利き手矯正で吃音になる?|俗説の否定・波との混同・親の接し方

利き手矯正で吃音になる?|俗説の否定・波との混同・親の接し方
目次

「左利きを右利きに直したら、吃音(きつおん)になるのでは?」「うちの子の話し方が変わったのは、矯正のせいかもしれない」——利き手と吃音の話は、古くから語られてきたぶん、いまも家族を苦しめやすいテーマです。

この記事は、結論を先に置いたうえで、実際に利き手を矯正された当事者と、「お母さんのせいかな」と口にした母親をもつ当事者、2人の言葉を並べます。そのあとで、この説がどこから来てどう否定されたのか、左利きそのものについて最新の研究が何を言えているのか、そして「矯正をやめたら軽くなった」を吃音の“波”と取り違えないための見方までを、出典つきで整理します。

ソンタクマン(toVoice 運営)
吃音当事者。研究論文と当事者の声をもとに、吃音の情報を出典つきで発信しています。

この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の判断に代わるものではありません。気になる症状があるときは、言語聴覚士のいる医療機関やことばの教室にご相談ください。

まず結論から

  • 「利き手を右利きに矯正すると吃音になる」という説は、1930年代に唱えられた古い原因論で、その後の比較研究によって否定されています。
  • 吃音の原因は、環境的な要因よりも生まれ持った体質的な要因が多くを占めることが、2000年ごろ以降の双子研究・脳研究・遺伝子研究から分かっています。
  • 「利き手を矯正したことが悪い」は、かつて養育者に原因を求めた説の一つとして、国のポータルサイトの解説でも歴史的な経緯として名指しされています。
  • では左利きそのものはどうか——世界中の研究を束ね直した2023年の統合でも結論は出ておらず、著者らは、関係があるとしても、せいぜい弱いものだろう、と述べています。
  • 「矯正をやめたら軽くなった」は、調子の良い時期・悪い時期が数週間から数か月続く吃音の“波”と、たまたま重なっただけかもしれません。

ただし、これは「利き手のことは何も気にしなくてよい」という意味ではありません。「矯正が吃音を起こすのか」という問いと、「本人が強く嫌がることを続けさせてよいのか」という問いは別のもので、この記事が否定できるのは前者だけです。

右手でノートを取る毎日に、何が起きていたか

利き手の矯正と吃音の話は、たいてい「原因かどうか」という一点で語られます。けれど、矯正を受ける子どもの側にあるのは、因果の議論ではなく、朝から夕方まで続く生活のほうです。

当事者の声(金色冬生さん・小学生のときに利き手を矯正された当事者/個人ブログ note の連載)

私に利き手の矯正を勧めた先生は、私が慣れない右手で必死にノートを書いているのに一時間目が終わると、当たり前のように黒板を消した。

私のノートには、まだ二行しか書けていないのにもかかわらずだ。

そして、給食の時間。

当時は、箸ではなく先割れスプーンで給食を食べていた。

たとえ、スプーンであっても慣れない右手で食べるのは困難を要した。

落とす、こぼす、瓶の牛乳を落として床にぶちまけて割る。。。

始まりは、担任が母親を呼び出した日でした。将来のことを考えて左利きを右利きに直したほうがいい——先生はそう勧め、母親は本人の気持ちを一切聞かないまま同意しています。面談の当日から、家でも学校でも右手を使うようにという命令が下りました。家では両親と祖父母が、学校では担任と同じ教室の人たちが「監視役」だったと本人は書いています。宿題の答えを一つノートに書くだけで何十分もかかり、食事は食べ始めたばかりの幼児のようになりました。一人になると、左手に泣きながら謝ったとも記しています。本人はこの文章を、矯正の日々のあとに話しづらくなった、と感じたところで結んでいます。ただしそれは本人の受け止めであって、原因が確かめられたものではありません。矯正は、話し方への働きかけではありません。それでも、学校で過ごす時間のほとんどがそこに費やされていました。学齢期の吃音は、先生の対応や周囲の友達関係に大きく影響されるとされています。

出典: 利き手矯正(note)(台帳: V0216)

