4歳の吃音は「よくあること」——まず全体像から
4歳ごろにことばがつまったり、最初の音を繰り返したりするのは、めずらしいことではありません。吃音は2〜5歳ごろに始まることが多く、ある研究では4歳までにおよそ11%の子どもが吃音を経験するとされています。10人に1人ほどが通る道だということです。
そして、その多くは自然に軽くなっていきます。幼児期に吃音のある子どもの少なくとも半数は、特別な指導や支援をしなくても、小学校に入学するころまでに吃音が見られなくなると報告されています。まずは「うちの子だけではない」「多くは落ち着いていく」という全体像を押さえておくと、必要以上に不安を抱え込まずにすみます。
当事者の親の声(母親・仮名/たまひよ 体験記・言語聴覚士監修)
2017年4月20日、2才8カ月の時のことでした。
発症の日付まで覚えている、という保護者は少なくありません。それまでスラスラ話していた子が、ある日を境にことばの入り口でつまり始める——吃音は2〜5歳ごろに始まることが多く、この「ある日ふいに気づいた」という体験は、幼児期の吃音の始まり方のひとつです。
出典: 「どうして僕はうまくしゃべれないの?」ある日突然、3才の息子に吃音の症状が…(たまひよ)(台帳: V0006)
4歳ごろの吃音のサイン——連発・伸発・難発
吃音に特徴的な話し方は、大きく次の3つに整理されます。吃音は、音や語の一部・語全体の繰り返し、音の引き伸ばし、あるいは音や息の流れが止まってしまう状態として現れます。
- 連発(れんぱつ):音を繰り返す。例「ぼ、ぼ、ぼくは」
- 伸発(しんぱつ):音を引き伸ばす。例「ぼーーーくは」
- 難発(なんぱつ・ブロック):ことばがなかなか出ず、間があいてしまう。例「・・・・ぼくは」
吃音の瞬間には、顔の緊張やまばたき、うなずきといった、ことば以外の動きを伴うこともあります。また調子の良い時期と出やすい時期の「波」があるのも4歳ごろの特徴で、数日で落ち着いたように見えても、しばらくしてぶり返すことがあります。
当事者の親の声(母親・筆名まとり/個人ブログ)
呼吸すらできない無音のどもり
音が出ずに間があく「難発(ブロック)」は、見ている家族には息が詰まったように映ることがあります。吃音は音の繰り返しや引き伸ばしだけでなく、このように音や息の流れが止まる状態としても現れ、顔の緊張などを伴うことがあります。強く見える時期があっても、それだけで重症度や見通しが決まるわけではありません。
出典: 幼児の吃音と回復の記録(個人ブログ・まとり)(台帳: V0014)
「わたしの育て方のせい?」——原因の話
4歳のお子さんに吃音があると、「自分の育て方や接し方が悪かったのでは」と自分を責めてしまう保護者は少なくありません。しかし、保護者の育て方のまずさがお子さんの吃音の原因になるわけではないことは、公的な資料がはっきりと示しています。
吃音の原因はまだ完全には解明されていませんが、お子さんが生まれ持った素因的な要因と、環境の要因がある条件で組み合わさったときに生じるのではないかと考えられています。つまり「これさえしなければ吃音にならなかった」という単一の原因はなく、あなたのしつけや愛情不足が引き起こしたものではありません。原因さがしで自分を追い詰めるより、いまできる関わりに目を向けるほうが建設的です。
本人が「うまく話せない」と感じることも
成長とともに、本人が自分の話しにくさに気づき、ことばにすることがあります。吃音は話し方だけの問題ではなく、行動面・社会面・情緒面にも影響しうることが指摘されています。「うまく話せない」という気持ちをそのままにしないことも、この時期の大切な視点です。
当事者の親の声(母親・仮名/たまひよ 体験記・言語聴覚士監修)
どうして僕はみんなみたいにしゃべれないの? どうして詰まっちゃうの?
