4歳の吃音、受診はいつ?|様子見と相談を分ける4つのサイン・自然に治る割合

4歳の吃音、受診はいつ?|様子見と相談を分ける4つのサイン・自然に治る割合
目次

「4歳になっても、ことばの最初の音を繰り返す」「このまま様子を見ていて大丈夫なのか、それとも受診したほうがいいのか」——4歳のお子さんの吃音(きつおん、どもり)を調べていると、判断に迷って不安になりますよね。

この記事は、結論を先に置いてから、4歳前後の子をもつ5人の保護者・当事者の記録と、それに対して研究や公的資料が何を言えているのかを、一つずつ並べていきます。4歳という年齢は、幼児期のなかでも少し特別な位置にあります。その理由から始めます。

ソンタクマン(toVoice 運営)
吃音当事者。研究論文と当事者の声をもとに、吃音の情報を出典つきで発信しています。

この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の判断に代わるものではありません。気になる症状があるときは、言語聴覚士のいる医療機関やことばの教室にご相談ください。

まず結論から

  • 4歳ごろは、子ども自身が「言いにくい」「他の子と話し方が違う」と気づき始める時期で、周りの子どもも「なんで『あああ』ってなるの?」といった指摘を始めることがあるとされています。
  • それでも、幼児期に吃音のあるお子さんの少なくとも半数は、特別な指導や支援を受けなくても、就学のころまでに吃音の問題が消えていくと知られています。これを自然治癒と呼びます。
  • 「様子見」は「何もしない」ことではありません。日本のガイドラインは自然に治ることをできるだけ活かす方針をとりつつ、重症・悪化・発話が苦しそう・本人が気にしている、就学の1年程度前になっても軽快の傾向がない、といった状態を治療の必要性を判断する基準として挙げています。
  • 最初の1年の症状の重さは、その後の見通しとは関連しないため待機する(例外の条件はあります)、というのがガイドラインの考え方です。いま強く出ていること自体は、続くかどうかの答えにはなりません。
  • 続きやすさの手がかりは複数あり、ひとつだけを見るより、いくつかを組み合わせて見るほうが見通しの当たりやすさが上がると報告されています。

ただし、ここに挙げたものはどれも、目の前のお子さんが「必ず治る」「必ず続く」を言い当てるものではありません。自然に治るまで2〜3年かかることもよくあるとされ、続いた場合も、言語聴覚士やことばの教室で適切な指導と支援を受ければ、日常生活で大きく困らずに過ごせるようになる場合が多いとされています。

4歳の吃音は、どんなときに出ているか

「一日中どもっている」わけではない、というのが多くの保護者の実感です。出やすい場面があり、出にくい場面がある。まずは、それを年齢の区切りごとに書き残していた母親の記録から見ます。

4歳から6歳の長男の母の声(個人ブログ・note)

・興奮している時

・急いでいる時

・説明してる時(おままごとの時に色々説明してくれる)

・物の名前が出てこない時

などでした。

喋りづらい時があるか聞くと、本人は「ない」と言って、気にしていないようでした。

興奮しているとき、急いでいるとき、おままごとの最中に自分から何かを説明しているとき——本人が「たくさん話したい」場面が並んでいます。4つ目に挙がっている「物の名前が出てこない時」だけは、ことばを探している場面です。そして4歳のこの時点では、本人に尋ねても「ない」と答えている。母親はその後の様子も同じ記事に書き足していて、5歳ごろになると本人が「言葉が止まっちゃうんだよ」「お友達が話を聞いてくれない」と口にするようになった、と記しています。同じ5歳から6歳の時期には、最初のことばが出ない難発も出始めた、とも書かれています。話し方の変化と、本人の受け止めの変化は、同じ時期に重なっていたことになります。この時期に子どもが自分の話しにくさに気づき始めることは、学会の解説も同じように述べています。

出典: 【吃音】4歳から6歳の様子と言語療育(note・いちひろママ)(台帳: V0184)

学会の解説によれば、4歳ごろ(早いお子さんなら2、3歳でも)には、子ども自身が「言いにくい」、あるいは「他の子と話し方が違う」と自覚し始めます。周りの子どもたちのほうも、その違いを不思議に感じる時期に入り、だいたい4歳前後から「○○ちゃんはなんで、『あああ』ってなるの?」といった指摘が出てくることがある、とされています。

