自治体の(小児)リハビリテーションセンター、大学教育学部に付属する発達や言語の相談室、地域の児童発達支援センターが挙げられています。近隣の施設が分からなければ、地元の保健センターか福岡県言語聴覚士会に問い合わせ、それでも見つからなければ日本言語聴覚士協会へ、という順番です。
  2. 就学後の子ども— 通っている学校か地域の教育委員会に相談すると、その地域の学校に設置されている「ことばの教室」(在籍する学級とは別に、ことばの指導を受けに通う教室)などを紹介してもらえる、と国立障害者リハビリテーションセンターのQ&Aが答えています。どの小学校にあるか、幼児の相談に対応しているかも、地元の小学校か各地域の教育委員会に問い合わせるとよいとされています。中学校にも「ことばの教室」は少しずつ設置されてきています。
  3. 大学の相談室(医療ではなく教育の窓口)— 福岡教育大学 特別支援教育センターの教育相談は、障害のある子どもとその保護者または関係者に相談や指導のサービスを提供するもので、大学の教育・研究施設としての趣旨・目的にそって行うと明記されています。申し込みは家族・関係者・本人の3つのフォームに分かれ、確認後に電話かメールで連絡が来て初回の日時を決め、初回相談の結果は「相談のみで終了」「継続相談」「外部機関の紹介」のいずれかになります。担当は障害の分野ごとで、聴覚・言語障害の分野が置かれています。所在は宗像市です。⚠ このページに「吃音」という語は出てこないので、吃音の相談窓口として案内されているわけではありません。同大学は、幼児吃音臨床ガイドラインを作った研究の参加施設の一つとして名前が挙がっています。
  4. 言語聴覚士を探す(子どもも大人も)— 病院に直接問い合わせるか、日本言語聴覚士協会・各都道府県の言語聴覚士会に尋ねる。福岡では、協会の一覧にある福岡県言語聴覚士会がそれにあたります。問い合わせるときは「吃音を診ていますか」を先に聞く——全ての言語聴覚士が吃音を扱えるわけではないからです。
  5. 公的な相談先— 発達障害者支援センターの全国一覧には、福岡県内に、福岡県発達障がい者支援センター(筑豊地域)ゆう・もあ(田川市)、福岡県発達障がい者支援センター(筑後地域)あおぞら(八女郡広川町)、福岡県発達障がい者(児)支援センター(福岡地域)Life(春日市)、福岡県発達障がい者支援センター(北九州地域)(北九州市小倉南区)、福岡市発達障がい者支援センター「ゆうゆうセンター」(福岡市中央区)、北九州市発達障がい者支援センター「つばさ」(北九州市小倉南区)の6つが載っています(2026年8月30日取得時点)。住んでいる地域で担当が分かれ、人口規模や地域の資源によって事業内容も異なるので、まず住んでいる地域を担当するセンターに問い合わせるよう一覧の冒頭にあります。学校以外で吃音の相談を受け入れている専門機関は各都道府県の言語聴覚士会や発達障害者支援センターに問い合わせるとよい、と同じセンターのQ&Aが案内していますが、ガイドラインは、発達性吃音は発達障害者支援法に規定される発達障害なので相談は可能だが、必ずしも吃音に関する情報が集約されていないことがある、と断っています。
  6. 当事者の会— 全国言友会連絡協議会の加盟団体一覧で、九州・沖縄ブロックに福岡言友会と北九州言友会が載っています。全国組織は個別相談に応じられないので、連絡先は地域の団体です。近くの自助グループの情報は、言語聴覚士会に問い合わせても分かるとされています。
  7. 大人の外来— 上の節のとおり、九州大学病院など県内2か所の「吃音外来」と、久留米市内の耳鼻咽喉科診療所の報告があります。大学病院は医療機関からの予約と紹介状が要り、本人が予約する型の専門外来もあります。
福岡で最初の一本をどこにかけるかを、国の機関と専門職団体の案内が示している順番で並べた流れ図。1 福岡で吃音のことを相談したい(窓口の名前より、種類から辿る)。2 就学前の子どもか。3 はいなら、言語聴覚士のいる病院や児童発達支援センターへ。近隣の施設が分からなければ、地元の保健センターか福岡県言語聴覚士会へ。それでも見つからなければ日本言語聴覚士協会へ。4 いいえなら、小学生・中学生・高校生か。5 はいなら、通っている学校か地域の教育委員会へ。その地域の学校にある「ことばの教室」などを紹介してもらえる。6 いいえ(大人)なら、大人が外来を探すとき。大学病院の初診は医療機関からの予約と紹介状が要る。本人が予約センターで取る型の専門外来もある。7 同じ立場の人に会いたいときは、加盟団体一覧の九州・沖縄ブロックに福岡言友会と北九州言友会。近くの会は言語聴覚士会でも分かる。
図2: 施設の名前から探すのではなく、年齢と用件の種類から辿る。出典: 幼児吃音臨床ガイドライン(第1版)2021 Q23 / 国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター「ライフステージ別Q&A Q5」 / 日本言語聴覚士協会「都道府県士会一覧」 / 九州大学病院「耳鼻咽喉・頭頸部外科 外来担当医のご紹介」 / 全国言友会連絡協議会「加盟団体一覧」