学校生活のなかで、吃音をからかわれたり、発表や音読で思うように話せない経験が重なると、吃音を否定的に捉える見方が育ち、ことばが出にくくなったり、言いやすい言葉に置き換えてしのいだりする方向へ進むことがあるとされています。だからこそ、「矯正が吃音を起こすのか」という問いと、「その子が学校でどれだけ消耗しているか」という問いは、切り離して立てる必要があります。前者はこのあと見るとおり否定されていますが、後者はそれとは無関係に、いま目の前で確かめられることです。

「お母さんのせいかな」——俗説が家族に残していくもの

この説がいちばん重い形で残るのは、多くの場合、子ども本人ではなく親のほうです。原因を探していくと、その道はしばしば親自身に向きます。

当事者の声(橋元貴世さん・大阪/執筆時28歳。自助団体の会報に掲載された、ことば文学賞の受賞作)

それからしばらくたったある日、テレビか雑誌で見たのか分かりませんが、左利きを右利きに無理矢理直すと吃音になるという情報を聞いたらしく、「お母さんのせいかな?」と言いました。確かに私は小さい頃お腹が一杯になると、食べるのがいやになるのか左利きになっていたような気がします。

社会人になってまだ1か月、会社の電話に相当まいっていた時期でした。ゴールデンウィークのよく晴れた日、母親に誘われて、歩いて10分ほどの浮見堂へ弁当を持って出かけます。芝生でそれを食べ終え、ベンチに座ったところで、本人は初めて吃音の悩みを真剣に打ち明けました。母親はすごく驚いた様子で、そのあとしばらく考え込んでいたといいます。そしてしばらくたったある日に出てきたのが、この「お母さんのせいかな?」でした。本人は、それは違うよ、と母親に伝えています。本人には本人なりの思い当たりがありましたが、それもまた本人の受け止めであって、医学の説明ではありません。母親が自分に原因を求めるまでの道筋には、テレビか雑誌で見たというその情報が挟まっていました。吃音の原因論には、養育者に原因を求める説が繰り返し置かれてきた歴史があります。

出典: 第7回ことば文学賞受賞作品(吃音と上手につきあうための吃音相談室/日本吃音臨床研究会)(台帳: V0164)

国のポータルサイトの解説でも、「利き手を矯正したことが悪い」「吃音を親が意識させたことが悪い」「下の子が生まれて愛情不足が原因」といった環境の説が、かつて原因とされ、とくに養育者が原因とされた歴史的背景として名指しされています。学会の解説も、親の接し方(愛情不足)を原因とする説などを「最も問題のある間違った原因論」に挙げ、そのために母親が周囲の人から非難されたという体験談を聞く、と書いています。祖父母から母親の育児態度が責められていることもあるため、祖父母も交えた情報共有が必要だとも指摘されています。

いま分かっていることは、これらとは向きが違います。2000年ごろ以降の双子研究・脳研究・遺伝子研究によって、環境的要因よりも生まれ持った体質的な要因が吃音の原因の多くを占めることが分かってきました。吃音は、話し言葉・ことば・気持ちを支える神経のネットワークが急速に育つ時期に始まる、脳の発達に関わる現象で、一つの原因だけでは説明できないと考えられています。

「利き手矯正説」はどこから来て、どう否定されたのか

「利き手矯正説」が吃音の原因論として考えられていたのは、1930年代のことです。その説ができた経緯には、1920年代に「吃音は左利きの子や両手利きの子に多いのではないか」という話があったこと、そして右利きに矯正された子の利き手を左利きに戻すと吃音が治った、という事例が伝えられたことがありました。

ただ、当時からこの説では説明のつかない例が知られていました。もともと右利きだった子にも吃音は始まりますし、矯正された子の手を元に戻しても、吃音が続いたままの例があったのです。「利き手」という一点だけでは、吃音が始まる子と始まらない子の違いを説明できませんでした。

ある説を否定するには、科学的なエビデンス——つまり測定した結果——が必要になります。この説を確かめたのが、Johnsonらの比較でした。吃音のある人46名と吃音のない人46名を集めて利き手を比べたところ、左利き・両手利き・右利きに矯正された人などを比較しても、吃音のある群が特別に多いわけではありませんでした。一人や二人の特徴ではなく、大勢の共通点を測って確かめる——この手続きが、俗説を退けるうえで決定的でした。