ここが4歳の分かれ目です。そうした指摘がきっかけになって、話すときに力が入り、声を出しづらくなったり、体を動かしながら話そうとしたりする子も出てくる、と書かれています。声を出そうとして顔や体に力が入り、手足を振り下ろす・目を固くつぶるといった動きを伴うことがあり、これは随伴症状と呼ばれます。幼児期はさまざまな随伴症状が起きるので、家族が驚くことが多いとも書かれています。

4歳ごろに起きる変化を3段階で示した図。第1段階、4歳(早い子は2、3歳でも)になると、子ども自身が「言いにくい」「他の子の話し方と違う」と気がつき始める。第2段階、周囲の子どもも違いを不思議に思う時期になり、概ね4歳位になると「○○ちゃんはなんで、『あああ』ってなるの?」というような指摘が始まることがある。第3段階、こうした指摘をきっかけに発話に力が入り、声が出しにくくなったり、身体を動かして話そうとしたりする子も出てくる。この身体の動きは随伴症状と呼ばれ、幼児期はさまざまな随伴症状が起きるため家族が驚くことが多い。あわせて、3段階とは別のこととして、調子の良い状態と悪い状態が数週間から数か月にわたって続く「波」があり、中には全く症状が出なくなる時期もありうることを示す
図1: 4歳ごろに起きること——本人が気づき、周りが指摘し、力が入る。出典: 日本吃音・流暢性障害学会「吃音(きつおん)について」。

もうひとつ、この時期に知っておきたいのが「波」です。調子のよい時期と、そうでない時期が、それぞれ数週間から数か月のあいだ続く人も多く、こうした変動が「波」と呼ばれています。幼児期はことばの発達も発話の運動も未熟で、環境の変化や疲れに敏感な子もいるため、少しのことで症状がよくなることも悪くなることもあり、まったく症状の出ない時期をはさむこともあるとされます。一週間の様子だけで判断しないでください。

「わたしの子育ての仕方のせいだ」と思ってしまう

原因を調べていくと、多くの保護者が同じ場所にたどり着きます。自分です。3歳の誕生日に発症し、記事を書いた時点で4歳・年中になった息子について、母親はこう書いています。

3歳で発症した息子(記事時点で4歳・年中)の母の声(個人ブログ)

わたしの息子が吃音になった理由・・・

それは・・

息子の性質+わたしの子育ての仕方

だと思っています

もともと繊細な性格の息子に、

イライラし過ぎる母ちゃん

それが原因だろーなと思って

生活環境とか私の子育ての仕方を

見直したり、息子のストレスを

なんとか取ってあげたいと

毎日毎日悩んでました

この母親は、息子の吃音歴を1年と数え、連発が多く時々伸発、数か月前には手や腕を動かしてなんとか言葉を出していた時期もあったと、症状の推移まで具体的に書き残しています。幼稚園の入園と発症が重なり、その年の夏休みの2週間だけ症状が消え、幼稚園が始まるとまた戻った——そこまで観察している人が、原因の欄には「わたしの子育ての仕方」と書く。悩みすぎて自分がおかしくなってきたと感じ、実母の紹介で人に相談し、その言葉に涙が止まらなかったことも綴られていて、記事の終わりには息子への謝罪の言葉が置かれています。

出典: 吃音について(アラサー専業主婦のちょっぴりほっこりblog)(台帳: V0182)

ここは、はっきり書きます。保護者の関わり方のまずさから吃音が生じることは、決してありません。原因はまだ解明しきれていないものの、その子がもともと持っている素因と、環境の側の要因とが、ある条件で重なったときに生じるのではないか——資料はそう説明しています。2000年ごろ以降の双子研究・脳研究・遺伝子研究によって、環境の側の要因よりも、その子が生まれつき持っている体質の要因のほうが吃音の原因の大部分を占めると分かってきた、と学会の解説も述べています。