相談先の総論——どこに何を相談できて何をしてくれないか、予約待ちのあいだにできること、初回に何を持っていくか——は吃音の相談先の記事に、通える範囲に無いときにオンラインでどこまで受けられるかは吃音の相談先が近くにないときの記事に、当てはまる症状があるかどうかで迷っているときは吃音症チェックの記事に書いています。

福岡で外来や相談先を探すときに陥りがちな3つの落とし穴

落とし穴1 − 「吃音外来」という名前が無ければ、診てもらえないと思う

九州大学病院の場合、「吃音外来」という呼び名が公式に出てくるのは病院からのお知らせのほうで、診療科の案内ではありません。診療案内に名前が無いことは、その診療が無いことと同じではありません。逆に、名前のある外来が無い地域でも、吃音は言語聴覚士の守備範囲に含まれていて、決め手は外来の名前ではなく、そこに吃音を診る言語聴覚士がいるかどうかです。問い合わせるときは「何科ですか」ではなく「吃音を診ていますか」「言語聴覚士はいますか」と尋ねるほうが、答えが早く返ってきます。

落とし穴2 − まず大学病院に電話してしまう

九州大学病院の初診は、原則として医療機関からの紹介・予約制で、かかりつけ医から予約センターへ申し込む順路が案内されています。本人が電話をかけても、案内されるのは紹介状を先に用意する順路です。電話そのものが負担になる人にとっては、この順路のほうがむしろ通りやすい道でもあります——受付の職員との電話が強い抵抗の原因になる、という報告があります。順番を一つ前に戻して、まず地元でかかれる医療機関にかかるところから始めてください。幼児であれば、そこが説明と経過観察を担い、必要を見極めて専門の施設へ紹介する形が、国の機関の解説が想定している連携です。

落とし穴3 − 一覧に載っている名前を、いまも受け付けている証拠だと思う

この記事に引いた一覧は、いずれも取得した時点のものです。発達障害者支援センターについても、事業内容は地域によって異なると一覧の注意書きにあります。団体名や所在地は、電話をかける前に必ず各団体・施設の案内で確かめてください。そして、電話をかけたら、いつ・どこに・何を聞いて・何と言われたかを一行ずつ書き留めておくと、次の窓口で最初から説明し直す手間が減ります。日々の話しにくさの記録も、相談の場で症状が出なかった日の材料になります。まずは書き留めることから小さく始め、相談できる先が見つかったらそちらが確実です。

よくある質問

福岡で吃音を診てもらえる病院はどこですか?