「利き手矯正説」が生まれてから否定されるまでの流れ。1920年代に「吃音は左利き・両手利きの子に多いのでは」という話が出る→1930年代に吃音の原因論として「利き手矯正説」が唱えられる→もともと右利きの子でも吃音は始まり、矯正を戻しても治らない例が知られる→Johnsonらが吃音のある人46名と吃音のない人46名の利き手を比較し、吃音のある群に特別多いわけではないと分かって否定された
図1: 「利き手矯正説」が生まれてから否定されるまで。出典: 日本医事新報社「吃音Q&A 第2回:利き手矯正と吃音の波」

「左利きだと吃音になりやすい」のほうは、どこまで分かっているのか

ここまでは「矯正」の話でした。では、矯正とは関係なく「左利きであること」自体はどうなのでしょうか。こちらは、いまも決着がついていません。

2023年に、世界中の研究をひとつに束ねて数え直す、メタ分析と呼ばれる方法で、吃音のある人2,590名と吃音のない人17,148名分のデータが統合されました。利き手の分け方を変えて5通りの比べ方が行われ、結果は次のように分かれています。

  • 右か左かの二択で分けたときは、吃音のある人に左利きが多いという差の証拠が得られました。ただし著者らは、今後の研究の結果が収まると見込まれる範囲の下限が「差なし」のすぐそばにあることを、解釈上の注意として挙げています。
  • 右・混合・左の三分類で厳しく「左利き」とした場合は、差の証拠は得られませんでした。
  • どちらの手も使う「混合利き」でも、差の証拠は得られませんでした。
  • 左利きと混合利きをまとめた「非右利き」では差が出ましたが、他と大きくかけ離れた結果(外れ値)と判定された古い2件を外して解析し直すと、差の証拠は残りませんでした。
  • 利き手の偏りを数値で表した得点の平均でも、差の証拠は得られませんでした。

著者ら自身の結論は、今回の結果からは右利き以外の利き手と吃音の関係について強い結論は出せない、関係があるとしても、せいぜい弱いものだろう、という趣旨です(原文は英語)。つまり、「左利きだと吃音になりやすい」とも「まったく関係ない」とも、いまの研究からは強くは言えない状態です。

2023年のメタ分析で、利き手の分け方を変えた5通りの比べ方それぞれの結果。吃音のある人2,590名と吃音のない人17,148名分のデータを統合。左右二択の左利き=差の証拠あり(ただし今後の研究が収まる範囲の下限が差なしのすぐそば)/三分類の厳密な左利き=証拠なし/混合利き=証拠なし/非右利き=差は出たが古い外れ値2件を外すと残らない/利き手得点の平均=差の証拠なし
図2: 利き手の分け方を変えると、結果はこう分かれた。出典: Papadatou-Pastou et al. (2023) Neuropsychol Rev.

そしてもう一つ、この統合を読むうえで外せない点があります。ここで比べられたのは「その人がどちらの手を使うか」であって、「利き手を矯正されたかどうか」ではありません。「左利きの人に吃音が多いか」と「矯正が吃音を起こすか」は、見た目が似ていても別の問いです。前者がまだ決着していないことは、後者が確かめられたことを意味しません。

混同されやすい2つの問いを分けた図。問い1「左利きの人に吃音が多いか」は利き手の分類を比べて調べる問いで、2023年の統合でも結論が出ていない。問い2「利き手の矯正が吃音を起こすか」は矯正を受けたかどうかを比べる問いで、1930年代の説として唱えられ、その後の比較研究で否定された。問い1が未決着でも問い2が肯定されたことにはならない
図3: 「左利きかどうか」と「矯正したかどうか」は別の問い。出典: Papadatou-Pastou et al. (2023) Neuropsychol Rev. / 日本医事新報社「吃音Q&A 第2回」

「矯正で脳が混乱して吃音になる」という説明を見かけることもあります。吃音が脳の発話の仕組みに関わる現象であること自体は確かで、話し言葉・ことば・気持ちを支える神経のネットワークが急速に育つ時期に始まる、脳の発達に関わる現象だと考えられています。ただしその始まり方は一つの原因では決まらず、いくつもの要因が動きながら重なって決まるとされており、「矯正が脳を混乱させて吃音を生む」という単純な図式が確かめられているわけではありません。仮説として語られることはあっても、確定した因果ではない、と受け止めるのが安全です。