学会が「最も問題のある間違った原因論」として名指ししているのは、愛情不足など親の接し方のまずさに原因を求める考え方と、親が吃音だと決めてかかって対応することが原因だとする考え方(吃音診断起因説)です。にもかかわらず、母親が周りから責められたという体験談が今も聞かれる、とも書かれています。

さらに近年は、この自責を強めかねない支援のあり方そのものが、専門誌の上で議論になっています。ある研究者は、幼児の吃音に対して親の話し方を調整させる治療について、「回復を決めるのは親だ」という信念を強めるものであり、その信念は根拠が不十分で害をもたらしうると反論しました。あなたが原因ではない、というのは慰めの言葉ではありません。保護者向けの吃音ポータルサイトが、はっきりそう書いています。

「もう様子見のままではいられない」と思った日

それでは、いつ動けばいいのでしょうか。ここが、4歳の保護者にとっていちばんの悩みどころです。市の4歳児訪問に、送り手ではなく親の側として立ち会った元保育士の母親の記録から見ます。

4歳の息子の母の声(保育経験16年の元保育士・note)

母として。今できることを探さなきゃいけない。

もう「様子見」のままではいられない。

私は、せき立てられるような焦燥感と、少しでも救いを求めたい一心で、市の「ことばの相談室」への予約を入れることにしました。

その日、自己紹介の順番を待つ息子を、母親は心の中で何度も励ましながら見ていました。息子は自分の名前を言おうと精一杯に口を動かしましたが、喉に言葉が引っかかって先へ進めない。この頃には症状も変わってきていて、幼い頃の「言葉の出だしを繰り返す」から、「始まりの言葉を長く伸ばす」ようになり、さらに「言葉が出ずに詰まってしまう」ことが多くなっていた、と本人が平易な言葉で書いています。訪問の担当として来ていた元上司からは、このままでは本人が学校で恥ずかしい思いをすることになる、と声をかけられました。同僚たちはその物言いに一緒に怒ってくれたものの、その一言は抜けなかった——そう書かれた直後に、この決断が置かれています。

出典: 【体験記】息子の吃音と向き合った日々②突きつけられた現実(note・まるふぃ@元保育士ママ)(台帳: V0185)

「様子見」と「相談」を分ける線は、実は文書になっています。国が運営する発達障害情報のポータルサイトは、幼児吃音臨床ガイドライン(第1版・2021年)が積極的な介入(月2回以上の指導)を行うタイミングについて、年少組までは経過観察的な支援を行うことを基本とする/年中組では積極的な介入の開始を検討する/年長組では積極的な介入の開始を推奨するとしている、と紹介しています。園の「4歳児クラス」が年中組にあたります。年中組は、待つだけの時期から、開始を検討する時期へ切り替わる位置です。ただし学年は生まれ月で決まるので、いま4歳でも年少組にいるお子さんはいます。年齢ではなく、いまの学年で見てください。

学年とは別に、状態のほうから相談の対象になる場合もあります。ガイドラインの作成を担当した国立障害者リハビリテーションセンターの資料は、治療の必要性の判断基準として、症状が重い、悪化している、発話が苦しそう、本人が気にしている、といった状態と、就学の1年程度前になっても軽快の傾向がないことを挙げています。同じ資料は、最初の1年の重症度(症状の重さ)は予後(その後の見通し)と関連しないので待機する(例外条件あり)、自然治癒まで2〜3年かかることもよくある、とも書いています。いま強いことと、続くことは別の話です。

もうひとつ、研究の側からの手がかりがあります。3〜5歳(平均でおよそ4歳半)の吃音のある子ども52人を、回復したか続いたかが分かるまで追いかけた研究です。次の4つが、それぞれ吃音が続く確率の高さと関連していました。