公開資料に書かれているのは、九州大学病院が2025年10月8日付のお知らせで、耳鼻咽喉・頭頸部外科の医師が九州大学病院など福岡県内2か所で「吃音外来」を開いていると記していること、久留米市内の耳鼻咽喉科の診療所が2017年9月から全年齢を対象に吃音診療を始めたと学術誌に報告していることまでです。それ以外の医療機関の名前はこの記事の資料に無いので、病院に直接問い合わせるか、日本言語聴覚士協会や福岡県言語聴覚士会に「吃音を診ている言語聴覚士はいるか」を尋ねる探し方が案内されています。

九州大学病院の吃音外来は、自分で電話して予約できますか?

耳鼻咽喉・頭頸部外科のページには「初診の方は医療機関からの予約、および紹介状が必要です」と書かれていて、本人が電話で初診を予約する経路は案内されていません。病院全体の初診案内も、まずかかりつけ医を受診し、そのかかりつけ医から初診患者専用の予約センターへ申し込む順路です。紹介状が無いと定額負担として医科7,700円が必要になり、受診できない診療科もあると書かれています。金額や手順は取得時点の記載なので、必ず公式ページでご確認ください。

子どものことばの教室は、福岡市のどの学校にありますか?

学校名はこの記事の資料に書かれていません。通っている学校か地域の教育委員会に相談すれば、その地域の学校に設置されている「ことばの教室」などを紹介してもらえる、と国立障害者リハビリテーションセンターのQ&Aが答えています。どの小学校にあるか、幼児の相談に対応しているかも、地元の小学校か各地域の教育委員会に問い合わせるとよい、と幼児吃音臨床ガイドラインが案内しています。

福岡に言友会はありますか?

全国言友会連絡協議会の加盟団体一覧の九州・沖縄ブロックに、福岡言友会と北九州言友会が載っています。全国組織は個別の相談には原則として応じられないため、連絡先は地域の加盟団体になります。近くの自助グループの情報は、ホームページで調べるか言語聴覚士会に問い合わせると分かる、とも案内されています。例会の日時や会場はこの記事の資料に無いので、団体の案内で確かめてください。当事者の会は専門的な指導の場ではありませんが、当事者同士でしか得られないものがあるとされています。

3歳の子どもが最近どもり始めました。福岡では、まずどこに相談すればいいですか?

幼児吃音臨床ガイドラインは、吃音の治療経験がある言語聴覚士のいる病院やクリニック、地域の児童発達支援センターなどを相談先として挙げ、近隣の施設が分からなければ地元の保健センターか都道府県の言語聴覚士会に問い合わせるとよい、としています。福岡では福岡県言語聴覚士会がそれにあたります。訓練を始める時期については、年少組までは経過観察的な支援を基本とし、年中組で開始を検討、年長組で開始を推奨する区切りが示されていて、まず話を聞きに行くことと訓練を始めることは別の段階です。相談の場で症状が出ないことは資料の側も想定しているので、家で出ているときの様子を書き留めて持っていってください。

まとめ

  • 福岡には「吃音外来」と公式に書かれた窓口がある。九州大学病院のお知らせは、耳鼻咽喉・頭頸部外科の医師が九州大学病院など福岡県内2か所で吃音外来を開いていると記している。ただし広報であって診療案内ではなく、初診は医療機関からの予約と紹介状が要る。順路の詳細は九州大学の吃音外来の記事へ。
  • 久留米市内の耳鼻咽喉科の診療所が、2017年9月から全年齢を対象に吃音診療を始め、2021年8月までに239例の新規来院があったと報告している。市外・県外からも来ていて、受け入れ先が少ない。
  • 子どもの入口は、就学前は言語聴覚士のいる病院・児童発達支援センターなど、分からなければ保健センターか福岡県言語聴覚士会へ。就学後は学校か教育委員会に相談して「ことばの教室」へ。「様子を見ましょう」だけで止めない。
  • 言語聴覚士は吃音を守備範囲に含めているが、全員が吃音を扱えるわけではない。「吃音を診ていますか」を先に聞く。話を聞きに行くことと訓練を始めることは別の段階で、年少まで経過観察・年中で検討・年長で推奨という区切りがある。
  • 公的な相談先として、福岡県内に発達障がい者支援センターが6つ載っている。当事者の会は福岡言友会と北九州言友会。当事者の会は専門的な指導の場ではないが、そこでしか得られないものがある。
  • 近くに無い・予約がいっぱいという状況は福岡だけの事情ではなく、専門家不足の構造から来ている。一つの窓口で止まらず、次の窓口に「どこなら受けてもらえるか」を聞き、記録を持って進む。