「矯正をやめたら軽くなった」は、“波”かもしれない

利き手の話でとくに誤解が生まれやすいのが、ここです。吃音には、状況によって症状が出やすかったり出にくかったりする性質があり、調子の良い状態・悪い状態が数週間から数か月にわたって続く人も多く、この変動は「波」と呼ばれています。

吃音を専門とする医師も、とても吃音が多くなる日もあれば、もう治ったのではないかと錯覚するほど調子の良い日もあると述べ、この波については解明がほとんど進んでいないとしています。つまり、たまたま矯正をやめた時期と、波で症状が減った時期が重なれば、「やめたから軽くなった」ように見えてしまいます。逆に、矯正を始めた時期と症状が増えた時期が重なることもあります。

「矯正をやめたら軽くなった」の読み方が2通りある図。矯正をやめた時期のあとに症状が減ったという同じ出来事が、読み方A「やめたから減った」と、読み方B「調子の良い時期・悪い時期が数週間から数か月続く波と、たまたま重なった」の両方に読める。どちらかを見分ける手がかりは、その一度の変化だけでは得られない
図4: 同じ出来事が2通りに読める。出典: 日本吃音・流暢性障害学会「吃音(きつおん)について」 / 日本医事新報社「吃音Q&A 第2回」

この医師は、保護者向けに言葉の使い方も提案しています。「悪化する」「ひどくなる」ではなく「(吃音が)増える」、「改善する」ではなく「減った」という中立的な言葉を使うこと。表面上の症状の状態に保護者の気持ちが左右されるのではなく、話すという行為の内側にある「話したい気持ち」を育てることを大事にするとよい、という考え方です。

いま利き手のことで迷っている保護者へ

「吃音のある子の利き手を、いま矯正してよいのか」——これは科学だけでは割り切れず、家庭ごとの事情も入る問題です。そのうえで、ここまで見てきたことから言える一般的な考え方を整理します。

  • 矯正が吃音の直接の原因になるという説は否定されているので、「矯正したから吃音になる」と過度に恐れる必要はありません。
  • 一方で、本人が強く嫌がることを無理に続けるのは負担を増やしがちです。学齢期の吃音は、先生の対応や周囲の友達関係に大きく影響されるとされています。
  • 「矯正をやめれば吃音が治る」と期待するのも要注意です。変化が見えても、それは波による自然な変動かもしれません。
  • 迷ったときは自己判断で抱え込まず、専門家に相談してください。吃音のことについては、小児を扱う言語聴覚士やことばの教室の教員が相談先です。

相談先・受診の目安 — 言語聴覚士とことばの教室

吃音について相談したいときの窓口は、小児を扱う言語聴覚士(ST)や、ことばの教室の教員です。年齢や状態に合わせて、楽に話しやすくなるように周りの人の接し方や話す場面のほうを整える方法(これは「環境調整」と呼ばれます)、直接発話に働きかける方法、吃音のことを理解する方法などの助言・指導を受けられます。

受診・相談の目安に決まった基準はありませんが、利き手のことに限らず、話し方が気になって不安が続くとき、周囲の指摘やからかいで本人がつらそうなとき、様子見だけでよいか迷うときは、早めに専門家に相談すると安心です。発達性吃音は2005年に施行された発達障害者支援法の対象に含まれています。また、これとは別に、2016年に施行された障害者差別解消法により、学校や職場で発表や電話応対の免除などの配慮を求めることができます。

利き手と吃音をめぐる3つの落とし穴

落とし穴1 − 犯人を一つに決める

吃音の始まり方は一つの原因では決まらず、いくつもの要因が重なって決まると考えられています。そして、利き手の矯正が吃音の直接の原因になるという説は否定されています。「これさえなければ」と犯人を一つに絞り込むほど、いま分かっていることから離れていきます。

落とし穴2 − 症状の増減を、すぐ「矯正のおかげ/せい」と結びつける

吃音には数週間から数か月単位の波があります。矯正の開始・中止と、たまたま時期が重なっただけかもしれません。吃音を専門とする医師自身が、40年ほど吃音とともに過ごしていても、いつ調子が良くなるのか悪くなるのか自分でも分からない、と書いています。

落とし穴3 − 情報も判断も一人で抱え込む

吃音の原因についての捉え方は時代とともに変わってきており、インターネットには古い情報と新しい情報が混在しています。断片的な情報だけで決めず、専門家に相談するのが近道です。相談のときは、いつ・どんな場面で症状が増えた(減った)かの記録があると、経過を伝えやすくなります。祖父母から母親の育児態度が責められている場合には、祖父母も交えて情報を共有することが必要だとされています。

まずは記録から小さく始め、気になるときは言語聴覚士などの専門機関に相談するのが現実的です。

よくある質問

利き手を矯正すると吃音になりますか?