  • 吃音の家族歴があること
  • 発音の検査の成績が低いこと
  • 自由に話しているときの吃音の頻度が高いこと
  • 意味のない音の並びを聞いてそのまま言ってもらう課題の正確さが低いこと
吃音が続く確率の高さと関連していた4つの手がかりを示した図。対象は3歳から5歳(平均でおよそ4歳半)の吃音のある子ども52人(男児38人・女児14人)を、回復したか続いたかが分かるまで追いかけた研究。関連していたのは、吃音の家族歴があること、発音の検査の成績が低いこと、自由に話しているときの吃音の頻度が高いこと、意味のない音の並びを聞いてそのまま言ってもらう課題の正確さが低いことの4つ。家族歴とその課題の成績の組み合わせにも関連が見られた。4つすべてを入れたモデルは、予測の当たりやすさがもっとも高く、誤りがもっとも少なかった。ひとつだけを見るより組み合わせて見るほうが当たりやすいという結果であり、個々の子どもの結果を言い当てるものではない。図は4つを同じ形の札で並べたもので、4つの大きさは比べておらず、札の大きさは効き目の強さを表さない
図2: 続きやすさの手がかりは4つ。ひとつだけより、組み合わせて見るほうが当たりやすい。出典: Walsh, Christ & Weber (2021) JSLHR.

この研究がいちばん伝えているのは、4つのうちどれかがあるかないか、ではありません。4つをすべて入れたモデルが、予測の当たりやすさがもっとも高く、誤りがもっとも少なかったという点です。ひとつだけを取り出して一喜一憂するより、いくつかを合わせて専門家と見るほうが確かだ、ということになります。そして、これは集団を追いかけた結果であって、目の前のお子さんの結果を言い当てるものではありません。

相談してみる、という選択

相談は「治療を始める」ことと同じではありません。行ってみたら何が起きるのか、を書き残している母親がいます。3歳の頃に息子のことばのつまりに気づいた人です。

4歳の息子の母の声(個人ブログ・note)

最初は

「あれ?」

と思う程度だったけれど、やっぱり親としては少し気になる。

ネットで調べては不安になり、

“様子を見て大丈夫”という言葉に安心しようとしてみたり…。

一度、病院へ相談に行った事もあった。

『トトロ』を伝えたいときに「トトトトトトロ…」とつまる時期があった、という書き出しから始まる記録です。病院で言われたのは、リハビリや特別な治療という話ではなく、成長するにつれて自然に落ち着く子も多い、という見通しでした。実際その後は、5歳を迎えるころにはだいぶ落ち着いてきて、ふだんの暮らしではあまり気にならない程度になっていた、と書いています。その頃に通園先の子ども園から市町村の「ことばの教室」を紹介され、一度足を運びました。印象に残ったのは「もし吃音を誰かに言われて嫌な気持ちになった時は、一緒に作戦会議をするんです。」という先生の言葉だったといいます。結果として継続して通うことは選ばなかったものの、寄り添ってくれる場所があると知れたことが大きかった、と結ばれています。

出典: 子どもの“吃音” ことばの教室を体感して感じたこと(note・Muu)(台帳: V0080)

就学前の子どもへの働きかけについては、研究の蓄積があります。国のポータルサイトが紹介している方法のひとつは、保護者が毎日決まった時間を子どもと設けて、子どもの発話に対して褒める・確認するなどの返答を行い、吃音が出たときと出ていない発話への対応を専門家の指導のもとで検討していく、というものです(リッカム・プログラム)。この方法については、複数の試験をまとめたコクランの検討で、待機している場合と比べて吃音の頻度が低くなったと報告されています。まとめられたのは4つの試験、参加したのは2歳から6歳の151人です。

ただし、この報告は同時に強い留保をつけています。結果の確実性は非常に低いものから中程度で、慎重に受け止める必要があるとされ、含まれた試験にはかたよりの危険も指摘されています。ここでいう「確実性」は、効果の大きさのことではなく、出た結果をどれだけ当てにしてよいかの度合いを指します。効くという結果は出ているけれど、まだ当てにしきれない位置づけ、ということです。加えて、このプログラムは完了までに1〜2年かかる設計で、集計の時点ではどの子も全課程を終えていなかった、とも明記されています。別の系統的な検討では、就学前の子どもに対しては、この直接的な方法と、周りの関わりを整える間接的な方法のどちらも吃音を減らすのに有効だったと報告されています。ただしこちらも留保つきで、まとめられた8つの試験はいずれも、かたよりの危険が中程度と評価されています。

「治らなかったとしても」——当事者である父の置きどころ

4歳という検索語のとなりには、いつも「治らない」という言葉が並んでいます。その問いに、自分が吃音の当事者である父親が答えている記録があります。長女は4歳、次女は2歳です。