ある母親は、わが子が泣きながらこう訴えたことが、専門家に相談する転機になったと振り返ります。吃音が情緒や人との関わりにも影響しうることをふまえると、本人が苦しさを口にしたときは、「様子見」だけにせず相談の後押しと受け止めるのが安心です。
出典: 「どうして僕はうまくしゃべれないの?」ある日突然、3才の息子に吃音の症状が…(たまひよ)(台帳: V0006)
4歳のいま、様子見でいい?受診の目安
ここが、この記事のいちばんの悩みどころでしょう。前提として、幼児期の吃音の少なくとも半数は、特別な指導をしなくても就学のころまでに見られなくなります。だからといって、全員が自然に回復するわけではありません。では、どこで「様子見」と「相談」を分けて考えればよいのでしょうか。
研究チームが、吃音のある3〜5歳の子ども(平均およそ4歳半)を長期に追跡し、どの子が吃音を持続し、どの子が回復していくかに関わる要因を調べています。その結果、次の4つが、それぞれ吃音の「持続しやすさ」と関連していました。
- 吃音の家族歴があること
- 発音や音の操作をみる構音・音韻の検査の成績が低いこと
- 自由に話すときの吃音の頻度が高いこと
- 意味のない語を復唱する課題(非語反復)の正確さが低いこと
これらは、単独よりも組み合わさるほど持続の確率を高めると報告されています。ただし「あると必ず持続する」というものではなく、あくまで相談・評価のときの目安です。気になる要因が重なるときや、本人が苦しさを訴えるとき、波はあっても改善の実感が乏しいまま時間が経っているときは、様子見だけにせず早めに相談するのが安心です。
時期の面からも、早めの相談には意味があります。就学前の子どもへの吃音の介入は効果が報告されている一方、学齢期以降の子どもや思春期では質の高いエビデンスが乏しいとされます。迷ったときに「もう少し様子を見よう」と先送りし続けるより、4歳のうちに一度相談してみるほうが、選択肢を広く持てます。
どこに相談する?受診科・相談先
相談先は、言語聴覚士(ST)のいる医療機関や、地域の「ことばの教室」です。小学校で吃音が続く場合も、ことばの教室や言語聴覚士の適切な指導・支援を受けることで、日常生活に大きな支障なく過ごせるようになることが多いとされています。
就学前の吃音に対しては、保護者が家庭で行う練習を言語聴覚士から教わる「リッカム・プログラム」などの介入が、待機している場合と比べて吃音の頻度を下げたと報告されています。就学前の子どもには、こうした直接的な方法と、後述する間接的な関わりのどちらも有効だとされます。ただし、この効果のエビデンスの確実性は非常に低い〜中程度で、慎重に受け止める必要があり、プログラムの完了には1〜2年ほどかかるとされます。
また、電話やオンラインなど遠隔での支援も、対面と同等に有効だと報告されています。近くに専門機関が少ない地域でも、相談の選択肢はあります。まずは園やかかりつけ医に、言語聴覚士やことばの教室につながる窓口を尋ねてみるとよいでしょう。
家庭でできる関わり方
子どもにかかる会話の負担を減らし、話しやすい環境を整える「間接的な関わり」も、就学前の吃音に有効だと報告されています。話し方そのものを直そうとするよりも、次のような関わりが基本になります。
- 言い直しをさせたり、「ゆっくり」「落ち着いて」と急かしたりしない
- 話をさえぎらず、最後まで聞く
- 大人自身も少しゆっくりめに、間をとって話す
きょうだいがいる家庭では、順番に話す・話をさえぎらないといった会話のルールをゆるやかに整えると、本人が落ち着いて話せる場面が増えます。ただし、家庭での関わりの効果には個人差があり、「これをすれば必ず治る」というものではありません。気になるときは、家庭での工夫と並行して専門家に相談するのが確実です。
4歳の吃音で陥りがちな3つの落とし穴
落とし穴1 − 「様子見」を「放置」と同じにしてしまう
多くは自然に軽くなる一方、家族歴などの要因が重なると持続に傾きやすいことも分かっています。「様子見」とは何もしないことではなく、変化を見守り、必要なら相談することです。
落とし穴2 − 原因さがしで自分(親)を責めてしまう
育て方が原因ではないことは、公的資料がはっきり否定しています。自分を責める時間より、子どもが話しやすい環境づくりにエネルギーを向けるほうが前向きです。
落とし穴3 − 「治った/治らない」の二択で焦ってしまう
4歳ごろの吃音は良い時期と出やすい時期の波を行き来します。1回の様子だけで判断せず、日々の様子を記録しておくと、相談のときに経過を正確に伝えられます。
まずは日々の発話や調子を記録することから小さく始めるのが現実的です。記録は診断や治療に代わるものではありませんが、経過を「見える化」しておくと、専門機関に相談するときの手がかりになります。
よくある質問
4歳の吃音は自然に治りますか?
幼児期に吃音のある子どもの少なくとも半数は、特別な指導をしなくても小学校入学ごろまでに見られなくなるとされています。ただし全員ではなく、吃音の家族歴などの要因が重なると持続しやすいと報告する研究もあります。気になるときは様子見だけにせず相談するのが安心です。
4歳だと受診はまだ早いですか?
早すぎることはありません。就学前の子どもへの介入は効果が報告されている一方、学齢期以降や思春期では質の高いエビデンスが乏しいとされます。迷うなら4歳のうちに、言語聴覚士のいる医療機関やことばの教室に相談しておくと選択肢が広がります。
何科・どこに相談すればいいですか?
言語聴覚士のいる医療機関や、地域の「ことばの教室」が主な相談先です。電話やオンラインなど遠隔での支援も対面と同等に有効と報告されているため、近くに専門機関が少なくても相談できる場合があります。
親の育て方が原因ですか?
いいえ。育て方が吃音の原因ではないことは、公的資料が明確に否定しています。原因はまだ完全には解明されていませんが、生まれ持った素因的な要因と環境の要因が組み合わさって生じると考えられています。
家でできることはありますか?
子どもにかかる負担を調整し、話しやすい環境を整える間接的な関わりは、就学前の吃音に有効と報告されています。言い直しをさせず、急かさず、最後まで聞くといった関わりが基本で、効果には個人差があるため専門家への相談と並行するのがすすめられます。
まとめ
- 4歳ごろの吃音はよくあることで、4歳までにおよそ11%の子どもが経験し、その多く(少なくとも半数)は就学までに自然に軽くなります。
- 症状は連発・伸発・難発の3つ。顔の緊張などを伴い、調子には波があります。
- 「様子見か受診か」は、家族歴・構音や音韻の弱さ・吃音頻度の高さ・非語反復の成績など、持続に傾きやすい要因が重なるかを目安に。重なるなら早めの相談を。
- 相談先は言語聴覚士のいる医療機関やことばの教室。就学前は介入の効果が報告されている時期で、遠隔支援も選べます。
- 育て方は原因ではありません。焦らず・急かさず・最後まで聞く関わりを基本に、経過を記録して見守りましょう。