利き手の矯正が吃音の直接の原因になるという「利き手矯正説」は、Johnsonらの比較研究などによって否定されています。吃音の原因は生まれ持った体質的な要因が多くを占めるとされ、一つの原因だけでは説明できないと考えられています。

左利きだと吃音になりやすいですか?

これは「矯正するかどうか」とは別の問いで、まだ決着がついていません。世界中の研究を束ね直した2023年の統合では、利き手の分け方によって結果が分かれ、著者らは、関係があるとしても、せいぜい弱いものだろう、と述べています。左利きそのものが吃音のなりやすさを決める、と言える段階ではありません。

吃音のある子の利き手は、矯正しない方がいいですか?

矯正が吃音を起こすという因果は否定されているため、そこを恐れる必要はありません。一方で、本人が強く嫌がることを無理に続けるのは負担を増やしがちです。学齢期の吃音は、先生の対応や周囲の友達関係に大きく影響されるとされています。迷うときは言語聴覚士に相談しましょう。

矯正をやめてから、吃音が目立たなくなってきました。やはり矯正が原因だったのでしょうか?

そうとは限りません。吃音には調子の良い時期・悪い時期の波があり、数週間から数か月続くこともあります。矯正をやめた時期と、波で症状が減った時期がたまたま重なった可能性もあり、この波については解明がほとんど進んでいないとされています。

昔は「利き手矯正が吃音の原因」と聞きました。今は違うのですか?

はい。それは1930年代に考えられた古い原因論で、その後の科学的な検証によって否定されています。「利き手を矯正したことが悪い」は、かつて養育者に原因を求めた説の一つとして、いまは歴史的な経緯として扱われています。インターネットには古い情報と新しい情報が混在しているため、情報の新しさに注意が必要です。

まとめ

  • 「利き手の矯正が吃音の直接の原因になる」という説は、1930年代の古い原因論で、Johnsonらの比較研究などにより否定されています。
  • 「左利きだと吃音になりやすいか」はこれとは別の問いで、2023年の統合でも結論は出ていません。著者らは、関係があるとしても、せいぜい弱いものだろう、としています。
  • 吃音の原因は生まれ持った体質的な要因が多くを占め、一つの原因では説明できません。「利き手を矯正したことが悪い」は、養育者に原因を求めてきた説の一つとして歴史的な経緯に位置づけられています。
  • 「矯正をやめたら軽くなった」は、吃音の“波”による自然な変動かもしれず、因果と決めつけないことが大切です。
  • 利き手そのものより、子どもが強い負担を感じないこと・話しやすい環境を優先しましょう。吃音のことで迷ったら、小児を扱う言語聴覚士やことばの教室の教員が相談先です。

参考文献

  1. 日本医事新報社「吃音Q&A 第2回:利き手矯正と吃音の波」(note出張版・文責 菊池良和)
  2. 日本吃音・流暢性障害学会「吃音(きつおん)について」
  3. 発達障害ナビポータル「小児期発症流暢症(吃音)」(文責 菊池良和)
  4. Papadatou-Pastou, Papadopoulou, Samsouris, Mundorf, Valtou & Ocklenburg (2023) Hand Preference in Stuttering: Meta-Analyses. Neuropsychol Rev.
  5. Smith & Weber (2017) How Stuttering Develops: The Multifactorial Dynamic Pathways Theory. JSLHR.

当事者の声の出典: V0216(note・金色冬生さんの連載「利き手矯正」)/ V0164(日本吃音臨床研究会 会報「スタタリング・ナウ」掲載・第7回ことば文学賞最優秀作「母との思い出」)。いずれも公開記事。引用は原文どおり。

更新履歴: 2026-07-22 公開/2026-08-27 骨格v2へ全面リライト(声の入れ替え・出典の追加と訂正・専門語の平易化・図スロットの設置)