吃音当事者で、4歳と2歳の娘の父の声(30代・note)

まだ4歳なので自然に吃音が寛解されるかもしれない。

でもこのまま治らなかったとしても、自分が子供にしてあげることは変わらない。

むしろ当事者である私は苦しんだ時期も知ってるし、吃りながらも自立している今もある。

引用のなかにある「寛解(かんかい)」は、症状が治まっている状態のことです。この父親は、妻の妊娠が分かった頃から吃音の遺伝について調べていました。長女が2歳後半で少しどもり始めたことを妻から指摘された日、その夜は子どもへの罪悪感と悲しみの気持ちでいっぱいだった、と書いています。音読が嫌で仕方なかったこと、友達にどう思われているか気になって仕方なかったこと、本当は嫌なのに「それでいいよ」が言いやすいからそちらを選んでいたこと——自分の学生時代を思い返しながら、この思いを子どもも味わうのかと今でも考えてしまう、と続きます。そのうえで、別の媒体で読んだある父親の言葉に触れて、置きどころが変わったといいます。

出典: 吃音の私と吃音の我が子(note・たこやき/吃音と生きる充実Life)(台帳: V0085)

見通しの面でも、「続いたら終わり」ではありません。就学後も吃音が残るお子さんでも、言語聴覚士やことばの教室で適切な指導と支援を受ければ、多くは、体の緊張をともなう重い吃音があまり出なくなったり、吃音が出にくいように体の力の入り方を加減しながら話す方法を覚えたりして、ふだんの暮らしで大きく困らずにやっていけるようになる、と書かれています。思春期にあたる中学・高校の時期や就職活動のころに、話しづらさで悩んだり不安を覚えたりすることはありますが、多くはそれを乗り越え、不安も悩みもまたやわらぎ、話し方の症状も少しずつ軽くなっていく、と考えられています。

いま気をつけたいのは、この時期の関わり方のほうです。吃音が恥ずかしいという気持ちから、なんとか出さずにすませようともがき、力が入ってしまうと、吃音は悪化するとされ、この悪化を防ぐことが大切だと学会の解説は述べています。「どもってもよいから、たくさんおしゃべりしてね」というメッセージを届けましょう、というのがその具体です。

4歳で、どのくらい治るのか

「どのくらい治るのか」の数字は、資料によってかなり違って見えます。理由は単純で、いつを起点にして、いつまで追いかけた割合なのかが資料ごとに違うからです。まとめて言うときの値から並べます。

幼児期の吃音については、少なくとも半数のお子さんが、特別な指導や支援を受けないまま、就学のころには吃音の問題が消えていくと知られています。ガイドラインを紹介した国立障害者リハビリテーションセンターの資料は、吃音は幼児の1割近くに発症し、4分の3程度は自然に治癒するとしています。発症が多いため、それでも就学児の2%弱、成人の1%弱に吃音が残るとされます。

時間の軸で示しているのが学会の解説です。Yairi らの研究(2005年)をもとに、自然に治った割合を、吃音が始まってから2年後までなら31%、3年後までなら63%、4年後までなら74%と紹介しています。発症から4年以上が過ぎると(あるいは本人が8歳以上になると)、自然に治る確率は下がるとも書かれています。国が運営するポータルサイトは同じことを男女別に示し、吃音を発症後、男児では3年で6割、女児では3年で8割が自然回復する、としています。

4歳のお子さんに当てはめるときは、年齢ではなく「始まってから何年たったか」で見てください。2歳で始まって4歳のいまなら経過は2年、3歳で始まったなら1年です。同じ4歳でも、立っている位置が違います。そして、この数字はいずれも集団の割合であって、目の前のお子さんがどちらになるかを示すものではありません。

家庭でできること——「ゆっくり話して」はどうなのか

待っているあいだ、家庭で何をすればいいのか。保護者向けの吃音ポータルサイトは、その子の特性に合った「特別な環境」を用意することが効果的だとして、具体的に次のような関わりを挙げています。