参考文献

  1. 九州大学病院「耳鼻咽喉・頭頸部外科 菊池 良和 助教が第84回西日本文化賞を受賞しました」病院からのお知らせ(2025年10月8日掲載/2026年8月30日取得)
  2. 北村 匠ほか「耳鼻咽喉科医院が吃音診療を始めた 4 年間の推移」耳鼻と臨床 69巻1号(2023)抄録
  3. 九州大学病院「耳鼻咽喉・頭頸部外科 外来担当医のご紹介」(ページ最終更新 2026年4月1日/2026年8月30日取得)
  4. 九州大学病院「(医科)初診の方|外来のご案内」(2026年8月30日取得)
  5. 国立障害者リハビリテーションセンター病院「成人吃音相談外来」(2026年8月30日取得)
  6. 国立大学法人 福岡教育大学 特別支援教育センター「教育相談」
  7. 一般社団法人 日本言語聴覚士協会「都道府県士会一覧」(2026年8月30日取得)
  8. 国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター「発達障害者支援センター・一覧」(2026年8月30日取得)
  9. 国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター「ライフステージ別Q&A Q5.どもっている高校生のDくん」(2026年8月30日取得)
  10. 特定非営利活動法人 全国言友会連絡協議会「加盟団体一覧」(2026年8月30日閲覧)
  11. 吃音ポータルサイト「成人の方 ─ 相談や支援」
  12. 一般社団法人 日本言語聴覚士協会「言語聴覚士に相談する」
  13. 幼児吃音臨床ガイドライン(第1版)2021(AMED 研究班「発達性吃音の最新治療法の開発と実践に基づいたガイドライン作成」・国立障害者リハビリテーションセンター)Q1・Q15・Q23・Q24(2026年8月30日取得)
  14. 国立障害者リハビリテーションセンター 病院リハニュース No.370〔特集〕幼児吃音臨床ガイドラインの解説(2022)
  15. 注文に時間がかかるカフェ|Slow Order Cafe 公式サイト(2026年8月4日取得)
  16. Neumann, Euler, Bosshardt, Cook, Sandrieser & Sommer (2017) The Pathogenesis, Assessment and Treatment of Speech Fluency Disorders. Dtsch Arztebl Int.
  17. Alegre, Penman, Unicomb & Scarinci (2026) The perceptions of speech-language pathologists on managing stuttering across the lifespan: Outcomes of a mixed-methods national workforce survey. Int J Speech Lang Pathol.
  18. Perez, Doig-Acuña & Starrels (2015) "Not Unless It's a Life or Death Thing": A Qualitative Study of the Health Care Experiences of Adults Who Stutter. J Gen Intern Med.

当事者・保護者の声の出典: V0006(Benesse「たまひよ」の体験記・福岡県に住む母の語り。名前は仮名)/ V0285(note・夫の転勤で関西から福岡へ移った母の記録)/ V0007(西日本新聞社系「西スポWEB OTTO!」の実名取材記事・ライジングゼファー福岡の選手)。いずれも公開記事。引用は原文どおりで、話者の情報は台帳の事実シートに記載のある範囲までにとどめています。

更新履歴: 2026-09-05 公開