  • 聞き手である大人のほうが、ゆっくり・ゆったりした調子で話す。速さの目安は、子どもと同じか、それよりわずかにゆっくりめ
  • 子どもの話が終わったら、ひと呼吸おいてから話しかける。発話と発話のあいだに十分な間を取る
  • 相づちやうなずきを返しながら、なるべく最後まで聞ききる。子どもが言い終わるまで、大人のほうから別の話題を持ち出さない
  • 手が離せないときは「あとで聞くから待っててね」と伝え、あとで必ず聞く時間をつくる
  • きょうだいが競うように話しかけてくる場面があるなら、話す順番を決めておき、話の途中で割り込まれないようにする
  • 当の子どもには「ゆっくり」「落ち着いて」と声をかけるのは、できるだけ控える

最後の1行に戸惑うかもしれません。大人がゆっくり話すことは勧められていますが、子どもに「ゆっくり話して」と言うことは勧められていないのです。前者は聞き手の側の調整で、後者は本人への指示だからです。

そのうえで、この助言の効き方については研究者のあいだで議論が続いています。吃音のある子どもの親の発話を、助言を受ける前の録音まで戻って測った研究があります。そこでは、親の話す速さと、子どもの発話に返すまでの間の長さのどちらにもグループ間の差はなく、話す速さや間と子どもの流暢さとの関連も検出されませんでした。著者ら自身が、これはすでに録ってあった記録をあとから見直した研究(後ろ向きの観察研究)であり、解釈には慎重さが必要だと断っています。

さらに専門誌の上では、親の話す速さと会話の交代のしかたを調整することを柱にした新しい治療の提案に対して、反論が出ています。反論の側は、規模も期間も大きい研究が話す速さや会話の交代と吃音からの回復に関係がないことを示していること、速さと交代の調整は親の話し方に別の悪い変化をもたらしうること、そしてこの治療が「回復を決めるのは親だ」という信念を強めていることを挙げています。これは提案に対する応答として書かれたものなので、相手側の主張とセットで読む必要があります。

読み方はこうなります。上の関わりは、子どもが安心して話せる時間をつくるためのもので、「これをすれば治る」という種類のものではありません。ガイドラインを紹介した資料も、待っているあいだの過ごし方として、楽しくおしゃべりできる環境を整えることを挙げ、それは自然に治らない結果に終わったとしても役に立つ、と書いています。

どこに相談する?受診科・相談先

主な相談先は、小児を担当する言語聴覚士と、地域の「ことばの教室」です。そこでは、楽に話せるように周りのコミュニケーション環境を整えること、発話そのものに直接働きかけること、吃音について本人が理解できるようにすることなどを、年齢や状態に応じて組み合わせた指導が行われます。

幼児の吃音について相談が寄せられる先は、保健センター、保育園・幼稚園・認定こども園、耳鼻咽喉科や小児科、ことばの教室と幅広い一方、そのほとんどには言語聴覚士がいません。そのため国内では、吃音を専門としない相談・診療の窓口が詳しい説明と、できれば経過観察までを引き受け、必要を見極めたうえで治療のできる施設へつなぐ、という連携が要るとされています。最初の窓口が専門機関でなくてかまわない、というのがこの設計です。まずは園やかかりつけの小児科・耳鼻咽喉科、市区町村の保健センターに、言語聴覚士やことばの教室につながる窓口を尋ねるところからで大丈夫です。

4歳の吃音の相談先と、そのつながり方を5段階で示した流れ図。第1段階、まず身近な窓口に相談する。入口は保健センター、幼稚園・保育園・認定こども園、小児科、耳鼻咽喉科、ことばの教室。第2段階、そこで説明と経過観察を受ける。これらの施設は言語聴覚士がいないところがほとんどで、一般の相談・診療機関が吃音の詳しい説明と経過観察を担当し、必要を見極めて治療施設に紹介するという連携が国内では必要とされている。第3段階、治療の必要性の判断基準は、重症、悪化、発話が苦しそう、本人が気にしている等、そして就学の1年程度前になっても軽快の傾向がないことで、当てはまれば治療施設へ紹介される。第4段階、専門の相談先につながる。小児を扱う言語聴覚士と地域のことばの教室で、周りの環境を整える方法・直接発話に働きかける方法・吃音を理解する方法を年齢や状態に合わせて指導する。第5段階、届け方は対面だけではなく、遠隔や集団の形式で行った場合も個別の対面と比べて劣らなかったと報告されている
図3: 4歳の相談先と、そこからのつながり方。出典: 国立障害者リハビリテーションセンター リハニュース No.370/ 日本吃音・流暢性障害学会「吃音(きつおん)について」/ Brignell et al. (2021) J Fluency Disord.

近くに専門機関が少ない地域でも選択肢はあります。系統的な検討では、遠隔や集団の形式で行った場合も、個別の対面と比べて劣らなかったと報告されています。この検討にまとめられた8つの試験は、いずれもかたよりの危険が中程度と評価されています。なお同じ検討は、学齢期の子どもや思春期の子どもについては質の高いエビデンスが無いとも述べています。就学前という時期は、根拠のある選択肢が比較的そろっている時期だということです。

あわせて、園への働きかけも相談の一部です。学会の解説は、きょうだいや親戚に加えて、子どもが通っている集団の場でも、次の3つを伝えるようすすめています。吃音は病気ではないこと。緊張やストレス、家庭環境だけから生まれるものではないこと。本人がわざとやっているのではないこと。そのうえで、クラスや学童保育、習い事の場で吃音への理解を広げ、啓発の機会をつくってもらえるよう働きかけましょう、としています。指摘やからかいが減れば、本人は安心して、吃音が出たままでも話し続けていいのだと実感できるようになるからです。

4歳の吃音で陥りがちな3つの落とし穴

落とし穴1 − 「様子見」を「何もしない」と同じにしてしまう

ガイドラインの待機は、経過観察とセットの待機です。推奨されているのは医療の専門職などによる経過の見守りで、治療のできる専門家に紹介する基準もあわせて示されています。誰かが見ている状態で待つのと、家庭だけで待つのは別のことです。

落とし穴2 − 原因さがしで自分(親)を責めてしまう

育て方が原因ではないことは、保護者向けの吃音ポータルサイトがはっきり否定しています。回復を決めるのは親だという信念には根拠が不十分で、害をもたらしうるという指摘もあります。自分を責める時間より、子どもが話しやすい環境づくりにエネルギーを向けるほうが前向きです。

落とし穴3 − 「気づかせない」ようにしてしまう

かつては「吃音に気がつかせない方がよい」とする対応が主流でしたが、いまはその見方は否定されています。4歳は本人が気づき始める年齢です。本人が「しゃべりにくい」と言ったり、「どうして、ぼくは『あああ』ってなるの?」と尋ねてきたりしたときは、吃音について話し合う機会が来たということであり、気持ちを受けとめ、打ち明けてくれて嬉しいと返してあげましょう、とされています。

日々の様子を記録しておくと、相談のときに経過を正確に伝えられます。記録は診断や治療に代わるものではありませんが、波のある症状を1回の面談で伝えるのは難しいので、手がかりとして役立ちます。

よくある質問

4歳の吃音は自然に治りますか?

幼児期に吃音のあるお子さんの少なくとも半数は、特別な指導や支援を受けないまま、就学のころには吃音の問題が消えていくとされています。ガイドラインを紹介した資料は、幼児の1割近くに発症し4分の3程度は自然に治癒するとしています。ただし年齢ではなく、発症からの経過で見るのが目安です。吃音が始まってから2年後までなら31%、3年後までなら63%、4年後までなら74%という報告が紹介されています。

4歳で急にどもり始めました。何かあったのでしょうか?

発症の4割は急にある日始まることが知られている、とされています。そのため「今まで流暢に話していたのに、何か悪いことをしたのではないか」と驚いて相談に来る保護者は少なくありません。原因の大部分は、生まれつきの体質にかかわる要因だとされており、保護者の関わり方のまずさから吃音が生じるわけではありません。

4歳になって吃音がひどくなってきました。悪化しているのでしょうか?

調子のよい時期と、そうでない時期が、それぞれ数週間から数か月続くことは多く、この変動が「波」と呼ばれています。ですので短期間の様子だけでは判断できません。一方で、悪化していることや発話が苦しそうであることは、治療の必要性を判断する基準として挙げられているので、気になるときは様子見だけにせず相談してください。

4歳のいま、相談するのは早すぎませんか?

早すぎることはありません。積極的な介入を行うタイミングについて、年少組までは経過観察的な支援を基本とし、年中組では開始を検討する、と紹介されています。園の4歳児クラスが年中組にあたるので、学年を確かめてみてください。就学前の子どもへの働きかけには効果の報告がある一方、学齢期以降や思春期については質の高いエビデンスが無いとされています。

家では何をすればいいですか?

大人の側がゆっくり話す、話し終わるまで最後まで聞く、きょうだいがいる場合は順番に話すルールを設ける、といった関わりが提案されています。一方で、子どもに「ゆっくり」「落ち着いて」と声をかけることは極力控えるようにと書かれています。なお、親の話す速さや返すまでの間と、子どもの流暢さとの関連は検出されなかったとする研究もあり、これらは「治すための手順」ではなく、安心して話せる時間をつくるためのものと考えてください。

まとめ

  • 4歳ごろは、本人が「言いにくい」「他の子と違う」と気づき始め、周りの子も指摘を始める時期です。指摘をきっかけに力が入り、体の動きを伴って話そうとする子も出てきます。
  • それでも、幼児期に吃音のあるお子さんの少なくとも半数は、特別な指導や支援なしに就学のころまでに吃音の問題が消えていくとされています。自然に治った割合は、吃音が始まってから2年後までなら31%、3年後までなら63%、4年後までなら74%と報告されています。数字は年齢ではなく、発症からの経過年数で見てください。
  • 「様子見」は何もしないことではありません。年少組までは経過観察を基本とし、年中組では積極的な介入の開始を検討する、と紹介されています。重症・悪化・発話が苦しそう・本人が気にしている、就学の1年程度前になっても軽快の傾向がない、は学年にかかわらず判断の基準です。
  • 続きやすさの手がかりは、家族歴・発音の検査の成績・吃音の頻度・意味のない音の並びを言ってもらう課題の正確さの4つで、組み合わせて見るほうが見通しは当たりやすくなります。
  • 相談先は小児を担当する言語聴覚士やことばの教室ですが、最初の窓口は保健センターや園、小児科・耳鼻咽喉科でかまいません。遠隔や集団の形式も個別の対面に劣らないと報告されています。
  • 家庭での関わりは、治すための手順ではなく、安心して話せる時間をつくるためのものです。育て方は原因ではありません。

参考文献

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  2. 吃音ポータルサイト「吃音の原因と予後」(金沢大学・小林宏明)
  3. 発達障害ナビポータル「小児期発症流暢症(吃音)」(国立障害者リハビリテーションセンター系)
  4. 国立障害者リハビリテーションセンター「〔特集〕『幼児吃音臨床ガイドライン』の作成と公開」(リハニュース No.370)
  5. 吃音ポータルサイト「お子さんとの接し方の提案」
  6. Sjøstrand et al. (2021) Non-pharmacological interventions for stuttering in children six years and younger. Cochrane Database Syst Rev.
  7. Brignell et al. (2021) Interventions for children and adolescents who stutter: A systematic review, meta-analysis, and evidence map. J Fluency Disord.
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  9. Godsey & Ratner (2025) It's About Time: Parent-Child Turn-Taking in Early Stuttering. American Journal of Speech-Language Pathology.
  10. Bernstein Ratner (2026) Not So Simple, and Not So Fast: The Limits of Speech Rate and Turn-Taking Modifications for Treatment of Early Stuttering. A Response to Onslow et al. (2026). American Journal of Speech-Language Pathology.

当事者・保護者の声の出典: V0080(note・4歳の息子の母)/ V0085(note・吃音当事者で2児の父)/ V0182(個人ブログ・4歳の息子の母)/ V0184(note・4歳から6歳の長男の母)/ V0185(note・元保育士で4歳の息子の母)。いずれも公開記事。引用は原文どおり。

更新履歴: 2026-07-22 公開/2026-08-27 骨格v2へ全面リライト(声の入れ替え・出典の追加と訂正・専門語の平易化・図スロットの設置)